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2026年2月28日 (土)

今週の読書は為替に関するノンフィクションのほか計5冊

今週の読書感想文は以下の通りです。
まず、河浪武史『円ドル戦争40年秘史』(日本経済新聞出版社)は、40年に渡る日米の通貨、すなわち、円ドル関係の「攻防」を日米の政策当局、日本の大蔵省・財務省や日本銀行、また、米国の連邦準備制度理事会(FED)や財務省の当局者にインタビューした結果などを基にしたノンフィクションです。ダニエル・チャンドラー『自由と平等』(早川書房)は、ロールズの政治哲学を解説し、それに基づいて、自由と平等を論じています。2部構成となっており、第1部でロールズの政治哲学をひも解いた後、第2部でその実践、政策としての実現策を模索しています。阿津川辰海『ルーカスのいうとおり』(幻冬舎)は、ホラーミステリであり、近代物理学に反するかのような現象を基にする特殊設定ミステリです。どろぼうルーカスという30センチほどのぬいぐるみが、主人公のタケシを守護するような振舞いを見せ、殺人に至ったりもします。内山由紀子『日本人の幸せ』(中公新書)では、個人の瞬間的な幸せに加えて、持続的で周囲の環境も含むウェルビーイングについて、文化心理学の観点から、国際比較も含めて、日本人的な特徴的を解明しようと試み、調和的な志向や行動が、ウェルビーイングの重要な基盤、と指摘しています。朝宮運河『日本ホラー小説史』(平凡社新書)は、戦後から現在までの80年間のホラー小説の歴史を後づけています。終戦直後に、ミステリだけでなくホラー小説でも江戸川乱歩の果たした役割を改めて知るとともに、黄金期の1980-90年代に出版された『リング』や『パラサイト・イヴ』についても再認識しました。
今年2026年の新刊書読書は、1月中に24冊、2月に入って先週までに20冊、今週の5冊を加えて合計49冊となります。また、これらの新刊書読書のほかに、今さらながら、ですが、芥川賞受賞の村田沙耶香『コンビニ人間』も読んでいます。ただ、新刊書ではないので、本日のレビューには含めていません。これらの読書感想文については、できる限り、FacebookやX(昔のツイッタ)、あるいは、mixi、mixi2などでシェアしたいと予定しています。

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まず、河浪武史『円ドル戦争40年秘史』(日本経済新聞出版社)を読みました。著者は、日経新聞のジャーナリストであり、現在はワシントン支局長です。本書は、1970年代にいわゆるブレトン-ウッズ体制が崩壊して、為替が世界的に変動相場制に移行した後、タイトルからすれば約40年に渡る日米の通貨、すなわち、円ドル関係の「攻防」を日米の政策当局、日本の大蔵省・財務省や日本銀行、また、米国の連邦準備制度理事会(FED)や財務省の当局者にインタビューした結果などを基にしたノンフィクションです。繰返しになりますが、タイトルは「40年秘史」ということになっているのですが、目次ではコロナ禍後の2023年までをカバーしていて、いわゆるニクソン・ショックなら1971年、為替が一気にフロートに移行したのなら1973年から数えれば50年になるのですが、タイトルと中身の違いは謎です。ついでに、表紙画像の1万円札の肖像も古そうな気がします。編集者はどう考えていたのでしょうか。実は、私自身は1980年代の前半から2020年まで経済官庁に勤務していますので、かなりの部分は重なります。ただ、1970年代のニクソン・ショックや1973年8月の変動相場制移行はさすがに歴史の中でしか知りません。本書でもクローズアップされているイベントのひとつ、1985年のプラザ合意から始まった円高についてはよく記憶しています。1980年代後半に円高が進んだにもかかわらず、一向に日本の経常黒字が縮小しなかった謎をマクロ計量経済モデルをシミュレーションして解明しようと試みていた記憶は特に鮮明です。ともかく、プラザ合意から時々のテンポの速さは別にして、2012年のアベノミクス開始まで、ほぼほぼ一本調子で円ドル関係は円高が進んだのは歴史的事実です。もちろん、本書で解明しようと試みているように、それぞれのイベントにより要因は異なるわけで、プラザ合意後は実にブルータルにも政策当局は為替市場に直接に介入してドル高修正に努めたわけですし、1990年代初頭のバブル崩壊以降はいわゆる「安全通貨」としての円が選好され、危機時の円買いにより円高が進みました。リーマン・ショック後の円高局面がそうですし、「安全通貨」ではないとしても、神戸・淡路大震災や東日本大震災後の円高は、いわゆるレパトリの本国送金増による円高でした。また、本書を読めば、ほぼほぼ日本の政策当局が米国の政策方向に追従しているのがよく理解できます。現在のトランプ政権と同じで、ドル安=円高は米国の輸出を促進することから、決して米国にとって悪いことではなかった点が理解できます。ただ、本書では政策動向について詳細にインタビューなどであとづけていますが、同時に、直接市場に介入する政策は別にして、金融政策が為替相場に割り当てられていた、とまではいわないとしても、少なくとも政策当局者の意識としては、金融政策が為替相場の動向に対して極めてコンシャスに対応していたのがよく判ります。最後に、本書は決してマクロ経済政策の理論から為替を理解しようとするものではありません。そうではなくて、日米両国における為替に対する政策の決定過程の記録に重点が置かれています。その意味で、理論面を重視すると物足りないかもしれません。例えば、ケースバイケースで円ドル相場を名目で考えたり、円の実質実効為替レートで考えたり、アドホックな部分もあります。アベノミクス以降、現在まで続く円安の理論的解明はなされていません。しかし、米国大統領が日本の閣僚の更迭を求めていた、といった部分もあったりして、ある意味で、一級の歴史的資料だと私は受け止めています。

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次に、ダニエル・チャンドラー『自由と平等』(早川書房)を読みました。著者は、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)を本拠とする経済学者・哲学者です。LSEの結束資本主義プログラムの研究部長も務めています。本書は、ロールズの政治哲学を解説し、それに基づいて、自由と平等を論じています。2部構成となっており、第1部でロールズの政治哲学をひも解いた後、第2部でその実践、政策としての実現策を模索しています。まず、第1章冒頭p.41でロールズの正義の2つの原理を示しています。これ自体が、本書でも指摘しているように十分難解なのですが、特に重要な第2の原理を「格差原理」と呼んでいて、要するに、社会的および経済的不平等は公正な機会均等の下で、社会で最も恵まれないメンバーの最大の利益をもたらす必要がある、ということで、後者はマキシミン原理です。そして、続く第1部と第2部で広範なテーマについて議論が展開されています。少し私の専門外の部分もありますので端折って、いくつかの論点だけに集中してみたいと思います。まず、軽く想像されるところですが、現在の日本を含む欧米先進国で「機会の平等」とされているものは不徹底であると結論しています。当然です。ただ、教育の機会の平等について、私は少し異論があります。すなわち、著者は英国人ですので、私の想像ながら、英国的なパブリックスクールを念頭に置いた有償学校に対して、少なくとも公的補助はやめて、むしろ禁止すべきと結論しています。私は逆の方策もあり得ると考えます。すなわち、有償学校と同等の教育を可能とするために、有償学校以外の学校に潤沢な公的補助を提供する、という考えです。実は、私の地元からほど近い大津市は待機児童数が全国ワーストなのですが、何と、市立幼稚園教員の給与を保育士水準に合わせて賃金引下げを行うことを決定しています。私が見たのは毎日新聞の記事「幼稚園教員、賃下げへ 保育士と均衡図る 大津市が給与見直し条例案」と、それを基にした集英社オンラインの記事「『違う。逆。保育士の給与を上げるんだ』待機児童数全国ワーストの大津『幼稚園教員"賃下げ"で炎上』市の狙いは人材流動化も…現場は離職危機」なのですが、本書の有償学校に関する主張は大津市と同じです。集英社オンラインの記事のタイトル通りであり、逆の方向が望まれます。ただし、本書の独自の主張ではありませんが、市場経済における分配の結果については興味深い議論を展開しています。すなわち、累進課税などで平等化を図るとともに、ロールズの財産私有制資本主義を基にして、貧しい人に対して事後分配を実施するのではなく、事前の分配を実行する、というものです。アトキンソン教授などが『21世紀の不平等』で資産提供を論じていますし、同じラインの議論だと思います。もちろん、本書では、ストックとしての資産だけではなく、ユニバーサル・ベーシックインカム(UBI)の必要性も論じています。極めて多岐に渡る議論が展開されていますし、私の専門外の分野も少なくありませんので、ぜひとも多くの方が手に取って読むことを願っています。最後に、こういったテーマの本ですので、本書を読むことなく、ひょっとしたら、私のこのレビューすらも適当に流し読んだだけで、延々と自説を展開するコメントが付くことを予想しています。許容しますが、適切な返信をしたいと思います。

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次に、阿津川辰海『ルーカスのいうとおり』(幻冬舎)を読みました。著者は、ミステリ作家であり、私はアンソロジーに収録された短編作品はいくつか読んだ記憶がありますが、長編作品は初読だと思います。本書は、一言でいえば、ホラーミステリといえます。近代物理学に反するかのような現象を基にする特殊設定ミステリです。割と最近では、例えば、私も方丈貴恵のタイムトラベルしてパラドックスを引き起こすミステリとか、時空の割れ目から姿形を変えられる怪物が出現するミステリとか、いくつか読んでいます。方丈貴恵以外にもあるかと思います。本書の主人公は、小学5年生の沢城タケシです。出版社の編集者だった母親は2年前に交通事故で亡くなり、市役所勤務の父親と暮らしています。同じ小学校のクラスのシゲ、ビャク、カンタの3人からイジメにあっています。転校生の森くんと仲良くなるのですが、森くんの父親は心霊探偵として事件解決に当たっており、森くんの父親は霊感がないものの、同級生の森くんは霊感があって「視える」体質だったりします。母親が編集を担当した絵本の出版記念でわずかに100個だけ限定配布されたぬいぐるみが、表紙画像に見えるどろぼうルーカスです。そのルーカスのぬいぐるみ、わずか30センチほどの小さなぬいぐるみがタケシを守護するかのように振る舞う、殺人事件まで起こってしまう、というミステリです。タケシが「死ねばいいのに」とか、「いなくなればいいのに」といった趣旨の発言をすると、まるでルーカスが聞き届けて実行するかのように、近隣に住んで迷惑行為を繰り返す隣人が2階から転落したり、イジメを繰り返すクラスメートに怪我を負わせたりした上に、段々とエスカレートして、イジメを見て見ぬふりをする小学校の単に教師が刺殺されたり、父親が再婚を予定している市役所の同僚の女性がタケシの家で襲われたりするわけです。霊感がある森くんによれば、ルーカスには何かが取り憑いているといいますし、果たして、ぬいぐるみのルーカスがタケシを守るためにやっているのか、もしそうだとすれば、誰の怨念が取り憑いているのか、あるいは、ぬいぐるみが動くはずもなく、近代物理学で説明のつくミステリなのか、第1部で展開されたこういった事実関係に対して、第2部から警察も交え、第3部では解決に至ります。当然です。ミステリですから、あらすじはこれくらいにします。1点だけ、藤崎翔によるお梅のシリーズと違って、少なくともルーカスは自分の意志ではなく、動いているとしても、誰かの怨念で、あるいは、別の何かの物理力で動いています。これは大きいな違いです。ただ、お梅と同じで30センチほどのぬいぐるみという物理的な存在としての限界はあります。

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次に、内山由紀子『日本人の幸せ』(中公新書)を読みました。著者は、京都大学人と社会の未来研究院教授であり、ご専門は社会心理学、文化心理学だそうです。私の子どもが心理学を大学で勉強していたのですが、経済学と同じように心理学にもミクロとマクロがあり、臨床心理学がミクロで、社会心理学はマクロだと聞き及んだ記憶があります。それはともかく、本書では幸せや幸福に対して、ウェルビーイングを眼目としています。私は専門外なのでよく判らなかったのですが、ウェルビーイングというのは個人の瞬間的な幸せに加えて、もっと持続的で周囲の環境も含む、と説明しています。その上で、表紙画像にあるように国際比較を考え、文化心理学の観点から日本人に特徴的なウェルビーイングを解明しようと試みています。ただ、常識的にも理解できますが、国際比較や国別ランキングなどにどこまで意味があるかは懐疑的な見方を示しています。日本だけに限られた特徴ではありませんが、『孤独なボウリング』のパットナム教授のいう社会関係資本の重要性を指摘します。加えて、日本的な特徴を考える場合、欧米では個人的な達成感や自己実現などが重視されるのに対して、日本では対人関係やいろいろと調和的な志向や行動が、おそらく、幸福感やウェルビーイングの重要な基盤となる、という指摘をしています。そうかもしれません。したがって、地域コミュニティや学校・職場といった所属する組織を「場」という言葉で表現し、その重要な基盤的役割を強調しています。ただ、日本でもしばしば見られますが、この「場」に対する同調圧力が強い、というのも日本的な特徴のひとつといえます。そういった学校の学風、職場の企業風土などに対して、日本的な特徴を示すとともに、特に後者の企業風土が国際化、グローバリゼーションによって変化しつつある点を指摘しています。具体的には自己の2階建てモデルとして。第6章、p.134で図解しつつ示しています。そのあたりは読んでみてのお楽しみです。最後に、私は経済政策の目標を個人の幸福度の上昇に置くことは懐疑的です。すなわち、物価を抑制したり、失業率を引き下げたりするよりも、ドーパミンだか、セロトニンだかの幸福ホルモンを国民に配布するのが経済政策として重要かといえば、否定的な意見が多いと考えています。ただ、本書で示されているような幸福やウェルビーイングの基礎をなすような経済社会的の諸条件を整備することは経済政策の重要な役割である、と考えています。

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次に、朝宮運河『日本ホラー小説史』(平凡社新書)を読みました。著者は、ホラー、怪談、怪奇幻想小説を専門とするライター、書評家だそうです。本書は、戦後から現在までの80年間のホラー小説の歴史を後づけています。まあ、タイトル通りなわけです。序章として前史を取り上げ、日本の戦後史からはみ出す中世文学の「雨月物語」とか、あるいは、日本ならざる英語圏のホラー小説などを軽くおさらいした後、章別の構成は編年体となっています。すなわち、第1章で終戦直後の1950年くらいまで、第2章で高度成長期の1950-60年代、第3章が1960-70年代、第4章が黄金期の1980-90年代、第5章は停滞から令和のブームとなった2000年から2020年代、という時代区分です。私自身はそれほど好んでホラー小説を読むわけではありませんが、ミステリやSFなどとともに、エンタメ小説のひとつのジャンルとしてホラー小説の読書を楽しんでいます。もうひとつは、子どもがホラー小説を好きでよく読んでいて、親として子どもの読んでいるホラー小説は十分把握し、教育上の悪影響が出ないようにすべき、と考えてせっせと読んでいたこともあります。そのきっかけは2010年の貴志祐介『悪の教典』ではなかったか、と記憶しています。私の個人的な事情はともかく、やはり、日本のホラー小説、特に、戦後ホラー小説史で重要な人物は江戸川乱歩であったと確認できました。1948年雑誌『宝石』に掲載された江戸川乱歩の「怪談入門」と題するエッセイを本書でも取り上げています。日本以外では、ホラー小説の帝王ともいわれるスティーヴン・キングが歴史的にも重要な役割を果たしている点は衆目の一致するところです。そして、本書でも日本ホラー小説の黄金期としている1980-90年代の金字塔は鈴木光司『リング』です。ただ、小説としてよりも映画としてヒットしたような気もします。「貞子」へと続くシリーズです。『リング』に続いて、1990年代半ばには瀬名秀明『パラサイト・イヴ』もスケールの大きな作品として、本書でも特筆されています。そして、最近時点では、いろいろとホラー小説も広がりを見せています。もちろん、本書でもホラー小説の隣接領域としてミステリやSFへの言及も少なくありません。停滞期ながら、21世紀では綾辻行人の『Another』のシリーズについても、映画とともに私も楽しみました。ホラー小説としては、奥様の小野不由美よりも綾辻行人の方を読んでいるかもしれません。最近の注目点として、本書では創元ホラー長編賞を受賞した上條一輝『深淵のテレパス』について、超常現象を心霊調査チームに調査を依頼するという形で、単なる超常現象の描写に加えて、科学的な装いを持った新しいジャンルに踏み出した可能性を指摘しています。『深淵のテレパス』はもちろん、同じ作者の次作『ポルターガイストの囚人』も私は読みましたが、その科学的な裏付けめいた部分が強化されていると感じました。最後に個人的な感想を1点、2015年第22回日本ホラー小説大賞受賞の『ぼぎわんが、来る』でデビューした澤村伊智が、一時の停滞期を脱する推進役として指摘されています。実は、このころに角川書店ではモニター制度をというのがあり、出版前のゲラ刷りの段階で一般読者に感想を聞くという制度がありました。この『ぼぎわんが、来る』の事前評価版に私は当選して読んで、もちろん、私なりの評価をフィードバックした記憶があります。何回か引越を繰り返して紛失していますが、あの事前評価版を良好な状態で保存しておけば、ひょっとしたら、いい「お宝」になっていたのかもしれない、と考えないでもありません。

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2026年2月27日 (金)

30周年のポケモンデー

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本日、ポケモンデーです。誠にめでたくも30周年です。
何と、30周年ロゴアイコンがポケモン1025匹分もダウンロード可能です。私はすべて欲しかったのですが、500番以降は知らないポケモンがかなり多く、計200匹くらいで打止めにしました。プロ野球球団とのタイアップ企画も予定されています。我が阪神タイガースは黄色のチームカラーに基づいてピカチュウとエレキッドがマスコットになって、4月半ばの甲子園にやって来るようです。

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増産ながら弱めの鉱工業生産指数(IIP)と大きく増加した商業販売統計

