1-3月期2次QEの上方修正から景気後退について考える
本日、内閣府から1~3月期GDP統計速報2次QEが公表されています。季節調整済みの系列で前期比▲0.0%減、年率換算で▲0.2%減を記録しています。マイナス成長は4四半期連続ぶりです。1次QEから上方改定されています。なお、GDPデフレータは季節調整していない原系列の前年同期比で+3.3%、国内需要デフレータも+2.7%に達し、2年8四半期連続のプラスとなっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
1-3月GDP改定値、年率0.2%減に上方修正 個人消費が上振れ
内閣府が9日発表した1~3月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値が前期比0.0%減、年率換算で0.2%減だった。5月発表の速報値(前期比0.2%減、年率0.7%減)から上方修正した。最新の経済指標を反映した結果、個人消費や民間在庫が上振れした。
マイナス成長は4四半期ぶり。QUICKが事前にまとめた民間予測の中心値(前期比0.2%減、年率0.7%減)を上回った。
項目別に見ると、GDPの過半を占める個人消費が速報値の前期比0.0%増から0.1%増に上振れした。サービス関連の最新の統計を反映した結果、外食などサービス、ゲームソフト・玩具の消費が堅調だった。
民間在庫の成長率への寄与度は速報値のプラス0.3ポイントから同0.6ポイントに上方修正した。最新統計を反映した結果、石油・天然ガスなどの原材料在庫が増えていた。
民間住宅は1.2%増から1.4%増となった。リフォーム需要の高まりなどが背景にある。
設備投資は前期比1.1%増と速報値の1.4%増から下方修正した。サービス産業の動態統計でソフトウエア関連の投資が振るわなかったことが影響した。
政府消費は速報値0.0%減を0.5%減に、公共投資は0.4%減を0.6%減にそれぞれ下方修正した。
輸出は速報値0.6%減を0.5%減に、輸入は2.9%増を3.0%増にそれぞれ修正した。海外需要の寄与度は変わらなかった。改定値で成長率のマイナス幅は縮小したものの、個人消費など内需が振るわない状況が続く。
2024年度の実質GDPは前年度比0.8%増で速報段階と同じだった。4年連続のプラス成長となった。
ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、内閣府のリンク先からお願いします。
です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした需要項目 | 2024/1-3 | 2024/4-6 | 2024/7-9 | 2024/10-12 | 2025/1-3 | |
1次QE | 2次QE | |||||
国内総生産 (GDP) | ▲0.3 | +1.0 | +0.2 | +0.6 | ▲0.2 | ▲0.0 |
民間消費 | ▲0.6 | +0.8 | +0.7 | +0.1 | +0.0 | +0.1 |
民間住宅 | ▲3.2 | +1.2 | +0.7 | ▲0.2 | +1.4 | +1.1 |
民間設備 | ▲0.7 | +1.3 | +0.1 | +0.6 | +1.4 | +1.1 |
民間在庫 * | (+0.2) | (+0.1) | (+0.1) | (▲0.3) | (+0.3) | (+0.6) |
公的需要 | ▲0.1 | +1.7 | ▲0.1 | ▲0.0 | +0.0 | ▲0.4 |
内需寄与度 * | (▲0.4) | (+1.2) | (+0.5) | (▲0.2) | (+0.7) | (+0.8) |
外需寄与度 * | (+0.1) | (▲0.3) | (▲0.3) | (+0.7) | (▲0.8) | (▲0.8) |
輸出 | ▲3.6 | +1.5 | +1.2 | +1.7 | ▲0.6 | ▲0.5 |
輸入 | ▲3.8 | +2.7 | +2.2 | ▲1.4 | +2.9 | +3.0 |
国内総所得 (GDI) | ▲0.4 | +1.3 | +0.2 | +0.7 | ▲0.3 | ▲0.1 |
国民総所得 (GNI) | ▲0.5 | +1.8 | +0.3 | +0.3 | +0.2 | +0.3 |
名目GDP | +0.1 | +2.4 | +0.5 | +1.1 | +0.8 | +0.9 |
雇用者報酬 | +0.5 | +0.8 | +0.4 | +1.4 | ▲1.3 | ▲1.2 |
GDPデフレータ | +3.1 | +3.1 | +2.4 | +2.3 | +3.3 | +3.3 |
内需デフレータ | +2.0 | +2.6 | +2.2 | +2.4 | +2.7 | +2.7 |
上のテーブルに加えて、需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、縦軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された1~3月期のGDP統計速報2次QEの最新データでは、前期比成長率が小幅ながらマイナス成長を示し、黒の純輸出が大きなマイナスの寄与度を、水色の設備投資が小幅なプラスの寄与を、灰色の在庫が大きなプラス寄与を、それぞれ示しているのが見て取れます。

