来週公表予定の7-9月期GDP統計速報1次QEはマイナス成長か?
先月末から今月初めの各種統計がほぼ出そろって、来週11月17日に、7~9月期GDP統計速報1次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。ということで、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下のテーブルの通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、GDP統計の期間である7~9月期ではなく、足元の10~12月期から来年にかけて先行きの景気動向を重視して拾おうとしています。先行き経済について言及しているシンクタンクは大和総研やみずほリサーチ&テクノロジーズなどであり、この両機関のリポートでは詳細に分析されていますので長々と引用してあります。いずれにせよ、1次情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまででクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。
| 機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
| 日本総研 | ▲0.7% (▲2.7%) | 10~12月期の実質GDP成長率は小幅ながらプラスに転じると予想。世界景気の減速が外需の重石となるものの、内需が景気を下支えする見込み。ソフトウェア投資を中心に企業の設備投資意欲は旺盛であるほか、インフレ率の低下を受けた家計の購買力改善が消費の追い風に。 |
| 大和総研 | ▲0.7% (▲2.8%) | 2025年10-12月期の日本経済は、プラス成長に転じると見込んでいる。所得環境の改善が個人消費を下支えするほか、設備投資も増加しよう。輸出は、サービス輸出が増加する一方、トランプ関税の影響が続くことで財輸出が伸び悩み、減少が続くとみられる。 個人消費は増加すると予想する。2025 年春闘では前年以上の高水準の賃上げが実施された上、10 月以降は最低賃金が各地で大幅に(全国加重平均で 6.3%)引き上げられ、非正規雇用者の賃金を中心に上昇圧力がかかる。食料品の価格上昇の鈍化などを背景に物価上昇率は今後低下していくとみられ、実質賃金の上昇などによる所得環境の改善が個人消費の増加を促そう。 設備投資は増加すると予想する。日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(日銀短観)によると、9月調査時点での2025年度の設備投資計画(全規模全産業、除く土地、含むソフトウェア・研究開発)は前年度比+9.5%と堅調だった。トランプ関税の影響により輸出企業の一部で投資意欲が下押しされる面はあるものの、日本経済全体ではソフトウェアや研究開発にけん引される形で、設備投資の増加基調が維持されると見込んでいる。 住宅投資は4月以降、着工額が低迷している影響から、減少が続くと予想する。 公共投資は、工事費の高騰などを背景に、横ばい圏での推移にとどまるとみられる。政府消費は、高齢化に伴う医療費増などにより増加に転じよう。 輸出は減少が続くと予想する。トランプ関税への対応で、米国での販売価格を引き上げたり、現地生産・調達を増やしたりする企業が増加するとみられ、財輸出は米国向けを中心に弱含むとみられる。他方、サービス輸出は7-9月期の反動もあって増加すると見込んでいる。 |
| みずほリサーチ&テクノロジーズ | ▲1.0% (▲3.9%) | 10~12月期についても、関税による製造業収益の下押しが設備投資や冬のボーナスの重石になることで、経済活動の回復ペースは緩やかなものになるだろう。現時点で、10~12月期は年率+0%台半ば程度の成長にとどまると予測している。 一方で、企業による関税コストの価格転嫁は時間をかけて段階的に実施される見通しであり、関税による米国経済・日本経済への影響は「浅く・長く」発現することが見込まれる。9月の米国の消費者物価指数をみても前月比+0.3%と緩やかなインフレに留まっており、これまで価格転嫁が進んでいなかった衣料品や新車等で物価上昇がみられるものの、既に価格転嫁が進んでいた家具や玩具などは価格上昇が一服している。関税により特定の時期に米国で急激なインフレが生じるリスクは低下していることに加え、堅調なAI関連投資や株価の上昇による下支えを受けて米国景気の減速ペースは緩やかなものになる可能性が高い。 内需についても、食料インフレが徐々に鈍化することが見込まれるほか(10月の都区部消費者物価指数をみるとコメを中心に食料価格の前年比は縮小傾向で推移していることが確認できる)、株高が消費者マインドを改善させることも押し上げ要因となり(10月の消費者態度指数が前月差+0.5%Ptと改善しており、内閣府も基調判断を「持ち直している」に上方修正した)、個人消費は緩やかながらも回復傾向が継続するとみている。 以上を踏まえ、日本経済は、前述したとおり関税影響が重石になるものの、景気後退入りは回避できる公算が大きいと現時点でみている。 企業収益への影響という点では、輸出企業の採算円レート(輸出企業全体で130.1円/ドル、輸送用機器で124.7円/ドル)対比でみて足元(本稿執筆時点)のドル円相場(1ドル=154円程度)は輸出企業全体で約18%、輸送用機器で約23%の円安水準であり、関税による企業収益への影響は(円安は内需に依存する非製造業・中小企業などで原材料コストの上昇を通じて下押し要因になる面もあるが、企業全体としてみれば)緩和されると考えられる。