本日は月末閣議日ということで、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が公表されています。いずれも1月の統計です。IIPのヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から+2.2%の増産、3か月ぶりの増産となります。商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+1.8%増の12兆9540億円を示し、季節調整済み指数も前月から+4.1%の上昇となっています。まず、ロイターのサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産1月は前月比2.2%上昇、予想下回る 先行き減産を計画
経済産業省が27日公表した1月の鉱工業生産速報(2020年=100)は前月比2.2%上昇と、3カ月ぶりにプラスに転換した。ロイターがまとめた民間予測(中央値)は5.3%上昇でこれを下回った。基調判断は「一進一退」で据え置いた。
企業の生産計画から算出する予測指数は、2月が前月比0.5%低下、3月が同2.6%低下と減産を見込んでいる。
1月の生産を押し上げた主な業種は自動車、プラスチック製品、化学。前月比で普通乗用車が22.9%、頭髪用化粧品が27.3%、それぞれ増えた。頭髪用化粧品は「シャンプー・リンスの限定品・新商品の生産が増えた」(経産省)。もっとも普通乗用車の生産は「季節調整による統計処理で大きめに出ている可能性がある」(同)という。
一方、生産指数を下押しした品目は半導体製造装置(12.7%減)やフラットパネル・ディスプレー製造装置(54.4%減)など。
2月、3月の生産予測では金属製品、汎用・業務用機械など7業種が減産、パルプ・紙、電気・情報通信など5業種が増産を見込む。
小売販売額1月は前年比1.8%増、2カ月ぶりプラス
経済産業省が27日公表した1月の商業動態統計速報によると、小売業販売額は前年比1.8%増の12兆9540億円と2カ月ぶりにプラスとなった。ロイターがまとめた民間予測中央値は0.4%減だったが、予想外に増えた。食料品値上げによる押し上げに加え、自動車や家電などの販売好調も寄与した。
<パソコンや「スイッチ2」が好調>
業種別の前年比で最も押し上げに寄与したのは自動車で9.6%増。次いで家電など機械器具小売業が12.4%増、飲食料品も1.8%増えた。
業態別の前年比では百貨店が2.2%増、スーパー3.3%増、家電大型専門店9.6%増、ドラッグストア4.0%増など。
スーパーは食料品の値上げが寄与。家電大型専門店は、スマホやパソコン、ゲーム機が好調だった。半導体メモリーの先高感がパソコン販売を後押ししているほか、任天堂の家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ2」の販売好調が続いている。
百貨店は中国人旅行客が減少しているもののインバウンド需要が堅調で、高額な衣料・宝石・時計などの販売が好調という。
ドラッグストアはコメ、コーヒーなど価格が上昇している食品の販売好調が継続している。

複数の統計をまとめて取り上げましたので、とてつもなく長くなりましたが、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2020年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事でもロイター調査による市場の事前コンセンサスは+5.3%の増産とありますし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも同じく+5.6%の増産が予想されていました。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスの予想レンジ下限が+3.3%増でしたので、実績である+2.2%の増産は市場予想から大きく下振れした印象です。ただし、統計作成官庁である経済産業省では生産の基調判断については、「一進一退」で据え置いています。昨年2024年7月から1年半ほど連続の据置きです。先行きについては記事にもある通り、製造工業生産予測指数を見ると、足下の2月は補正なしで▲0.5%の減産で、翌3月も▲2.6%の減産となっています。しかしながら、統計の上方バイアスを除去した補正値では、足元の2月の生産は▲1.9%の減産と試算されています。今年は中華圏の春節が2月17日からですので、1月増産、2月減産は、たぶん、想定内なんだろうという気がします。
引用した記事にも、自動車、プラスチック製品、化学など生産を押し上げた要因が列挙されていますが、経済産業省の解説サイトによれば、1月統計における生産は、増産方向に寄与したのは、普通乗用車や駆動伝導・操縦装置部品などの自動車工業が前月比+9.1%増、寄与度+1.16%、プラスチック製機械器具部品やプラスチック製フィルム・シートなどのプラスチック製品工業が前月比+8.1%増、寄与度0.35%、頭髪用化粧品や石けん類などの化学工業(除、無機・有機化学工業・医薬品)が前月比+7.4%増で+0.33%の寄与度、などとなっています。他方、その逆の減産方向に寄与したのは、半導体製造装置やフラットパネル・ディスプレイ製造装置の生産用機械工業が前月比▲2.0%減で▲0.18%の寄与度、印刷用紙(塗工)などのパルプ・紙・紙加工品工業が前月比▲0.1%減で▲0.00%の寄与度、などとなっています。

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続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整済みの2020年=100となる指数をプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。小売業販売のヘッドラインは季節調整していない原系列の前年同月比で見るのがエコノミストの間での慣例なのですが、見れば明らかな通り、2023年年央あたりで前年同月比の伸び率が+5%から+6%台でピークを付けた後、前年同月比はプラスであるもののプラス幅が縮小し、1月統計では+1.8%増を記録しています。引用した記事にある通り、実績の+1.8%増に対して、「ロイターがまとめた民間予測中央値は0.4%減だった」ので、かなり上振れした印象です。季節調整済み指数の前月比も、2025年中はまさに一進一退でしたが、2025年12月の▲+2.0%の大きなマイナスの反動もあって、1月には+4.1%増を記録しています。ただし、統計作成官庁である経済産業省では基調判断について、季節調整済み指数の後方3か月移動平均により機械的に判断して、本日公表の1月統計までの3か月後方移動平均の前月比が+0.9%の上昇とプラスを維持していることから、先月までの「一進一退」で据え置いています。ただし、参考まで、消費者物価指数(CPI)との関係では、1月統計ではヘッドライン上昇率は+1.5%、生鮮食品を除く総合のコアCPI上昇率は+2.0%となっています。本日公表の東京都区部2月中旬速報値でもヘッドライン上昇率が+1.6%ですので、名目で計測した商業販売統計の1月統計は実質消費がプラスかマイナスかは微妙なところであると私は考えています。

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2026年2月26日 (木)

AI活用はどうあるべきか?

やや旧聞に属するトピックながら、先週木曜日の2月19日、日本総研から「AI 導入、『効率化』に終われば低成長」と題するリポートが明らかにされています。日本総研のリポートから1ページ目の要点4点のうち、2点目と3点目を引用すると次の通りです。

要点
  • 人口減少が加速するわが国では、今後も業務効率化を目的としたAI活用が先行しやすい。こうした利用は、人手不足の緩和に資する面もあるが、提供される製品・サービスの中身や需要構造を大きく変えない限り、経済全体への波及効果は限定的となる。試算によると、生成AIの利用が効率化にとどまる場合、経済押し上げ効果は年率0.2~0.4%に過ぎず、労働力人口の減少ペースなどを踏まえると、成長戦略と位置づけるには力不足である。地域によっては効果がほとんど現れず、格差拡大を招く恐れもある。
  • 高成長につなげるためには、AIの利用を効率化にとどめず、新たな製品・サービスの創出に振り向けることにある。そのためには、予測・最適化・常時監視などAIが持つ機能を軸に業務プロセスを再設計し、品質の向上や新しい事業の立ち上げにつなげる取り組みが不可欠である。とくに、医療、介護、物流といったエッセンシャル・サービスで付加価値の創出が進めば、経済押し上げ効果を年率1%以上に高めることも可能となり、成長底上げと格差縮小の余地が広がる。

少し前に、内閣府がAIと労働について「世界経済の潮流 2024年Ⅰ」で分析した際には、IMF による次の Cazzaniga et ak. (2024) に基づいていたのですが、ここで取り上げた日本総研のリポートは次の OECD による Filippucci et al. (2025) に基づいています。それぞれの引用情報は以下の通りです。

続いて、日本総研のリポートから AI導入率(中核業務における本格導入) と AIの利用割合(地域別、2024年) のグラフを引用すると次の通りです。

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見ての通りで、中核業務におけるAIの本格導入について見ると、先進国の中では日本がもっとも遅れています。今さらながら、広く知れ渡った事実だという気がします。日本国内の地域別を見ると、首都圏を中心とする南関東や近畿圏で利用が広がっているものの、まだ20%にも達していない、という結果です。この地域別も、軽く想像されるところです。このリポートにはグラフなどはありませんが、企業規模別に見ると、おそらく、大企業ほど導入が進んでいるのは間違いのないところでしょう。なお、日本総研のリポートには、(図表7) AI利用率の想定 があり、引用はしませんが、2040年の時点で米国68.0%に対して、日本は37.6%にとどまる、との試算が示されています。

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続いて、日本総研のリポートから 生成AIによる経済押し上げ効果 のグラフを引用すると上の通りです。これまた、見ての通りで、3ケースが示されていますが、保守ケースとは生成AIの利用範囲が現状並みにとどまる場合であり、今後15年間の経済押上げ効果は年率+0.20%と小さなものにとどまり、今後想定される適用タスクの拡大を一定程度見込む標準ケースでも年率0.42%に過ぎません。これに対する進展ケースでは、日本総研のリポートによれば、経済効果を高めるために、AIが持つ機能を軸にタスク構成そのものを組み替え、「人間とAIの協働領域」や「AIだけができる領域」を起点に、品質の向上や新事業の立ち上げにつなげ、AIを幅広い分野に適用するとともに、導入の採算性を高めることで利用する企業を増やすことができると指摘しています。さらに、人間とAIの協働を前提とした設計が進むことで、補完的な活用も増えやすくなり、その結果として、対人対応、判断の説明、関係構築といった「人間にしかできない領域」を厚くする循環が生まれ、経済成長力を高めることが期待される、との主張です。そして、この進展ケースでは15年間の経済効果は+1.26%に達することが示唆されています。
このための方策としては、政府が昨年2025年12月に決定した「人工知能基本計画」の着実な推進による供給サイドの施策とともに、AIを活用した製品・サービスへの需要の創出、販路の開拓などによる需要サイドの施策も必要、と強調しています。

はい、私もそう思います。強調表示しておいた「導入の採算性を高める」がもっとも重要なポイントであり、単に補助金でAI導入コストを下げて導入を促進するのではなく、企業が採算面から本格導入を進めることができるかどうかがポイントになります。でも、企業や経済団体は今までのパターンからすると、国民には痛みを伴う改革を求めながら、企業は補助金を欲しがるんでしょうね。

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2026年2月25日 (水)

+2.6%の高い上昇が続く1月の企業向けサービス価格指数(SPPI)

本日、日銀から1月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は前月2025年12月から変わらず+2.6%を記録しています。変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIの上昇率は前月から▲0.1%ポイント鈍化して+2.6%の上昇となっています。まず、ロイターのサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格、1月は前年比2.6%上昇 中国人客減少で「宿泊」の伸び鈍化
日銀が25日に公表した1月の企業向けサービス価格指数速報は前年比2.6%上昇で、伸び率は前月から横ばいとなった。インバウンドの増勢鈍化で宿泊サービスなどが押し下げたが、全体として方向感を欠く動きとなった。前月比は0.5%低下で、2025年6月以来のマイナスだった。
「諸サービス」は前年比3.0%上昇で、前月から伸びが鈍化した。中国政府による渡航自粛要請を受けて中国人観光客が減少し「宿泊サービス」の前年比プラス幅が縮小した。
一方、「広告」は前年比3.1%上昇で、プラス幅が前月から拡大した。「インターネット広告」において検索連動型広告や動画広告向けの出稿需要が堅調に推移。「雑誌広告」でも、地方自治体向けなどの高単価案件がけん引した。
調査対象146品目のうち、上昇は117品目、下落は12品目で、その差は105品目。日銀の担当者は「全体として方向感のない動きとなった」と指摘。先行きについて、各種コストの上昇分を価格転嫁する動きの持続性や、宿泊サービスなどサービスの先行き、国際商品市況や海運市況の動向を注視していくと述べた。
生産額に占める人件費投入比率の違いで分類した指数では「高人件費率サービス」が前年比3.0%上昇と、伸び率は前月から変わらず。ソフトウエア開発や建物サービス、情報処理提供サービスが小幅に押し上げ寄与した一方、土木建築サービスが押し下げた。「低人件費率サービス」は同2.0%上昇で、前月の同2.4%上昇から縮小した。宿泊サービスが押し下げ方向に影響した。

注目の物価指標だけに、やや長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルから順に、ヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、真ん中のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格とサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。一番下のパネルはヘッドラインSPPI上昇率の他に、日銀レビュー「企業向けサービス価格指数(SPPI)の人件費投入比率に基づく分類指数」で示された人件費投入比率に基づく分類指数のそれぞれの上昇率をプロットしています。影を付けた部分は、景気後退期を示しています。

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上のグラフで見ても明らかな通り、モノの方の企業物価指数(PPI)のトレンドはヘッドラインとなる国内物価指数で見る限り、直近のピークは昨年2025年5月統計で+3.1%を記録した後、昨年12月に+2.4%、そして、もっとも最近おデータが利用可能な今年2026年1月統計で+2.3%となるまで、緩やかに減速を続けています。他方、本日公表された企業向けサービス物価指数(SPPI)も、昨年2025年9月に+3.1%と直近のピークをつけた後、昨年2025年12月、今年2026年1月ともに+2.6%まで上昇率が縮小してきています。ただし、いずれも、日銀物価目標の+2%を大きく上回って高止まりしています。もちろん、日銀の物価目標+2%は消費者物価指数(CPI)のうち生鮮食品を除いた総合で定義されるコアCPIの上昇率ですから、企業物価指数(PPI)や本日公表の企業向けサービス価格指数(SPPI)とは指数を構成する品目もウェイトも大きく異なるものの、減速しつつあるとはいえ+2%台半ばから後半の上昇率はデフレに慣れきった国民や企業の意識からすれば、かなり高い物価上昇と映っている可能性が大きいと考えるべきです。人件費投入比率で分類した上昇率の違いをプロットした一番下のパネルを見ても、低人件費比率のサービス価格であっても+2%台の上昇率を示しており、高人件費率のサービスでは+3%台の上昇率が続いています。すなわち、人件費をはじめとして幅広くコストアップが価格に転嫁されている印象です。その意味では、政府や日銀のいう物価と賃金の好循環が実現しているともいえますが、実態としては、物価上昇が賃金上昇を上回っているという意味は、企業サイドから見れば人件費以上の過剰な価格転嫁が行われている一方で、家計サイドから見れば国民生活が実質ベースで苦しくなっているのは事実と考えざるをえません。ですので、私の従来からの主張ですが、企業サイドの利潤を減少させることにより労働分配率を上昇させ、物価上昇を引き起こすことなく賃上げを実現することが可能です。法人企業統計を見ても、ここまで利益剰余金が積み上がっているんですから、3~5年くらいは物価上昇なしに賃上げが可能ではないか、と私は直感的に試算しています。名だたるエコノミストが誰もこの点を主張しないのは私にはとても不思議です。何か、マズいことがあって忖度が働いているのかもしれません。
最後に、もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて本日公表された1月統計のヘッドラインSPPI上昇率+2.6%への寄与度で見ると、土木建築サービスや建物サービスや労働者派遣サービスといった諸サービスが+1.16%ともっとも大きな寄与を示していて、ヘッドライン上昇率のほぼ半分を占めています。諸サービス以外では、ソフトウェア開発や情報処理・提供サービスやインターネット附随サービスなどといった情報通信が+0.50%、さらに、道路貨物輸送や鉄道旅客輸送や道路旅客輸送などの運輸・郵便が+0.34%、ほかに、不動産+0.19%、リース・レンタルが+0.14%、広告が+0.13%、金融・保険が+0.05%などとなっています。引用した記事の2パラ目にあるように、中国からの渡航自粛の影響はあるようで、宿泊サービスの上昇率は2025年12月の10.9%から今年2026年1月には+4.5%に減速したものの、まだまだ高い伸びが続いています。

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2026年2月24日 (火)

現役世代の税と社会保障負担はどれだけ増えたのか?

先週木曜日2月19日に第一生命経済研究所から「現役世代の収入と税・社会保険料負担はどれだけ増えたか」と題するリポートが明らかにされています。企業業績が増収増益を続ける中で、労働者の賃金は横ばいを続けていて、円安効果もありますが、日本の賃金水準はすでに韓国にも後塵を拝するようになり、先進国の中でも日本が低賃金国であることは広く知れ渡っています。他方で、賃金が伸びないにもかかわらず、税や社会保障負担が増加し続けています。下のグラフは第一生命経済研究所のリポートから引用しています。

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ものすごく大雑把にて端点端点の2000年と2025年を取ると、上のパネルから、勤め先収入は633.4万円から712.5万円に+79.1万円増加していますが、社会保険料負担は57.6万円から83.3万円に+25.7万円増加し、同じく直接税と間接税はそれぞれ+14.2万円、16.1万年増加し、合わせて+56.0万円増加していますから、いわゆる手取りから消費税を引いた額としては+23.1万円の増加にとどまっています。実に、25年間で毎年+1万円に満たない額しか増加していないわけです。2000年時点での手取りから消費税を引いた額が513.3万円ですから、25年間でわずかに+4.5%の伸びしかなかったわけです。他方、私が総務省統計局の消費者物価指数(CPI)を調べたところ、2020年基準のヘッドライン指数で2000年97.3から2025年111.9へと+15%の物価上昇がありました。したがって、25年間で▲10%の実質所得が失われたことになります。ジワジワと国民生活が苦しくなっているのは明らかです。

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2026年2月23日 (月)

今週金曜日の2月27日はポケモンデー

今週金曜日の2月27日はポケモンデーです。誠にめでたくも、今年は30周年の節目の年です。我が家の子どもたちとポケモンはほぼほぼ同年代です。今しばらく、ポケモンの勢いが衰えることはないものと私は確信しています。

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2026年2月22日 (日)

いよいよ本格的な花粉シーズン始まる

先週木曜日2月19日、日本気象協会から2026年 春の花粉飛散予測(第4報)が明らかにされています。

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上の画像は日本気象協会のサイトから引用しています。いよいよ、本格的な花粉シーズンが始まったようです。嫌な季節情報でした。

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2026年2月21日 (土)

今週の読書は経済書からエンタメ小説まで計7冊

今週の読書感想文は以下の通りです。
まず、山川哲史『市場が見た日本経済』(金融財政事情研究会)では、海外投資銀行ご勤務の経験から、金融市場の視点から見た日本経済論、円資産を中心とした金融市場論が展開されており、各章も海外投資家によるトレーディングに応じた構成です。マクロ経済と金融市場の乖離の視点はありません。高橋和志・樋裕城・牧野百恵[編]『実証から学ぶ開発経済学』(有斐閣ブックス)では、途上国や新興国における開発案件の選定に関する実証的な研究成果が集められています。ただ、ミクロの案件選択問題ばかりですし、戦後日本の経済発展の経験を活かすという視点は見られません。上條一輝『ポルターガイストの囚人』(東京創元社)は、前作『深淵のテレパス』に次ぐ「あしや超常現象調査」シリーズ第2段であり、幽霊屋敷のような古い一軒家におけるポルターガイスト現象を芦屋晴子と越野草太らが解明しようとするホラー小説で、ラストはアクションの要素も入っています。円居挽『京都市民限定で求人が出ているとあるバイトについて』(角川書店)は、京都を舞台にしたホラー小説です。地方出身で京都に下宿する主人公の大学生が留年し5回生になって親元からの仕送りを止められたため、古道具屋の女主人から怪しげな高額アルバイトを次々と請け負います。森バジル『探偵小石は恋しない』(小学館)は、福岡にある探偵事務所を舞台に、浮気などの素行調査を通じて、様々な謎を解明するのですが、とても不自然、というか、小説を書くために設定されたような謎が多く、本格ミステリとしては評価が分かれるところだと思います。岩城一郎『日本のインフラ危機』(講談社現代新書)は、高度成長期に整備されたインフラの老朽化が進んでいる中で、前半はインフラ老朽化について、後半はご専門のコンクリート構造物のメンテナンスなどについて、国民生活のライフラインの重要性の観点から議論しています。海老原嗣生『外国人急増、日本はどうなる?』(PHP新書)は、タイトルから想像されるヘイト系ではなく、外国人の犯罪比率などをデータで示して誤解の解消に努めるとともに、人材としての外国人をどう考えるかを論じています。人手不足解消の守りの立場とともに、知日家を育てる攻めの姿勢も強調されています。
今年2026年の新刊書読書は、1月中に24冊、2月に入って先週までに13冊、今週の7冊を加えて合計24冊となります。また、これらの新刊書読書のほかに、大山誠一郎『アリバイ崩し承ります』と『時計屋探偵の冒険』(実業之日本社)も読んでいます。ただ、新刊書ではないので、本日のレビューには含めていません。これらの読書感想文については、できる限り、FacebookやX(昔のツイッタ)、あるいは、mixi、mixi2などでシェアしたいと予定しています。

