減産に転じた鉱工業生産指数(IIP)と停滞感を強める商業販売統計と底堅い雇用統計
本日は月末閣議日ということで、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)と商業販売統計が、さらに、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも昨年2025年12月の統計です。IIPのヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲0.1%の減産でした。2か月連続の減産となります。商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比▲0.9%減の14兆8250億円を示し、季節調整済み指数も前月から▲2.0%の低下となっています。雇用統計のヘッドラインは、失業率は前月から横ばいの2.6%、有効求人倍率は前月から僅かに上昇して1.19倍を、それぞれ記録しています。まず、ロイターのサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
鉱工業生産12月は0.1%低下、半導体製造装置など下押し
経済産業省が30日公表した2025年12月の鉱工業生産指数(速報)は前月比0.1%低下し、2カ月連続のマイナスとなった。ロイター集計の民間予測は0.4%低下だった。基調判断は「一進一退」で据え置いた。
生産を下押ししたのは半導体製造装置や化粧品、機械プレスなど。化粧品はファンデーションやシャンプーなどの減産が響いた。機械プレスは前月にタイやフィリピン向けの生産が増えた反動という。一方、コンベヤーや半導体測定器などは押し上げ要因だった。
企業の生産計画に基づく予測指数は1月が前月比9.3%上昇、2月が同4.3%低下となっている。1月は、例年工場稼働日が他の月より少ない影響を統計的に補正する「季節調整の影響でかさ上げされている可能性がある」(経産省幹部)という。
物価高や金利上昇の影響について企業側から現時点でコメントはないが、経産省所管業界の中では「飲食料品関連産業が物価高の影響でおおむね弱い」(同)とした。
小売販売額12月は0.9%減、4カ月ぶりマイナス ガソリン値下げなどで
経済産業省が30日公表した2025年12月の商業動態統計速報によると小売販売額は前年比0.9%減少し4カ月ぶりに前年割れとなった。ロイター集計民間予測は0.7%増だった。物価高の影響はまちまちだが、暖冬による衣料不振、ガソリンの暫定税率廃止による価格低下などが響いた。
<ガソリン値下げ、食品値上げ、日中関係悪化など影響>
業種別の前年比では、織物・衣服が11.6%減、燃料が10.8%減、無店舗小売が5.8%減など。コートなどの販売が不振だった。ガソリンは、価格低下に加え数量もあまり増えていないもよう。
業態別の前年比では、ホームセンターが2.7%減、百貨店1.2%減と大きなマイナスだった。一方、スーパーは2.7%増で、コンビニが2.5%増、ドラッグストア2.3%増、家電大型専門店0.4%増だった。
百貨店では「中国の対日渡航自粛の影響が出ている」(経産省幹部)という。
ドラッグストアは調剤医薬品の販売が好調だったほか、「コメ、コーヒー、チョコレートなど消費者物価指数上昇の上位に挙がる品目の販売が好調だった」(同)。
スーパーは値上げで食品販売が増えているが、「購買点数は減少傾向」(同)という。
有効求人倍率12月は1.19倍に上昇、製造業などで求人増 失業率2.6%で横ばい
政府が30日に発表した12月の雇用関連指標は、有効求人倍率(季節調整値)が1.19倍で前月に比べて0.01ポイント上昇した。製造業などで求人が増加し、9カ月ぶりの上昇となった。完全失業率は2.6%で、5カ月連続の横ばいだった。
ロイターの事前予測調査で有効求人倍率は1.18倍、完全失業率は2.6%が見込まれていた。
厚生労働省によると、12月の有効求人数は前月に比べて0.3%増加した。一方、有効求職者数は0.8%減少した。 現場からは、食料品製造業や生産用機械製造業などの受注が好調な企業からの求人ニースが高いとの声が聞かれた。ただ、省人化の取り組みや最低賃金の引き上げの影響などで求人を見直す動きも引き続きみられるという。
有効求人倍率は、仕事を探している求職者1人当たりに企業から何件の求人があるかを示す。昨年4月に1.26倍を付けた後、横ばいを挟みつつ徐々に低下してきたが、有効求人数の増加と有効求職者数の減少で今回9カ月ぶりに上昇した。厚労省の担当者は「雇用情勢は前月とそれほど変わらない。人手不足の状況のもとで1倍を上回っている」と述べた。
完全失業率は昨年8月に2.6%に上昇(7月は2.3%)して以降、5カ月連続で横ばい。
総務省によると、12月の就業者数は季節調整値で6846万人と、前月に比べて5万人減少。完全失業者数(同)は186万人で、前月から5万人増加した。
いくつかの統計をまとめて取り上げましたので、とてつもなく長くなりましたが、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2020年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

