1500億円を超える赤字を記録した6月の貿易統計
本日、財務省から6月の貿易統計が公表されています。貿易統計のヘッドラインを季節調整していない原系列で見ると、輸出額が前年同月比▲0.5%減の9兆1625億円に対して、輸入額は+0.2%増の9兆95億円、差引き貿易収支は▲1531億円の赤字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから最初の4パラだけ引用すると以下の通りです。
6月の米国への輸出額3カ月連続減 関税で車落ち込む
財務省が17日発表した6月の貿易統計速報によると、輸出額は前年同月に比べ0.5%減の9兆1625億円だった。米国向けが11.4%減の1兆7071億円と3カ月連続で減少した。自動車の輸出が落ち込んでおり、トランプ米政権の関税政策の影響が大きい。
米国向けの自動車輸出は台数が3.4%増、輸出額が26.7%減だった。日本車メーカーが関税の影響を和らげるため、価格を下げたり、低価格の車種を優先して輸出したりする傾向が続いたとみられる。
中国向けの輸出は4.7%減の1兆5513億円だった。非鉄金属や半導体製造装置、自動車などの輸出額が減った。欧州連合(EU)向けの輸出は3.6%増の8241億円で自動車の輸出額が増えた。
世界全体からの輸入額は9兆95億円と0.2%増えた。3カ月ぶりに増加した。アイルランドの医薬品や中国のスマートフォンなどの輸入が増えた。
包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。なお、5ぱらめめ以降は年半期の1~6月期の計数の報道ですので省略しています。続いて、貿易統計のグラフは下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

引用した記事にはありませんが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+3500億円余りの貿易黒字が見込まれていたところ、実績の▲1500億円を超える赤字はやや下振れした印象です。季節調整済みの系列でも、6月は▲2355億円の赤字を記録しています。いずれにせよ、私の主張は従来から変わりなく、輸入は国内の生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易収支や経常収支の赤字と黒字は何ら悲観する必要はない、と考えています。固定為替相場制度を取っていた1950-60年代の高度成長期のように、「国際収支の天井」を意識した政策運営は、現在の変動為替制度の下ではまったく必要なく、比較優位に基づいた貿易が実行されればいいと考えています。それよりも、米国のトランプ新大統領の関税政策による世界貿易のかく乱によって資源配分の最適化が損なわれる可能性の方がよほど懸念されます。すなわち、引用した記事のタイトルのように、トランプ関税で日本の輸出が減少して貿易収支が赤字の方向に振れることではなく、貿易を含めた資源配分の最適化ができなくなってしまう点が問題と考えるべきです。
本日公表された6月の貿易統計について、季節調整していない原系列の前年同月比により主要品目別に少し詳しく見ておくと、まず、輸入については、原油及び粗油が数量ベースで+12.3%増ながら、金額ベースで▲17.6%減となっています。石油価格が大きく下落している商品市況を反映しています。さらに、エネルギーよりも注目されている食料品は金額ベースで+3.3%増となっており、輸入総額の前年同月比伸び率が+0.2%増にとどまっている中で、高い伸びとなっています。特に、食料品のうちの穀物類は数量ベースで+11.5%増、金額ベースでは▲1.7%減となっています。原料品のうちの非鉄金属鉱は数量ベースで+38.8%増、金額ベースでも+4.7%増を記録しています。輸出に目を転ずると、輸送用機器のうちの自動車が数量ベースで+6.5%増となったものの、金額ベースでは▲7.3%減となっています。自動車輸出における数量ベース増の金額ベース減は明らかに、日本のメーカーあるいは輸出商社の方で関税分を負担して自動車価格に上乗せせず、販売台数の維持・拡大を図っていることを表していると考えるべきです。どこまでこういった関税負担がサステイナブルであるかは私には不明です。電気機器も金額ベースで▲3.2%減となっている一方で、一般機械が+1.7%増とプラスの伸びを示しています。輸出だけは国別の前年同月比もついでに見ておくと、中国向け輸出が前年同月比で▲4.7%減となったにもかかわらず、中国も含めたアジア向けの地域全体では+1.7%増の堅調な動きとなっています。他方で、米国向けは▲11.4%減と大きく落ち込んでいます。ただ、西欧向けは+12.6%増となっています。いうまでもありませんが、今後の輸出については、米国トランプ政権の関税政策による撹乱が懸念されます。
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