高止まりする4月の企業向けサービス価格指数(SPPI)
本日、日銀から3月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は前月3月の+3.3%からわずかに縮小して+3.1%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIの上昇率も前月から▲0.1%ポイント縮小して+3.3%の上昇となっています。まず、ロイターのサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
企業向けサービス価格、4月3.1%上昇 人件費転嫁映す
日銀が27日に発表した4月の企業向けサービス価格指数(速報値、2020年平均=100)は110.5となり、前年同月に比べ3.1%上昇した。伸び率は3月(3.3%)から0.2ポイント低下したものの7カ月連続で3%台となった。人件費をサービス価格に反映する動きが続いている。
企業向けサービス価格指数は企業間で取引されるサービスの価格動向を表す。貨物輸送代金やIT(情報技術)サービス料などが含まれる。企業間取引のモノの価格動向を示す企業物価指数とともに、今後の消費者物価指数(CPI)に影響を与える。
日銀は今回の発表で3月分の前年同月比上昇率を3.1%から3.3%に遡及修正した。
4月分の内訳をみると、好調なインバウンド(訪日外国人)需要や、開催中の大阪・関西万博の影響で宿泊サービスは17.2%上昇した。一方、廃棄物処理サービスなどで人件費や運搬費の上昇を価格に転嫁する動きが一巡し、諸サービス全体の伸び率は4.3%と3月(4.5%上昇)より0.2ポイント鈍化した。
調査品目のうち、生産額に占める人件費のコストが高い業種(高人件費サービス)は3.5%上昇しており、3月(3.6%上昇)と同様に高い伸び率を維持している。人件費を価格に転嫁する動きは続いている。低人件費サービスは2.7%上昇し、3月(3.0%上昇)から伸び率が縮小した。
調査対象の146品目のうち、価格が上昇したのは114品目、下落18品目だった。14品目では価格が変わらなかった。
注目の物価指標だけに、やや長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルから順に、ヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、真ん中のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格とサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。一番下のパネルはヘッドラインSPPI上昇率の他に、日銀レビュー「企業向けサービス価格指数(SPPI)の人件費投入比率に基づく分類指数」で示された人件費投入比率に基づく分類指数のそれぞれの上昇率をプロットしています。影を付けた部分は、景気後退期を示しています。

上のグラフで見ても明らかな通り、モノの方の企業物価指数(PPI)のトレンドはヘッドラインとなる国内物価指数で見る限り、上昇率としては2023年中に上昇の加速はいったん終了したように見えたのですが、昨年2024年年央時点で再加速が見られ、PPI国内物価指数の前年同月比上昇率は4月統計で+4.0%とまだ高止まりしています。昨年2024年12月から5か月連続での+4%台の上昇です。他方、本日公表された企業向けサービス物価指数(SPPI)は、指数水準としてコンスタントに上昇を続けている一方で、国内企業物価指数ほど上昇率=傾きが大きくないのが見て取れます。企業向けサービス価格指数(SPPI)のヘッドラインの前年同月比上昇率は、今年2025年1月に+3.5%の直近での上昇率のピークを記録してから、本日公表の2025年4月まで徐々に上昇率を縮小させていますが、まだ+3%台の上昇率を続けています。2024年10月からカウントしても7か月連続の+3%台の上昇率です。日銀物価目標の+2%を大きく上回って高止まりしているわけです。もちろん、日銀の物価目標+2%は消費者物価指数(CPI)のうち生鮮食品を除いた総合で定義されるコアCPIの上昇率ですから、本日公表の企業向けサービス価格指数(SPPI)とは指数を構成する品目もウェイトも大きく異なるものの、+3%近傍の上昇率はデフレに慣れきった国民や企業のマインドからすれば、かなり高い物価上昇と映っている可能性が高いと考えるべきです。人件費投入比率で分類した上昇率の違いをプロットした一番下のパネルを見ても、低人件費比率と高人件費比率のサービスの違いに大きな差はなく、人件費をはじめとして幅広くコストが価格に転嫁されている印象です。その意味では、政府や日銀のいう物価と賃金の好循環が実現しているともいえますが、実態としては、物価上昇が賃金上昇を上回っており、国民生活が実質ベースで苦しくなっているのは事実であるといわざるをえません。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて2月統計のヘッドラインSPPI上昇率+3.1%への寄与度で見ると、宿泊サービスや機械修理や土木建築サービスなどの諸サービスが+1.62%ともっとも大きな寄与を示していて、ヘッドライン上昇率の半分超を占めています。諸サービスのうち、引用した記事にもあるように、宿泊サービスは3月の+11.0%の上昇から4月には+17.2%になり、インバウンド需要もあって引き続き2ケタ上昇が続いています。加えて、ソフトウェア開発や情報処理・提供サービスやアクセスチャージなどといった情報通信が+0.52%、SPPI上昇率高止まりの背景となっている項目として、10月から郵便料金が値上げされた郵便・信書便、石油価格の影響が大きい道路貨物輸送さらに、サードパーティーロジスティクスなどの運輸・郵便が+0.46%、ほかに、不動産+0.23%、リース・レンタルも+0.09%、広告+0.07%などとなっています。
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