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まず、山川哲史『市場が見た日本経済』(金融財政事情研究会)を読みました。著者は、日本銀行から外資系投資銀行、すなわち、ゴールドマン・サックス証券とバークレイズ証券を経て、現在は立命館アジア太平洋大学(APU)国際経営学部の教授を務めています。私はゴールドマン・サックス証券のチーフエコノミストをされていたころに1度か2度かお会いしたことがります。本書は冒頭で明記されているように、「金融市場の視点から見た日本経済論であり、円資産を中心とした金融市場論である。」ということになります。ですので、章構成は海外投資家による7大トレード、すなわち、日本化トレード、脱デフレトレード、正常化トレード、機会主義トレード、割安トレード、日本売りトレード、匍匐前進トレード、ということになっています。多くのエコノミストが注目しているマクロ経済指標や統計、あるいは、それらに基づく景気循環といったものではなく、株式+債券というくくりの証券を中心とする金融市場の動向を通じて日本経済をひも解こうと試みています。その試みが成功であるかどうかは、まあ、読者次第なのかもしれませんが、私は基本的に懐疑的です。なぜなら、第1に、バックグラウンドに理論モデルが見えないからです。したがって、因果関係や相関関係も不明で、金融市場における証券価格の動向がそこにあるだけで、何で決まるのかについての解説に欠けています。第2に、金融市場は経済のファンダメンタルズと乖離することがあるからです。乖離してもいいから金融市場でひと儲けしたい、という向きにはいいのかもしれませんが、どちらに乖離するかは、ある意味で、ギャンブルですから、金融市場へのベットもギャンブルの要素を含む可能性がある、と私は考えています。ですから、私は金融市場の証券価格動向よりは雇用の質と量を重視するエコノミストでありたいと願っています。ただ、強く同意するのは、足元の株式市場の高騰は脱デフレに基づいていてる、という見方です。政府や日銀は慎重に「脱デフレ」とはいいませんが、少なくとも、現在の物価が日銀目標を上回っていることは明らかで、株式価格が上昇しているのはこの物価上昇と連動している面があります。ですから、逆に、昨日2月20日に公表された消費者物価上昇率(CPI)、生鮮食品を除く総合のコアCPIの上昇率が日銀目標の+2%近傍にまで落ち着いてきましたので、先行き物価上昇がさらに鈍化すれば、株式相場の上昇が終了する可能性もあります。もしも、物価上昇が鈍化しても株式相場の上昇が終わらなければ、それはバブルの要素が入っている可能性もあります。最後に、海外投資家の7大トレードにはいちいち英訳がつけられていて、7大トレード以外にも英語表現が明記されているものがあるのですが、少なくとも「匍匐前進」はMuddling thoughではなく、crawling forwardではないかと思います。まあ、泥っぽい表現にしたい気持ちは判ります。

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次に、高橋和志・樋裕城・牧野百恵[編]『『実証から学ぶ開発経済学』(有斐閣ブックス)を読みました。編者は、順に、政策研究大学院大学教授、上智大学経済学部准教授、アジア経済研究所主任調査研究員となります。本書は4部構成であり、農村開発、人的資本、産業振興、政治経済的アプローチ、の各部で構成されています。少しわかりにくいのが最後の政治経済的アプローチなのですが、ノーベル賞を受賞したアセモグル教授のような制度論、あるいは、汚職などが取り上げられています。冒頭のはしがきで明記されているように、本書は同じ出版社によるジェトロ・アジア経済研究所[編]『テキストブック 開発経済学』の後継書という位置づけになっています。私はその『テキストブック 開発経済学』は読んでいて、もしも、私が開発経済学を大学で教えることになれば教科書として使おうというくらい、とってもいいテキストだったのですが、本書はかなり違う趣きではないかと思います。というのは、一言でマクロとミクロの違いです。単に、私には合わない、というだけです。『テキストブック 開発経済学』は、割合と早いページでハリス-トダロ・モデルによるマクロ経済の開発や成長を解説しているのに対して、本書は延々と分野別のマイクロな経済開発のための案件選択を実証的に、半分くらいはランダム化比較試験(RCT)による開発案件選択の問題を取り上げて論じています。ですので、実証分析の宿命ではありますが、分析が部分均衡的であり一般均衡やマクロ経済の動向から乖離する可能性があります。しかも、多くのチャプターは実証分析をていねいに説明している一方で、実証研究論文を参考文献に示すだけで、いわば丸投げしているチャプターも散見されます。学生の出来のよくない論文で、ChatGPTなどの生成AIに参考文献をリストアップしてもらって、アブストだけを読んで勝負しているのがありますが、そういった雰囲気を漂わせているチャプターもあったりします。さすがに、第Ⅱ部の人的資本と第Ⅲ部の産業開発はいい出来だと思う一方で、私なんかが考える開発経済学のひとつの考えは、日本の発展モデルなのですが、そういった視点はまったく見られません。もちろん、本書でも言及されているメキシコ就学助成金プログラム=PROGRESAなんかは、世界的に見ても最近の特筆すべき成功例で実証分析結果もいっぱい出ているのですが、例えば、日本の高度成長期前の1950年には50%に満たなかった高校進学率が1955-75年の20年間で大きく上昇して、現在と同じほぼほぼ100%に達しています。こういった日本の歴史的な実例は本書にはありません。例えば、私がまだ公務員をしていたころに同僚と取りまとめた "Japan's High-Growth Postwar Period: The Role of Economic Plans" はそういった経済開発の上で個別の案件選択というよりも、政策的なガイドラインの提示が果たした役割を強調しています。個別の開発プロジェクトの案件採択に関する実証研究ももちろん重要ですし、私はほぼほぼ本書のコラムにあるようなフィールドワークをしたことがないので、そういった地に足ついた現地活動も必要なのでしょうが、アジアの多くの国は制度的にも政策的にも、かなり日本の高度成長期の経験を参考にしているところがあります。開発経済を専門にする日本のエコノミストなのですから、高度成長期の経済発展の経験を参考にするのも一案ではないかと思います。最後に、もう一度繰り返すと、マクロエコノミストである私には合わない、というだけで、マイクロな案件選択に関してはいい実証研究成果を集めていると思います。

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次に、上條一輝『ポルターガイストの囚人』(東京創元社)を読みました。著者は、まだ会社員の兼業作家らしいのですが、前作『深淵のテレパス』で創元ホラー長編賞を受賞してデビューしています。私はこの前作を読んで高く評価していますので、次作の本書も読んでみた次第で、その評価は裏切られませんでした。ということで、本書も映画宣伝企業に勤務する芦屋晴子と越野草太の「あしや超常現象調査」の2人が御茶ノ水自由大学の研究者と協力して超常現象のデータを収集するというシリーズ第2弾です。タイトル通り、ポルターガイストがテーマになっています。あしや超常現象調査に案件を持ち込むのは、アラフォーで売れないイケメン俳優の東城彰吾です。父親が脳卒中で施設に入った後、雑司ヶ谷にある古い一軒家の実家に戻るとポルターガイストに悩まされます。越野が中心になって法則性を探り一応の対策をしますが、超常現象は続いてしまいます。そして、依頼者の東城彰吾は行方不明になってしまいます。前作でも登場した元警察官で現実主義者の倉元、超能力者のオカルトマニアの犬井、そして、倉元の事務所で働き始めた前作の被害者(?)の桐山楓がチームになって超常現象の解明に努めます。前作と同じ登場人物のキャラが明確で、単なる怪奇現象や超常現象というだけではなく、この作品ではチョッピリ科学的な裏付けらしきものもありますし、ラストはアクションシーンもあって、前作よりも格段にパワーアップしています。加えて、依頼者の東城彰吾が行方不明になってからの場面では、叙述トリックも駆使されています。ですので、ホラーなのはもちろんですが、ミステリの要素も入ってたりします。はい、私のようなジーサンでも前作よりもずっと怖いと感じました。未確認で、SNSか何かの情報だと思うのですが、このあしや超常現象調査シリーズは三部作で、次作で完結というウワサを小耳に挟みました。もしホントにそうなら残念ですが、私は次作も読みたいと思います。

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次に、円居挽『京都市民限定で求人が出ているとあるバイトについて』(角川書店)を読みました。著者は、京都大学ミス研ご出身のミステリ作家です。ただ、本書はミステリというよりはホラーと考えるべきです。本書の主人公は神田祟といって、閉じた田舎で生まれ育って、黒髪の乙女と出会う青春を夢見て京都の大学に進学したものの、就活に失敗して留年し5回生となったところで親からの仕送りを止められて、ちゃぶ台を古道具屋の深村堂に売りに来たところ、その深村堂の女性店主の深村魔美から怪しげなアルバイトを紹介される、そして、次々にその怪しげなアルバイトが連鎖する、というストーリーです。最初の方は、幽霊が出るかどうかの確認で古アパートに泊まり込んだり、小学校に上る前の子どもの部屋で不審音を確認したり、だったのですが、本格的なホラーめいたアルバイトとしては、第4章で尾張谷橘人という高校生の家庭教師をし、実は、あの世とこの世を行き来するヨモツミハシラだった、というあたりから始まります。続いて、第5章で京都、いや日本最古の古書店である書楼祇陀林へ行って稀覯本の『洛東巷説顛末』を取ってきたり、第6章で深村堂の魔美とともにお宝の骨董品を探す百歩の家に入ったり、第7章ではきしもじ講への代理出席したり、とかがあります。詳細はレビューでは言及しません。どこがホラーなのかは読んでみてのお楽しみです。そして、第10章では沌蘭寺でビデオの監視を請け負い、「それ」が出現する時刻を特定するアルバイトながら、「それ」と目を合わせてはいけない、という条件です。ラストの方では、失敗するとホラーな結果が待っているというリアル京都市民.botの出す指示に従って、京都市内を移動する、というのもあり、この部分はホラーというよりも、ややアクションのような内容です。最後に、なにぶん我が母校ですので、私は京大ミス研ご出身の作家の小説はなるべく読むようにしていますが、本書の作者の作品は初読でした。京都の地名のついた作品はいくつか聞き及んでいますが、文庫本でかなりの分厚さなので手が出せずにいました。本書を読んで、特に、ほかの作品を読みたい、というカンジはしませんでしたが、機会があれば以前の作品にも挑戦したいと思います。

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次に、森バジル『探偵小石は恋しない』(小学館)を読みました。著者は、もちろん、小説家なのですが、前作の『ノウイットオール』が松本清張賞を受賞してデビューしています。私はこの前作は読んでいます。本書は、福岡に拠点を置く探偵事務所を舞台に、代表兼調査員の小石27歳、相談員兼調査員の蓮杖2-3年年下を中心にストーリーが進みます。探偵事務所にはアルバイトの雛未という大学院生もいますが、個人情報には接しませんし調査もしません。小石は殺人事件とか、警察でも手を焼くような難事件の推理をしたいのですが、依頼される案件はほぼほぼ素行調査、というか、浮気の調査ばかりです。小石は特殊技能として、誰から誰に対して恋情の矢が延びているかが見えたりします。したがって、浮気をはじめとする素行調査にはうってつけで、事実、やる気がないにもかかわらず、かなり成績はよかったりします。高校生ながら、1000億企業の創業者の娘が、親も許した結婚を前提に付き合っている恋人の浮気調査、事実婚の男性が妻の浮気を疑って事実調査、アイドルと結婚した男性が脅迫状を受け取って、ボディガード兼犯人解明、などですが、主人公の小石の高校のころの事件も振り返って語られます。それらの謎解きも興味深いところですが、ラストにドカンと大きな謎が待ち構えています。もちろん、小石が謎を解き明かします。最後に、本書はミステリであることは確かですが、謎や事件がどうこうというよりも、目いっぱい読者をミスリードすることに主眼が置かれているような気もします。その意味で、本格ミステリかということになると、疑問を持つ読者がいそうな気もします。私自身は、かなり本格性の高いミステリだと思いますが、ノックスの十戒やヴァン・ダインの20則には則っていたとしても、その当時の想定外の点もあるため、本格ではないと考える読者がいても不思議ではありません。ただ、本格ミステリとはいえ、というか、本格ミステリであるがゆえに、とても不自然で作為的なストーリーで、通常ではありえない設定です。「事実は小説よりも奇なり」という言葉がありますが、本書は常識的な事実からはかなりかけ離れていて、よく考えたものだと私は感心していますが、否定的に評価する読者がいておかしくありませんし、その意味で、評価が分かれる可能性は大いにあると思います。

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次に、岩城一郎『日本のインフラ危機』(講談社現代新書)を読みました。著者は、日本大学理工学部土木工学科の教授であり、コンクリート構造物の高耐久化やインフラのメンテナンスがご専門のようです。ですので、本書ではコンクリート構造物のインフラを主として取り上げています。昨年1月末に埼玉県八潮市で道路が陥没し、トラック運転手の方が亡くなったのは、まさに、本書で指摘するインフラの劣化が原因のひとつと考えられます。本書では、米国も1980年代にインフレの劣化対策が進められています。1930年代のいわゆるニューディール政策のに基づくインフラ整備の50年後に相当するわけです。日本では、米国が1930年代から進めてきたインフラ整備を、1960年代から70年代に急速に進めたため、現在の時点で50年ほどを経過して老朽化が進み、タイトルになっている「インフラ危機」の時期となっている、という指摘です。前半ではこういったインフレ整備や老朽化の一般論、日米比較がなされた後、後半では著者ご専門の橋などのコンクリート構造物についての技術論が展開されています。後半は私の専門外の分野ですし、本書の技術的な内容なほとんど理解できませんでしたが、そろそろ、日本もリニア新幹線なんかの新しいインフラを建設するよりも、ひょっとしたら、既存インフラのメンテナンスや耐久診断などに力を入れる段階に来ているのかもしれないと感じさせられる部分はありました。特に、インフラは地方公共団体に依存する部分が少なくないわけですから、いずこも同じご予算不足で限られたリソースをインフラの維持管理に振り向ける必要も感じました。最後に、本書ではコンクリート構造物に焦点を当てていますが、ある意味では、国民生活のライフラインとしてさらに重要な水道、特に上水道の水道管の劣化が私は気になっています。でも、技術的なことに理解が及ばないだけに、ややもどかしさも感じています。

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次に、海老原嗣生『外国人急増、日本はどうなる?』(PHP新書)を読みました。著者は、リクルートワークス研究所にて雑誌「Works」の編集長を務め、その後、人材コンサルのようなお仕事をしているのではないか、と私は想像しています。前作『静かな退職という働き方』も同じ出版社から上梓されており、私は昨年読んでいます。ということで、本書は、タイトルからすれば、最近よく聞く一種のバズワード調であり、ヘイト系の本かと受け止める読者もいるかもしれませんが、決してそうではありません。外国人の犯罪比率などをデータで示して誤解の解消に努めるとともに、人材としての外国人をどう考えるかを論じています。まず、外国人で本書で問題と考えるのは不法滞在者、すなわち、外国人滞在者の中のわずかに2%ほどだと指摘し、ほかの大部分の外国人滞在者は真面目に働いたり、勉強したりしている、としています。当然です。その上で、ここまで外国人が増加したのは政策の瑕疵であると指摘し、2010年に難民認定制度が改正され、それまで認められていなかった就労が、難民申請から半年を経過すれば可能になったため、ごく一部の国から難民申請数が激増し、半年を経過して就労するようになってしまった、と指摘しています。少なくとも、外国人とか、難民とか、一括りにした議論は避けることが賢明だろうと本書でも結論しています。その上で、人口が減少する中で労働力確保のための外国人受入れといった守りの考え方ともに、積極的に日本を好きになり、知日家を増やすための方策などの攻めの考え方も示しています。具体的には読んでみてのお楽しみです。私は、本書第2章の議論の中で、菅内閣のころに流行りそうになったアトキンソン流の淘汰選別の議論があって、それには賛成しませんが、ほかにはいくつか考えさせられるトピックが展開されていると受け止めています。ただ、外国人の「同化」にやや傾いた議論のような気もします。外国人をあるがままに受入れて、決して野放図ではない多様化を適切に進める、という観点は大事だと思います。

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2026年2月20日 (金)

日銀物価目標の+2%を記録した1月の消費者物価指数(CPI)

本日、総務省統計局から1月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の前年同月比で見て、前月からさらに減速して+2.0%を記録しています。日銀物価目標の+2%が達成された形です。ただ、日銀の物価目標である+2%以上の上昇は2022年4月から45か月、すなわち、4年近く続いています。生鮮食品を含むヘッドライン上昇率は+1.5%まで減速している一方で、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+2.6%となっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

1月の消費者物価2.0%上昇、2カ月連続で伸び縮小 ガソリン減税で
総務省が20日発表した1月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合が112.0となり、前年同月と比べて2.0%上昇した。伸び率は2カ月連続で縮み、24年1月以来の低い水準となった。25年末のガソリン税の旧暫定税率廃止でエネルギー価格が下がっている。
QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値も2.0%の上昇だった。小数点以下を見ても、22年4月から46カ月連続で日銀の物価安定目標である2%を上回っている。
エネルギー価格は5.2%の低下で、2カ月連続で下落した。減税などでガソリン価格が14.6%下がっている。電気代は1.7%、都市ガス代は3.7%それぞれ低下した。
生鮮食品を除いた食料の上昇率は6.2%だった。6カ月連続で伸びは縮んだ。24年夏ごろから価格が上がっていたコメ類は27.9%となった。高い伸びが続くものの、上昇率は落ち着きつつある。
原材料価格の上昇などを受け、おにぎりの伸び率は11.8%、外食のすしは7.0%だった。主産地ブラジルでの天候不良によってコーヒー豆は51.0%、原材料のカカオが高騰しているチョコレートは25.8%と高い伸びが続く。
インバウンド(訪日外国人)需要の高まりを背景に、宿泊料は6.0%上がった。
生活実感に近い生鮮食品も含めた総合は1.5%の上昇だった。22年3月以来、3年10カ月ぶりに2%を下回った。前年に価格が高騰したキャベツが63.5%低下するなどして生鮮野菜の下落率が14.0%に拡大し、全体を押し下げた。

