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2026年1月24日 (土)

今週の読書はいろいろ読んで計7冊

今週の読書感想文は以下の通りです。
まず、萩原伸次郎[監修]「米国経済白書 2025」(蒼天社)は、米国バイデン政権最末期に公表されており、4年間の施政を総括する分析も第1章に続いて、第2章リモートワーク、第3章国際租税システム、第4章医療保険、第5章カーボンニュートラル、第6章国際資本移動、第7章K-12の初等中等教育、について分析しています。小川洋子『サイレントシンガー』(文藝春秋)では、内気で言葉を発しない人々の「アカシアの野辺」の門番小屋の雑用係をおばあさんから引き継いだリリカが、役場から依頼されて夕方に流す放送向けに「家路」を録音したりしながら成長し、羊の毛を刈る際には「羊のための毛刈り歌」を歌ったりします。柳広司『コーリャと少年探偵団』(理論社)は、ドストエフスキーの名作『カラマーゾフの兄弟』のうち、三兄弟の父親であるフョードルが殺された部分について、コーリャくんの視点からリライトして、とてもすぐれたミステリのジュブナイル小説に仕上げています。特に、原作から大きな違いはありません。坂本貴志・松雄茂『再雇用という働き方』(PHP新書)では、「ミドルシニアのキャリア戦略」という副題に見られるように、大雑把に50-70歳くらいを対象にした雇用について、転職・独立するかどうか、仕事のペースを落とすかどうか、などの観点から分析しています。小林哲夫『関関同立』(ちくま新書)では、関西私大の雄である関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学について、学部構成やロケーション、ジェンダー平等、学生や教員の活躍、グローバル化、卒業後の進路、OBやOGの活躍、などなどの観点からそれぞれの特色を浮かび上がらせています。フリーダ・マクファデン『ハウスメイド 2』(ハヤカワ・ミステリ文庫)では、主人公のハウスメイドであるミリーは、ニューヨークに超高級ペントハウスを持つIT長者のダグラス・ギャリックの家で働くことになりますが、当然のように通常と違う奇妙な点があり、何があってもゲストルームには入らないように言い渡されます。加藤鉄児『実家暮らしのホームズ』(宝島社文庫)では、天才的な推理の力を持つ主人公が、巨大IT企業の創始者による財団主催の「眠れる探偵プロジェクト」の予選で最高得点を記録し3万ドルの賞金の返還を求められて、未解決事件などの謎解きによって弁済するコミカルな連作短編ミステリ集です。
今年2026年の新刊書読書は先週までに10冊、今週の7冊を加えると合計で17冊となります。また、これらの新刊書読書のほかに、大山誠一郎の短編集『アルファベット・パズラーズ』(創元推理文庫)も読んでいます。ただ、新刊書ではないので、本日のレビューには含めていません。これらの読書感想文については、できる限り、FacebookやX(昔のツイッタ)、あるいは、mixi、mixi2などでシェアしたいと予定しています。

