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2025年5月 9日 (金)

4か月ぶりにCI一致指数が悪化した3月の景気動向指数をどう見るか?

本日、内閣府から3月の景気動向指数が公表されています。統計のヘッドラインを見ると、CI先行指数は前月から▲0.5ポイント下降の107.7を示し、CI一致指数も▲1.3ポイント下降の116.0を記録しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから報道を引用すると以下の通りです。

景気一致指数3月は4カ月ぶりマイナス、部品工場事故による自動車減産響く
内閣府が9日公表した3月の景気動向指数速報(2020年=100)は、足元の景気を示す一致指数が前月比1.3ポイント低下の116.0と4カ月ぶりのマイナスとなった。自動車用ばね部品などを製造する中央発条(5992.T)の工場で3月に発生した爆発事故の影響で、自動車・同部品の生産・出荷が減少したため耐久財や鉱工業用生産財の出荷指数が下押しした。
一致指数を構成する景気指標のうち、投資財出荷指数や輸出数量指数もマイナス要因となった。コンベア出荷減や、アジア・米国向けの輸出減が響いた。
先行指数も前月比0.5ポイント低下の107.7と2カ月連続のマイナス。自動車や同部品の出荷減少により最終需要財在庫率指数が悪化したほか、マネーストックや消費者態度指数などが落ち込んだ。消費者態度指数は物価高により4カ月連続で前月比で悪化している。
一致指数から一定のルールで内閣府が決める基調判断は11カ月連続で「下げ止まりを示している」とした。

いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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3月統計のCI一致指数は4か月ぶりの悪化となりました。3か月後方移動平均は5か月ぶりの前月比マイナスを記録した一方で、7か月後方移動平均は8か月連続の上昇で、3月統計では+0.28ポイント改善しています。しかし、統計作成官庁である内閣府では基調判断は、今月も「下げ止まり」で据え置いています。引用した記事にもある通り、5月に変更されてから11か月連続で同じ基調判断の据置きです。なお、細かい点ながら、上方や下方への局面変化は7か月後方移動平均という長めのラグを考慮した判断基準なのですが、改善からの足踏み、あるいは、悪化からの下げ止まりは3か月後方移動平均で判断されます。ただ、「局面変化」は当該月に景気の山や谷があったことを示すわけではなく、景気の山や谷が「それ以前の数か月にあった可能性が高い」ことを示しているに過ぎない、という点は注意が必要です。いずれにせよ、私は従来から、米国経済がソフトランディングに成功するとすれば、そう簡単には日本経済が景気後退局面に入ることはないと考えていて、それはそれで正しいと今でも変わりありませんが、米国経済に関する前提が崩れつつある印象で、米国経済が年内にリセッションに入る可能性はかなり高まってきていると考えています。理由は、ほかのエコノミストとたぶん同じでトランプ政権が乱発している関税政策です。関税率引上げによって、米国経済においてインフレの加速と消費者心理の悪化の両面から消費を大きく押し下げる効果が強いと考えています。加えて、日本経済はすでに景気回復・拡大局面の後半に入っている点は忘れるべきではありませんし、多くのエコノミストが円高を展望して待ち望んでいる金融引締めの経済へ影響は明らかにネガであり、引き続き、注視する必要があるのは当然です。
CI一致指数を構成する系列を前月差に対する寄与度に従って詳しく見ると、引用したロイターの記事にもあるように出荷関係が下押ししており、耐久消費財出荷指数▲0.70ポイント、鉱工業用生産財出荷指数▲0.60ポイント、投資財出荷指数(除輸送機械)▲0.34ポイント、輸出数量指数▲0.32ポイント、などであり、他方、逆に前月差プラスとなったのは、有効求人倍率(除学卒)+0.32ポイント、商業販売額(小売業)(前年同月比)+0.23ポイント、などでした。ついでに、引用した記事にありますので、CI先行指数の下げ要因も数字を上げておくと、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)▲0.50ポイント、マネーストック(M2)(前年同月比)▲0.35ポイント、消費者態度指数▲0.34ポイント、などとなっています。

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