まず、引用した記事でもロイター調査による市場の事前コンセンサスは▲0.4%の減産とありますし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも同じく𥬠.4%の減産が予想されていました。いずれにせよ、実績である▲0.1%の増産は市場予想からやや上振れした印象です。ただし、レンジ内でしたので、大きなプライズではありませんでした。だから、というわけでもないんでしょうが、統計作成官庁である経済産業省では生産の基調判断については、「一進一退」で据え置いています。昨年2024年7月から1年半ほど連続の据置きです。先行きについては記事にもある通り、製造工業生産予測指数を見ると、足下の1月は補正なしで+9.3%の増産で、翌2月は▲4.3%の減産となっています。しかしながら、統計の上方バイアスを除去した補正後では、足元の1月の生産は+7.2%の増産と試算されています。今年は中華圏の春節が2月17日からですので、1月増産、2月減産は、たぶん、そうなんだろうという気がします。
引用した記事にも、半導体製造装置や化粧品、機械プレスなど生産を下押しした要因が取り上げられていますが、経済産業省の解説サイトによれば、2025年12月統計における生産は、減産方向に寄与したのは、半導体製造装置や機械プレスなどの生産用機械工業が前月比▲1.9%減で▲0.18%の寄与度、仕上用化粧品や頭髪用化粧品などの化学工業(除、無機・有機化学工業・医薬品)が前月比▲2.9%減で▲0.13%の寄与度、印刷用紙(非塗工類)や新聞巻取紙などのパルプ・紙・紙加工品工業が前月比▲4.1%減で▲0.09%の寄与度、などとなっています。他方、その逆の増産方向に寄与したのは、汎用・業務用機械工業が前月比+7.3%増で+0.52%の寄与度、電気・情報通信機械工業が前月比2.7%増で+0.22%の寄与度、自動車工業が前月比1.4%増で+0.17%の寄与度、などとなっています。

続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整済みの2020年=100となる指数をプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。小売業販売のヘッドラインは季節調整していない原系列の前年同月比で見るのがエコノミストの間での慣例なのですが、見れば明らかな通り、2023年年央あたりで前年同月比の伸び率が+5%から+6%台でピークを付けた後、前年同月比はプラスであるもののプラス幅が縮小し、2025年12月統計では、ガソリン価格の低下などもあって、本格的なマイナスの▲0.9%減を記録しています。引用した記事にある通り、実績の▲0.9%減に対して、「ロイター集計民間予測は0.7%増」でしたので、下振れしてしまった印象です。季節調整済み指数の前月比も、2025年中はまさに一進一退であり、2025年12月には▲+2.0%の大きなマイナスを記録しています。ただし、統計作成官庁である経済産業省では基調判断について、季節調整済み指数の後方3か月移動平均により機械的に判断して、本日公表の2025年12月統計までの3か月後方移動平均の前月比が+0.1%の上昇とプラスを維持していることから、先月までの「一進一退」で据え置いています。ただし、参考まで、消費者物価指数(CPI)との関係では、2025年12月統計ではヘッドライン上昇率は+2.1%、生鮮食品を除く総合のコアCPI上昇率も+2.4%となっています。本日公表の東京都区部1月中旬速報値でもヘッドライン上昇率が+1.5%ですので、名目で計測した2025年12月統計の実質消費は確実にマイナスであると考えるべきです。加えて、海外からのインバウンド観光客についても、引用した記事で「中国の対日渡航自粛の影響が出ている」としており、先行きは不透明です。国内消費の実態は本日の統計に示された小売業販売額より下振れしている上に、先行きリスクは大きくなった可能性は考慮しておかねばなりません。

続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの統計であり影を付けた部分は景気後退期を示しています。引用した記事にもあるように、「ロイターの事前予測調査で有効求人倍率は1.18倍、完全失業率は2.6%」が見込まれていましたし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、ロイターとまったく同様に、失業率が2.6%、有効求人倍率は1.18倍でした。本日公表された実績で、失業率2.6%は市場の事前コンセンサスにジャストミートし、有効求人倍率の1.19倍はやや上振れました。引用した記事に示されている厚生労働省の見方にあるように、雇用情勢は引き続き悪くなく、雇用は底堅いとの印象を私も持っています。というのは、失業率が上昇している背景を考えると、それほど大きな懸念は不要と私は感じています。確かに失業者数が増加しているのですが、特に2025年12月の失業者数は、季節調整していない原系列の統計で見て、12万人の増加となっていますが、「新たに求職」のか龍で労働市場に新規参入した失業者が+11万人の増加となっています。お給料などの改善しつつある労働条件にしたがって、労働市場に新規で参入する人が増えているという結果が読み取れます。ですので、前年同月から雇用者や就業者もともに失業者数の増加を超えて増加しています。では何が起こっているのかというと、非労働力人口が減少しています。ですから、専業主婦や高齢者、だけとは限りませんが、労働市場に参入していなかった非労働力人口が労働市場に参入して、雇用者・就業者と失業者ともに増加させている、というわけです。労働条件改善の基本は、春闘における賃上げであり、その分、就業意欲が高まり、賃金上昇に伴って労働市場への参入が増加している、と考えるのが伝統的な経済学の見方であろうと思います。加えて、総務省統計局のプレスリリースによれば、「正規の職員・従業員」は前年同月から+77万人増加した一方で、「非正規の職員・従業員」は▲44万人減少しています。労働市場参入のチャンスと受け止めている人が多いのだろうと考えられます。
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