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2025年12月 1日 (月)

7-9月期法人企業統計で米国関税の影響は大きくはないがゼロではない

本日、財務省から7~9月期の法人企業統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で見て、売上高は前年同期比+0.5%増の379兆431億円、経常利益は+19.7%増の27兆5385億円に上っています。さらに、設備投資も+2.9%増の13兆8063億円を記録しています。ただし、この設備投資を季節調整済みで見ると、GDP統計の基礎となる系列については前期比▲1.4%減となっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

全産業の経常利益19.7%増、7-9月法人企業統計 AI関連需要がけん引
財務省が1日発表した7#xFF5E;9月期の法人企業統計によると、全産業(金融・保険業を除く)の経常利益は前年同期比19.7%増の27兆5385億円だった。4四半期連続のプラスとなった。人工知能(AI)関連の需要がけん引した。自動車などは米国による関税引き上げの影響が残る。
法人企業統計は上場企業に限らず日本企業全体の動向を調べている。全産業の経常利益は7#xFF5E;9月期としては過去最高となった。
業種別に経常利益を見ると、製造業は23.4%増と3四半期ぶりにプラスに転じた。電気機械が87.5%増と押し上げた。AI関連の高性能半導体の試験装置や、データセンター向けの電源装置などが好調だった。生産用機械も65.9%増と増益を支え、半導体製造装置の需要増があった。
一方で自動車など輸送用機械は14.0%減だった。内視鏡など業務用機械も15.2%減となり、財務省はいずれもトランプ米政権による関税政策の影響を受けたと説明する。
非製造業は17.6%の増益だった。サービス業は31.8%増で飲食・サービス業や宿泊業での客数の増加や客単価の上昇が主因となった。48.6%増となった建設業では大型工事の受注などがけん引した。
設備投資は全産業で2.9%増と3四半期連続のプラスとなった。脱炭素への対応や生産能力の増強が進んだ鉄鋼が36.9%増だったほか、情報通信業は26.8%増でAIやデータセンター向けが伸びた。

長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上高と経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影を付けた部分は景気後退期となっています。

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法人企業統計の結果について、基本的に、企業業績は好調を維持していると考えるべきです。まさに、それが昨年来の株価に反映されているわけで、東証平均株価については、トランプ関税で揺れた4月初旬は33,000円台まで落ちましたが、その後は回復して7月下旬からは4万円台、さらに最近では5万円を超えるような水準を続けています。ただし、個人消費などと違って、企業業績は基本的に好調を維持しているものの、引用した記事にもあるように、米国の関税政策の影響は微妙であり、もちろん、ゼロではありません。特に、輸出に依存する割合の高い製造業では停滞感が大きくなっているのも事実です。加えて、法人企業統計の売上高や営業利益・経常利益などはすべて名目値で計測されていますので、物価上昇による水増しを含んでいる点は忘れるべきではありません。ですので、数量ベースの増産や設備投資増などにどこまで支えられているかは、現時点では明らかではありません。来週のGDP統計速報2次QEを待つ必要があります。先行きの景気への影響という点に関しては製造業、中でもトランプ関税の影響の大きい自動車産業の動向が今後一段と悪化する可能性が高いと考えられますから、こういった輸出産業に注目すべきであろうと考えます。前期の4~6月期から今期の7~9月期に関しては、自動車などの製造業の停滞を非製造業がカバーする形になりましたが、先行きの景気のサステイナビリティはそれほど高くないと覚悟しておくべきです。さらに、売上や利益といった景気動向から設備投資に着目すると、同様に、米国関税政策の影響が現れ始めている印象があります。季節調整していない原系列の統計の前年同期比で見ても、設備投資は4~6月期の+7.6%増から7~9月期には+2.9%増に伸びが鈍化していますし、季節調整済みの系列では7~9月期は▲1.4%減となっています。景気動向に関しては自動車をはじめとする製造業に注目しつつ、設備投資動向に関しては人手不足による影響が大きい非製造業、中でも、比較的労働集約的な業種の動向が注目されます。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金、最後の4枚目は人件費と経常利益をそれぞれプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。人件費と経常利益も額そのものです。利益剰余金を除いて、原系列の統計と後方4四半期移動平均をともにプロットしています。見れば明らかなんですが、コロナ禍を経て労働分配率が大きく低下を示しています。もう少し長い目で見れば、デフレに入るあたりの1990年代後半からほぼ一貫して労働分配率が低下を続けています。そして、現在でも労働分配率の低下は続いています。いろんな仮定を置いていますので評価は単純ではありませんが、デフレに入ったあたりの1990年代後半の75%近い水準と比べて、最近時点では▲20%ポイント近く労働分配率が低下している、あるいは、コロナ禍の期間の65%ほどと比べても▲10%ポイントほど低下している、と考えるべきです。名目GDPが約600兆円として50-100兆円ほど労働者から企業に移転があった可能性が示唆されています。加えて、昨年2024年や今年2025年の春闘では人口減少下の人手不足により賃上げ圧力が高まった結果として、労働分配率が下げ止まった可能性が示唆されていしたが、統計を見る限り決してそうはなっていません。昨年今年と春闘ではあれだけの賃上げがありながら、まだ労働分配率は低下し続けている可能性が高いと考えるべきです。しかも高インフレが続いており、これでは消費は伸びません。日本経済の成長には大きなマイナス要因だと私は考えています。設備投資/キャッシュフロー比率も底ばいを続けています。DXやGXに対応した設備投資の本格的な増加が始まったことが期待される一方で、決して楽観的にはなれません。他方で、ストック指標なので評価に注意が必要とはいえ、利益剰余金はまだまだ伸びが続いています。また、4枚めのパネルにあるように、直近統計で2020年くらいからは、人件費の伸びが高まっている可能性が見て取れますが、人件費以上に経常利益が伸びているのがグラフの傾きから明らかです。労働分配率の低下と整合的なデータであると考えるべきです。加えて、米国の関税などを考慮すると、現時点では人件費の伸びが続くかどうかは不明です。アベノミクスではトリクルダウンを想定していましたが、企業業績から勤労者の賃金へは滴り落ちてこなかった、というのがひとつの帰結といえます。勤労者の賃金が上がらない中で、企業業績だけが伸びて株価が上昇する経済が終焉して、資本分配率が低下して労働分配率が上昇することにより、諸外国と比べても高いインフレにならずに日本経済が成長するパスが実現できる可能性が生じており、それは中期的に望ましい、という私の考えは代わりありません。

本日の法人企業統計を受けて、来週12月8日に7~9月期のGDP統計速報2次QEが内閣府から公表される運びとなっています。私は1次QEから設備投資をはじめとして下方修正され、成長率のマイナス幅が拡大する可能性が高いと考えていますが、日を改めて取り上げたいと思います。

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