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2025年10月10日 (金)

高い上昇率が続く9月の企業物価指数(PPI)

本日、日銀から9月の企業物価 (PPI) が公表されています。統計のヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で+2.7%の上昇となり、3月+4.3%、4月+3.9%、5月の+3.1%、6月+2.7%、7月+2.5%と7月まで上昇率が減速していましたが、8月統計では再び加速を見せて+2.7%、9月も上昇率としては前月8月から横ばいで+2.7%を記録しており、高い伸びが続いています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業物価指数、9月2.7%上昇 伸び率は横ばい
日銀が10日発表した9月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は126.9と前年同月と比べて2.7%上昇した。伸び率は8月(2.7%上昇)から横ばいだった。非鉄金属の伸び率が拡大した一方、コメなどの農林水産物の上昇率が縮小した。民間予測の中央値(2.5%上昇)より0.2ポイント上振れした。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。サービス価格の動向を示す企業向けサービス価格指数とともに消費者物価指数(CPI)に影響を与える。
農林水産物は前年同月と比べて30.5%上昇し、伸び率は8月(41.0%上昇)から低下した。非鉄金属は9.6%上昇し、伸び率は8月(6.2%上昇)から拡大した。銅や金などの価格上昇が影響した。
日銀が公表している515品目のうち、価格が上昇したのは373品目、下落したのは121品目だった。21品目では価格が変わらなかった。

インフレ動向が注目される中で、長くなってしまいましたが、いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価指数(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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ヘッドラインとなる国内企業物価の前年同月比上昇率について、引用した記事には民間予測の中央値が+2.5%とありますが、私の見た範囲では、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2.7%でした。実績と同じですが、ただ、これでも日銀物価目標の+2%を大きく上回っていることは事実です。上昇幅が縮小したとはいえ、上昇率が高止まりしている要因は、農林水産物とそれに連動した飲食料品の価格上昇です。引き続き、コメなどが高い上昇率を示しています。また、対ドル為替相場は7月+1.5%の円安、8月も+0.7%の円安に続いて、9月もわずかながら+0.2%の円安となっています。加えて、為替市場では高市自民党新総裁に対する思惑などから円安が急速に進んでいますので、注視が必要です。さらに、私自身が詳しくないので、エネルギー価格の参考として、日本総研「原油市場展望」(2025年9月)を見ておくと、9月のWTI原油先物価格は、上旬に60ドル、9月中旬から下旬にかけては、一時60ドル台後半に上昇した後、「原油価格は、来年にかけて50ドル台後半に下落する見通し」とされています。ただ、円ベースの輸入物価指数の前年同月比は、今年2025年4月から8月まで5か月連続で2ケタの下落を続けていましたが、9月には△8.0%と下落幅を縮小させています。いずれにせよ、国内物価の上昇は原油価格ではなく国内要因による物価上昇であることは明らかです。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比上昇率・下落率で少し詳しく見ると、まず、農林水産物は8月の+41.0%からやや減速しつつ、9月も+30.5%と高止まりしています。これに伴って、飲食料品の上昇率も8月の+4.9%から9月は+4.7%と高い伸びが続いています。電力・都市ガス・水道は8月の▲3.1%から、9月は+0.7%と前年比プラスに転じています。

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