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まず、萩原伸次郎[監修]「米国経済白書 2025」(蒼天社)を読みました。著者は、米国大統領経済諮問委員会であり、萩原教授が組織する翻訳研究会が邦訳をしています。その研究会の一員が我が立命館大学経済学部の教授であり、昨年版の「米国経済白書 2024」の研究会が立命館大学であり、私も出席していたりします。国立情報学研究所のCiNiiで見る限り、「米国経済白書」が現在の形で邦訳され、蒼天社から出版されるようになったのは2014年からのようです。私の記憶が正しければ、私が役所に入った1980年代前半くらいは経済企画庁で邦訳を担当していたと思います。ただし、私がその担当課であった経済企画庁の調査局海外調査課に異動した1990年ころにはもう邦訳はしていませんでした。ということで、英語の原題は Economic Report of the President 2025であり、米国政府刊行物ですので、日本の政府白書などと同じように、全文がpdfでダウンロードできます。ただ、この2025年版は出版が昨年2025年1月9日、すなわち、トランプ大統領就任直前のバイデン前大統領の政権末期となります。ですので、バイデン大統領の4年間の施政を総括する分析も第1章に始まって、第2章ではリモートワーク、第3章では国際租税システム、第4章では医療保険、第5章ではカーボンニュートラル、第6章では国際資本移動、最後の第7章ではK-12の初等中等教育、についてそれぞれ経済分析を試みています。政権交代直前の出版ですから、当然ながら、4年間の前半はコロナのパンデミック期と重なります。第2章のリモートワークや第4章の医療保険などはコロナ期の分析も含まれています。ですので、リモートワークは地域的な労働需給のミスマッチの程度を軽減する一方で、リモートワーク可能な労働者は元々が高所得を得ており、リモートワークがそれ自体として格差の拡大の縮小につながるものではない、という指摘はもっともです。第3章のグローバル化とともにデジタル化も大きく進んだ国際社会の課税を考える必要性も、現在のトランプ政権のような米国の利益一辺倒ではない考えが示されています。第4章の医療システムや第5章のカーボンニュートラルなんかは、現在のトランプ政権はバイデン-ハリス政権とは方向性が大きく違うのだろう、ということは広く報じられている通りだと思います。第6章の国際公共財の提供についても、米国ファーストではない視点が示されています。最終章でも、高等教育だけではなく初等中等教育を重視する視点が示されています。最後に、2点だけ指摘しておくと、元が英文ですので、いわゆるabbreviationが頻出します。Inflation Reduction Act=IRAなんて、一般にはそれほど広く認識されていませんし、American Rescue Plan Act=ARPもご同様です。3人の邦訳者は何年かご担当になって慣れ親しんでいるのかもしれませんが、邦訳版にはabbreviation一覧のようなものをオマケで付けていただくわけには行かないものでしょうか。世銀などの国際機関のリポートなんかではよく見かけるので、そう難しくはないと思います。第2に、通常このリポートは毎年1月中には公表されますが、今年2026年はまだです。トランプ政権になってから大きく経済政策が転換されたのは広く認識されている通りです。どのような分析が登場するか、怖いようでもありますが、エコノミストとして興味はあります。

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次に、小川洋子『サイレントシンガー』(文藝春秋)を読みました。著者は、芥川賞作家であり、本書は著者の6年ぶりの長編小説だそうです。ですので、私も大きな期待を持って読んだ次第です。主人公は両親を亡くしておばあさんと暮らすリリカです。農業を主体として自給自足に近い生活を目指す「アカシアの野辺」がE-5地区に移り住んで開墾して畑を耕し、動物を飼い始めます。内気な人々であり、言葉で話すことをせずに指言葉で会話したりします。気象管と呼ばれる涙形のガラスのペンダントをしています。日本的にいえばヤマギシ会を思わせるところがあり、海外ではアーミッシュを連想する人がいるかもしれません。その門番小屋の雑用係としてリリカのおばあさんが雇われ、「アカシアの野辺」の内気な人々と外部との接点となります。リリカは役場から依頼されて夕方に流す放送向けに「家路」を歌ったりしながら成長し、高校卒業直前におばあさんが亡くなってからは門番小屋の雑用係の仕事を引き継ぎ、同じように、「アカシアの野辺」の人々と外部との接点となります。「アカシアの野辺」で出来た農産物の販売をしたり、自給自足しきれないものを外部の商店などで買ってきたりします。それだけではなく、ボイスレッスンに通って、先生から歌のアルバイトを紹介されたり、「アカシアの野辺」で羊の毛を刈る際には「羊のための毛刈り歌」を歌ったりします。リリカは自動車免許を取得し行動範囲を大きく広げ、有料道路の料金所の男性と淡い恋をしたりもします。はい、純文学ですので、ボイスレッスンを始めた経緯や料金所の男性との恋の行方など、個別のストーリーの流れも興味深いところなのですが、文章表現や文体を楽しむべき読書ではないか、という気がします。ただ、沈黙を言葉にして表現するとどうなるか、あるいは、沈黙=サイレントな状態で歌はどう聞こえるのか、といった疑問に対しては、作者は見事なまでに答えを用意しています。久しぶりに心が澄み渡るような小説を読んだ気がします。