何といっても、消費者物価指数(CPI)は現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やや長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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引用した記事の2パラめにもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは+2.0%ということでした。実績の+2.0%とジャストミートしたようです。また、エネルギー関連の価格については、ガソリンなどについての旧暫定税率が廃止されています。総務省統計局のプレスリリースによれば、ガソリンの暫定税率廃止及び政策による効果の寄与度が試算されており、ガソリンについては当月分で▲0.33%、ただし、前年剥落分が+0.20%あり、合わせて▲0.13%の寄与、同様に、灯油についても当月分で▲0.02%、ただし、前年剥落分が+0.07%あり、合わせて+0.05%の寄与という結果が示されています。ということで、品目別に消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率とヘッドライン上昇率である+1.5%に対する寄与度を少し詳しく見ると、まず、繰り返しになりますが、エネルギーの寄与度は1月統計ではマイナスであり、前月の2025年12月統計の▲0.25%に対して、2026年1月は▲0.42%となっています。したがって、いわゆる寄与度差は▲0.17%に達していて、コアCPI上昇率が12月の+2.4%から1月の+2.0%に▲0.4%ポイント減速したうちの半分近くを占めています。逆にいえば、エネルギーを除く物価が上昇している、と考えるべきです。例えば、生鮮食品を除く食料価格の上昇は引き続き大きく、前年同月比で+6.2%、寄与度で+1.49%に上ります。CPI総合の上昇率である+1.5%のほぼすべてが食料価格の上昇に起因するというわけです。特に、食料の中で上昇率が大きいのはコメであり、生鮮食品を除く食料の寄与度+1.49%のうち、コシヒカリを除くうるち米だけで寄与度は+0.17%に達しています。引用した記事にもあるように、上昇率は前年同月比で+27.9%ですから、一時のピークは超えた可能性がありますが、まだまだきわめて高い上昇率と考えるべきです。コメが値上げされれば、当然に、おにぎりやすしの価格も上がります。ただ、消費者物価の上昇がピークアウトしつつある可能性もあります。
多くのエコノミストが注目している食料の細かい内訳について、前年同月比上昇率とヘッドラインCPI上昇率に対する寄与度で見ると、繰り返しになりますが、生鮮食品を除く食料が上昇率+6.2%、寄与度+1.49%に上ります。その食料の中で、これも繰り返しになりますが、コシヒカリを除くうるち米が大きく値上がりしていて、寄与度も+0.17%あります。うるち米を含む穀類全体の上昇率は+12.0%、寄与度は+0.31%に上ります。東京都区部のコメ価格のグラフは農水省のサイトで見ることが出来ます。下のグラフの通りです。コメに加えて、カカオショックとも呼ばれたチョコレートなどの菓子類も上昇率+8.2%、寄与度+0.22%に上っています。特に、その中でも、チョコレートは上昇率+25.8%、寄与度0.10%に達しています。コメ値上がりの余波を受けたおにぎりなどの調理食品が上昇率+5.0%、寄与度+0.19%、調理食品の中でもおにぎりが上昇率+11.8%、寄与度0.02%に上っています。同様に、すしなどの外食も上昇率+3.9%、寄与度+0.18%を示しています。ほかの食料でも、ブラジルの天候不良による需給逼迫のため、コーヒー豆などの飲料も上昇率+7.8%、寄与度0.14%、鶏卵などの乳卵類が上昇率+7.4%、寄与度+0.10%、肉類も上昇率+3.8%、寄与度+0.10%、などなどと書き出せばキリがないほどです。食料はエネルギーとともに国民生活に欠かせない基礎的な財であり、実効ある物価対策とともに、価格上昇を上回る賃上げや最低賃金の大幅な引上げを期待しています。

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2026年2月19日 (木)

大型案件で大きく増加した2025年12月の機械受注

本日、内閣府から昨年2025年12月の機械受注が公表されています。民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月から+19.1%増で1兆525億円、10~12月期で見ると前期比;7.9%増の2兆9292億円と、月次でも、四半期でも、いずれも増加を記録しています。ただし、今年2026年1~3月期の見通しは前期比▲4.5%減とマイナスに転じると見込まれています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

機械受注7.9%増 25年10-12月期、2四半期ぶりプラス
内閣府が19日発表した2025年10~12月期の機械受注統計によると、設備投資の先行指標とされる船舶・電力を除く民需(季節調整済み)は前期比7.9%増の2兆9292億円だった。2四半期ぶりにプラスに転じた。非製造業が12.8%増と大きく伸び、全体を押し上げた。
製造業は1.4%減だった。前期からの反動減で化学工業などが落ち込んだ。
非製造業のうち通信業は通信機などの受注がありプラスに働いた。12月に飲食サービス業を含む「その他非製造業」で電子計算機などの受注が伸びた。
12月単月の民需は前月比19.1%増で1兆525億円だった。2カ月ぶりの増加となった。石油製品・石炭製品で大型受注があったことなどで製造業が25.1%増と伸びた。
基調判断は「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。米国による一連の関税政策の影響に関し「関税が始まる前の水準には戻っていない」と指摘した。
26年1~3月期の見通しは前期比4.5%減とマイナスに転じる。製造業が4.9%減、非製造業が3.3%減とみる。民需の毎月のぶれをならした3カ月移動平均は4.4%増だった。

包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、機械受注のグラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前月比+4.0%増、レンジの上限でも+7.7%増でした。実績の+19.1%増は予想レンジ上限を超える大きな上振れでした。ただし、前月の昨年2025年11月の前月比は▲11.0%減でしたし、引用した記事にもあるように、石油製品・石炭製品で大型受注があったことが要因ですので、統計作成官庁である内閣府では、基調判断を「持ち直しの動きがみられる」と据え置いています。足元の1~3月期の見通しは前期比▲4.5%減ですから、この先も引き続き増加が続くという見通しではない、ということなのだと思います。業種別に季節調整済みの前月比で見て、繰返しになりますが、石油製品・石炭製品で大型受注があった製造業が+19.1%増であった一方で、船舶・電力除く非製造業も+8.2%増となっています。
日銀短観などで示されたソフトデータの投資計画が着実な増加の方向を見込んでいる一方で、機械受注やGDPなどのハードデータで設備投資が増加していないという不整合があり、現時点ではまだ解消されているわけではないと私は考えています。人手不足は見込み得る範囲の近い将来にはまだ続くことが軽く予想されますし、DXやGXに向けた投資が盛り上がらないというのは、低迷する日本経済を象徴しているとはいえ、大きな懸念材料のひとつです。かつて、途上国では機械化が進まないのは人件費が安いからであるという議論が広く見受けられましたが、日本もそうなってしまうのでしょうか。設備投資の今後の伸びを期待したいところですが、先行きについては決して楽観はできません。特に、日銀が金利の追加引上げにご熱心で、市場における積極財政の評価もあって、長期金利はかなり高い水準にまで上昇しています。為替への影響を別にしても、金利に敏感な設備投資には悪影響を及ぼすことは明らかです。地政学的なリスクも不透明ですし、どう考えても、先行きについてリスクは下方に厚いと考えるべきです。

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2026年2月18日 (水)

1兆円を超える赤字を計上した1月の貿易統計

本日、財務省から昨年2025年12月の貿易統計が公表されています。統計のヘッドラインを季節調整していない原系列で見ると、輸出額が前年同月比+16.8%増の9兆1874億円に対して、輸入額は▲2.5%減の10兆3401億円、差引き貿易収支は▲1兆1526億円の赤字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

貿易赤字、1月は1兆1526億円 対米輸出は2カ月連続減少
財務省が18日発表した1月の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆1526億円の赤字と、前年同月に比べて58.0%縮小した。赤字は3カ月ぶり。
輸出額は前年同月比16.8%増の9兆1874億円だった。増加は5カ月連続。1月としては過去最大だった。アジア向けの半導体などの電子部品や非鉄金属が増えた。
輸入額は2.5%減の10兆3401億円だった。減少は5カ月ぶり。原粗油が金額ベースで8.1%減少した。数量は5.7%増えたものの、原油価格が下がった。輸入通関単価は円建てで1キロリットルあたり6万5872円と、13.0%下がった。
国・地域別でみると、米国向けの輸出額は1兆4620億円と、前年同月に比べ5.0%減った。減少は2カ月連続。自動車が9.9%減の3954億円だった。輸出額を台数で割った平均単価は9.2%減の407万円と、11カ月連続で減少した。トランプ米政権の関税政策の影響が続いた。
中国向けの輸出は32.0%増の1兆5497億円だった。半導体や液晶向けプラスチック板の輸出が増えた。輸入は0.6%増の2兆6334億円だった。半導体や灯油などの輸入が増えた一方、下着など衣類は減少した。
輸出が増加した要因について財務省は「春節の期ずれ影響の可能性がある」とみる。中国の春節による連休期間は現地の物流や工場が止まり、日本からの輸出の動きが鈍る傾向がある。前年は1月だったが、今年は2月のため前年比で輸出が拡大したとみられる。
アジア全体向けの輸出は25.8%増の5兆2087億円だった。台湾向けの半導体が増えた。輸入は0.4%減の5兆3115億円。マレーシアからの液化天然ガスやインドからのスマートフォンの輸入が減った。
欧州連合(EU)向けの輸出額は29.6%増の8473億円だった。電気自動車(EV)や建設用機械の輸出が拡大した。輸入額は0.7%減の1兆497億円。航空機類が落ち込んだ。

包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲2兆円を超える貿易赤字が見込まれていましたので、実績の▲1兆円をやや上回る赤字はやや上振れした印象です。予測レンジの上限が▲1.7兆円でしたので、そのレンジを越えています。このあたりは、よく判りません。というのは、1月や2月は中華圏の春節があり、今年2026年は2月17日から、昨年2025年は1月29日からでした。この旧暦に基づく春節が、日本をはじめとする近隣諸国の貿易をかく乱している気がします。引用した記事でも、「春節の期ずれ」の可能性を示唆しています。なお、昨年2025年1月の日本の貿易赤字は▲2.7兆円でした。また、季節調整済みの系列で見ると、貿易収支は黒字であり+4500億円超を記録しています。いずれにせよ、私の主張は従来から変わりなく、輸入は国内の生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易収支や経常収支の赤字と黒字は何ら悲観も楽観もする必要はない、と考えています。固定為替相場制度を取っていた1950-60年代の高度成長期のように、「国際収支の天井」を意識した政策運営は、現在の変動為替制度の下ではまったく必要なく、比較優位に基づいた貿易が実行されればいいと考えています。それよりも、米国のトランプ新大統領の関税政策による世界貿易のかく乱によって資源配分の最適化が損なわれる可能性の方がよほど懸念されます。すなわち、引用した記事のタイトルのように、トランプ関税で日本の輸出が減少して貿易収支が赤字の方向に振れることではなく、貿易を含めた資源配分の最適化ができなくなってしまう方が問題と考えるべきです。加えて、経済外の影響かもしれませんが、国際間で自由で民主的で協調的な通商体制が崩壊する可能性を私は危惧しています。第2次世界大戦の原因のひとつは関税に基づくブロック経済化にあった、とする有力な見方は否定しようがありません。
本日公表された1月の貿易統計について、季節調整していない原系列の前年同月比により主要品目別に少し詳しく見ておくと、まず、輸入については、原油及び粗油が数量ベースで+5.7%増ながら、金額ベースでは▲8.1%減となっています。石油価格が低迷している商品市況を反映しています。さらに、エネルギーよりも注目されている食料品は金額ベースで+3.4%増と、輸出額総額が▲2.5%減となっているのに対して、食料輸入は増加を示しています。特に、食料品のうちの穀物類は数量ベースで+6.7%増、金額ベースでも+6.7%増となっています。原料品のうちの非鉄金属鉱は数量ベースで▲9.5%減ながら、商品市況の高騰により金額ベースでは+21.1%増を記録しています。輸出に目を転ずると、輸送用機器のうちの自動車が台数の数量ベースで+3.7%増、金額ベースでも+0.4%増となっています。ただし、米国向けの自動車輸出について、さらに詳しく見ると、数量ベースでは▲0.8%減にとどまっている一方で、金額ベースでは▲9.9%減となっており、引き続き、日本のメーカーあるいは輸出商社の方で部分的なりともトランプ関税を相殺するような価格設定により、販売台数の維持を図っている可能性があると考えられます。どこまでこういった関税負担がサステイナブルであるかは私には不明です。自動車を別にすれば、電気機器は金額ベースで+27.3%増、一般機械も+14.3%増となっています。輸出だけは国別の前年同月比もついでに見ておくと、中国向け輸出が前年同月比で+32.0%増となり、「春節の期ずれ」による何らかの影響がうかがえます。中国も含めたアジア向けの地域全体では+25.8%増となっています。他方で、米国向けは▲5.0%減と停滞を見せています。他方で、西欧向けは+25.5%増となっています。

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2026年2月17日 (火)

2025年10-12月期GDP統計速報1次QEは前期比年率+0.2%成長でやや下振れ

昨日今日と、別用あって経済指標を追いきれていませんが、昨日内閣府から公表された昨年2025年10~12月期のGDP統計速報1次QEは前期比+0.1%、年率で+0.2%の低い伸びにとどまりました。コンセンサスが+2%を少し下回る+1%台後半の年率の伸びでしたから、やや下振れた印象です。+0.5~1.0%くらいの潜在成長率にも届かなかった、というところです。他方で、インフレ率が年度末の3月統計までには日銀物価目標の+2%を下回るというコンセンサスですので、低成長かつ高インフレのスタグフレーションではなく、成長もインフレも低い単純な不況という印象です。
下のグラフはニッセイ基礎研究所のリポートから引用しています。

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総選挙で高い支持を得た高市内閣の責任ある積極財政やいかに?

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2026年2月16日 (月)

年齢と幸福度の関係

私は60代も後半になって、もともとのめでたい性格が増幅されて、幸福度が増してきているように感じています。通常、幸福度は年齢とともに低下し、30代から40代にかけて底を打って、その後は上昇する、と考えられているのですが、それを実証する論文が明らかにされています。全米経済研究所(NBER)の "Well-being Increases in Age Among Workers: Evidence From 103 Countries" と題するワーキングペーパーです。まず、論文の引用情報は以下の通りです。

続いて、NBERのサイトからABSTRACTを引用すると次の通りです。

ABSTRACT
We examine how workers' and non-workers' wellbeing varies by age across 171 countries in eight international surveys. In 103 countries (60%) we find evidence that workers' wellbeing rises with age and workers' illbeing falls with age. This relationship appears to have strengthened over time in some countries. Patterns are different among non-workers and are sensitive to survey mode. Where surveys are conducted using Computer-Assisted Web-based Interviews (CAWI) non-workers' wellbeing is U-shaped, but this is less clear-cut when the data are collected with Computer-Assisted Telephone Interviews (CATI). The change in the age profile of workers' wellbeing may reflect changes in selection into (out of) employment by age, changes in job quality, or changes in young workers' orientation to similar jobs over time. But changes in smartphone usage - often the focus of debate regarding declining young peoples' wellbeing - are unlikely to be the main culprit unless there are sizeable differences in smartphone usage across young workers and non-workers, which appears unlikely.

要するに、調査対象の171か国において労働者と非労働者の幸福度 wellbeing が年齢とともにどのように変化するかを検証し、調査対象の60%に当たる103か国で年齢とともに幸福度 wellbeing が上昇するという結果を得ています。下のグラフは、pdfファイルの論文から Chart 1a. Despair for non-workers, Chart 1b. Despair for workers, and Chart 1c. Despair overall を引用しています。プロットされているのは幸福度 wellbeing とは真逆の失望/落胆 despair ですが、この逆が幸福度と考えてよさそうです。

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本日、内閣府から昨年2025年10~12月期のGDP統計速報1次QEが公表されているのですが、諸般の事情により、明日にでも取り上げたいと思います。

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2026年2月15日 (日)

今春の桜の開花やいかに

先週木曜日の2月12日に、ウェザーニュースから今年2026年の第3回桜開花予想が明らかにされています。ソメイヨシノの開花は3月21日の東京から始まって、3月22日に福岡や高知、横浜が続きます。大阪の3月27日ころをはじめとして3月下旬から4月初めにかけて西日本や東日本の各地で続々と開花を迎えそう、ということです。まあ、沖縄は別勘定ということなのだろうと思います。
下の画像は、ウェザーニュースのサイトから2026 桜開花マップを引用しています。

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2026年2月14日 (土)

今週の読書は経済書や政治学の学術書をはじめ計6冊

今週の読書感想文は以下の通りです。
まず、岩田一政・日本経済研究センター[編著]『2075 次世代AIで甦る日本経済』(日本経済新聞出版)では、50年後の2075年の日本経済について、AIの活用が進んで明るい展望が持てる改革の未来のほか、停滞の未来や悪夢の未来の3つのシナリオを考え、人口やGDPの規模といったデータに基づいて議論しています。此本臣吾[監修]。森健[編著]・NRI拡張社会研究会チーム[著]『AIで拡張する社会』(東洋経済)では、野村総研のグループがAIにより人間の知力の拡張やマクロ経済などの社会の拡張を通じて、知性、労働、経済の未来予想図を考えています。もちろん、個人情報保護やAIの暴走といったリスクも議論されています。上川龍之進『消費税と政治』(有斐閣)では、消費税の導入と税率引上げの長期の歴史を後づけています。すなわち、財政再建策としての消費税がどのように位置づけられ、歴代首相がどのような理念や思惑で導入・税率引上げを進めたかを官僚・財界・世論の影響も含めた政治過程として描き出しています。小倉充夫『民主主義の躓き』(東京大学出版会)では、民衆、暴力、国民国家の3つの要素から、民主主義がタイトル通りに躓きを内包しつつ、歴史的に進化ないし発展してきた過程を分析し、未完の統治形態である現在の民主主義の危機を解明しようと試みています。新自由主義が民主主義を劣化させている、とも主張されています。豊下楢彦『「核抑止論」の虚構』(集英社新書)では、戦後広く信じられてきた核抑止論を根本的に批判していますが、それでは実際に核兵器を廃絶し、あるいは、その前段階で核兵器の削減を進めるにはどうすればいいか、については、それほど説得力ある議論がなされているとも思えません。唐沢かおり『「気が利く」とはどういうことか』(ちくま新書)では、他者に配慮した「気が利く」行動や言動については、学習できるスキルである、としつつも、弊害も同時に指摘していて、自分で心をすり減らしてしまったり、見透かされて逆効果だったり、過保護に陥って成長を妨げたりする可能性も指摘しています。
今年2026年の新刊書読書は、1月中に24冊、2月に入って7冊、今週の6冊を加えて合計37冊となります。また、これらの新刊書読書のほかに、瀬尾まいこ『その扉をたたく音』(集英社文庫)も読んでいます。ただ、新刊書ではないので、本日のレビューには含めていません。これらの読書感想文については、できる限り、FacebookやX(昔のツイッタ)、あるいは、mixi、mixi2などでシェアしたいと予定しています。