関税コストによる製造業への打撃は避けられず、前述したとおりボーナスや設備投資への波及が見込まれるにせよ、企業全体としてみれば企業収益が持ち堪えることで設備投資は増加基調を維持し、賃上げ気運も継続される可能性が高いと現時点でみている(来年の春闘賃上げ率については、2025年対比では鈍化は避けられないものの、人手不足の深刻化等を受けて4%台半ば程度の水準で着地する可能性が高いとみている)。 ただし、足元では、これまで堅調に推移してきた米国経済について、AIブームの持続性やプライベートクレジットの動向に対する懸念材料(具体的には、投資の過剰不安、消費の資産効果依存、相場のテック依存、企業破綻・不正の増加等への懸念)も浮上している。現時点では、銀行の健全性等を踏まえればシステミックリスクに発展する蓋然性は小さいとみているが、株価の大幅な調整が逆資産効果等を通じて実体経済(米国経済及び日本経済)に波及する可能性も否定できないことから、引き続き動向に注視する必要がある。 |
| ニッセイ基礎研 | ▲0.7% (▲2.7%) | 現時点では、輸出の減少ペースが緩やかとなる中、民間消費、住宅投資、設備投資が増加することから、10-12月期の実質GDPは前期比年率0%台前半の小幅なプラス成長になると予想しているが、輸出を中心に下振れリスクは高い。 |
| 第一生命経済研 | ▲0.5% (▲2.2%) | 7-9月期のマイナス成長の主因は外需と住宅投資だが、特に住宅投資の落ち込みが大きい(7-9月期のGDP成長率を前期比年率▲1.5%Pt下押すと予想)。25年4月の建築基準法・省エネ法改正によって、省エネ基準の適合義務化や「4号特例」の縮小など、住宅建設や大規模リフォームのコスト増・手続き負担増・工期長期化が生じた。多くの事業者が改正前に着工を前倒ししたことで3月の住宅着工は急増したが、駆け込み需要の反動が生じたことで4-6月期の着工は歴史的な減少となった。この着工減がタイムラグをもって住宅投資に反映されることで、7-9月期の住宅投資は急減するだろう。 |
| 三菱UFJリサーチ&コンサルティング | ▲0.6 (▲2.2%) | 2025年7~9月期の実質GDP成長率(1次速報値)は、前期比-0.6%(前期比年率換算-2.2%)と、マイナス成長に陥ったと見込まれる。個人消費や設備投資など内需に底堅さはあるものの、先送りされたトランプ関税のマイナスの影響が本格化したことがマイナス成長の主因となった。また住宅投資は、制度変更によって着工件数が急減した影響が時間差をおいて表れたことで大幅なマイナスとなった。 |
| 伊藤忠総研 | ▲0.2% (▲0.7%) | 10~12月期は、①関税の影響一巡による輸出の持ち直し、②物価上昇ピークアウトを受けた個人消費の復調、③強気の計画を背景とした設備投資の拡大、の有無や強弱が注目点となる。これらのうち、設備投資はトランプ関税を踏まえた計画見直しなどから一時停滞もあり得るが、自動車の回復で輸出の、物価上昇の頭打ちで個人消費の復調が期待できるため、10~12月期の実質GDP成長率は前期比でプラスに復すると予想される。 |
| 明治安田総研 | ▲0.6% (▲2.4%) | 7-9月期は住宅投資と輸出のマイナスが景気の押し下げ要因になったとみられる。建築基準法改正の影響による住宅投資の落ち込みは一時的である可能性が高いが、輸出については、関税が引き続き自動車を中心に下押し圧力になるとみられる。また、個人消費については、物価上昇率が年後半にかけて鈍化し、12月には実質賃金がプラス圏に浮上するとみているが、プラス幅は限定的なものになると予想される。一方、設備投資は、外需の低迷が抑制要因になることが見込まれるが、継続的な省力化投資が下支えするかたちで底堅く推移するとみる。これらを踏まえると、年度後半の日本景気は緩やかな回復が続くというのがメインシナリオである。 |
| 農中総研 | ▲0.3% (▲1.2%) | 7~9月期のGDPについて、実質成長率は前期比▲0.3%(同年率換算▲1.2%)と、6期ぶりのマイナスと予想する。なお、前年比は0.8%と5期連続のプラスが見込まれる。一方、名目成長率は前期比0.3%(同年率1.1%)と、前期から減速するものの、12期連続のプラスとなるだろう。 |
| 東京財団 | ▲0.41% (▲1.64%) | モデルは、9月初以降、マイナス成長を予測してきたが、こうした背景には、追加関税が課されている米国向け自動車輸出の落ち込みなどの動きがあり、米国の通商政策の影響によりGDPが下振れする可能性を示唆している。 |
テーブルを見れば明らかな通り、7~9月期のGDPはマイナス成長、しかも、内需も外需(純輸出)もどちらもマイナス寄与、というのがほぼほぼ一致した見方となっています。まあ、いいところはないように見えなくもありません。ただし、マイナス寄与の大きな部分は住宅投資に起因しています。すなわち、今年2025年4月から着工される建築物に関して、省エネ基準の適用義務化などを含む法改正が行われたことで、住宅着工は3月に駆け込みで急増した後、4月以降に大きく減少しています。この住宅着工の減少がタイムラグを伴って7~9月期のGDP統計に反映されると考えられます。設備投資もそうですが、住宅投資も、着工から完成まで一定の期間の経過がありますが、GDP統計では進捗ベースで計上されるからです。ですので、というか、何と申しましょうかで、足元の10~12月期には緩やかながらプラス成長に回帰する、というのも説得力ある見方だと私は受け止めています。ただ、景気局面も明らかに後半に入っており、米国の通商政策をはじめとして、先行きまだまだ不透明要因が残っていますので、リスクは引き続き下方に厚そうな気がします。
下のグラフは、日本総研のリポートから、実質GDP成長率(前期比年率) を引用しています。
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