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次に、柳広司『コーリャと少年探偵団』(理論社)を読みました。著者は、ミステリ作家だと私は思っており、『ジョーカー・ゲーム』をはじめとするD機関のシリーズを私は愛読しています。数年前に『アンブレイカブル』(角川書店)を読んだ後、少しご無沙汰していると思ったら、最新刊の本書はジュブナイルのミステリです。タイトルからピンとくる人はかなりの文学通であり、本書はドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』のうちの父親フョードルが殺された部分をコーリャくんの視点からリライトしてミステリに仕上げています。ですので、主人公は新制中学校に通う13歳、本人の言い分ではもうすぐ14歳になるコーリャ・クラソートキンです。忠実な副官=子分はスムーロフであり、少年探偵団の中核を成します。ベレズウォンという雑種の犬を飼い、母親には頭が上がらず、人格家でもある教師のダルダネロフにしばしばピンチを救われます。もちろん、カラマーゾフ家の父親フョードルや三兄弟も登場します。ただ、本書はジュブナイル向けということを意識してか、スメルジャコフがフョードルの私生児ではないか、という点には言及がありません。三兄弟の末のアリョーシャ(アレクセイ)は、ゾシマが亡くなって修道院を離れますが、まだ還俗していません。『カラマーゾフの兄弟』を読んだ人は決して多くないと思いますが、読んだ人であれば、視点を提供する主人公がコーリャになったところで、殺されたのが三兄弟の父親のフョードルである点はご存じのことと思います。この点も変わりありませんし、フョードルが持っていた3000ルーブルという大金が紛失している点も同じです。誰が裁判にかけられて、どういう判決が出たかも原典通りです。ただし、繰返しになりますが、日本人の中で『カラマーゾフの兄弟』を読んだ人は決して多くないでしょうし、本書が対象読者に想定している小学校学年や中学生くらいまでであれば、ほぼほぼ通読した人はいないと思います。その意味で、その年代の少年少女にはなかなか痛快なミステリとして楽しめる気がします。私が小学生高学年だったころは、こういったミステリ仕立てのジュブナイル小説といえば、江戸川乱歩の明智小五郎シリーズや海外モノでいえばホームズよりはルパンだったような気がします。本書も、そういった大昔のジュブナイル向けミステリと同じで、やや大時代的、というか、現代向けではありませんが、それなりに楽しめるし、スメルジャコフの設定のように若い世代の読者にも配慮されている気がしました。ただ、「オッカムの剃刀」はとても重要な見方ながら、少し難しいかもしれません。

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次に、坂本貴志・松雄茂『再雇用という働き方』(PHP新書)を読みました。著者は、リクルートワークス研究所の研究員とリクルートご出身でポストオフ後にシニア活躍支援などをしている方のようです。本書では、「ミドルシニアのキャリア戦略」という副題に見られるように、大雑把に50-70歳くらいを対象にした雇用について、雇用者のサイドと企業のサイドの両方から分析しています。公的年金支給開始年齢が65歳、しかし、定年退職年齢は多くが60歳という雇用と年金支給のミスマッチにあって、どのようなキャリア戦略でもって働くか、また、雇うか、というテーマだろうと思います。私自身はエコノミストとして、働くなくてもいいような社会保障体制が整えられるのが一番と考えていますが、所得確保だけでなく社会との接点の維持や人生目標などから考えて、働き続けたいと考えているミドルシニアは少なくないことも事実です。私自身は60歳で当時の役所の定年を迎えた後、現在の立命館大学に再就職して現役生活を継続し、さらに大学でも65歳の定年の後に大学の特任教授として、まあ、本書でいうところの定年後再雇用に入っています。でも、それほど業務負担=授業コマ数が減ったわけではありません。65歳の定年前は標準で週5コマだったのが、標準週4コマになっただけなのですが、お給料は半減しています。同年齢の大学の同級生の中には、まだ職探しをしている者もいますが、警備や清掃といった高齢者向けの仕事しかないとぼやいています。本書では、タイトル通りに、雇用者のサイドからキャリア形成を考えるとともに、企業サイドから高齢者の雇用確保やスキル活用をどう考えるか、といった視点も大いに取り入れています。すなわち、定年を延長した上で役職定年=ポストオフの後のミドルシニアの活用については、企業にとっては不連続な処遇変更は生じないものの、報酬が高止まりしたまま処遇が硬直化する、というリスクを指摘し、逆に、定年で一度退職金も支払った後の再雇用では、定年延長とはまったくシンメトリーに逆のメリットとデメリットがあると結論しています。それに、どちらにしても、東洋的というか、儒教的な「長幼の序」がある世界で、年上の部下を年下の上司が指揮監督するという組織運営上の難しさもついて回ります。私個人のケースでは、役所の公務員だったころは、そもそも能力不足によって出生が遅くて、60歳の定年前の段階で年下の上司から仕事の命令を受けることがありました。大学に来れば、組織や人事はほぼほぼフラットですから、組織上の難しさは関係なくなりました。また、本書では、企業サイドではなく雇用者のサイドからのキャリア戦略としては、仕事の働き方のペースを落とすか維持するかを縦軸に、同じ組織で働き続けるか転職・独立するかを横軸に取って、4象限で考えています。はい、私の場合は転職して仕事のペースを落とす、という選択をしたわけで、私にとっては悪くない選択だったと思っています。ただ、最後に、私の同級生の見方も理解できる部分が少なくありません。すなわち、私は日本の企業が評価をミスっているコーホートが2つあり、高齢者と法経系の大学院卒だと考えています。繰返しになりますが、高齢者には警備や清掃といった仕事しか割り当てられず、法経系の大学院卒はまったく採用しようとはしません。特に、後者は日本のオフィスの生産性が低い一因である可能性を私は感じています。最後の点は本書のスコープ外の私の感想です。

