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2025年5月23日 (金)

2か月連続で上昇率が加速した4月の消費者物価指数(CPI)

本日、総務省統計局から4月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の前年同月比で見て、前月の+3.2%からさらに加速して+3.5%を記録しています。まだまだ+3%台のインフレが続いています。日銀の物価目標である+2%以上の上昇は2022年4月から37か月、すなわち、3年余り続いています。ヘッドライン上昇率も+3.6%に達しており、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率も+3.0%と高止まりしています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価指数、4月3.5%上昇 コメ類98.4%と過去最大の伸び
総務省が23日発表した4月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合が110.9となり、前年同月と比べて3.5%上昇した。3月の3.2%を上回り、2カ月連続で伸び率が拡大した。食料品の値上げなどが影響した。
3%台の上昇率は5カ月連続で、上昇は44カ月連続となった。QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は3.4%の上昇だった。
コメ類は98.4%上昇し、比較可能な1971年1月以降で最大の上げ幅となった。7カ月連続で過去最大の伸びを更新した。外食のすしは5.0%、おにぎりは18.1%それぞれ上がった。
4月は食品の値上げも目立った。アルコール大手各社が価格を引き上げたことで、ビールは4.6%のプラスだった。ビール風アルコール飲料は5.6%の上昇となった。
エネルギー全体は9.3%上昇と3月の6.6%から上昇幅が拡大した。内訳を見ると電気代は13.5%(3月は8.7%)、都市ガス代は4.7%(同2.0%)それぞれ上がった。ガソリンは6.6%上昇した。3月は6.0%のプラスだった。
授業料は9.5%下落した。内訳をみると、公立の高等学校授業料は94.1%、私立は10.6%それぞれ下がった。25年度からの高校無償化の対象拡大が押し下げに寄与した。

何といっても、現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やたらと長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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引用した記事には、2パラめにあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+3.4%、ロイターの記事「全国コアCPI4月は+3.5%に加速、エネルギーや食品がけん引」でも+3.4%ということでしたので、実績の+3.5%の上昇率はやや上振れた印象です。また、エネルギー関連の価格については、政府の「電気・ガス料金負担軽減支援事業」による押下げ効果が含まれています。総務省統計局の公表資料によれば、ヘッドラインCPI上昇率への寄与度は▲0.17%、うち、電気代が▲0.15%、都市ガス代が▲0.03%との試算値が示されています。続いて、品目別に消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率とヘッドライン上昇率に対する寄与度を少し詳しく見ると、まず、食料価格の上昇が引き続き大きくなっています。すなわち、先月3月統計では生鮮食品を除く食料の上昇率が前年同月比+6.2%、ヘッドラインCPI上昇率に対する寄与度+1.49%であったのが、4月統計ではそれぞれ+7.0%、+1.68%と、一段と高い上昇率と寄与度を示しています。寄与度差は+0.19%ポイントあります。他方で、エネルギー価格も上昇しています。すなわち、エネルギー価格については3月統計で+6.6%の上昇率、寄与度+0.50%でしたが、本日公表の4月統計では上昇率+9.3%とさらに高い上昇率を示し、寄与度も+0.71%となっています。寄与度差は+0.21%ポイントあり、生鮮食品を除く食料とエネルギーだけで4月の上昇率を+0.4%ポイント押し上げたことになります。特に、食料の中で上昇率が大きいのはコメであり、生鮮食品を除く食料の寄与度+1.68%のうち、コシヒカリを除くうるち米だけで寄与度は+0.37%に達しています。また、電気代も高騰を続けており、3月統計の+8.7%の上昇から、4月はとうとう2ケタの+13.5%になりました。
多くのエコノミストが注目している食料の細かい内訳について、前年同月比上昇率とヘッドラインCPI上昇率に対する寄与度で見ると、繰り返しになりますが、生鮮食品を除く食料が上昇率+7.0%、寄与度+1.68%に上ります。その食料の中で、これも繰り返しになりますが、コシヒカリを除くうるち米が+98.6%の上昇とほぼ2倍に値上がりしていて、寄与度も+0.37%あります。価格だけでなく、量も大いに不足しているように見受けられ、そもそも、スーパーなどの店頭で見かけなくなった気すらします。うるち米を含む穀類全体の寄与度は+0.63%に上ります。さすがに、農林水産省から備蓄米が放出されているのですが、現時点で価格の安定は見られません。下のグラフの通りです。主食のコメに加えて、カカオショックとも呼ばれたチョコレートなどの菓子類も上昇率+7.7%、寄与度+0.20%を示しており、コメ値上がりの余波を受けたおにぎりなどの調理食品が上昇率+5.3%、寄与度+0.20%、同様に外食も上昇率+4.1%、寄与度+0.20%と、それぞれ大きな価格高騰を見せています。ほかの食料でも、豚肉などの肉類が上昇率+5.0%、寄与度+0.13%、コーヒー豆などの飲料も上昇率+6.7%、寄与度0.12%、などなどと書き出せばキリがないほどです。何といっても、食料は国民生活に欠かせない基礎的な物資であり、価格の安定を目指す政策を望むとともに、価格上昇を上回る賃上げを目指した春闘の成果を期待しています。
最後に、総務省統計局の小売物価統計を元にした農林水産省資料から引用した コメの小売価格 のグラフは以下の通りです。4月時点での5kg当たりのコシヒカリの小売価格は対前年同月比+100.1%の4,770円となっています。ご参考まで。

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