増産となった鉱工業生産指数(IIP)と拡大続く商業販売統計と底堅い雇用統計
本日は月末閣議日ということで、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)と商業販売統計が、さらに、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも10月の統計です。IIPのヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から+1.4%の増産でした。2か月連続の増産となります。商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+1.7%増の13兆0520億円を示し、季節調整済み指数は前月から+1.6%の上昇となっています。雇用統計のヘッドラインは、失業率は前月から横ばいの2.6%、有効求人倍率は前月からやや低下して1.18倍を、それぞれ記録しています。まず、ロイターのサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
鉱工業生産10月は1.4%上昇、2カ月連続プラス 自動車増産が寄与
経済産業省が28日公表した10月の鉱工業生産指数速報(2020年=100)は前月比1.4%上昇し2カ月連続のプラスとなった。自動車の増産が寄与した。ロイターがまとめた民間予測中央値の0.6%低下に反する結果となった。生産の基調判断は「一進一退」で据え置いた。
自動車工業は前月比6.6%増で0.83ポイント指数を押し上げた。普通乗用車が米国向けなどの輸出増を背景に、軽乗用車は新型車の出荷増により、それぞれ増えた。リチウムイオン電池や航空機用発動部品なども増加した。
半面、指数を押し下げた業種は電子部品・デバイス(前月比6.7%減)など。品目別では記録媒体SSD向け半導体メモリーの生産が減ったほか、コンベヤー、運搬用クレーン、印刷用紙、製紙パルプなども減少した。
企業の生産計画に基づく予測指数は、11月が前月比1.2%の低下、12月が同2.0%低下となっている。生産計画は上振れ気味となる傾向があり、これを補正した11月予測の試算値は前月比2.6%低下となった。
生産計画を上方修正した企業よりも下方修正した企業の割合が多く、企業の間では、「米関税含め先行きを懸念する声が多く、海外需要も強くない」(経産省)とみる向きも多いようだ。また、足元の日中関係悪化との関連は不明だが「レアアースなど(重要部材の)供給リスクを懸念する声」(同)があった。
小売販売額10月は前年比1.7%増、PCなど家電増・食品はマイナス
経済産業省が28日公表した10月の商業動態統計速報によると小売販売額は前年比1.7%増の13兆0520億円だった。ロイター集計の民間予測は同0.8%増でこれを上回った。パソコンや暖房器具の販売が増えた一方、食品の販売点数減少が響いた。
<飲食料品、販売点数減少でマイナス>
業種別の前年比は、家電などの機械器具が8.0%増、ドラッグストアなど医薬品・化粧品が5.1%増、自動車4.8%増など。一方、ガソリンなど燃料は3.3%減、織物・衣服1.7%減、飲食料品0.2%減だった。ウィンドウズ10のサポート終了の関連需要が続いたパソコンのほか、暖房器具、軽自動車の新型車投入効果などが寄与した。飲食料品は販売点数の減少が響き、3カ月連続のマイナスだった。
業態別の前年比では、家電大型専門店が11.0%増、ドラッグストアが6.0%増、スーパー5.5%増、百貨店4.0%増、コンビニエンスストア2.6%増、ホームセンターが0.2%増だった。
ドラッグストアはコメや調剤医薬品が伸びた。スーパーは「価格上昇が寄与したが、販売点数は減少傾向」(経産省)という。コンビニは気温低下でホットコーヒーやおでんが好調だった。
完全失業率10月は2.6%、雇用情勢底堅く 有効求人倍率は1.18倍に低下
政府が28日に発表した10月の雇用関連指標は、完全失業率が季節調整値で2.6%となり、3カ月連続で同水準だった。就業者数が女性を中心に増加しており、総務省は雇用情勢は引き続き悪くないとの見方を示している。一方、有効求人倍率は前月に比べて0.02ポイント低下の1.18倍で、2021年12月(1.17倍)以来の低い水準だった。
ロイターの事前予測調査で完全失業率は2.5%、有効求人倍率は1.20倍が見込まれていた。
総務省によると、10月の就業者数は季節調整値で6846万人と、前月に比べて12万人増加。完全失業者数(同)は185万人で、前月から4万人増加した。
女性の正規の職員・従業員数(実数)は1380万人で、比較可能な2013年1月以降で過去最多となった。担当者は、社会で女性が働く環境の整備が進んできたことも一因にあるとみている。
仕事をしておらず、探してもいない「非労働人口」に区分されていた人々が、職に就いたり仕事を探したりするようになり、労働市場のパイが拡大している。総務省の担当者は「雇用情勢は引き続き悪くない」との認識を示している。
<求人数が減少>
厚生労働省によると、有効求人数(季節調整値)は前月に比べて1.8%減少。省人化の取り組みや最低賃金の引き上げの影響などで求人を見直す動きがみられた。事業者からは求人を出しても人手が埋まらないという「求人疲れ」の声も聞かれた。
有効求職者数(同)は0.003%減少した。ほぼ横ばいの状況だが、最低賃金の引き上げに伴い、いわゆる「年収の壁」を超えないように調整する動きもみられるという。有効求人倍率は、仕事を探している求職者1人当たりに企業から何件の求人があるかを示す。3年10カ月ぶりの低水準となったものの、引き続き1倍は上回っており、厚労省の担当者は「雇用情勢が悪化しているとはみていない」とした。
大和証券の鈴木雄大郎エコノミストはインバウンド需要に陰りがみられていることに加え、日中関係の悪化に伴い、中国からの観光客の減少が懸念されていると指摘。「人手不足感の強い宿泊業・飲食サービス業などの対個人関連サービスの業種を中心に労働需給が緩む可能性がある。こうしたことも、一段と求人を減らす要因となりうる」との見方を示している。
いくつかの統計をまとめて取り上げましたので、とてつもなく長くなりましたが、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2020年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