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次に、小林哲夫『関関同立』(ちくま新書)を読みました。著者は、教育ジャーナリストと紹介されています。はい、関関同立とは本書にもある通り、関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学の関西の名門私大をひとまとめにして表現する言葉です。本書ではこの順番で個別項目に取り上げています。ただ、私の実感では、この4校の中でも、本書では言及ありませんが、最近では明らかに序列化が出来上がりつつあり、同志社大学、関西学院大学、関西大学、立命館大学の順で固定化されつつある気がします。要するに、ミッション系のオシャレな大学の評価が高くなっている、ということのようです。そういったオシャレなイメージある大学の方が、いわゆる「バンカラ」なイメージの大学、関西であれば関西大学や立命館大学、といったあたりよりも高校生から評価されている、といった気がします。その昔に「国民的美少女」と称された後藤久美子が制服で進学先の高校を選んだ、と一部で報じられたこともありますし、今になって急に始まった傾向ではないと思います。それはさて置き、その関関同立の関西の雄である4私大に関して、学部構成やロケーション、ジェンダー平等、学生や教員の活躍、グローバル化、卒業後の進路、OBやOGの活躍、などなどの観点からそれぞれの特色を浮かび上がらせています。もちろん、私の勤務する立命館大学を中心に読んでみたわけで、特に、私の勤務しているのは京都ではないのですが、もともとが京都にあったわけですし、2校だけの「同立」という表現もありますので、ついつい、関関同立ではなく同志社大学との比較で読んでしまいました。いろいろな観点がありえますが、もっとも立命館大学の特色を表しているのは、卒業生の中でも国会議員の政党別構成ではないでしょうか。関関同には自民党や維新の会といった連立与党の国会議員を輩出しているのですが、立命館だけは与党議員はいません。逆に、共産党議員が入っていたりします。本書でもキツい言葉で「日本共産党の影響を受けた学生、教員が少なくなかった(p.279)」とされています。これを褒め言葉と受け取る人は決して多くはないでしょうが、少なくもないと思います。

