11か月連続で実質賃金が減少した2025年11月の毎月勤労統計
本日、厚生労働省から昨年2025年11月の毎月勤労統計が公表されています。統計のヘッドラインを見ると、賃金指数について季節調整していない原系列で見て、名目の現金給与総額は31万202円と前年同月比+0.5%増となったものの、消費者物価上昇率を下回ったため実質賃金は前年同月比で△2.8%減と、11か月連続のマイナスを記録していますまず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから報道を引用すると以下の通りです。
11月実質賃金2.8%減、11カ月連続マイナス 物価に賃上げ追いつかず
厚生労働省が8日発表した2025年11月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比で2.8%減った。賃金は伸びているものの物価上昇には届かず、25年1月以来11カ月連続のマイナスとなった。
名目賃金を示す1人あたりの現金給与総額は31万202円と0.5%増えた。基本給にあたる所定内給与は27万41円で2.0%伸びた。25年の春季労使交渉は2年連続で高水準の賃上げにつながった。賃上げの広がりが所定内給与を押し上げたとみられる。
冬季賞与などの「特別に支払われた給与」は1万9293円と17.0%減った。24年11月は24.9%と高い伸びだった。11月は企業による支給時期によって例年ぶれが大きい。
総実労働時間は135.2時間と3.6%減った。就業形態別では一般労働者が3.5%減の161.2時間、パートタイム労働者が2.9%減の78.1時間だった。
実質賃金の計算に使う25年11月の消費者物価指数(持ち家の家賃換算分を除く総合)の上昇率は3.3%だった。10月の3.4%から伸び率は縮んだ。
コメ類の上昇率は37.1%で、10月の40.2%より伸び率が縮まった。24年秋から25年にかけて流行した鳥インフルエンザの影響などにより鶏卵は12.8%上昇した。原材料価格などの上昇によりコーヒー豆は51.6%、チョコレートは26.7%上がった。
厚労省は25年3月分から実質賃金の算出に消費者物価の総合指数を使う新方式を導入した。新方式による11月の実質賃金は2.4%減と、従来方式よりも0.4ポイント高くなっている。
いつもの通り、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、毎月勤労統計のグラフは下の通りです。上のパネルは名目及び実質の賃金上昇率の前年同月比であり、下は景気に敏感な製造業における所定外労働時間指数の推移です。いずれも影をつけた期間は景気後退期です。

まず、賃金については、11か月連続の前年同月比マイナスというのは、そもそも、現金給与総額が前年同月比でわずかに+0.5%増にとどまったことに起因します。さらに、よりくわしく、変動の大きな部分を除いた「きまって支給する給与」と「所定内給与」を見ると、名目の現金給与指数で見て、ともに+2.0%増だったのですが、「特別に支払われた給与」が▲17.0%減と大きく落ちていることが判ります。ただ、「きまって支給する給与」と「所定内給与」にしても、最近時点での消費者物価指数(CPI)の前年同月比で見たインフレ率が+3%前後ですので、賃金上昇がインフレに追いつかない状況が続いていることになります。すなわち、よくも悪くもボーナス制度が広く普及した日本の賃金システムの中で、現金給与総額の実質の伸びがプラスになったのは直近では昨年2024年12月です。要するに、業績見合いのボーナスが伸びて昨年末に前年比プラスになったわけで、「きまって支給する給与」や「所定内給与」はずっと長く実質マイナスが続いている状況に変わりありません。しかも、直近で統計が利用可能な2025年11月統計はともに名目の伸びで+2.0%ですので、日銀物価目標ギリギリです。すなわち、現在のインフレが一応の収束を見て、日銀物価目標の+2%まで落ち着いたとしても、今くらいの賃上げが続いたとすれば、勤労者の「きまって支給する給与」については実質的に伸びゼロが続くことになりかねません。ですので、足元の物価上昇に見合う賃上げというのは労働者からすれば当然の要求としても、もしも、もしもそれが達成できないとしても、少なくとも+2%程度の賃上げは中小企業も含めて、おしなべて必要である点は理解されなければなりません。日本的な雇用慣行である年功賃金のもとで、ベースアップがなくても定期昇給によって、個別の労働者の昇給は確保されているように見えなくもないのですが、物価上昇に応じて労働者の生活を守るだけでなく、マクロの消費を喚起するために、ベースアップが必要と考えるべきです。ただ、夏季賞与の支給が企業によって6月と7月に分かれるのに対して、年末賞与は12月に集中しており、来月の統計を見る必要があるのはいうまでもありません。なお、製造業の所定害労働時間、いわゆる残業時間についても景気回復局面の後半に入ってジワジワと減少傾向ないし伸び悩んでて、給与総額の伸び悩みに拍車をかけています。
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