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まず、岩田一政・日本経済研究センター[編著]『2075 次世代AIで甦る日本経済』(日本経済新聞出版)を読みました。編著者は、私と同じ内閣府ご出身で日銀副総裁も務められた大先輩のエコノミストです。本書では、現状維持の停滞の未来、AIの活用が進んで明るい展望が持てる改革の未来、そして、現状維持よりももっと悪い悪夢の未来の3つのシナリオを示し、本書と同様のタイトルの日本経済研究センター(JCER)の長期予測「2075年 次世代AIでよみがえる日本経済」の研究成果を基にした長期の将来予測です。そもそも、約50年後の2075年には私は生き長らえていないでしょうし、経済学的な予測がそこまでのことを可能にできるかどうかは疑問ですが、あくまで、可能性としての将来予測、ということで考えておくにとどめるべきだという気がします。現状維持的な未来では、世界的に汎用AIの導入が進む一方で、日本では遅れが目立つものの、総人口は9000万人台で下げ止まる一方で、改革が進めばAIの導入によって医療や介護を軸にした成長が達成され、総人口も1億人超を維持する、ということになります。悪夢のシナリオでは世界的に保護主義が蔓延し、日本国内でも格差が拡大する一方で貧困も増加し、社会保障は破綻する、ということになります。改革が進めば、ケインズの「わが孫たちの経済的可能性」にあるような労働時間の大幅な削減が可能となり、教育投資の拡大による人的資本の強化が図られ、現在のようなメンバーシップ型ではないジョブ型の雇用がさらに普及し、繰返しになりますが、人口は1億人を維持できることになり、GDPの規模も世界4位にとどまる、という未来が描かれています。ただ、ではどうすればいいのか、については4章で改革シナリオが示されているのですが、現時点でいわれていることの寄集め、としか私には見えませんでした。この改革シナリオでは、いいところ現状維持の停滞の未来のシナリオが実現されるだけなのではないか、という疑問が残ってしまいました。ただ、さすがに、狭い意味での経済だけではなく、カーボンニュートラルや世代間格差などのテーマにも手を広げており、日本社会全体を視野に収めた幅広い議論が展開されています。さらに、単なる方向性や印象論だけではなくデータの裏付けが示されていますので、それはそれで参考になる部分が少なくないような気がします。私自身は2章の現状分析や3章の標準的なシナリオ設定の議論が勉強になりました。参考文献もしっかりしています。

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次に、此本臣吾[監修]。森健[編著]・NRI拡張社会研究会チーム[著]『AIで拡張する社会』(東洋経済)を読みました。著者は、野村総研(NRI)のグループです。本書は3部構成であり、第1部はAIの現在までの進化と将来の予想、第2部は人間を中心に据えた知力の拡張、第3部はマクロの社会の拡張を考えています。表紙画像のサブタイトルに見られるように、知性、労働、経済の未来予想図を考えています。まず、AIが拡張する知力としては6項目を並べています。すなわち、予測する=Predict、識別する=Distinctify、個別化する=Customize、会話する=Comunicate、構造化する=Model、創造する=Create、となります。その萌芽的な実例がp.74図表3-1に示されています。そして、単なるソフトウェアとしてのAIだけではなく、フィジカルなロボットも同時に議論していて、ロボット店員なんてのも議論されています。自動運転はソフトに重きがあるものの、ハードとしての自動車も考えれば、中間的なものかもしれません。ただ、私が少しびっくりしたのは、カーネマン教授の指摘するシステム2だけではなく、システム1も可能なAIが登場する可能性です。演算の速さから考えて、時間をかけるシステム2がAIの主たる活躍の場であることに変わりないのでしょうが、システム1も実装するAIが登場する可能性も本書では指摘しています。ただ、AIに対するキーリソースとして、学習データ、半導体、電力、冷却水を上げていて、AI活用の制約を考えるとともに、もちろん、個人情報保護やAIの暴走といったリスクも忘れてはいません。私は賢い人が詐欺に走ったら、私のような凡人がコロリとだまされて、被害が大きくなると前々から考えていたのですが、そういったAI詐欺についても取り上げています。もちろん、労働がAIで代替された失業も議論されています。詳細は読んでみてのお楽しみです。本書を読んでいて、私の最大の疑問はAIは人間を補完するのか、あるいは代替するのか、という観点です。本書では前者の補完を主として考えていますが、労働や雇用を考えると代替の観点も忘れるべきではありません。場合によっては、人間がAIに知性の点で凌駕され、AIが操るフィジカルなロボットはもともと人間の身体能力を上回っていて、人間がAIに支配される、あるいは、隷従するという将来が考えられなくもありません。AIはマイクロな個々人に対するリスクとチャンスの両面ありますが、マクロな経済社会にもリスクとチャンスの両方があり得ることは忘れるべきではありません。その意味で、日本はAI利用が遅れていたので助かった、被害が小さかった、という未来もあり得る、と私は考えています。

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次に、上川龍之進『消費税と政治』(有斐閣)を読みました。著者は、大阪大学大学院法学研究科の教授であり、ご専門は政治過程論、現代日本政治、行政学だそうです。本書はあとがきにあるように、著者による「財政政策に関する研究の集大成」(p.377)と位置づけられています。今年2月の総選挙でも消費税減税が各政党の公約として持ち出されましたし、加えて、私の専門とする経済学の隣接領域でもあり、読んでみた次第です。構成としては、序章と第1章で日本の財政赤字について概観し、そもそも、国際的にもかなり小さな政府で政府予算の歳出の規模は決して大きくないにもかかわらず、先進国の中で突出して公的債務残高が大きい謎を示し、要するに、歳入が歳出に輪をかけて少ないからである、と指摘しています。まあ、当然です。その上で、第2章で1965年度の赤字国債発行から始まって、第8章のアベノミクスまで、延々と消費税の導入と税率引上げの歴史を後づけています。すなわち、財政再建策としての消費税がどのように位置づけられ、歴代首相がどのような理念や思惑で導入・増税を進めたかを、官僚・財界・世論の影響も含めた政治過程論として描き出しています。この部分は、ひつは本書の中心かもしれませんが、エコノミストの私にはそれほど関心ないところで、昼食に知り合いのエコノミストとビールを飲んで酔っ払って、半分居眠りしながら流し読みしてしまいました。著者と出版社も考え合わせて、完全に学術書なのでしょうが、こういった歴史回顧の部分が多くのボリュームを占めていて、多くのビジネスパーソンにも判りやすくなっている反面、私には物足りなく見えました。ただ、しっかり読めば消費税の導入と税率引上げに関する政治過程論として十分な内容なのかもしれません。ただ、エコノミストの目から見て、消費税に関する多くの政治的決定が総理大臣のパーソナリティから論じられている気がして、財政の背景にある経済の景気動向などが少し軽視されている印象があります。特に、終章の総括において、p.341以下の財政再建への態度の要因分析があまりに雑で、分析というよりは適当に分類しただけのように見えます。まあ、それは、政治過程論だから経済学的観点は一部捨象されている、ということなのかもしれません。政治過程論であるならば、いわゆる中選挙区制のころの総理大臣官邸と大蔵省のパワーバランスと小選挙区になってからの官邸と大蔵省/財務省のパワーバランスはもう少していねいに分析してほしかった気がします。最後の最後に、タイトルが消費税であって、サブタイトルに財政再建が入っていますが、小泉内閣の時の三位一体改革がまったく無視されています。中央政府と地方政府の関係なども、それほど歴史をさかのぼることなく、最近の分だけでもOKなので、もう少していねいに論じてほしかった気がします。その意味で、ほぼほぼ消費税の歴史の本でした。

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次に、小倉充夫『民主主義の躓き』(東京大学出版会)を読みました。著者は、津田塾大学の名誉教授です。本書は、副題にあるように、民衆、暴力、国民国家の3つの要素から、民主主義がタイトル通りに躓きを内包しつつ、歴史的に進化ないし発展してきた過程を分析し、未完の統治形態である現在の民主主義の危機を解明しようと試みています。ですので、民主主義ですから、当然に、ギリシアから歴史が始まります。ただ、実際に近代ないし現代で民主主義の画期のひとつとなったのは1968運動であり、代議制民主主義に対する市民の直接的な抗議活動から本格的な分析を始めています。日本ではベ平連が活躍した時期であり、70年安保につながります。ただ、民主主義にはいくつかのタイプがあるかどうかも議論しており、西欧や日本の民主主義だけではなく、植民地支配を受けていたアフリカにおける単一政党による民主主義の可能性についても考えています。本書においても、歴史的な民主主義の範囲の広がりが示されます。投票というやや狭い範囲での決定の方式としての参政権の観点からは、資産や納税額による制限から始まって、そういった制限の緩和ないし撤廃、さらに、男性から女性への参政権の広がりを経ているのは、広く知られたところです。さらに、米国などでは黒人奴隷、植民地では現地住民の参加などに広がるわけです。民主主義批判のひとつの観点はこういった参加の広がりが愚民制に陥る、という視点です。他方からの批判は、数少ない民主主義を執行するエリートは真に国民を代表していない、という批判です。そういった議論にていねいに本書は応えようと試みています。そのあたりは読んでみてのお楽しみといえます。本書がすぐれていると私が考えるひとつの点は、民主主義を参加と統治の形態と捉えていることです。識者の中には民主主義を狭く投票による決定の方式であると考える向きがありますが、私は本書と同じ考えをしています。ですので、本書でも強く批判している新自由主義的な考えが民主主義を劣化させていると考えています。新自由主義は市場の重視であり、市場に供給された商品を貨幣の所有という意味での購買力にしたがって配分することを重視します。厚生経済学の基本定理から、市場の価格に基づく配分がもっとも効果的だからです。他方で、ピケティ教授が脱商品化といっているや、斎藤幸平准教授がコモンの拡大、といっているのは、私は同じと考えていますが、貨幣を持っている購買力ではなく、必要性や適性などに応じてさまざまなリソースを配分するというやり方もあります。現在の日本では教育や医療などの社会保障がそうなっています。加えて、住宅、交通、通信、食料なども購買力に基づく配分をヤメにすることを考えるべき時期に差しかかっている、と私は考えています。そして、それについて多くの参加者が熟議し、統治システムとして結論を出すのが民主主義だと考えます。経済から少し離れた参加や統治について、私の専門外ながら、とてもタメになる読書でした。

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次に、豊下楢彦『「核抑止論」の虚構』(集英社新書)を読みました。著者は、国際政治学者・外交史家であり、京都大学法学部助教授、立命館大学教授、関西学院大学法学部教授などを歴任し、ご専門は国際政治論・外交史だそうです。本書は、第2次世界対戦後における冷戦期やその後の核抑止論を根本的に批判する目的を持っています。すなわち、戦後、広く信じられてきた核抑止論は、核兵器の保有により事前はもちろん、先制攻撃を受けた後でも、相手国を確実に大規模に破壊できるという脅威を見せつけて、攻撃を抑止するというものです。ですから、私の理解によれば核兵器が開発される前の通常兵器の時代の論理、すなわち、勢力均衡=balance of powerとはやや異なっています。本書でも勢力均衡は一向に現れません。批判はまず、私が考えても理解できるのですが、核兵器の使用により大規模な破壊が実現する可能性がどこまで認識されるかです。相手国に大規模な破壊をもたらす可能性や蓋然性が、決して、客観的ではなく相手国の主観的な受取り方次第の不確実なものである、という点は考えておく必要があります。実に、20世紀前半の日本は、まったく客観的ではない認識に基づいて戦争を開始し遂行したことは忘れるべきではありません。加えて、核兵器使用が狂気、ないし、狂人の仕業であるという点も本書では強調しています。米ベトナム戦争当時の国ニクソン大統領の発言からの狂人理論も印象的です。ですので、そういった従来からの核抑止論への批判はとても適切なのですが、それでは、実際に核兵器を廃絶し、あるいは、その前段階で核兵器の削減を進めるにはどうすればいいか、については、それほど説得力ある議論がなされているとも思えません。もちろん、そんなに決定的な手段があるのであれば、誰かがすでに実行しているでしょうから、核廃絶を目指す勢力を拡大させ、核保有国への圧力を高めることにより段階的な核兵器の削減やその先の廃絶を地道に目指す、というしかいいようがないのかもしれません。そういった究極の核兵器廃絶という目標に対して、一昨年2024年の被団協=日本原水爆被害者団体協議会のノーベル平和賞受賞は画期的であったと私は評価しています。

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次に、唐沢かおり『「気が利く」とはどういうことか』(ちくま新書)を読みました。著者は、東京大学大学院人文社会系研究科教授であり、ご専門は社会的認知だそうです。タイトルになっている「気が利く」というのは振る舞い方と見られ方に関してであり、他者が望むこと、他者が嬉しく思うことに応答する、また、他者がどう解釈するかに関する自分の評価、だそうで、判りにくいのですが、要するに、他者に配慮した行動や言動であり、もっと重要な点は、学んで学習できるスキルである、ということです。他者との円滑な人間関係を築くということなのですが、本書ではその弊害も同時に指摘していて、何ごとも「過ぎたるは及ばざるが如し」といえます。気が利くように思われようとし過ぎると、逆に、自分で心をすり減らして精神的に参ってしまったり、他者から見透かされて逆効果だったり、あるいは、私のような教員からすれば、他者を助けすぎて過保護に陥って成長を妨げたりする可能性もあると指摘しています。ですので、気が利くというのは決して万能ではなく、ネガな面もあることを意識すべき、という結論です。当然、不適切な配慮というのもありえます。ですから、「気が利く」を学ぶハウツー本をひも解く前に、その基礎的な理論を解明するため、こういった心理学のきちんとした本を読んでおくのも重要だという気がします。ところで、私の専門である経済学では、アダム・スミスのいうところの「見えざる手」が人々の利己的な経済活動を調整します。ですから、「我々が食事を手に入れられるのは、肉屋や酒屋やパン屋の慈悲心のおかげではなく、彼らが自分の利益を考えるからである」として、市場における価格付けによる分散的な資源配分が実現されることを示しました。他者からどう見られるか、どう思われるか、ではなく、自分の利益を考えれば経済活動は見えざる手で調和が図られる、気が利く必要はない、ということになります。最後の最後にどうでもいい点がら、有名なナイロンストッキングの評価に関する心理学実験の論文が本書でも引用されていて、ニスベットの論文とされています。私はこの論文を読んだことがあるのですが、ウィルソンとニスベットの共著論文です。しかも、ファースト・オーサーはウィルソンであったと記憶しています。でも、なぜか、本書に限らず、いつも「ニスベットの論文」として言及されるケースが多いような気がします。謎です。

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2026年2月13日 (金)

バレンタインデーとチョコの売行きを家計調査から考える

明日はバレンタインデーです。私は60歳の定年まで勤めた官庁にせよ、もちろん、今の大学にせよ、義理チョコとは縁のない職場ですが、バレンターンデーの季節にはチョコレートの売行きが伸びるのは多くの日本人が実感しているところかと思います。私が総務省統計局への出向時に担当していた家計調査から簡単に統計に当たっておきたいと思います。

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上のグラフはどちらもデータソースは総務省統計局の家計調査なのですが、上のパネルは昨年2025年1年間の月別のチョコレートへの支出金額を、下のパネルは2025年2月における日別の支出額を、それぞれプロットしています。もともと、チョコレートは寒い時期によく売れる季節商品であり、毎年12月から2月ころの支出が多いのは決して不思議ではありません。でも、2月は通常28日と日数が少ないにもかかわらず、チョコレートの売上が突出しているのが見て取れます。しかも、日別で見ると2月14日のバレンタインデー当日を含めてその前数日の売上げが大きいのに対して、2月15日になると大きく落ちているのが見て取れます。おそらく、実感としてはいわゆるクリスマスケーキが12月24日までと25日以降で、これとよく似た段差があるような気がするのですが、さすがに、クリスマスケーキとそれ以外のケーキを別にした統計は見当たりません。

昨年2025年のバレンタインデーのチョコレートの市場規模は約300億円と一般社団法人 日本市場規模協会の市場規模総合研究所では推計しています。果たして、今年のバレンタインデーやいかに?

