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2025年5月13日 (火)

今週金曜日に公表予定の1-3月期GDP統計速報1次QEは小幅なマイナス成長か?

必要な統計がほぼ出そろって、今週金曜日5月16日に、1~3月期GDP統計速報1次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。ということで、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下のテーブルの通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、GDP統計の期間である1~3月期ではなく、足元の4~6月期から先行きの景気動向を重視して拾おうとしています。基本的に、トランプ関税の経済的な影響などもあって、多くのシンクタンクが先行き経済について言及しています。例外は三菱UFJリサーチ&コンサルティングと農林中金総研くらいで、とくに、大和総研とみずほリサーチ&テクノロジーズのリポートでは詳細に分析していますので、長々と引用してあります。いずれにせよ、1次情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研▲0.1%
(▲0.3%)
4~6月期の実質GDPもマイナス成長を予想。食料品を中心に物価の騰勢が鈍化することで、個人消費は底堅く推移するものの、米国政府の関税引き上げを受けて、米国向けを中心に輸出が大きく減少。1~3月期の反動で機械投資も減少に転じる見込み。
大和総研+0.1%
(+0.5%)
2025年4-6月期の日本経済は、おおむね横ばいで推移すると見込んでいる。設備投資には 1-3月期まで2四半期連続で増加した反動が表れる一方で、所得環境の継続的な改善が個人消費の回復を後押しするとみられる。トランプ関税の発動を受けて財輸出は減少に転じ、輸出は横ばい圏で推移しよう。
個人消費は、増加が続くと予想する。前年に続き2025年春闘でも高水準の賃上げが実施され、その効果が一部表れることなどから、所得環境の改善が進むと見込んでいる。日本労働組合総連合会(連合)が4月17日に公表した第4回回答集計結果では、定期昇給相当込みの賃上げ率(加重平均)が5.37%と、前年同時期(5.20%)を上回った。例年、7月初めに公表される最終回答集計にかけて下方修正される傾向にはあるものの、賃上げ率は前年(5.10%)を上回り、5%台前半で着地する公算が大きい。また、5 月 22 日から実施される物価高対策(10 円/リットルのガソリン・軽油補助金、5 円/リットルの重油・灯油補助金)は物価上昇を抑制し、実質賃金を押し上げよう。
住宅投資は、住宅価格の高騰で需要が下押しされる展開が続く一方、1-3月期に着工が上振れした影響が引き続き反映されるとみられ、横ばい圏で推移しよう。
設備投資は、1-3月期まで2四半期連続で増加した反動や、トランプ関税の発動などによる先行き不透明感の強まりから減少に転じると予想する。
トランプ大統領は2月4日に中国に追加関税を課したのを手始めに、鉄鋼・自動車などへの品目別関税や57カ国・地域に対する相互関税を立て続けに導入してきた。今後も半導体などへの追加関税が予想されるほか、対米交渉の展開次第では、国・地域別の関税率が引き上げられる恐れもある。日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(日銀短観)の3月調査で2025年度の設備投資計画(全規模全産業、除く土地、含むソフトウェア・研究開発)が前年度比+2.2%と、前年同月調査(2024 年度計画で同+4.5%)を下回ったのもトランプ関税への警戒感が背景にあるとみられ、企業マインド・収益悪化に伴う設備投資の下振れリスクには注意を要する。
公共投資は、横ばい圏で推移すると予想する。前述した資材価格の高騰や建設業の人手不足が引き続き重しとなりそうだ。政府消費は、高齢化に伴う医療費増などにより増加を続けよう。
輸出は、横ばい圏で推移すると見込んでいる。財輸出はトランプ関税の発動を受けて減少に転じる一方、サービス輸出は、業務サービスが増加基調に復することなどから堅調に推移しよう。
みずほリサーチ&テクノロジーズ▲0.5%
(▲2.1%)
4~6月期の経済活動については、米国のトランプ政権による関税政策が下振れ材料となる。トランプ政権は、4月2日に世界各国からの輸入品に対する「相互関税」を発表し、全ての貿易相手国からの輸入品に対して一律10%、対米貿易黒字額が大きい国に対して20%~50%の追加関税を導入後、90日間の猶予期間を設定し、中国以外の国々の関税率を10%に引き下げた。一方、報復した中国に対しては追加関税を125%に引き上げたほか、一部品目(鉄鋼・アルミニウム、自動車)には個別の関税(25%)を導入している。