まず、引用した記事でもロイター調査による市場の事前コンセンサスは▲0.6%の減産とありますし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも同じく▲0.6%の減産が予想されていました。いずれにせよ、実績である+1.4%の増産は市場予想からかなり上振れした印象です。特に、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスのレンジ上限が+0.3%でしたので、ややプライズとして受け止められています。ただし、統計作成官庁である経済産業省では生産の基調判断については、「一進一退」で据え置いています。昨年2024年7月から1年余り連続の据置きです。先行きについては記事にもある通り、製造工業生産予測指数を見ると、足下の11月は補正なしで▲1.2%の減産、翌12月も▲2.0%の減産となっています。上方バイアスを除去した補正後では、足元の11月の生産は▲2.6%の減産と試算されています。
経済産業省の解説サイトによれば、10月統計における生産は、増産方向に寄与したのは自動車工業が前月比+6.6%増で+0.83%の寄与度、電気・情報通信機械工業が前月比+4.2%増で+0.35%の寄与度、輸送機械工業(除く、自動車工業)が+5.8%増で+0.17%の寄与度、などとなっています。他方、減産方向に寄与したのは、電子部品・デバイス工業が前月比▲6.7%減で▲0.42%の寄与度、汎用・業務用機械工業が▲1.8%減で▲0.13%の寄与度、パルプ・紙・紙加工品工業が前月比▲1.0%減で▲0.02%の寄与度、などとなっています。引用した鉱工業生産(IIP)に関する記事の最後のパラで、需給両面の不安要素が並べてありますが、普通乗用車が米国向け輸出で伸びていますから、本日公表の10月統計を見ている限り、米国の関税政策の影響はそれほど大きくない、ということになるのかもしれません。

続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整済みの2020年=100となる指数をプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。小売業販売のヘッドラインは季節調整していない原系列の前年同月比で見るのがエコノミストの間での慣例なのですが、見れば明らかな通り、8月統計こそ猛暑による外出手控えなどの影響で伸びがマイナスにを記録しましたが、9月統計では+0.2%、本日公表の10月統計でも+1.7%に戻っています。引用した記事にある通り、実績の+1.7%像はロイターによる市場の事前コンセンサス+0.8%を上回っています。季節調整済み指数の前月比も+1.6%を記録しています。ただし、統計作成官庁である経済産業省では基調判断について、季節調整済み指数の後方3か月移動平均により機械的に判断して、本日公表の10月統計までの3か月後方移動平均の前月比が+0.3%の上昇となり、先月9月統計で下方修正した「弱含み傾向」に据え置いています。加えて、参考まで、消費者物価指数(CPI)との関係では、10月統計ではヘッドライン上昇率、生鮮食品を除く総合のコアCPI上昇率ともに+3.0%となっていますので、前年同月比がプラスであるとはいえ、10月統計の実質消費はマイナスの可能性が高いと考えるべきです。さらに考慮しておくべき点は、国内需要ではなく海外からのインバウンド観光客により、部分的なりとも小売業販売額の伸びが支えられている可能性です。このインバウンド消費を考え合わせると、国内消費の実態は本日の統計に示された小売業販売額のマイナス以上のマイナスとなっている可能性は考慮しておかねばなりません。

続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの統計であり影を付けた部分は景気後退期を示しています。引用した記事にもあるように、ロイターの事前予測調査で完全失業率は2.5%、有効求人倍率は1.20倍が見込まれていましたし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、失業率が2.5%、有効求人倍率は1.20倍でした。本日公表された実績で、失業率2.6%、有効求人倍率1.18倍はともに、ロイターによる市場の事前コンセンサスを下回り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスのほぼ下限といえますが、引用した記事の最初のパラにあるように、総務省統計局の見方に従って、雇用情勢は引き続き悪くなく、雇用は底堅いとの記事に仕上がっています。というのは、失業率が上昇している背景を考えると、確かに失業者数が増加していて、季節調整していない原系列の統計で見て、失業者数は8月が前年同月から+7万人増、9月+11万人増、10月13万人増となっている一方で、就業者数は8月+20万人増の後、9月+49万人増、10月も+52万人増と、ともに失業者数の増加を超えて増加しています。では何が起こっているのかというと、非労働力人口が減少しています。8月は前年同月から▲52万人減となった後、9月▲83万人減、10月も▲87万人減を記録しています。ですから、専業主婦や高齢者、だけとは限りませんが、労働市場に参入していなかった非労働力人口が労働市場に参入して、就業者と失業者ともに増加させている、というわけです。基本は、春闘における賃上げによる就業意欲が高まり、賃金上昇に伴って労働市場への参入が増加している、と考えるのが伝統的な経済学の見方であろうと思います。何といっても、失業率はまだ2%台半ばですし、有効求人倍率は1を超えています。
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