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2026年2月12日 (木)

上昇率が縮小する1月の企業物価指数(PPI)

本日、日銀から1月の企業物価 (PPI) が公表されています。統計のヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で+2.3%の上昇となり、59か月、ほぼほぼ5年連続の上昇です。先月2025年12月統計からやや伸びは縮小したとはいえ、日銀物価目標の+2%を上回って高い上昇率が続いています。まず、ロイターのサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

国内企業物価、1月は前年比2.3%上昇 銅など非鉄金属市況が上昇
日銀が12日に発表した1月の企業物価指数(CGPI)速報によると、国内企業物価指数は前年比2.3%上昇した。非鉄金属や農林水産物などが上昇に寄与した。59カ月連続プラス。前月比では0.2%上昇だった。
前年比の伸び率は前月からわずかに縮小。ロイターがまとめた民間調査機関の予測中央値と一致した。
指数は2020年水準を100として128.4。比較可能な1980年以降で最高水準となっている。
前年比の上昇で最も指数の押し上げに寄与したのは非鉄金属で、前年比33.0%上昇した。銅などの市況上昇が影響している。
農林水産物は同22.4%上昇した。集荷業者が農家に支払う概算金が引き上げられたことがコメの値上がりにつながった。飲食料品は同4.7%上昇。引き続き原材料や包装資材などの諸コスト上昇を転嫁する動きが出ている。
全515品目中、前年比で上昇したのは356品目、下落は132品目。差し引きは224品目となった。
日銀の担当者は「銅をはじめとする非鉄金属市況の上昇と、原油市況の下落が相殺し、全体として小動きとなった」と、今月の特徴を説明した。
先行きについて、大和証券のエコノミスト、鈴木雄大郎氏は「2月から4月にかけて政府による電気代・ガス代の補助策の影響で、事業用電力価格や都市ガス代などが押し下げる方向に寄与する」と指摘。前年比はプラス2%を下回る可能性が高いとみている。

インフレ動向が注目される中で、長くなってしまいましたが、いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価指数(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下のパネルは国内物価指数そのものを、それぞれプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、企業物価のうちヘッドラインとなる国内物価上昇率は、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2.4%でした。引用した記事の2パラにもあるように、ロイターでも同じ+2.3%と見込んでおり、実績の+2.3%とジャストミートし、引き続き、日銀物価目標の+2%を大きく上回っています。国内物価が上昇率が高止まりしている要因は、引用した記事の4-5パラにもあるように、非鉄金属と農林水産物の価格上昇であり、さらに、農林水産物に連動して飲食料品の価格上昇も継続しています。もちろん、コメなどが高い上昇率を示しています。また、対ドル為替相場は、高市内閣の成立により円安が進んでおり、2025年10月+2.2%、11月+2.6%の円安の後、12月も+0.5%、2026年に入っても1がつ+0.5%の円安となり、平均で対ドルレートは150円台後半を記録しています。さらに、私はエネルギー動向に詳しくないので、日本総研「原油市場展望」(2026年2月)を参考として見ておくと、1月のWTI原油先物価格は、米国によるベネズエラ攻撃やイランにおける反政府デモの激化、さらに、ロシアの石油タンカーに対するドローン攻撃など、地政学的リスクの増大を通じた供給懸念により一時60ドル台に乗せたものの、先行き見通しについては「原油価格は、年央にかけて50ドル台に下落する見通し」とされています。需要サイドでは中国経済の低迷が理由に上げられています。加えて、「OPECプラスやブラジル・ガイアナ・カナダなどの南北アメリカ大陸の産油国が増産を行う」と予想しています。ただ、円ベースの輸入物価指数の前年同月比は、今年2025年2月から11か月に渡ってマイナスを続けてきましたが、2025年12月統計では前年同月から+0.2%の上昇、2026年1月統計でも+0.5%の上昇を示しています。いずれにせよ、国内物価の上昇は原油価格ではなく国内要因による物価上昇であることは明らかです。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比上昇率・下落率で少し詳しく見ると、まず、引用した記事にもある通り、非鉄金属が2025年12月の+22.2%から2026年1月には+33.0%に上昇率が加速し、農林水産物も2025年12月の+26.1%からやや減速したとはいえ、2026年2月も+22.4%と高止まりしています。農林水産物の価格上昇に伴って、飲食料品の上昇率も1月は+4.7%と、前月2025年12月の+4.8%とほぼ同じ上昇率となっています。電力・都市ガス・水道は▲4.3%と政府の電気・ガス料金負担軽減支援事業により下落しています。ただ、この政策は3月使用分までですので、4月からはどうなるのか不透明です。

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2026年2月11日 (水)

家計調査で注目するのはエンゲル係数だけなのか?

やや旧聞に属するトピックかもしれませんが、先週2月6日に総務省統計局から家計調査の2025年データが公表されています。いつも、ラーメン消費額やギョーザ消費額の都市別のランキングばかりが注目されますが、今回についてはエンゲル係数の上昇も注目されました。私は、3年近くに渡って総務省統計局に出向し消費統計担当課長を務めた経験もありますので、家計調査(2人以上世帯)をひも解いて、少し詳しめに見ておきたいと思います。

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まず、その注目のエンゲル係数の推移です。エンゲル係数とは消費支出に占める食料費の割合ですから、一般に、国民が豊かになるほど低下すると考えられています。日本でも実際に高度成長末期の1960年代から低下を続けてきましたが、21世紀に入って00年代半ばを境に反転しているのが見て取れます。時期だけを考えると、小泉内閣が2001年4月から2006年9月まででしたから、1990年代初頭のバブル経済の崩壊後、21世紀に入ってから新自由主義的な経済政策が強化されるとともに国民の貧困化が進んだ可能性が否定できません。

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次に、2025年の家計調査結果から所得分位別のエンゲル係数と食料費の代わりに光熱・水道費をとった割合をそれぞれプロットしています。なお、年間収入の境界は以下の通りです。すなわち、第Ⅰ分位と第Ⅱ分位の境界は280万円、第Ⅱ分位と第Ⅲ分位の境界は343万円、第Ⅲ分位と第Ⅳ分位の境界は408万円、第Ⅳ分位と第Ⅴ分位の境界は493万円、第Ⅴ分位と第Ⅵ分位の境界は580万円、第Ⅵ分位と第Ⅶ分位の境界は681万円、第Ⅶ分位と第Ⅷ分位の境界は789万円、第Ⅷ分位と第Ⅸ分位の境界は923万円、第Ⅸ分位と第Ⅹ分位の境界は1,152万円です。私が家計調査に基づいて計算したところ、もっとも年間所得の少ない第Ⅰ分位のエンゲル係数は34.4%に上るのに対して、第Ⅹ分位は24.1%に過ぎません。上のグラフを見ても明らかなように、第Ⅶ分位の下位30%までのエンゲル係数は平均を上回っています。下のパネルはエンゲル係数の分子の食料費に代わって光熱・水道比を取った係数です。コチラはもっと所得格差が大きくて、第Ⅰ分位は11.0%に達するのに対して、第Ⅹ分位は半分以下の5.3%にとどまります。2人以上世帯の家計で年間300万円万円足らずの支出のうち、食料費と光熱・水道費に合わせて45%を割かねばならないとすれば、残りは150万円ほどになります。かなり苦しい生活といわざるを得ません。

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最後に、こういった結果が生じる最大の要因のひとるは所得とともに物価上昇率に差があることです。上のグラフは2020年=100とする消費者物価指数のうち。ヘッドラインの総合指数に加えて、食料と光熱・水道もプロットしています。物価の場合、上昇率が注目されますが、2020年から5年間の累積支出額はこの折れ線グラフを積分したものとなります。食料とともに、光熱・水道も決して無視できない家計負担となっている点を見逃すべきではありません。

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2026年2月10日 (火)

身長と所得は実は関係がない?

身長と所得の関係について、従来は正の相関があるような学説もありましたが、全米経済研究所(NBER)から "Why Does Height Pay? Evidence from the Kenya Life Panel Survey" と題するワーキングペーパーが明らかにされています。まず、引用情報は以下の通りです。

続いて、NBERのサイトからABSTRACTを引用すると次の通りです。

ABSTRACT
Taller people earn more, especially in low- and middle-income countries. We present among the first evidence of this phenomenon in Africa, using longitudinal microdata on a cohort of middle-aged Kenyan adults. We document a substantial height/earnings premium: controlling for gender, age, and other socio-demographics, monthly earnings increase by 1.07% per centimeter (or 2.72% per inch). Nearly half this effect can be explained by differences in cognition, measured from an unusually rich battery containing 27 modules. Additional shares of the premium can be attributed to measures of physical strength and non-cognitive ability. In contrast to prior work, we find little role for occupational sorting: conditional on cognitive and non-cognitive ability, taller people do not appear more likely to work in higher paid sectors. Leveraging repeated measures of height and an instrumental variables specification, we find suggestive evidence that measurement error may be attenuating the estimated relationship.

要するに、Kenya Life Panel Survey (KLPS)なるデータを用いたケニヤの例なのですが、単純に、性別、年齢、その他の社会人口統計学的要因を考慮して controlling for gender, age, and other socio-demographics、月収は身長1センチ高いと1.07%多くなる、と推計しています。インチで示すと、1インチで2.72%です。ただし、このプレミアムのほぼ半分は詳細な認知能力指標により説明されます。measured from an unusually rich battery containing 27 modules だそうなのですが、私は専門外でそれほど理解が及びません。さらに残る半分も体力 physical strength と非認知能力により決まっていることが明らかにされ、結果として、当然ながら、身長だけで所得のプレミアムが決定されるわけではなく、認知能力や非認知能力、さらに体力まで加えた広い意味での人的資本を経由したプレミアムである、と結論しています。まあ、そうなんでしょうね。最後に、下のグラフはワーキングペーパーのp.24からFigure 1: Height, Earnings, and Human Capitalの一部、すなわち、上2つのグラフを引用しています。

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2026年2月 9日 (月)

天候要因に左右される1月の景気ウォッチャーと黒字が続く12月の経常収支

本日、内閣府から1月の景気ウォッチャーが、また、財務省から昨年2025年12月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲0.1ポイント低下の47.6、先行き判断DIは+0.6ポイント上昇の50.1を記録しています。経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+7288億円の黒字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから引用すると以下の通りです。

街角景気1月は0.1ポイント低下、3カ月連続の悪化 大雪など影響
内閣府が9日に発表した1月の景気ウオッチャー調査で現状判断DIは47.6となり、前月から0.1ポイント低下した。3カ月連続のマイナスとなった。調査期間中は大雪などに見舞われた地域が多く、内閣府は基調判断に天候の影響を加えた上で景気は「持ち直している」とした。
指数を構成する3部門では、企業動向関連が前月から0.9ポイント上昇して49.5となった。一方、家計動向関連が0.1ポイント低下して47.1、雇用関連は1.4ポイント低下して47.2となった。
今回は「大雪」や「寒波」に関するコメントが多くみられた。内閣府の担当者は、天候要因は一時的なものであるものの「全国的に景況感に影響を及ぼしたのは否めない」とみている。
2-3カ月先の景気の先行きに対する判断DIは、前月から0.6ポイント上昇の50.1。2カ月連続で前月を上回った。内閣府は先行きについて「価格上昇の影響などを懸念しつつも、持ち直しが続くとみられる」とまとめた。
調査期間は1月25日から31日。
経常収支12月は7288億円の黒字、2025年黒字額は過去最高=財務省
財務省が9日発表した国際収支状況速報によると、12月の経常収支は7288億円の黒字となった。ロイターが民間調査機関に行った事前調査の予測中央値1兆0604億円程度の黒字を下回った。
経常黒字は、11カ月連続。但し黒字幅は大きく減速し、対前年比3430億円黒字幅が縮小した。
サービス収支が赤字転化したため、全体の黒字幅は縮小した。また、6月と12月は季節的な要因として、海外への配当金の支払い増加で証券投資収益の赤字幅が拡大することも挙げられる。
貿易・サービス収支は2052億円の赤字だった。海外からの研究開発サービスの受取額の減少に伴うもの。
悪化する日中関係も、経常収支に影響している。12月の旅行収支は、インバウンド訪日外国人観光客のうち中国人が前年比45%減少したことから、黒字が21.5%の減少を記録した。
経常収支の稼ぎ頭で、海外への直接投資からの収益や海外の子会社からの配当の受け取り等からなる第1次所得収支は1兆1894億円の黒字となり、第2次所得収支は2554億円の赤字だった。
2025年暦年では、経常収支は31兆8799億円の黒字となり、前年比3兆1931億円黒字幅が拡大した。1985年以降過去最大の黒字額となった。貿易収支が赤字幅を縮小したため経常黒字が膨らんだ。また、第一次所得収支が黒字幅を拡大したことが、貿易・サービス収支の赤字を補って余りある経常黒字をもたらした。

長くなりましたが、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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景気ウォッチャーの現状判断DIは、最近では昨年2025年10月統計の48.2まで6か月連続で上昇または横ばいを記録した後、11月48.0、12月47.7、そして、本日公表の2026年1月47.6と3か月連続で低下しています。ただし、現状では横ばい圏内の動きであり、それほど大きな低下というようには見えません。逆に、先行き判断DIは1月統計で上昇を見せており、こちらは2025年12月、今年2026年1月と2か月連続の上昇を記録しています。本日公表の昨年1月統計の季節調整済みの現状判断DIをより詳しく前月差で見ると、家計動向関連のうちでは、住宅関連が▲4.6ポイントの低下のほかは、飲食関連が+2.0ポイント、サービス関連も+1.7ポイント、小売関連が+0.6ポイント、それぞれ上昇しています。したがって、それほど悪化したという印象ではありません。企業関連では、製造業が+1.9ポイント上昇し、非製造業も+0.9ポイント上昇しています。製造業でも、米国の通商政策の影響が一巡した可能性が十分あります。ただし、家計関連と企業関連とは別の雇用関連は前月から▲2.5ポイント低下しています。統計作成官庁である内閣府では、基調判断を昨年2025年10月統計から「景気は、」と上方修正し、1月統計でも基本的にこれを据え置いています。ただし、「持ち直している」の前に「天候要因の影響がみられるが」をつけて、やや留保気味の姿勢を見せています。私の理解がよく進まないのですが、天候要因よりも、国際面での米国の通商政策とか、国内では物価上昇の方が重要ではないか、という気がするものの、いずれにせよ、今後の動向が懸念されるところです。景気判断理由の概要については、内閣府の調査結果の中から近畿地方の家計動向関連に着目すると、「年明け以降、気温が急激に下がる日が続き、暖房器具の販売が少し伸びた一方、雪が積もる地域では来客数が減り、販売量が減少している(家電量販店)。 」といった天候の影響も確かに見かけました。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。引用した記事の通り、ロイターによる市場の事前コンセンサスは+1兆円余りの黒字ということでしたし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、+1兆円余りの黒字の見込みでしたので、実績の+7000億円超の黒字はやや下振れした印象です。季節調整していない原系列の統計では、引用した記事にあるような季節変動がならされて、2.7兆円近い黒字を計上しています。何といっても、日本の経常収支は第1次所得収支が巨大な黒字を計上していますので、貿易・サービス収支が赤字であっても経常収支が赤字となることはほぼほぼ考えられません。はい。トランプ関税によって貿易収支や貿易・サービス収支の赤字が拡大したとしても、第1次所得収支で十分カバーできると考えるべきです。ただ、経常黒字幅がかなり大きくなってきており、私の計算では2025年7~9月期にはGDP費で5%を超えています。ですので、その昔の米国に次ぐ世界第2位の経済大国であったころには、何らかの対外摩擦を生じていた可能性すらあります。いずれにせよ、対外不均衡の問題が経常収支にせよ、貿易・サービス収支にせよ、たとえ赤字であっても何ら悲観する必要はありません。エネルギーや資源に乏しい日本では消費や生産のために必要な輸入をためらうことなく、経常収支や貿易収支が赤字であっても何の問題もない、逆に、経常黒字が大きくても特段めでたいわけでもない、と私は考えています。ただ、米国の関税政策の影響でやたらと変動幅が大きくなるのは避けた方が望ましいのは事実です。

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2026年2月 8日 (日)

球春、プロ野球のキャンプが始まる

球春到来です。
先週からプロ野球のキャンプが先週2月1日から始まっています。今日は、我が家の周辺は行きは降り積もっていますが、日本ハムとの練習試合をCSで楽しんでいます。つい先ほど6回を終わって4-8で逆転されています。まあ、練習試合ですから勝敗は度外視して調整の内かという気はします。
下の画像は、時事通信のサイトから引用した 2026年プロ野球1軍キャンプ地 です。

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はい、秋学期のリポートの採点と成績入力の忙しさに紛れて、すっかり忘れていましたが、そろそろ野球シーズンの到来です。キャンプ直前まで契約更改が済まない佐藤輝選手の動向が気にかかっていましたが、無事にキャンプインしたようです。今年は球団初のセリーグの連覇と日本一奪還を目指してがんばってほしいと思います。ただ、私はほとんどWBCには何の興味も持っていません。たぶん、ニュースで結果を確認するくらいだと思います。

今年も、
がんばれタイガース!

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2026年2月 7日 (土)

今週の読書はいろいろ読んで計7冊

今週の読書感想文は以下の通りです。
まず、藤川清史・渡邉隆俊『産業連関分析入門』(日本評論社)では、産業連関表に基づくマクロ経済の分析手法を学ぶことを主眼としています。マクロ経済学に関する基礎知識があって、BASICのプログラムコードの理解があれば、なおよいのですが、BASICのコードについてはサンプルが豊富に収録されています。トマ・ピケティ『エコロジー社会主義に向けて』(みすず書房)では、カーボンニュートラルは達成できないとしても、エコロジーを重視する方向を目指さないと、最悪の場合は人類文明が大きく後退することにもなりかねませんから、脱商品化や累進課税の強化による不平等是正の必要性を強調しています。マイケル・マン『ファシストたちの肖像』(白水社)では、極端なナショナリズム、権威主義的な国家主義、階級闘争の超越、政治・民族・宗教などの面での敵の浄化、の4つの主要なイデオロギー的要素の結合、という観点からファシズムを定義し、戦間期大陸欧州のファシズム運動について統計的な把握を試みます。平尾清『ビジネス経験を活かしきる「40代から大学教授」という最高の働き方』(青春出版社)は、バラ色のお話で終始していて、学歴・学位、研究業績、教育経験がなくても、大学教員=研究者ではなく、プロジェクト調整員のような形で、教員と職員の中間的な存在としての大学教授への転職をオススメしているような気がします。金子玲介『クイーンと殺人とアリス』(講談社)では、クイズとアイドルを2つの軸にして、ミステリ仕立てにしてあります。アイドル候補と運営の十数名が孤島に渡ってクイズなどのオーディションを進める中で殺人事件が起き、アイドル候補の1人の主人公がクイズのメタ分析で犯人を解明しようと試みます。岡崎琢磨ほか『猫で窒息したい人に贈る25のショートミステリー』(宝島社文庫)は、猫にまつわるミステリのショートショート25作品を収録しています。作品の出来は当たり外れがありますし、短いだけにミステリとして不十分な面もありますが、数ページのショートショートだけにスキマ時間のヒマつぶしにピッタリです。福井健太[編]『新・黄色い部屋』(創元推理文庫)は、「読者への挑戦」ミステリを中心に精選されたアンソロジーであり、10話の短編を収録しています。冒頭に収録された高木彬光「妖婦の宿」は、神津恭介のシリーズですし、本格的なミステリも数多く収録されています。
今年2026年の新刊書読書は先週までの1月中に24冊、2月に入って今週の7冊を加えると合計で31冊となります。また、これらの新刊書読書のほかに、佐藤紅[編著]『京都文具大全』(光村推古書院)も読んでいます。ただ、10年前の出版であり新刊書ではないので、本日のレビューには含めていません。これらの読書感想文については、できる限り、FacebookやX(昔のツイッタ)、あるいは、mixi、mixi2などでシェアしたいと予定しています。

