« 大和総研リポート「『飲食料品の消費税ゼロ』『消費税一律5%』の費用対効果と必要性」 | トップページ | 今年の恵方巻の価格やいかに? »

2026年1月27日 (火)

上昇率が小幅に縮小した2025年12月の企業向けサービス価格指数(SPPI)

本日、日銀から昨年2025年12月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は前月11月から少し減速して+2.6%を記録しています。変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIの上昇率は前月と同じ+2.7%の上昇となっています。まず、ロイターのサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格、12月は前年比2.6%上昇 伸び率は小幅縮小
日銀が27日に公表した12月の企業向けサービス価格指数速報は前年比2.6%上昇となった。58カ月連続で上昇したが、伸び率は前月から0.1%ポイント縮小した。情報通信やリース・レンタル、諸サービスなどが押し下げ方向に影響した。前月比では横ばいだった。
「情報通信」は前年比2.7%上昇で、プラス幅は前月の2.9%から縮小した。前年同月に「移動電気通信」で一部銘柄のモデルの切り替えが行われたことが実質的な値上げとなり、その反動が出た。
「リース・レンタル」は1.6%上昇で、プラス幅は前月の2.0%から縮小した。このうち「レンタル」では、建機レンタルのプラス幅が縮小。年末年始に閑散期を迎える同品目の季節性が強く表れた。
「諸サービス」のうち、「宿泊サービス」は10.9%上昇と、伸び率が前月を下回った。日銀の担当者によると、中国政府による渡航自粛要請を受けた中国人観光客の減少などが影響し、インバウンド需要がやや鈍化したという。
調査対象146品目のうち、上昇は113品目、下落は14品目で、その差は99品目。日銀の担当者は、今月は全体として小動きだったと指摘。先行きについて、諸コストの上昇分を価格転嫁する動きの持続性や、インバウンド需要がサービス価格に与える影響などを引き続き注視していくとしている。
生産額に占める人件費投入比率の違いで分類した指数では「高人件費率サービス」が前年比3.0%上昇と、伸び率は前月から変わらず。「低人件費率サービス」は同2.3%上昇で、前月の同2.5%上昇から縮小した。
2025年暦年の企業向けサービス価格指数は前年比3.0%上昇。幅広い品目で人件費を転嫁する動きがみられた。伸び率は24年の3.2%上昇から鈍化した。

注目の物価指標だけに、やや長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルから順に、ヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、真ん中のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格とサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。一番下のパネルはヘッドラインSPPI上昇率の他に、日銀レビュー「企業向けサービス価格指数(SPPI)の人件費投入比率に基づく分類指数」で示された人件費投入比率に基づく分類指数のそれぞれの上昇率をプロットしています。影を付けた部分は、景気後退期を示しています。

photo

上のグラフで見ても明らかな通り、モノの方の企業物価指数(PPI)のトレンドはヘッドラインとなる国内物価指数で見る限り、昨年2025年6月統計で+2%台に減速し、6~12月の間は7か月連続で+2%台を記録しています。他方、本日公表された企業向けサービス物価指数(SPPI)もほぼ歩調を合わせる形で、昨年2025年6月+2%台に上昇率を縮小させ、12月まで9月は例外ながら+2%台が続いています。いずれも、日銀物価目標の+2%を大きく上回って高止まりしています。もちろん、日銀の物価目標+2%は消費者物価指数(CPI)のうち生鮮食品を除いた総合で定義されるコアCPIの上昇率ですから、企業物価指数(PPI)や本日公表の企業向けサービス価格指数(SPPI)とは指数を構成する品目もウェイトも大きく異なるものの、+2%台半ばから後半の上昇率はデフレに慣れきった国民や企業の意識からすれば、かなり高い物価上昇と映っている可能性が大きいと考えるべきです。人件費投入比率で分類した上昇率の違いをプロットした一番下のパネルを見ても、低人件費比率のサービス価格であっても+2%超の上昇率を示しており、高人件費率のサービスでは+3%台の上昇率が続いています。すなわち、人件費をはじめとして幅広くコストアップが価格に転嫁されている印象です。その意味では、政府や日銀のいう物価と賃金の好循環が実現しているともいえますが、実態としては、物価上昇が賃金上昇を上回っているという意味は、企業サイドから見れば人件費以上の過剰な価格転嫁が行われている一方で、家計サイドから見れば国民生活が実質ベースで苦しくなっているのは事実と考えざるをえません。ですので、私の従来からの主張ですが、企業サイドの利潤を減少させることにより労働分配率を上昇させ、物価上昇を引き起こすことなく賃上げを実現することが可能です。法人企業統計を見ても、ここまで利益剰余金が積み上がっているんですから、3~5年くらいは物価上昇なしに賃上げが可能ではないか、と私は直感的に試算しています。名だたるエコノミストが誰もこの点を主張しないのは私にはとても不思議です。何か、マズいことがあって忖度が働いているのかもしれません。
最後に、もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて本日公表された昨年2025年12月統計のヘッドラインSPPI上昇率+2.6%への寄与度で見ると、土木建築サービスや宿泊サービスや労働者派遣サービスといった諸サービスが+1.28%ともっとも大きな寄与を示していて、ヘッドライン上昇率の半分ほどを占めています。加えて、ソフトウェア開発や情報処理・提供サービスやインターネット附随サービスなどといった情報通信が+0.59%、さらに、道路貨物輸送や外航貨物輸送や国内航空旅客輸送などの運輸・郵便が+0.40%、ほかに、不動産+0.18%、リース・レンタルが+0.10%、広告が+0.09%、金融・保険が+0.02%などとなっています。引用した記事の4パラ目にあるように、中国からの渡航自粛の影響はあるようで、宿泊サービスの上昇率は2025年11月の13.3%から12月には+10.9%に少し縮小したものの、まだまだ高い伸びが続いています。

|

« 大和総研リポート「『飲食料品の消費税ゼロ』『消費税一律5%』の費用対効果と必要性」 | トップページ | 今年の恵方巻の価格やいかに? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 大和総研リポート「『飲食料品の消費税ゼロ』『消費税一律5%』の費用対効果と必要性」 | トップページ | 今年の恵方巻の価格やいかに? »