« 明後日10月1日公表予定の日銀短観予想 | トップページ | 大企業製造業の業況判断DIが2期連続で改善した9月調査の日銀短観 »

2025年9月30日 (火)

2か月連続の減産となった鉱工業生産指数(IIP)と42か月ぶりの前年比マイナスに転じた商業販売統計

本日は月末閣議日ということで、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、それぞれ公表されています。いずれも8月の統計です。IIPのヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲1.62%の減産でした。2か月連続の減産となります。商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比▲1.1%減:の12兆6830億円を示し、季節調整済み指数も前月から▲1.1%の低下となっています。まず、ロイターのサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産8月は1.2%低下、PCや建材減産で2カ月連続マイナス
経済産業省が30日発表した8月鉱工業生産指数速報は前月比1.2%低下した。ノートパソコンや建材需要減が響き2カ月連続のマイナス。生産の基調判断は「一進一退」で据え置いた。
ロイターの事前予測調査では同0.8%低下と予想されており、これを下回った。
企業の生産計画に基づく予測指数は9月が前月比4.1%上昇、10月が同1.2%上昇だった。
生産を下押しした主な業種は電気・情報通信機械工業や金属製品、無機・有機化学など。品目別ではノートパソコン(30.1%減)や外部記憶装置(35.1%減)などの減産が響いた。米マイクロソフト(MSFT.O)の基本ソフト「ウィンドウズ10」のサポート終了に伴う買い替え需要の反動が影響した可能性がある。
このほかフェノールが48.3%減、アルミサッシなどのアルミニウム製建具は13.4%減、鉄骨・軽量鉄骨12.7%減だった。
一方、航空機用発動部品は前月比46.4%増、自動車工業6.5%増、電子部品・デバイス32.8%増だった。米国の「トランプ関税」などの影響で「8月の自動車輸出は低下方向だったが、生産と輸出にはタイムラグがある」としている。
小売販売、8月は予想外の前年比1.1%減 42カ月ぶりマイナス
経産省が30日公表した8月の商業動態統計速報によると、小売販売額は前年比1.1%減の12兆6830億円で、2022年2月以来42カ月ぶりのマイナスとなった。自動車や通信販売、ガソリンの販売減が下押しした。ロイターの事前予測調査では1.0%増が予想されていた。
業種別では自動車が前年比7.9%減、ガソリン価格の下落が影響した燃料が同7.2%減。インターネット通販などの無店舗小売りは7.3%減となったが、「原因は特定できていない」(経産省)という。
一方、家電などの機械器具、ドラッグストアなどの医薬品、織物・衣服は前年比プラスだった。
業態別では、スーパーが前年比3.6%増、百貨店2.4%増、コンビニ3.3%増、家電大型専門店5.4%増だった。ドラッグストアも、コメなどの食品や調剤医薬品が伸び3.3%増。ホームセンターは3.5%減だった。

ふたつの統計をまとめて取り上げましたので、とてつもなく長くなりましたが、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2020年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

photo

まず、引用した記事には、ロイターによる事前予測調査として▲0.8%の減産が言及されていますが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、まったく同様に▲0.8%の減産が予想されていました。いずれにせよ、実績である▲1.2%減は市場予想からやや下振れした印象です。ただし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスのレンジ下限が▲1.5%でしたので、大きなサプライズというわけではありませんでした。ですので、だからかどうかは不明ながら、統計作成官庁である経済産業省では生産の基調判断については、「一進一退」で据え置いています。昨年2024年7月から1年余り連続で据え置かれています。先行きについては記事にもある通り、製造工業生産予測指数を見ると、足下の9月は補正なしで+4.1%の増産、翌10月も+1.2%の増産となっています。上方バイアスを除去した補正後では、9月の生産は+2.3%の増産と試算されています。
経済産業省の解説サイトによれば、8月統計における生産は、減産方向に寄与したのが、電気・情報通信機械工業が前月比▲5.7%減で△0.48%の寄与度、金属製品工業が▲7.8%減で▲0.33%の寄与度、無機・有機化学工業が▲5.2%減で△0.22%の寄与度、などとなっています。他方、増産方向に寄与したのは輸送機械工業(除、自動車工業)が前月比+20.0%増で+0.51%の寄与度、自動車工業が+2.5%増で+0.31%の寄与度、電子部品・デバイス工業が+0.4%増で+0.02%の寄与度、などとなっています。次に取り上げる商業販売統計とともに、引用した記事にあるように、Windows10のサポート終了に伴う減産が目立っている印象です。いくぶんなりとも、先月の反動があるんでしょうね。

photo

続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整済みの2020年=100となる指数をプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。小売業販売のヘッドラインは季節調整していない原系列の前年同月比で見るのがエコノミストの間での慣例なのですが、見れば明らかな通り、伸び率はとうとう▲1.1%と42か月ぶりのマイナスを記録しています。しかも、というか、何というか、すでに停滞感が明らかとなっていた季節調整済みの系列でも、本日公表の8月統計では猛暑による外出手控えなどの気候の効果があると考えられるものの、▲1.1%減のマイナスとなりました。引用した記事にある通り、伸びているのは家電などの機械器具、医薬品、織物・衣服となっており、これらは前年比プラスです。ただ、統計作成官庁である経済産業省では基調判断について、季節調整済み指数の後方3か月移動平均により機械的に判断していて、本日公表の8月統計までの3か月後方移動平均の前月比が▲0.6%の低下となりましたので、5月統計で下方修正した「一進一退」のまま据え置いています。加えて、参考まで、消費者物価指数(CPI)との関係では、8月統計ではヘッドライン上昇率が+2.7%、生鮮食品を除く総合のコアCPI上昇率でも同じく+2.7%となっていますので、前年同月比マイナスだった8月統計の実質消費はマイナスであることがほぼほぼ確実と考えるべきです。さらに考慮しておくべき点は、国内需要ではなく海外からのインバウンド観光客により、部分的なりとも小売業販売額の伸びが支えられている可能性です。このインバウンド消費を考え合わせると、国内消費の実態は本日の統計に示された小売業販売額のマイナス以上のマイナスとなっている可能性は考慮しておかねばなりません。

|

« 明後日10月1日公表予定の日銀短観予想 | トップページ | 大企業製造業の業況判断DIが2期連続で改善した9月調査の日銀短観 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 明後日10月1日公表予定の日銀短観予想 | トップページ | 大企業製造業の業況判断DIが2期連続で改善した9月調査の日銀短観 »