25%の追加関税が課せられる自動車関連を中心に当面は対米輸出が減少することは避けられないだろう。一律関税10%が課される品目についても輸出が一定程度下押しされるとみられるほか、一連の関税措置による世界経済の下振れにより、米国・中国を中心に幅広い国・地域への輸出に下押し圧力が生じる可能性が高い(特に、米国では企業マインド関連指標が悪化するなど、スタグフレーションへの懸念が強まっている状況だ)。現時点で、4~6月期は輸出や生産等が下押しされることで2期連続のマイナス成長になる可能性が高いとみている。
今後の日米交渉の動向に注目する必要があるが、日本に対して24%の相互関税が課せられた場合、みずほリサーチ&テクノロジーズによる機械的な試算では、関税率引き上げ・海外経済減速でGDPが▲0.9%Pt程度下押しされることが見込まれる(関税上昇による米国向け輸出の減少を通じた直接的なGDP下押し影響は▲0.64%Pt、海外経済の下振れに伴う間接的なGDP下押し影響は▲0.22%Pt)。主力産業の輸送用機器、設備機械、電気・電子機器、化学製品のほか、輸送需要減に伴う水上輸送に対して大きな負の影響が見込まれる。あくまで機械的な試算であり幅をもってみる必要があるが、2025年度のGDP成長率がゼロ近傍まで低下する可能性も否定できない計算となる。
一方、今後の交渉を経て関税率の引上げ幅が縮小されれば、日本経済は深刻な景気後退を回避できる公算が高まる(足元のトランプ政権の動向を踏まえると、相互関税については一定程度の譲歩が行われる可能性が高まっている印象だ)。その場合、2025年度の企業収益は原油安・円高進展がプラスに働く非製造業を中心に高水準を維持できる公算が大きくなり、2026年の春闘賃上げ率も(2025年対比では鈍化するものの)人手不足が継続する状況も相まって高めの伸びを維持する可能性が高まるだろう。日本銀行も(当面は様子見姿勢とみられるが)2025年度中に追加利上げを実施する可能性も高まると考えられる。引き続き、日米交渉やトランプ政権の政策の動向に注目したい。
ニッセイ基礎研▲0.2%
(▲0.9%)
4-6月期は米国の関税引き上げに伴い輸出、国内生産が大きく下押しされることは不可避と考えられる。国内需要の回復が緩やかにとどまる中で輸出が減少することから、現時点では4-6月期は2四半期連続のマイナス成長になると予想している。
第一生命経済研▲0.3%
(▲1.1%)
4-6月期以降はトランプ関税の悪影響が徐々に顕在化することが予想される。現状、景気腰折れまではメインシナリオとして予想してはいないものの、関税問題による下押し度合い次第では景気後退局面入りとなる可能性も否定できない状況である。
伊藤忠総研+0.1%
(+0.5%)
続く4~6月期も、トランプ関税の影響が本格化し輸出が下押しされるため、低成長が見込まれる。個人消費は高い賃上げの実現と円安・エネルギー高の修正による物価上昇の鈍化で伸びを高めるものの、純輸出(輸出-輸入)のマイナス寄与が続き、設備投資は先行きの不透明感から増勢加速を期待できない。その結果、景気の停滞感がより強まろう。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲0.1%
(▲0.2%)
2025年1~3月期の実質GDP成長率(1次速報値)は、前期比-0.1%(前期比年率換算-0.2%)と予想される。
明治安田総研▲0.0%
(▲0.2%)
先行きの日本経済は基本的に緩慢な回復が続くとみているが、トランプ政権の経済政策運営がリスクとなる。現在、相互関税は90日間の猶予期間に入っているが、自動車と鉄鋼・アルミについてはすでに関税が賦課されている。日米交渉の行方次第ではあるものの、今後は自動車を中心に生産や米国向け輸出の低迷が予想される。設備投資に関しては、省力化投資は底堅く推移するとみるが、外需の低迷が抑制要因になると見込まれる。また、住宅投資は、住宅価格の高止まりと住宅ローン金利の先高観が足枷となり、軟調な推移が続くとみる。個人消費は、今年の春闘で高水準の賃上げ率が見込まれるものの、食品を中心とする物価高が下押し要因になることで緩やかな回復にとどまると予想する。

はい。シンクタンクの間でも見方が分かれました。ゼロ近傍であろうという緩やかなコンセンサスはあるようにも見えますが、みずほリサーチ&テクノロジーズのように大きなマイナス成長を見込んでいるシンクタンクもあります。さらに、先行き見通しについても、春闘賃上げ率が高率となることから個人消費を中心にした内需は堅調に推移することが見込まれる一方で、米国の関税政策次第では輸出が停滞する可能性が高く、差し引きで、小幅なマイナス成長が続いて、2四半期連続のマイナス成長を私自身は予測していますし、私の直感に近いシンクタンクも少なくないものと考えています。ただ、あまりにも先行きの不確定要因が多い、というか、不透明なもので、何とも見通しが立てにくいことはいうまでもありません。
最後に、下のグラフは日本総研のリポートから引用しています。

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