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次に、フリーダ・マクファデン『ハウスメイド 2』(ハヤカワ・ミステリ文庫)を読みました。著者は、脳外科医で作家だそうです。英語の原題は The Housemaid's Secret であり、2023年の出版です。なお、本書が「2」とナンバリングされている以上、当然「1」があるのですが、まあ、何と申しましょうかで、田舎町の隣町の図書館に行くと、無造作に本書が新刊書コーナーにおいてあり、話題の本であることは確かに知っていたので、取りあえず借りてみました。その後、「1」と「2」を順番に読む必要性は高くないと判断し、本書から読み始めています。ただ、知り合いからのアドバイスによれば、順番は逆でも、さかのぼって「1」は完成度高く必読であり、主人公のミリーがエンツォと出会うシーンがあるので、特にその点は重要である、と聞き及びました。「1」ではエンツォは庭師だそうで、本書「2」では職業不明です。本書「2」のストーリーは、ハウスメイドのミリーが冒頭で失職します。なぜかといえば、赤ちゃんが母親ではなくミリーのことを「ママ」と呼ぶからです。前科があって難しいながらも職を探して、ニューヨークのアッパー・ウェストサイドに超高級ペントハウスを持つIT長者の雇い主ダグラス・ギャリックを見つけます。ただし、当然のように通常と違う奇妙な点があり、何があってもゲストルームには入らないように言い渡されます。そこには、病身の妻ウェンディが静養していて人と会いたがらない、と説明されます。なお、ミリーには、私の目からとても不自然なのですが、ハイスペックな恋人ブロックがいます。イケメンで富裕な弁護士をしていて、ミリーが前科を隠していることもあるのですが、ミリーとの結婚に前向き、というか、むしろ両親に紹介した上で結婚したがっています。ただ、ミリーの方は前科持ちで服役していたことを打ち明けられず、やや消極的な態度を取り続けます。そして、クライマックスにはエンツォが登場するわけです。ミステリですので、このあたりまでとします。とっても凝ったプロットで、ラストのどんでん返しもびっくりしましたし、これだけ登場人物が少ないにもかかわらず、すごい構成力だと感心しました。しかも、原文がいいのか、邦訳がすぐれているのか、海外ミステリの翻訳としては、とても読みやすく仕上がっています。ぜひとも前作も読みたいと思います。

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次に、加藤鉄児『実家暮らしのホームズ』(宝島社文庫)を読みました。著者は、ミステリ作家なのですが、第13回「このミステリーがすごい!」大賞・隠し玉として、『殺し屋たちの町長選』により2015年にデビューしています。本書の主人公は判治リヒトという千葉県柏市郊外の実家暮らしで引きこもりの24歳男性ながら、天才的な謎解きの能力を持っています。この主人公が、ストーリー冒頭で、巨大IT企業ビットクルーの創始者が設立したオリバー・オコンネル財団が主催する「眠れる探偵プロジェクト」の予選で最高得点を記録し、3万ドルの予選通過褒賞金を手にしながら、ニューヨークの本選には出向かずに行方をくらます、というか、引きこもりなのですから、どこかに逃亡ないし逃走するわけではなく、要するに、連絡を絶ったのですが、オリバー・オコンネル財団に居どころを発見され、日本支部のホルツマン・ユキがリヒトの実家を訪ねます。ホルツマンは3万ドルの予選通過褒賞金の返還を求めますが、リヒトはすでにネットカジノのルーレットで3万ドル全額を溶かしてしまっており、未解決事件などの謎解きをすることによって弁済させられる、ということになります。そういった謎解きを集めた連作短編集といえます。でも、当初は、リヒトが引きこもりなのですから、外出しないでいいという条件だったような気がしますが、パトカー乗りたさにアチコチ外出することになります。なお、謎解きをする主人公の判治リヒトがホームズ役であることは間違いないのですが、ワトソン役はオリバー・オコンネル財団日本支部のホルツマン・ユキとともに、柏みなみ署捜査1課の矢野も同様な役回りをします。でないと、リヒトはパトカーには乗れないというわけなのだろうと思います。各短編のあらすじは、まず、「Case 1 8ビットの遺言」では、オリバー・オコンネルの友人である極東ソフトコマース社長の城ノ戸淳が殺された事件の謎を解きます。続いて、「Case 2 自殺予告配信」では、インターネットで自殺を予告したナチュラルボーン・コレクターの居場所を特定します。続いて、「Case 3 撲殺モラトリアム」では、資産家老人の猟奇的な撲殺事件の真相を解明します。続いて、「Case 4 零下二十五度の石棺」では、正月明けの漁協の冷凍倉庫で発見された漁師の事件の謎を解きます。続いて、「Case 5 ダイムの遺言」では、Case 1で殺害された極東ソフトコマース社長の城ノ戸淳からオリバー・オコンネルに送られてきた暗号解読に挑みます。やや、コミカルなミステリであり、オリバー・オコンネル財団日本支部のホルツマン・ユキが判治リヒトの実家を訪ねてくるたびに用意する手土産がなかなか凝っていたり、また、ホルツマン・ユキの来訪を主人公の母親の和美が露骨に喜んでいたりと、謎解き以外の設定も楽しく仕上がっています。

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