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2025年5月12日 (月)

大きく悪化した4月の景気ウォッチャーと大きな黒字を計上した3月の経常収支

本日、内閣府から4月の景気ウォッチャーが、また、財務省から3月の経常収支が、それぞれ、公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲2.5ポイント低下の42.6、先行き判断DIも▲2.5ポイント低下の42.7を記録しています。経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+3兆6781億円の黒字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから引用すると以下の通りです。

街角景気4月は2.5ポイント低下、「このところ回復に弱さみられる」へ下方修正
内閣府が12日に発表した4月の景気ウオッチャー調査で現状判断DIは42.6となり、前月から2.5ポイント低下した。米国の関税措置による悪影響が強く意識されている。4カ月連続で低下し、2022年2月(37.4)以来の低水準となった。ウオッチャーの見方は「このところ回復に弱さがみられる」に下方修正された。
指数を構成する3部門の全てがマイナスとなった。家計動向関連が前月から2.8ポイント、企業動向関連が1.7ポイント、雇用関連が1.9ポイントそれぞれ低下した。
2-3カ月先の景気の先行きに対する判断DIは、前月から2.5ポイント低下の42.7。5カ月連続で低下し、21年4月(41.8)以来の低水準となった。内閣府は先行きについて「賃上げへの期待がある一方、従前からみられる価格上昇の影響に加え、米国の通商政策の影響への懸念が強まっている」と表現を変更した。
調査期間は4月25日から30日。トランプ米政権の一連の関税措置の内容が明らかになった後に行われた。
米国は4月3日、輸入自動車に25%の追加関税を発動した。同5日、貿易相手国に「相互関税」の基本関税10%、同9日に国・地域ごとに設定した上乗せ分をそれぞれ発動した。その後、上乗せ部分については90日間の一時停止を発表した。
経常黒字、3月として過去最大、所得収支・貿易黒字がけん引=財務省
財務省が12日発表した国際収支状況速報によると、3月の経常収支は3兆6781億円の黒字だった。対外投資からの収益と貿易黒字が増加し、3月としては過去最大の黒字。ロイターが民間調査機関に行った事前調査の予測中央値は3兆6780億円程度の黒字だった。
比較可能な1985年以降で過去最大の経常黒字となった2月からはやや縮小したものの、海外保有資産からの収入を示す第1次所得収支に支えられ、前年同月比で黒字幅を拡大した。自動車や半導体等製造装置の輸出増などで貿易収支も5165億円の黒字と黒字幅を拡大し、サービス収支の192億円の赤字を相殺した。貿易・サービス収支は全体で4973億円の黒字だった。
第1次所得収支は前年同月から3129億円増えて3兆9202億円の黒字、第2次所得収支は1209億円減って7394億円の赤字だった。
米国が6日に発表した3月貿易収支は関税政策の駆け込み需要で過去最大の赤字だったが、財務省担当者は日本の貿易黒字が増加した要因について「判然としないためコメントしない」とした。
旅行収支は、堅調なインバウンド(訪日外国人)の伸長に支えられ、5561億円の黒字と、前年同月の4568億円から拡大した。
2024年度の経常収支は30兆3771億円と過去最大の黒字だった。第一次所得収支が41兆7114億円と過去最大の黒字、旅行収支も過去最大の黒字だった。

長くなりましたが、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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景気ウォッチャーの現状判断DIは、最近では2月統計で前月から大きく▲3.0ポイント低下して45.6となった後、3月統計でも▲0.5ポイント低下の45.1、本日公表の4月統計ではさらに▲2.5ポイント低下して42.6を記録しています。先行き判断DIも同様に大きな低下を見せており、4月統計は前月から▲2.5ポイント低下の42.7となっています。現状判断DIをより詳しく前月差で見ると、家計動向関連のうちの住宅関連が▲3.8ポイント、小売関連が▲3.5ポイント、サービス関連が▲1.7ポイント、それぞれ低下した一方で、飲食関連は+0.5ポイントの上昇と、わずかながら改善を見せています。基本的には物価上昇、特に食料の価格高騰の影響が家計関連のマインドに出ていたのですが、引用した記事にもあるように、調査時期から類推して、米国の関税政策の動向も影響している可能性があります。それにしても、コメ価格の高騰が大きな影響を及ぼしていると私は考えているのですが、1月統計から2月統計にかけて▲4.8ポイントの大きな低下を示した後、3月統計では+0.4ポイント、本日公表の4月統計でも+0.5ポイントの上昇を記録しています。謎です。また、住宅関連が4月統計で大きく低下しており、価格上昇に加えて、どこまで金利上昇が影響しているのか、やや気になるところです。企業動向関連については、現状判断DI、先行き判断DIともに製造業・非製造業どちらも前月差マイナスながら、製造業の先行き判断DIが前月から▲7.1ポイントの大きな低下を見せているのは、明らかに米国の関税政策の影響であると考えるべきです。統計作成官庁である内閣府では基調判断を「景気は、緩やかな回復基調が続いているものの、このところ弱さがみられる。」から「景気は、このところ回復に弱さがみられる。」と、先月から明確に1ノッチ下方修正しています。国際面での米国の通商政策とともに、国内では価格上昇の懸念は大いに残っていて、今後の動向が懸念されるところです。また、内閣府の調査結果の中から、家計動向関連に着目すると、小売関連では「食品価格などの値上げが続き、買い控えや選択消費の傾向がみられる (近畿=スーパー)。」といったものが目につきました。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。季節調整していない原系列の統計では、引用した記事にもあるように、貿易・サービス収支が+4973億円の黒字を計上したようです。ただし、私が注目している季節調整済みの系列に着目すると、2024年12月に2023年10月以来の黒字を計上した後、今年に入って、2025年1月、2月は赤字に戻っています。直近でデータが利用可能な3月は速報段階で▲5685億円の赤字を計上しています。さらに、引用した記事にもある通り、日本の経常収支は第1次所得収支が巨大な黒字を計上していますので、貿易・サービス収支が赤字であっても経常収支が赤字となることはほぼほぼ考えられません。はい。トランプ関税によって貿易収支の赤字が拡大したとしても、第1次所得収支で十分カバーできると考えるべきです。ですので、経常収支にせよ、貿易収支・サービスにせよ、たとえ赤字であっても何ら悲観する必要はありません。エネルギーや資源に乏しい日本では消費や生産のために必要な輸入をためらうことなく、経常収支や貿易収支が赤字であっても何の問題もない、逆に、経常黒字が大きくても特段めでたいわけでもない、と私は考えています。ただ、米国の関税政策の影響でやたらと変動幅が大きくなるのは避けた方がいいのは事実です。

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