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2025年6月20日 (金)

コメ価格の上昇により5月の消費者物価指数(CPI)上昇率は再び加速

本日、総務省統計局から5月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の前年同月比で見て、前月の+3.5%からさらに加速して+3.7%を記録しています。まだまだ+3%台のインフレが続いています。日銀の物価目標である+2%以上の上昇は2022年4月から38か月、すなわち、3年余り続いています。ヘッドライン上昇率も+3.5%に達しており、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率も+3.3%と高止まりしています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

5月の消費者物価3.7%上昇 伸び拡大、コメは101.7%高
総務省が20日発表した5月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合が111.4となり、前年同月と比べて3.7%上昇した。4月の3.5%を上回り、3カ月連続で伸び率が拡大した。食料品の値上げなどが物価を押し上げた。コメ類の上昇幅は101.7%だった。
生鮮食品を除く総合の上昇幅は、直近でピークだった2023年1月以来、2年4カ月ぶりの大きさとなった。2%を上回るのは38カ月連続となる。QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は3.6%の上昇だった。
コメ類は101.7%上昇し、比較可能な1971年1月以降で最大の上げ幅となった。8カ月連続で過去最大を更新した。外食や調理食品にも波及し、外食のすしは6.3%、おにぎりは19.2%それぞれ上がった。
消費者物価指数で調べるコメは単一原料米で、ブレンド米を含まない。総務省によると、毎月同等の商品を調べられるよう全国の消費者が最も多く買っている商品を選択している。今回の調査期間は5月14~16日。
生鮮食品を除く食料は7.7%プラスで前月(7.0%)を上回った。品目別の上昇率をみると、チョコレートは27.1%だった。原材料価格の高騰で価格改定があったことが影響した。飲料はコーヒー豆が28.2%となった。主要原産国のブラジルが天候不良で出荷量が減少し、需給が逼迫した。
生鮮食品を含む総合は111.8で、前年同月と比べて3.5%上昇した。4月の3.6%から小幅になった。生鮮食品は0.1%下落で、4月(3.9%プラス)から大幅に下がった。キャベツは39.2%マイナスだった。4~5月の気候が生育に適しており、出荷が増えた。そのほかブロッコリー、ネギの価格が足元で下落した。
エネルギー価格は8.1%上がり、4月(9.3%)よりも伸び率が縮んだ。内訳は電気代が11.3%上がり、4月(13.5%)から伸びが鈍化した。再生可能エネルギーの普及を目的とした「再生可能エネルギー賦課金」が昨年5月に引き上げられ大幅に上昇した反動が出た。都市ガス代は6.3%プラスと、4月(4.7%)より伸びが拡大した。政府の電気・ガス代補助の終了を受けた値上げが影響した。

何といっても、現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やたらと長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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引用した記事には、2パラめにあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+3.6%ということでしたので、実績の+3.7%の上昇率はやや上振れた印象です。また、エネルギー関連の価格については、政府の「電気・ガス料金負担軽減支援事業」の終了に伴う値上げの影響が含まれています。続いて、品目別に消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率とヘッドライン上昇率に対する寄与度を少し詳しく見ると、まず、食料とエネルギー価格の上昇が引き続き大きくなっています。すなわち、先月4月統計では生鮮食品を除く食料の上昇率が前年同月比+7.0%、ヘッドラインCPI上昇率に対する寄与度+1.68%であったのが、5月統計ではそれぞれ+7.7%、+1.84%と、一段と高い上昇率と寄与度を示しています。寄与度差は+0.16%ポイントあります。他方で、エネルギー価格も上昇しています。すなわち、エネルギー価格については4月統計で+9.3%の上昇率、寄与度+0.71%でしたが、本日公表の5月統計でも上昇率+8.1%、寄与度+0.63%と高止まりしています。したがって、生鮮食品を除く食料とエネルギーだけで5月のヘッドラインCPI上昇率3.5%のうちの+2.5%ポイントほどを占めることになります。特に、食料の中で上昇率が大きいのはコメであり、生鮮食品を除く食料の寄与度+1.84%のうち、コシヒカリを除くうるち米だけで寄与度は+0.38%に達しています。上昇率は前年同月比で+101.0%ですから、昨年から2倍に値上げされている、ということになります。としても、また、電気代も高騰を続けており、4月統計の+13.5%の上昇に続いて、5月はも+11.3%の上昇と、2ケタ上昇が続いています。
多くのエコノミストが注目している食料の細かい内訳について、前年同月比上昇率とヘッドラインCPI上昇率に対する寄与度で見ると、繰り返しになりますが、生鮮食品を除く食料が上昇率+7.7%、寄与度+1.84%に上ります。その食料の中で、これも繰り返しになりますが、コシヒカリを除くうるち米が+101.0%の上昇と2倍超に値上がりしていて、寄与度も+0.38%あります。備蓄米が出回り始めたとはいえ、価格だけでなく量もまだ不足しているように見受けられ、そもそも、スーパーなどの店頭で見かけなくなった気すらします。うるち米を含む穀類全体の寄与度は+0.66%に上ります。コメ価格の推移は下のグラフの通りです。コメ値上がりの余波を受けたおにぎりなどの調理食品が上昇率+6.4%、寄与度+0.24%、同様にすしなどの外食も上昇率+4.4%、寄与度+0.21%を示しています。主食のコメに加えて、カカオショックとも呼ばれたチョコレートなどの菓子類も上昇率+7.4%、寄与度+0.20%に上っています。ほかの食料でも、豚肉などの肉類が上昇率+6.2%、寄与度+0.16%、コーヒー豆などの飲料も上昇率+7.1%、寄与度0.12%、などなどと書き出せばキリがないほどです。食料や電気は国民生活に欠かせない基礎的な財であり、国民生活安定緊急措置法の規定に基づいて政令を改正して「米穀の譲渡制限」、すなわち、転売を禁止しましたが、こういった価格の安定を目指す政策を推進するとともに、価格上昇を上回る賃上げを目指した春闘の成果を期待しています。
最後に、総務省統計局の小売物価統計を元にした農林水産省資料「小売物価(東京都区部)の推移(総務省小売物価統計)」から引用した コメの小売価格 のグラフは下の通りです。昨年2024年年央くらいまで長らく5キロで2000~2500円のレンジにあったのですが、最近時点では5000円に近づいており、コメの猛烈な価格上昇が見て取れると思います。

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