+4%台の高い上昇率が続く3月の企業物価指数(PPI)
本日、日銀から3月の企業物価 (PPI) が公表されています。統計のヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で+4.2%の上昇となり、2月統計の+4.1%から上昇率がさらに拡大し、依然として高い伸びが続いています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
3月の企業物価指数4.2%上昇 コメ価格上昇続く
日銀が10日に発表した3月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は126.0と前年同月比で4.2%上昇した。2月(4.1%上昇)から伸び率が拡大し、民間予測の中央値(3.9%上昇)より0.3ポイント高かった。コメを含む農林水産物の価格上昇の影響が出た。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。サービス価格の動向を示す企業向けサービス価格指数とともに消費者物価指数(CPI)に影響を与える。2月分の前年同月比上昇率は発表当初は4.0%だったが、遡及修正で4.1%に変更された。
3月分の内訳をみると、農林水産物は40.1%上昇した。コメの値上がりが長引いたほか、鳥インフルによる供給減少で鶏卵価格が高騰した。
ガソリン補助金の減額を受け石油・石炭製品は8.6%上昇した。2月(5.9%上昇)から伸び率が2.7ポイント拡大した。飲食料品は原材料や包装資材などの上昇分を価格に転嫁する動きが続き、3.1%上昇した。
2024年度は前年度比3.3%の上昇だった。非鉄金属の国際市況上昇も影響した。公表している515品目のうち、上昇したのは387品目、下落したのは106品目だった。
インフレ動向が注目される中で、やや長くなってしまいましたが、いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価指数(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

まず、引用した記事にあるように、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内企業物価の前年同月比上昇率について、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+3.9%、予測レンジの上限で+4.0%と見込まれていましたので、実績の+4.2%はレンジ上限を超えて大きく上振れた印象です。しかも、引用した記事にもある通り、2月統計の上昇率は遡及して上方改定されています。なお、ロイターの記事では、ロイター調査による民間調査機関の予測中央値は+3.9%でした。国内物価の上昇幅が拡大したした要因は、引用した記事にもある通り、コメなどの農林水産物の価格上昇であり、農林水産物は前年同月比で見て2月+40.2%の後、本日公表の3月統計では+40.1%と、猛烈な上昇を見せています。何分、コメなどは生活必需品の食料なのですから、企業間取引の価格とはいえ小売価格に波及することは当然ですから、国民生活への影響も深刻度を増している可能性が高いと私は受け止めています。ただし、為替相場では2-3月には一時的に円高が進んだ点は、金融政策当局の目論見通りかもしれません。すなわち、前月比で見て、1月には+1.8%の円安となったものの、2月には△2.9%、3月も▲1.8%の円高が進んでいます。また、私自身が詳しくないので、エネルギー価格の参考として、日本総研「原油市場展望」(2025年4月)を見ておくと、当面の原油価格は60ドル台前半で推移すると予想しており、「OPECプラスによる増産や貿易戦争による世界景気の悪化が価格下押し圧力」と指摘しています。円ベースの輸入物価指数の前年同月比は、今年に入って1月+2.3%の後、2月▲1.8%、3月▲1.6%と下落を記録しており、国内物価の上昇は明らかにホームメードインフレの様相を呈してきています。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比上昇率・下落率で少し詳しく見ると、まず繰り返しになりますが、農林水産物は2月の+40.2%から3月は+40.1%と高い上昇幅を続けています。これに伴って、飲食料品の上昇率も+3.1%と高止まりしています。電力・都市ガス・水道も+6.4%と高い上昇率が続いています。ほかに、銅市況の高騰などにより非鉄金属も12.3%とと2ケタ上昇が続いています。
| 固定リンク
« アジア開発銀行(ADB)による「アジア開発見通し」Asian Development Outlook 2025 やいかに? | トップページ | 日銀「さくらリポート」(2025年4月)を読む »
コメント