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まず、藤川清史・渡邉隆俊『産業連関分析入門』(日本評論社)を読みました。著者は、いずれも愛知学院大学経済学部の教授です。タイトル通りの本です。産業連関表とかIO表と呼ばれるマクロ経済の分析手法を学ぶことを主眼としています。ある程度のマクロ経済学に関する基礎知識があって、BASICのプログラムコードの理解があれば、なおよいのですが、BASICのコードについてはサンプルが豊富に収録されていますので、初心者でも十分取り組みやすいように工夫されています。ものすごく基本的な産業連関表の使い方は、何らかのショックがあった際に、レオンティエフ逆行列からマクロ経済全体への波及効果を計算することです。基本は行列式の計算ですから、高校の数学で習っているはずですが、私の経験上、我が立命館大学クラスであっても、高校レベルの行列に関して十分な理解を持っている経済学部生はそれほど多くありません。私は高校の数学の先生ではありませんので、高校の数学に関して教えられる範囲は限定的であり、本書についても、基礎学習を終えた段階の大学生を対象にしているようですが、そのあたりの数学的な基礎がないと苦しいかもしれません。ただ、本書では図解をいくつか工夫していて、例えば、第8章では需要曲線が垂直で、供給曲線が水平、なんてグラフを持ち出して、均衡価格決定モデルを説明しています。なるほど、と思いました。最後に2点だけ本書に関連して、産業連関分析についての私の感想です。第1に、本書のp.114にもあるのですが、ショックの波及に関して、ケインズ的な乗数分析では無限の波及を想定して限界消費性向の逆数だけの大きさの乗数を考える一方で、産業連関分析では波及は1回限りと見なす向きがありますが、これは正しくありません。産業連関分析ではケインズ的な無限の波及を終えた段階でのショックの広がり=総和を考えているのであって、決して1回限りの波及というわけではないと私は考えています。第2に、産業連関分析は固定係数ですから、生産関数が同じという条件での分析です。ですから、それほど長期の分析には向かないと考えるべきです。20年も30年も固定係数=技術革新がなく同じ生産関数のまま、と想定するのはムリがあります。だからこそ、産業連関表はおおむね5年毎に改定されているわけです。阪神タイガース優勝の経済効果ぐらいでしたらともかく、日本の人口減少や高齢化の未来を考えるに当たって、どこまで長期に適用するかは十分に見定めて使うべきだと私は考えています。

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次に、トマ・ピケティ『エコロジー社会主義に向けて』(みすず書房)を読みました。著者は、2013年の『21世紀の資本』がベストセラーになったフランスのエコノミストであり、パリ経済学校経済学教授・社会科学高等研究院経済学教授です。本書のフランス語の原題は Vers le Socialisme Écologique であり、2024年の出版です。書下ろしの論考とともに、フランスの夕刊紙 Le Monde に掲載されたコラムを収録しています。まず、冒頭で、「20世紀は社会民主主義の世紀であった。21世紀は民主的かつ参加型のエコロジー社会主義の世紀となるだろう。」との見通しを明らかにしています。はい、私もまったく同意します。現時点での足元は米国のトランプ政権をはじめとして、欧州でもポピュリズム政党が勢力を伸ばしていますし、日本でもかなり右派に偏った高市内閣が成立し、明日の総選挙でも与党が議席を伸ばすという予想が広く報じられていますので、時代の流れは社会民主主義とか社会主義から逆行しているのではないか、と見る向きもあるのでしょうが、大きな時代の流れ、ここ100年ほどを見るとピケティ教授の指摘する通りとなっています。1930年代の大恐慌からケインズ政策を援用した福祉国家建設が進み、20世紀半ばの終戦直後からその方向は確たるものとなっています。21世紀がエコロジーを中心とする社会を目指すかどうかはもう少し先のお話ですが、21世紀半ばのカーボンニュートラルは達成できないとしても、少なくともエコロジーを重視する方向を目指さないことには、最悪の場合は人類文明が大きく後退することにもなりかねません。そのために、本書では脱商品化や累進課税の強化による不平等の是正の必要性を強調しています。本書では日本はまったく対象外の扱いのようですので、私の考えを展開すれば、現在でも日本では医療をはじめとする社会保障と教育とが大きく脱商品化されていることは明らかで、おそらく、エネルギーや通信・交通といった分野にも脱商品化の動きが広がり、さらに、農業や食料生産にも拡大し、一歩一歩社会主義に近づいていくプロセスが進むのだろう、と私は期待しています。最後に、本書は新聞のコラムが大きな部分を締めており、一見すると統一的なテーマがないように見えかねませんが、そこはピケティ教授の見識をいろんな論考から読み取る題材として考えるべきではないか、という気がします。例えば、フランスのマクロン大統領がよく使う表現に "première de cordée" というのがあります。私の理解でもほぼトリックルダウン理論に近いものであり、本書ではピケティ教授が何度も持ち出して強く批判しています。

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次に、マイケル・マン『ファシストたちの肖像』(白水社)を読みました。著者は、英国出身のようで、米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)社会学部教授を務めた後、現在は名誉教授となっています。本書の英語の原題は Fascists であり、いささか古くて2004年の出版です。邦訳タイトルは英語の原題に引っ張られてしまったようですが、「肖像」というのはややミスリードかもしれません。というのは、ファシズム運動を進めたファシストといえば、イタリアのムソリーニやドイツのヒトラー、と私のような専門外のシロートの頭に浮かぶわけですが、決して、個人を取り上げてパーソナリティを論じたりしているわけではなく、戦間期の大陸欧州のファシズム運動について統計的な把握を試みようとしています。ですので、巻末にいくつか付表が掲載されており、例えば、最初のテーブルのタイトルは「付表3.1 イタリア・ファシスト党員の職業的背景」ですし、2番目は同じように「付表4.1 ドイツ・ナチ党員の職業的背景」だったりします。本書冒頭の第1章でも何点かの重点のうちのひとつはファシズム運動の社会的支持層について真剣に考える必要を論じています。繰返しになりますが、まず、本書の歴史的地理的なスコープは戦間期1930-40年代の大陸欧州です。ですから、日本は対象に入っていません。そして、本書の著者の従来からの見方として、古典的ファシズムの運動と体制について、極端なナショナリズム、権威主義的な国家主義、階級闘争の超越、政治・民族・宗教などの面での浄化、の4つの主要なイデオロギー的要素の結合、という観点から定義しています。私のような専門外のシロートには最初の2点がついつい強調されますが、後の階級闘争の超越や民族などの浄化もファシズムの重要な要素であり、いわれてみればその通り、という気がします。本書では冒頭2章でファシズム運動について広く議論した後、第3章からは国別にファシストの統計的な分析を試みています。元祖ともいうべきイタリア、そして、ドイツの2国が最初で、続いて、オーストリア、ハンガリー、ルーマニア、スペインとなり、最終章で結論を提示しています。詳細は読んでみてのお楽しみというところですが、運動や体制としてのファシズムですから、個人としてサディストやサイコパスだけで構成されているわけでもなく、通常の一般国民と変わることなく、「高邁な理想を掲げた運動」であることを信じ込ませた点を強調しています。その意味で、よく引用されるハンナ・アーレント教授(Hannah Arendt)の代表作『全体主義の起源』The Origins of Totalitarianism の次の文章を思い出しました。すなわち、"The ideal subject of totalitarian rule is not the convinced Nazi or the convinced Communist, but people for whom the distinction between fact and fiction (i.e., the reality of experience) and the distinction between true and false (i.e., the standards of thought) no longer exist." です。明日の総選挙の投票には、心して臨むべき、という気がします。

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次に、平尾清『ビジネス経験を活かしきる「40代から大学教授」という最高の働き方』(青春出版社)を読みました。著者は、岩手大学特任教授、青山学院大学非常勤講師、酒田市政策参与だそうです。リーマンショックにより失業した後、43歳で山形大学教授へと転身されているようです。まず、本書のいいところは著者の自慢話ではない点です。ただ、常識的に考えて、万人に適用できる本ではありません。私自身は60代で大学教授に転職=再就職しましたが、通常のサラリーマンは、本書でも指摘しているように、第1に、学歴・学位がありませんし、第2に、研究業績がありませんし、第3に、教育経験もありません。実は、私も学歴・学位はありません。フツーに大学4年間で学士の学位を取得して終わっています。博士号は持っていません。ただ、公務員をしている際に長崎大学経済学部に出向する機会がありましたので、紀要論文は2年間で10本以上書きましたし、教育経験も積みました。立命館大学への応募要件は著書1冊または公刊論文3本以上だったと記憶していて、フツーのサラリーマンにはハードルが高いかもしれません。ただ、本書はバラ色のお話で終始していて、学歴・学位も、研究業績も、教育経験も何もなくても、大学教員=研究者ではなく、プロジェクト調整員のようなかたちで、教員と職員の中間的な存在としての大学教授への転職が可能であり、したがって、オススメしているような気がします。まあ、それならアリかもしれませんが、本書で強調しているように、ローカルに展開する、すなわち、地方大学を主眼とすることになる気がします。地方私大の中には、学生の定員充足率が低くて、経営が必ずしも盤石ではない大学があります。加えて、かつての就職氷河期の大学生の就活なんかと同じで、本書でも大学教授への転職の際の重点は、志望書の書き方や面接に終止しています。最後の接点での努力よりもバックグラウンドでの経験値を無視しているようで少し怖い気がします。研究論文を書かないまでも、せめて、研究論文を読むことくらいは推奨しておいた方がいいと私は考えます。大昔の米国のゴールドラッシュの時代、もっともいいビジネスをしたのは金鉱を掘り当てた人もさることながら、金鉱を探す人にツルハシを売った人である、といいます。本書も最後の方のp.164から実務家教員の養成機関とマッチングサポートが紹介されていて、40代で大学教授になる人よりも、それをサポートする人のビジネスの方がいいビジネスそうな気がします。私も今の大学を辞めたら、サラリーマンから大学教授になった経験を活かして、こういった方面のコンサルでもしようかしらん、と思わせる内容でした。

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次に、金子玲介『クイーンと殺人とアリス』(講談社)を読みました。著者は、小説家なのですが、私は前作の『死んだ山田と教室』をそれなりに評価しているので、次作となる本書も読んでみました。本書のひとつのテーマはクイズで、もうひとつはアイドルです。それを軸に少しミステリ仕立てにしてあります。まず、謎解きアイドル Queen & Alice のオーディションがあり、予選を勝ち抜いた候補生が、運営サイドの7人とともに帽子島という孤島に渡ります。そこで3泊4日のオーディションが行われ、総合プロデューサーの鯨井玄二のお眼鏡にかなった女性がアイドルとしてデビューすることになる、というわけです。失格者は毎日夜8時に来る船で帽子島を離れます。候補生は8人いて、高校3年生の同級生の麻木想空と佐藤七色のうちの麻木想空がひとつの視点を提供し、フリーター最年長でアイドルのオーディションに100連敗中と称する石崎真昼がもうひとつの視点を提供し、交互に語り手となってストーリーが進みます。少し前に私も読んで、今年映画化される小川哲『君のクイズ』と少し似たところがあります。必ずしも本格的なミステリではないので、殺人事件は中盤を過ぎたあたりでようやく起こります。その犯人探しでクイズのメタ分析が行われます。このあたりは、しっかり読ませどころです。前に読んだ『死んだ山田と教室』もそうだったのですが、会話のテンポがよくて、文体もいいのでスラスラと読み進むことが出来ます。ただ、人名が凝りすぎていて、なかなか頭に入らず、その割には、謎解きアイドル Queen & Alice なんて、明らかに、元ネタはエラリー・クイーンと有栖川有栖というあまりにも安直なネーミングだったりするギャップを感じます。繰返しになりますが、謎解きはクイズのメタ分析から始まりますが、決して、本格的、あるいは、論理的というわけではなく、やや雑に感じる読者もいそうな気がします。

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次に、岡崎琢磨ほか『猫で窒息したい人に贈る25のショートミステリー』(宝島社文庫)を読みました。著者は、ミステリ作家が多いんでしょうが、収録されているショートショートが必ずしもミステリとはいえないものもあるような気がします。というか、ミステリよりはホラーに近いものも散見されます。なお、本書は2025年4月の出版ですが、少し後に『猫に蹂躙されたい人に贈る25のショートホラー』というシリーズに近い位置づけの文庫も出ています。私はミステリとともにホラーも読みますので、「ぜひとも」とまでは思いませんが、機会があれば読んでみたい気がしています。タイトル通りに25のショートショートが収録されていますので、全部取り上げるのは骨ですし、2作品、猫とコミュニケーションを取るというミステリを2つだけ取り上げておきます。まず、猫森夏希「キャットーク」では、猫との会話が可能になるアプリが開発され、主人公がそれを使うと、猫が殺人犯を知っていることが判ります。貴戸湊太「猫又警部と猫のいる殺人現場」では、猫と会話できる刑事が猫から事情聴取して殺人犯を解明します。猫の知能が高くて、しかも、アチコチに出没していろんなものを見ているわけですから、猫が言葉をしゃべれたらブラックな結果を引き起こす、というのはサキの短編「トバモリー」で世界中に知れ渡っています。取り上げた2作品以外にも、そういった猫の知能と行動をフィーチャーした作品がいくつかあります。もちろん、ミステリとはいいつつ、ホッコリと心が暖かくなるような作品もあります。各作品はショートショートでわずかに数ページですので、スマホをいじって時間潰しするよりは、ひょっとしたら、本書を読む方が知的な印象を周囲にもたらすかもしれません。もっとも、作品の出来はバラツキ、というか、当たり外れがありますし、短いだけにミステリとして不完全、というか、深みやひねりに欠ける面もあります。ただ、バラエティに富んだ短編集ですので、その意味からは十分楽しめます。

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次に、福井健太[編]『新・黄色い部屋』(創元推理文庫)を読みました。編者は、書評家であり、ワセダミステリクラブのご出身です。本書は、昨年2025年に創元推理文庫から出版されたアンソロジーの第1弾であり、「読者への挑戦」ミステリを中心に精選されています。同じ編者による『横丁の名探偵』が第2弾となり、すでに出版されていて、私は先週のうちにレビューを済ませています。なお、シリーズは全3巻を予定しているようで、次巻は2月末に同じ編者により『以外な犯人』の出版が予定されています。本書は10話の短編を収録しています。本格ミステリを中心に、いくつかピックアップすると、まず、冒頭に収録された高木彬光「妖婦の宿」は、一応、というか、何というか、神津恭介のシリーズです。ホテルの密室殺人事件を題材にした本格的なミステリ短編です。ラストに大きなどんでん返しが待っています。飛鳥高「車中の人」は刑事が追う人物を突き止めるミステリです。誰が犯人か、と同時に、刑事が追っているのは誰か、の二重の謎を解き明かそうとします。車中という限られた時間と空間をたくみに利用して論理を積み重ねる本格ミステリです。山村正夫「高原荘事件」では、東京で起きた強盗事件の犯人が逃げ込んだ高原の職泊施設で、客や従業員から聞き込んだ情報を基に、謎解きが進みます。戯曲のような構成ですので、読者が順を追って犯人解明を試みることが出来ます。すでに読んだ次作の『横丁の名探偵』も含めて、どうしても1950-70年代の、いわば時代ミステリですので、金額の桁が少し今とは感覚が違ってきます。ただ、そのあたりは仕方ないものと諦めるしかないような気がします。取り上げた短編のほかも、本格的なミステリが収録されています。私はまだ出版されていない次作の『以外な犯人』も読みたいと思います。

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2026年2月 6日 (金)

自動車の出荷減で2か月連続の下降となった2025年12月の景気動向指数

本日、内閣府から昨年2025年12月の景気動向指数が公表されています。統計のヘッドラインを見ると、CI先行指数は前月から+0.3ポイント上昇の110.2を示した一方で、CI一致指数は▲0.4ポイント下降の114.5を記録しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから引用すると以下の通りです。

景気一致指数、12月は2カ月連続マイナス 自動車出荷減など響く
内閣府が6日公表した2025年12月の景気動向一致指数(速報、2020年=100)は前月比0.4ポイント低下の114.5と2カ月連続のマイナスとなった。
基調判断は「下げ止まりを示している」で据え置いた。
一致指数を押し下げたのは、耐久消費財出荷指数や小売販売額、投資財出荷指数など。自動車や半導体製造装置などの出荷減少、ガソリン価格の低下などが影響した。
一方、先行指数は前月比0.3ポイント上昇の110.2と、8カ月連続で改善した。新設住宅着工床面積や新規求人数、中小企業売上見通しなどが指数を押し上げた。新設住宅着工床面積は昨年4月の省エネ基準適合義務化を控えた駆け込み需要の反動で落ち込んだ後、緩やかに改善傾向が続いている。

いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、まん中のパネルはDI一致指数を、下のパネルは景気を把握する新しい指数(一致指数)を、それぞれプロットしています。一番下のパネルのみ、最新データは2025年11月です。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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繰返しになりますが、昨年2025年12月統計のCI一致指数は、前月から▲0.4ポイント下降しました。加えて、内閣府のプレスリリースによれば、3か月後方移動平均は3か月ぶりの下降で前月から▲0.13ポイント下降した一方で、7か月後方移動平均は前月から▲0.14ポイント下降し、こちらは2か月連続の下降となっています。統計作成官庁である内閣府による基調判断は、5月統計から「下げ止まり」に下方修正されましたが、12月統計でも「下げ止まり」に据え置かれています。私はいろいろと紆余曲折を経つつも、米国経済がソフトランディングに成功するとすれば、そう簡単には日本経済が景気後退局面に入ることはない、と考えています。ただし、米国経済でも日本経済でもまだまだインフレが高止まりしており、特に、日本ではすでに景気回復・拡大局面の後半に入っている点は忘れるべきではありません。加えて、長期金利が2%超となっている中で、多くのエコノミストが円高を展望して待ち望んでいる金融引締めは景気を下押しすることが明らかであり、引き続き、注視する必要があるのは当然です。
ただ、今月は景気動向指数に3枚目のグラフを新たに付け加えました。上のグラフの一番下のパネルの景気を把握する新しい指数(一致指数)です。12月データがまだ利用可能ではありませんが、青いラインの現行のCI一致指数が停滞気味であるのに比べて、赤の景気を把握する新しい指数(一致指数)は明らかに現行CI一致指数よりも上向きとなっています。そして、その景気を把握する新しい指数(一致指数)を構成する生産・分配=所得・支出の3面と財・サービス別のコンポーネントをプロットしています。新指標を構成する3面の中では、生産よりも支出が上昇し、さらに支出よりも分配=所得が上昇し、新指標をけん引している点が読み取れます。もちろん、財・サービス別では財よりもサービスの方の上昇が大きくなっています。この新指標はまだ参考指標ではありますが、何となく私の実感によくマッチしている気がします。
最後に、CI一致指数を構成する系列を前月差に対する寄与度に従って詳しく見ると、耐久消費財出荷指数が▲0.35ポイント、次いで、商業販売額(小売業)(前年同月比)が▲0.26ポイント、投資財出荷指数(除輸送機械)が▲0.17ポイント、などが下降の方向で寄与しています。引用した記事にある「自動車出荷減」は耐久消費財集荷指数や商業販売額(小売業)に現れているようです。逆に、商業販売額(卸売業)(前年同月比)が+0.26ポイント、有効求人倍率(除学卒)が+0.13ポイント、営業利益(全産業)は+0.10ポイント、などが上昇の方向での寄与を示しています。ついでに、前月差+0.3ポイントと上昇したCI先行指数についても上昇要因だけ数字を上げておくと、新設住宅着工床面積が+0.51ポイント、新規求人数(除学卒)が+0.33ポイント、中小企業売上げ見通しDIが+0.22ポイント、などとなっています。

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2026年2月 5日 (木)

さ来週公表予定の10-12月期GDP統計速報1次QEの予想やいかに?

