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2025年6月 4日 (水)

経済協力開発機構「OECD 経済見通し」OECD Economic Outlook やいかに?

日本時間の昨夜、経済開発協力機構(OECD)から 「OECD経済見通し」OECD Economic Outlook, volume 2025 issue 1OECD Economic Outlook が公表されています。副題は Tackling Uncertainty, Reviving Growth とされています。「不確実性に取り組み、成長を回復させる」といったところでしょうか。pdfの全文リポートもアップロードされています。ヘッドラインとなる世界経済の成長率見通しは、今年2025年が+2.9%、来年2026年も同じく+2.9%と見込まれています。今年2025年3月の最新の見通しでは、2025年+3.1%、2026年+3.0%でしたので、小幅に下方修正されたことになります。こういった国際機関のリポートに注目するのはこの私もブログの大きな特徴のひとつですので、プレスリリース資料からいくつか図表を引用知っつつ、簡単に取り上げおきたいと思います。

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まず、上のテーブルはプレスリリース資料から p.5 GDP growth projections - G20 economies を引用しています。繰り返しになりますが、ヘッドラインとなる世界経済の成長率見通しは、今年2025年が+2.9%、来年2026年も同じく+2.9%と見込まれていて、我が日本は2025年+0.7%、2026年+0.4%と予想されています。米国が2025年+1.6%、2026年+1.5%、そして、ユーロ圏欧州が2025年1.0%、2026年+1.2%ですから、先進国の中でも我が国は低い成長率にとどまるとの見立てです。

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続いて、上のテーブルはプレスリリース資料から p.7 Inflation projections を引用しています。2022年の露によるウクライナ侵攻を契機に始まった現在のインフレも、ようやく、来年2026年になると多くの国の中央銀行がインフレ目標としている+2%近傍にアンカーされるとの予想となっています。ただ、米国だけは2026年になっても+3%に近いインフレ率が見込まれていて、米国連邦準備制度理事会(FED)が金利の本格的な引き下げに舵を切るにはもう少し時間がかかりそうです。

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続いて、上のテーブルはプレスリリース資料から p.9 Further trade fragmentation will harm global growth を引用しています。成長率やインフレの見通しに基づいて、将来リスクをいくつか指摘していて、第1に、上のフラフにあるような通商政策による分断化の進行です。関税率の引上げ、関税政策に伴う家計の予備的貯蓄の増加、金融環境の悪化、そして、商品価格の低下をリスクとして指摘しています。ただ、日本のような資源輸入国では最後の商品価格の低下はむしろ成長促進要因となります。この通商政策リスクに加えて、医療・介護・年金などの社会保障への政府支出圧力の上昇による政府債務のサステイナビリティ、さらに、インフレ抑制のための金融引締めが低所得国の対外支払いを増加させる可能性などをリポートでは指摘しています。

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もちろん、こういった見通しやリスクに対して、貿易障壁の低減や財政のサステイナビリティの確保など、上のスライドにあるような政策対応を促しています。

最後に、こういった概括的な見通しに加えて、第2章では Reigniting investment for more resilient growth と題して、成長促進のための投資の重要性を指摘し、特に、the digital and knowledge-based economy に向けた投資促進の必要性を強調しています。下のグラフはプレスリリース資料から p.20 Investment has shifted towards the digital and knowledge-based economy を引用しています。ICT分野における我が国の投資の立遅れが明確に示されています。投資促進のために幅広いポリシーミックスが必要であるとして、競争促進政策、公共投資の増加、人材不足への対応、などを上げています。日本はどこまで遅れを取り戻せるでしょうか?

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