繰り返しになりますが、先月5月16日に公表された1次QEでは季節調整済みの系列で前期比▲0.2%、前期比年率で▲0.7%のマイナス成長でしたが、本日の2次QEではそれぞれ▲0.0%、▲0.2%に上方修正されています。ですので、1次QEから大きな改定はなく、消費と設備投資と住宅投資が小幅に上方修正された一方で、在庫投資が大きく上昇改定されています。プラス寄与の内需に対して、外需のマイナス寄与の方がやや大きく、合わせてGDP成長率とし小幅なマイナス、という結果です。現在の景気認識に大きな変更を加えるべき統計ではない、と考えています。在庫のプラス寄与幅が拡大していますが、成長率を少し押し上げた一方で在庫調整の停滞でもありますので、決してめでたい話ではありません。ただし、ロイターのサイトなどでは在庫増は原油と報じられていますから、いわゆる売残りかどうかはビミョーです。なお、引用した記事にはありませんが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、1次QEと同じく前期比年率で△0.7%のマイナスでしたので、1次QEから上方修正という方向ながら、原油とはいえ在庫による上振れという点を加味すれば、大きなサプライズなく受け止められているのではないかと思います。
先行きの景気に関して、特に、景気後退の見通しについて簡単に付け加えておきたいと思います。2点あり、私は日本は米国とともに今年2025年終わりか来年2026年早々には景気後退局面に入る可能性が高いと考えています。まず、本日公表の1~3月期の成長率の上方改定が在庫の積増しであり、この在庫が調整されることを考えれば、足元の4~6月期は2四半期連続でマイナス成長を記録する可能性が十分あります。ただし、2四半期連続のマイナス成長というテクニカルな景気後退というだけで、その後はいったん持ち直す可能性も十分あると見ています。しかし、2025年末から2026年年始にかけて、米国経済とともに沈んでいく可能性が大きいと思います。ただし、第2に、景気後退ともなれば急激な景気の悪化が見られるのが通常であり、それ故に景気後退については回避できれるのであれば回避すべきという考えがエコノミストの間では強いのですが、直前のリーマン証券破綻後の金融危機とか、コロナのパンデミックとか、きわめて厳しい景気の悪化に比べれば、今回の景気後退局面はそれほどではない可能性も十分あるのではないか、と私は考えています。要するに、景気後退に陥る可能性は高いが、やたらと深刻な景気後退ではない可能性も十分ある、といったところです。

また、本日、内閣府から5月の景気ウォッチャーが公表されています。統計のヘッドラインを見ると、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+1.8ポイント上昇の44.4、先行き判断DIも+2.1ポイント上昇の44.8を記録しています。5か月ぶりの上昇であり、米国の関税政策への過度な懸念が和らいだと見られています。コメの備蓄米放出も効果あったような気がします。ただ、統計作成官庁である内閣府では、基調判断を「このところ回復に弱さがみられる」で据え置いています。

さらに、本日、財務省から4月の経常収支が公表されています。統計のヘッドラインを見ると、季節調整していない原系列の統計で+2兆2580億円の黒字を計上しています。3か月連続の黒字です。
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