先月末あたりから必要な統計がほぼ出そろって、さ来週2月17日に、昨年2025年10~12月期GDP統計速報1次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。ということで、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下のテーブルの通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、GDP統計の期間である昨年2025年10~12月期ではなく、足元の1~3月期から先行きの景気動向を重視して拾おうとしています。先行き経済について言及しているシンクタンクは大和総研やみずほリサーチ&テクノロジーズなど多くあり、特にこの2機関は詳細に分析していますので長々と引用してあります。いずれにせよ、1次情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。なお、"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.2%
(+0.7%)
2025年7~9月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資と公共投資が大幅に下方改定される見込み。この結果、成長率は前期比年率▲2.4%(前期比▲0.6%)と、1次QE(前期比年率▲1.8%、前期比▲0.4%)から下振れると予想。
大和総研+0.2%
(+0.7%)
2026年1-3月期の日本経済は、プラス成長を続けると見込んでいる。所得環境の改善により個人消費が増加に転じるほか、設備投資も増加を続けよう。輸出は、トランプ米政権による高関税政策(トランプ関税)や中国政府の渡航自粛要請の影響などから、財、サービスいずれも減少するとみられる。
個人消費は増加すると予想する。背景にあるのは、実質賃金の上昇だ。10月以降の最低賃金の大幅引き上げなども背景に、名目賃金上昇率が堅調に推移する一方、物価上昇率は政府のエネルギー高対策や食料品価格の上昇鈍化などにより、大きく低下しよう。例年以上の高水準となったとみられる2025年の年末賞与も、ラグを伴いつつ、2026年1-3月期の消費を下支えすると見込んでいる。
設備投資は増加すると予想する。日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(日銀短観)によると、12月調査時点での2025年度の設備投資計画(全規模全産業、除く土地、含むソフトウェア・研究開発)は前年度比+9.5%と堅調だった。トランプ関税の影響により輸出企業の一部で投資意欲が下押しされる面はあるものの、日本経済全体ではソフトウェアや研究開発にけん引される形で、設備投資の増加基調が維持されると見込んでいる。
住宅投資は、2025年4月の法改正前後の駆け込み需要と反動減の影響がおおむね一巡し、横ばい圏で推移すると見込んでいる。
公共投資は増加すると予想する。防災・減災、国土強靱化にかかる事業の進捗に下支えされる中、2025年後半に弱含んだ反動が一部で表れよう。政府消費は、高齢化に伴う医療費増などにより増加すると見込んでいる。
輸出は減少が続くと予想する。トランプ関税への対応で、企業が米国での販売価格を引き上げたり、現地生産・調達を増やしたりする動きが加速することで、財輸出は米国向けを中心に減少しよう。サービス輸出も、中国政府の渡航自粛要請により中国人訪日客の減少が続くことなどから、弱含むとみられる。
みずほリサーチ&テクノロジーズ+0.6%
(+2.4%)
2026年1~3月期の実質GDPも、個人消費や設備投資などの内需を中心に緩やかな拡大が続くだろう。
個人消費は、実質賃金の改善が追い風になると見込む。名目賃金の上昇傾向が続く一方、食料インフレの減速や政府の物価高対策を受けて物価の伸びが抑制されるためだ。2025年末にいわゆるガソリン暫定税率が廃止されたことに加え、2025年度補正予算に盛り込まれた電気・ガス代支援の効果が2~4月のインフレ率を押し下げる(支援実施期間は1~3月)ことで、コアCPI(生鮮食品を除く総合)は一時的に前年比+2%を下回ると考えられる。
設備投資は、企業の堅調な景況感・業績や、省力化・DX関連投資といった構造的な投資需要を背景とする旺盛な設備投資意欲を受け、拡大傾向が続くだろう。米国の高関税は今後も残るものの、日本の輸出をさらに下押しする可能性は小さく、設備投資への影響も限定的とみる。
さらに、2026年度の日本経済は、こうした個人消費や設備投資の拡大に、高市政権の総合経済対策の効果も本格的に加わり、前年比+1%前後の堅調な成長になると見込まれる。公共投資を中心とする公的需要の拡大、エッセンシャルワーカーの処遇改善や子育て応援手当などを通じた消費喚起、そして、「危機管理投資・成長投資」による設備投資の支援策が、2026年度の成長率を押し上げる要因になろう。
金融政策については、経済・物価や為替の動向などを踏まえて日本銀行が今後2026年度内に2回の追加利上げを行い、政策金利が1.25%の水準に到達すると現時点で見込んでいる。
ニッセイ基礎研+0.4%
(+1.7%)
2025年10-12月期は、外需がほぼ横ばいとなる中、民間消費、住宅投資、設備投資がいずれも増加し、国内民間需要中心のプラス成長になったとみられる。輸出は当面横ばい圏にとどまるものの、物価高対策による実質購買力の改善を主因として民間消費が底堅く推移し、高水準の企業収益を背景に設備投資の増加が続くことが見込まれる。現時点では、2026年1-3月期の実質GDPは前期比年率1%台のプラス成長を予想している。
第一生命経済研+0.4%
(+1.5%)
現時点では、26年1-3月期もプラス成長を予想している。米国経済が底堅く推移していることから輸出の緩やかな持ち直しが見込めることに加え、物価の鈍化に伴って実質賃金の下げ止まりが予想されることが下支え要因となるだろう。これまで賃金の伸びが物価上昇に追い付かず、実質賃金は減少が続いていた。だが、ガソリン旧暫定税率廃止や電気・ガス代補助金の再開といった政策要因もあり、1-3月期のCPIは前年比+2%を割り込む可能性が高く、実質賃金もプラス圏に浮上することが予想される。所得面での下押しが和らぐことが、個人消費の下支えになるだろう。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.5%
(+2.0%)
2025年10~12月期の実質GDP成長率(1次速報値)は、前期比+0.5%(前期比年率換算+2.0%)と、2四半期ぶりのプラス成長になったと見込まれる。個人消費や設備投資といった内需が底堅く推移したほか、トランプ関税の影響で落ち込んでいた米国向けを中心に、輸出に下げ止まりの動きがみられたことも下支えとなった。加えて、制度変更の影響で前期に大きく落ち込んだ住宅投資が、住宅着工の持ち直しを受けて前期比プラスに転じたことも押し上げに寄与した。
三菱総研+0.4%
(+1.6%)
先行きの日本経済は、内需の底堅さに支えられ、1%近傍のプラス成長が続くとみる。
個人消費は、家計の購買力回復・マインド改善から、緩やかに持ち直すとみる。26年春闘では5%超の高い賃上げ率が維持され、先行きの実質賃金が前年比プラス基調に転じるだろう。
企業の設備投資は、DX・GX・供給網強靱化などの構造的な取り組みに加え、設備投資促進政策の押し上げもあり、拡大傾向が続くだろう。
伊藤忠総研+0.4%
(+1.8%)
2026年1~3月期は、米国経済の減速に加え、春節期間の訪日中国人客の大幅減が懸念されるため、輸出は再び前期比で減少に転じるとみられる。一方、政府の物価高対策の効果もあり個人消費は増勢を強め、設備投資は拡大基調を維持、公共投資も今年度補正予算での追加分が執行され増加に転じると見込まれるため、マイナス成長は回避すると予想。ただ、実質GDP成長率は減速する可能性があろう。
明治安田総研+0.4%
(+1.8%)
先行きは、コメをはじめとする食品価格の寄与低下や、ガソリン税の旧暫定税率廃止などの影響で物価上昇率が鈍化することから、実質賃金はプラス圏に浮上することが見込まれる。ただし、プラス幅自体は限定的とみられ、個人消費はあくまで緩やかな回復にとどまるとみる。設備投資は、日銀短観など各種調査でみられるとおり計画は堅調で、良好な企業収益に加え、省力化投資の需要が安定的に見込まれることを追い風に底堅い推移が続くと予想する。一方、住宅投資は、住宅価格の高止まりと住宅ローン金利の上昇が足枷になるとみる。
外需については、インバウンド需要は一定程度下支え要因となるものの、米国の関税が引き続き自動車を中心に下押し圧力になるほか、中国景気が力強さを欠くことなどから財輸出は停滞気味の推移が見込まれる。これらを踏まえると、2026年の日本景気は緩やかな回復傾向で推移するというのがメインシナリオである。
農中総研(+2.1%)10~12 月期のGDPについて、実質成長率は前期比0.5%(同年率換算2.1%)と、2期ぶりのプラスと予想する。前年比も0.8%と6期連続のプラスが見込まれる。また、名目成長率は前期比0.9%(同年率3.6%)と2期ぶりのプラスとなるだろう。
東京財団+0.28%
(+1.13%)
モデルは、2025年10-12月期のGDP(実質、季節調整系列前期比)を、0.28%と予測。※年率換算: 1.13%

すべてのシンクタンクが2025年10~12月期をプラス成長と見込んでいます。大雑把に、+1%台後半から+2%台前半というところかと思います。そして、現在の足元の1~3月期もプラス成長を見込んでいるシンクタンクが多くなっています。昨期の10~12月期と足元の1~3月期に共通して、大雑把な見方として、政府の物価高対策を含めて物価上昇率が低下してきたのに従って、実質所得が増加して消費が増加しているのが大きな要因のひとつと私は考えています。ただ、米国のトランプ関税などで輸出は伸び悩んでおり、外需が内需の足を引っ張っている、という構図かと思います。ただ、内需にしても、住宅投資は制度要因によるかく乱から脱したばかりですし、設備投資も日銀短観などに示された投資計画通りに実行されるという保証はありません。特に、みずほリサーチ&テクノロジーズが想定しているように、日銀が政策金利を2回に渡ってベーシスずつ引き上げて1.25%になったりすると、設備投資や住宅投資には金利上昇の悪影響が出始めかねないと私は危惧しています。ただ、少なくとも現時点では今年の春闘でも+5%程度の賃上げとなり、消費者物価上昇率が今年前半には+2%を下回る可能性が高いですから、消費が今年2026年に拡大する可能性は高まっていると考えられます。例えば、日本経済研究センター(JCER)のESPフォーキャストによれば、いずれも予想値の平均で、2026年の春季賃上げ率は5.02%、2026年1~3月期の消費者物価上昇率は+1.90%と、それぞれ予想されています。ですので、実質賃金は+2-3%の伸びとなる可能性が高まっています。消費はその実質所得の増加に従って拡大すると期待してよさそうです。
最後に、下のグラフはニッセイ基礎研究所のリポートから引用しています。

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2026年2月 4日 (水)

KPMGリポート「経済安全保障・地政学リスク2026」

先週金曜日の1月30日にBig4会計法人のひとつであるKPMGから「経済安全保障・地政学リスク2026」と題するリポートが公表されています。まず、2026年の注目テーマとして9項目が上げられており、最初の6項目は地域別で、米中関係、米国、東アジア、ロシア・ウクライナ、欧州、グローバルサウス、となっており、残り3項目が地域横断的に、サステイナビリティ、経済安保、テクノロジー、となっています。

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上のテーブルは、KPMGのサイトから、【米国・中国・EU・日本のAI政策比較】を引用しています。現在の株高などをAI技術がサポートしている面があるのは広く報じられている通りです。ただ、テーブルから、私なりに2点だけ読み取ると、第1に、AIのリスクを意識しているのは欧州だけで、米中日はどうも、手放しでAI振興の方向性を打ち出しているように見受けられます。それにしては、第2に、投資規模が日本だけ1桁小さいような気がします。米国が5000億ドル、中国が1兆元=22兆円、欧州も2000億ユーロ=36兆円、に対して日本は1兆円、ということのようです。KPMGの取りまとめですので、抜けがないとはいい切れませんし、そもそも、GDPで見た経済規模が日本だけ小さい、ということもいえますが、リスクを考えていない割には投資規模が小さい、というのが日本のAI政策の特徴かもしれません。

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2026年2月 3日 (火)

観光経済学の紀要論文が発行される

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私の論文 "How Tourism Promotes Economic Development : A Case of Cambodia" が収録された『立命館経済学』第74巻第3号が、ようやく、先週の1月末に出ました。論文のSummaryを引用すると次の通りです。

Summary
After the independence from France, the Khmer Rouge's radical collectivization policies fallen Cambodia's society and economy down into a deep turmoil. Ending the civil war, Cambodia has recovered peace by the Paris Peace Agreement and began economic growth. However, the current Cambodia's economic stage is not so advanced, compared with other Asian countries. Since the Angkor Site was inscribed as World Heritage by UNESCO in 1992, Cambodia's tourism resources are attracting attention and expected to boost growth. This study explores Cambodia's history and current economic situation and reviews tourism-promoting policies of both Cambodia's government and international organizations such as the Asian Development Bank (ADB) and the World Bank from the perspective of development economics. And the paper attempts an empirical analysis to evaluate tourism in Cambodia. Conclusion of the study indicates : 1) Cambodia has been failing to utilize the tourism for poverty alleviation ; 2) the leapfrogging development is not always recommendable ; and 3) even considering the tourism as growth engine, among many types of the special interest tourism (SIT), the gambling and the prostitution/sex trafficking are not eligible as a tourism resource.

まあ、何と申しましょうかで、研究を止めて教育に専念したわけではない、という程度の意志を表示するため、年に1本だけ論文を書いています。今年度は観光経済学です。通常、夏休みに書いて秋口に提出し、今回は11月号に掲載されたのですが、なぜか、11月号の発行が今になっているわけです。最近5年ほどは日本語ではなく英語で書くようにしています。今までの経験上、英語の論文の方が引用されやすいように感じているからです。

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2026年2月 2日 (月)

2025年の映画の興行収入やいかに?

やや旧聞に属するトピックながら、先週の水曜日1月28日に、大手映画4社で作る日本映画製作者連盟(映連)から2025年に国内で公開された映画の興行収入についてプレスリリースが明らかにされています。全国の興行収入の合計は2744億5千万円となり、現在の発表形式に変わった2000年以降で過去最高を記録しています。まず、朝日新聞の記事を最初のパラだけ引用すると以下の通りです。

昨年の映画興収、過去最高の2744億円 「鬼滅」「国宝」など牽引
大手映画4社で作る日本映画製作者連盟(映連)は28日、2025年に国内で公開された映画の興行収入が2744億5千万円となり、現在の発表形式に変わった00年以降で過去最高になったと発表した。

続いて、映連のサイトから、邦画・洋画別に興行収入トップ10をテーブルに取りまとめると次の通りです。
【邦画】

順位公開月作品名興行収入
(億円)
配給会社
17劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来391.4東宝/アニプレックス
26国宝195.5東宝
34名探偵コナン 隻眼の残像 (フラッシュバック)147.4東宝
49劇場版『チェンソーマン レゼ篇』104.3東宝
524/12月はたらく細胞63.6WB
68劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~南海ミッション』52.9東宝
788番出口51.7東宝
83映画ドラえもん のび太の絵世界物語46.1東宝
924/12月映画「グランメゾン・パリ」42.0東宝/SPE
101機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-36.2東宝/バンダイナムコフィルムワークス



【洋画】
順位公開月作品名興行収入
(億円)
配給会社
15ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング52.8東和ピクチャーズ
224/12月モアナと伝説の海251.7WDS
38ジュラシック・ワールド/復活の大地49.0東宝東和
44 マインクラフト/ザ・ムービー39.4WB
53ウィキッド ふたりの魔女35.4東宝東和
66リロ&スティッチ33.9WDS
724/12月ライオン・キング:ムファサ22.5WDS
86F1/エフワン21.3WB
93教皇選挙11.5キノフィルムズ
102キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド11.4WDS

昨年の映画界では、何といっても、吉田修一原作の「国宝」が話題をさらったと記憶しているのですが、「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来 は、その話題になった「国宝」の2倍の興行収入を上げています。「国宝」のヒットに関しては、確かに「実写映画としては」というただし書き付きでした。コロナの感染豊穣の分類変更から一定の時間が経過し、こういった映画の世界もいくぶんなりとも元の世界の賑わいを取り戻しつつある気がします。それにしても、我が国映画界ではここまで邦画が洋画を圧倒しているとは知りませんでした。

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2026年2月 1日 (日)

損害保険に入っている犬種のランキング

ほとんど私は興味ないんですが、1月29日に、ペット損害大手のアニコム損害保険から2026年最新版の「犬種ランキング」が明らかにされています。アニコム損害保険に加入しているという限定の犬種ランキングであり、以下の通りです。

順位犬種頭数割合 (%)体格
1位 (1)MIX犬 (体重10kg未満)30,06119.9小型犬
2位 (2)トイ・プードル26,3217.4小型犬
3位 (3)チワワ18,59212.3小型犬
4位 (5)ミニチュア・ダックスフンド9,1286.0小型犬
5位 (6)ポメラニアン8,4625.6小型犬
6位 (4)柴 (豆柴含む)8,2585.5中型犬
7位 (7)ミニチュア・シュナウザー6,3884.2小型犬
8位 (8)フレンチ・ブルドッグ3,7242.5中型犬
9位 (9)マルチーズ3,5502.3小型犬
10位 (12)カニーンヘン・ダックスフンド3,0142.0小型犬

ペットに関しては、私は実家の親元で暮らしていた小学生くらいから大学生まで猫を飼っていまそた。私が飼っていたわけではなく、母親が好きだったので飼っていたように記憶しています。ですので、私は猫の蚤取りができたりします。
でも、保護猫や保護犬に関して、ドイツのティアハイム・ベルリン Tierheim Berlin について勉強したこともありますし、たぶん、日本で唯一の保護犬や保護猫の経済学経営学研究者の論文も読んだことがあります。その上で、この年齢に達すると、それなりの残り寿命がないと、少なくとも子犬や子猫は飼うべきではないと考えています。ペットショップは私の住んでいるような片田舎にはそれほどありませんが、それでも、小さなケージに入れられている子犬や子猫はかわいそうと思う時もあったりします。ですので、保険に入るかどうかは別としても、きちんとケアして欲しいですし、そのほかも大事に飼って欲しいと願っています。

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