« 経済協力開発機構「OECD 経済見通し」OECD Economic Outlook やいかに? | トップページ | 先行指数が大きく下降した4月の景気動向指数 »

2025年6月 5日 (木)

来週公表予定の1-3月期GDP統計速報2次QEやいかに?

必要な統計がほぼ出そろって、来週月曜日6月9日に、1~3月期GDP統計速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。ということで、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下のテーブルの通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、GDP統計の期間である1~3月期ではなく、足元の4~6月期から先行きの景気動向を重視して拾おうとしています。ただし、いつものことながら、2次QEは法人企業統計のオマケデリポートされる場合も少なくなく、先行き経済について言及しているシンクタンクは多くありません。例外はみずほリサーチ&テクノロジーズと明治安田総研だけであり、特に前者は詳細に分析していますので長々と引用してあります。いずれにせよ、1次情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE▲0.2%
(▲0.7%)
n.a.
日本総研▲0.2%
(▲0.9%)
今般の法人企業統計などを織り込んで改定される2025年1~3月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資・公共投資ともに下方改定される見込み。この結果、成長率は前期比年率▲0.9%(前期比▲0.2%)と、1次QE(前期比年率▲0.7%、前期比▲0.2%)から小幅に下方改定されると予想。
大和総研▲0.2%
(▲0.8%)
2025年1-3月期のGDP2次速報(6月9日公表予定)では実質 GDP 成長率が前期比年率▲0.8%と、小幅ながら1次速報(同▲0.7%)から下方修正されると予想する。
みずほリサーチ&テクノロジーズ▲0.5%
(▲1.9%)
4~6月期以降の日本経済は、米国のトランプ政権による関税政策を受けて、25%の追加関税が課せられる自動車関連を中心に輸出や設備投資が下振れる公算が大きい。後述するように、4月時点では輸出・生産はトランプ関税による落ち込みは回避されているが、5~6月から7~9月期にかけて徐々に下振れ圧力が高まってくるだろう。当面は食料インフレの継続で、個人消費にも景気の牽引役を期待しにくく、4~6月期の実質GDPについては現時点ではゼロ成長近傍を予測しているが、テクニカルリセッション(2四半期連続のマイナス成長)に陥る可能性も否定できない状況だ。4月景気ウォッチャー調査をみても先行き判断DI(合計)は42.7Pt(前月差▲2.5Pt)に悪化しており、家計・企業ともに低下基調が継続している。家計動向関連では、物価高を受けて個人消費の低迷を懸念するコメントが目立つほか、企業動向関連では、トランプ関税の不透明感が設備投資を抑制する可能性を指摘する意見が散見される状況だ。
足元の個人消費の動向を確認すると、4月の実質小売業販売額は前月比+0.5%と一先ず下げ止まったとはいえ、低調な推移が継続している。5月の消費者態度指数をみても、株価が4月の落ち込みから回復するなど先行き不安が緩和したことから前月差+1.6ptと6カ月ぶりに上昇したものの、食料インフレを受けて暮らし向き等が3月の水準を下回り悪化基調が継続しており、4~6月期の個人消費は低調な推移が予想される。5月の東京都区部の消費者物価をみると生鮮除く食料の価格上昇が全体を押し上げる構図が継続しており、特に米類は前年比+93.7%(コアCPIへの寄与度は+0.46%Pt)と高値が続いている。帝国データバンク「「食品主要195社」価格改定動向調査」をみると、物流費や人件費等の価格転嫁を背景に飲食料品の値上げは2024年を大きく上回るペースで進展しており、米類を中心とした生活必需品の価格高騰が家計の節約志向を強める構図が続くだろう。なお、政府備蓄米の販売開始により家計の負担軽減効果が見込まれるものの、消費者物価の対象品目は単一原料米(コシヒカリorコシヒカリ以外)であり備蓄米を活用したブレンド米は対象外であることから消費者物価の押し下げ効果は限定的なものになる可能性が高い。備蓄米を活用したブレンド米が流通しつつある一方で足元の銘柄米の価格はなお高止まっており、需要シフトによる銘柄米の物価抑制効果は不透明である点に注意する必要がある。
一方、外需については、注目された4月の輸出数量指数(みずほリサーチ&テクノロジーズによる季節調整値)は前月比+0.9%と小幅に増加した。地域別にみると、米国向け輸出は数量ベースでは前月比+3.7%と増加した一方、金額ベースでみると減少しており、日本企業の一部では米関税対応の初動として(輸出数量の減少影響を緩和するため)輸出価格を引き下げる動きが出たとみられる。乗用車の輸出物価をみると、北米以外向けがほぼ横ばいである一方、北米向けは大幅に下落している点が目立つ。4月鉱工業生産をみても前月比▲0.9%と減産幅は小さく、現時点では、実需に合わせ日本企業が(現地販売価格が上がることを回避して)関税負担を負って輸出・生産を行っている可能性が高いと考えられる。しかし、輸出価格低下で関税コスト増をカバーすることは困難であることから、日系自動車メーカーでは6月入荷分からの値上げを決定する動きもみられるなど、現地販売価格の上昇は避けられない(5月のロイター企業調査によれば、トランプ関税による業績悪化懸念への対応として顧客への価格転嫁を挙げる日本企業は5割を超えている)。米国の自動車の在庫月数(3月分)は2か月程度であり、消費者が直面する販売価格が徐々に上昇することに伴う需要減により、先行きの対米輸出は弱含む公算が大きいとみている。一連の関税措置による世界経済の下振れに加え、米国市場から締め出された中国製品との第三国市場等における競争激化も輸出の逆風になるだろう。
ニッセイ基礎研▲0.1%
(▲0.5%)
6/9公表予定の25年1-3月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比▲0.1%(前期比年率▲0.5%)となり、1次速報の前期比▲0.2%(前期比年率▲0.7%)から小幅上方修正されると予想する。
第一生命経済研▲0.2%
(▲0.7%)
2025年1-3期実質GDP(2次速報)を前期比年率▲0.7%(前期比▲0.2%)と、1次速報から変化なしと予想する。設備投資が小幅下方修正されるとみられる一方、公共投資が上方修正されることで相殺される可能性が高い。需要項目別で見ても大きな変更はないとみられ、景気認識に修正をもたらす結果にはならないだろう。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲0.2%
(▲0.7%)
2025年1~3月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、1次速報値から微妙に下方修正されるが、全体の伸び率自体は前期比-0.2%(前期比年率換算-0.7%)から修正はない見込みである。このため、「景気は緩やかに持ち直している」との景気判断を修正する必要はないであろう。
三菱総研▲0.1%
(▲0.5%)
2025年1-3月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比▲0.1%(年率▲0.5%)と、1次速報値(同▲0.2%(年率▲0.7%))から小幅上方修正と予測する。
明治安田総研▲0.2%
(▲0.9%)
先行きの日本経済は基本的に緩慢な回復が続くというのがメインシナリオだが、あくまでトランプ政権の経済政策運営次第である。5月12日に米中の追加関税が互いに115%引き下げられたのは朗報だが、トランプ大統領は5月30日に鉄鋼・アルミニウムの関税を25%から50%に引き上げることを表明している。4度に及ぶ日本との交渉もまだ合意には至っておらず、依然として不確実性は高い。日米交渉で関税引き下げなどの進展があれば、景気への下押し圧力はある程度緩和される一方、上手くいかなければ、自動車を中心に生産や輸出の低迷が予想される。先行きが見通せないことから設備投資計画を見直す企業が増えることも考えられ、日本が景気後退に追い込まれる可能性も消えていない。

