6か月ぶりに上昇した5月の消費者態度指数
本日、内閣府から5月の消費者態度指数が公表されています。5月統計では、前月から+1.6ポイント上昇して32.8を記録しています。まず、ロイターのサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
消費者態度指数5月は1.6ポイント上昇の32.8、6カ月ぶり改善=内閣府
内閣府が29日に発表した5月消費動向調査によると、消費者態度指数(2人以上の世帯・季節調整値)は、前月から1.6ポイント上昇し、32.8となった。改善は昨年11月以来、6カ月ぶり。内閣府では米中関税合意などのニュースが一定の影響を与えた可能性があると推察している。
もっとも3カ月移動平均ベースでは前月比マイナス傾向が継続しているため、内閣府は消費者態度指数の基調判断を「弱含んでいる」に据え置いた。消費者態度指数を構成する4つの指標すべてが前月比で改善した。各指標の前月比の内訳は、「暮らし向き」が2.9ポイント、「雇用環境」が1.6ポイント、「耐久消費財の買い時判断」が1.2ポイント、「収入の増え方」が0.8ポイント改善した。1年後の物価見通しは回答者の93.6%が「上昇する」と回答し、前月の93.2%から0.4ポイント増えた。物価が5%以上上昇するとの回答比率は4月の60.0%から55.5%に低下する一方、5%未満、との回答比率が増加した。5%以上の物価上昇見通し割合が減少した背景として、ガソリンや生鮮野菜価格の下落、調査日直前のコメ価格低下などが影響したと内閣府は推察している。
いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者態度指数のグラフは下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。影を付けた部分は景気後退期となっています。

消費者態度指数を構成する4項目の指標について前月差で詳しく見ると、「暮らし向き」が+2.9ポイント上昇し30.2、「雇用環境」が+1.6ポイント上昇して37.3、「耐久消費財の買い時判断」が+1.2ポイント上昇して25.4、「収入の増え方」も+0.8ポイント上昇して38.3と、消費者態度指数を構成する4項目すべてが上昇しました。統計作成官庁である内閣府では、基調判断を「弱含んでいる」で据え置いています。先月4月統計で従来の「足踏みがみられる」から、「弱含んでいる」に1ノッチ下方修正してから、本日公表の5月統計でも連続して「弱含んでいる」の判断です。私が従来から主張しているように、いくぶんなりとも、消費者マインドは物価上昇=インフレに連動している部分があります。総務省統計局による消費者物価指数(CPI)のヘッドライン上昇率は今年2025年に入ってからも1月+4.0%、2月+3.7%、3月+3.6%につづいて、4月も+3.6%と高止まりしています。依然として日銀物価目標の+2%を上回っていますが、今年2025年1月の+4.0%からは低下した印象もあります。インフレとデフレに関する消費行動は、1970年代前半の狂乱物価の時期は異常な例としても、1990年代後半にデフレに陥る前であれば、インフレになれば価格が引き上げられる前に購入するという消費者行動だったのですが、バブル経済崩壊後の長い長い景気低迷機を経て、物価上昇により消費者が買い控えをする行動が目につくように変化したのかもしれません。こういった消費者行動の経済分析が必要だという気がしています。
また、物価上昇に伴って注目を集めている1年後の物価見通しは、5%以上上昇するとの回答が55.5%を占める一方で、2%以上5%未満物価が上がるとの回答も29.9%に上っており、これらも含めた物価上昇を見込む割合は93.6%と高い水準が続いています。加えて、引用した記事の最後のパラにも現れているように、物価上昇予想は上昇率の高い方にややシフトしています。これも、最近の物価統計などで実績としてのCPI上昇率が加速している影響が現れている可能性が高いと考えるべきです。
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