ということで、先月公表された1次QEから大きな変更はないものと予想されています。伸び率でいえば、2機関が1次QEから変更なく、季節調整済みの系列で前期比▲0.2%減、前期比年率▲0.7%減と見込んでいます。それから、上方改定が2機関、下方改定が4機関となります。ただし、下方改定されるとはいえ、マイナス成長で年率▲1.0%を超えると見込んでいるのはみずほリサーチ&テクノロジーズであり、ほかのシンクタンクでは下方改定されるとしても、1次QEの年率▲0.7%から0.1-0.2%ポイントマイナス幅が拡大するだけと予測しているようです。いずれにせよ、明記しているシンクタンクもありますが、景気判断に大きな変更を加える必要はないものと考えるべきです。また、足元の4~6月期から先行き見通しに関しては、何とも不透明としかいいようがありません。トランプ関税の詳細が未だに明らかではなく、したがって、我が国経済への影響についても測りかねるからです。ただ、現状で考える限り、私も含めた多くのエコノミストのコンセンサスは、今年後半から年末ころ、遅くとも来年早々に、日本経済は米国経済とともに景気後退に入る可能性が十分ある、というものだろうと思います。日米間の景気の山のズレはせいぜい1四半期ではないか、と私は見込んでいます。
最後に、下のグラフは明治安田総研のリポートから引用しています。仕上がりの姿が私の予想ともっともよく一致しています。

photo

|

« 経済協力開発機構「OECD 経済見通し」OECD Economic Outlook やいかに? | トップページ | 先行指数が大きく下降した4月の景気動向指数 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 経済協力開発機構「OECD 経済見通し」OECD Economic Outlook やいかに? | トップページ | 先行指数が大きく下降した4月の景気動向指数 »