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2026年3月 3日 (火)

好調な企業業績を反映する10-12月期法人企業統計と陰りの見え始めた1月の雇用統計

本日、財務省から昨年2025年10~12月期の法人企業統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。雇用統計は、いずれも1月の統計です。法人企業統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で見て、売上高は前年同期比+0.7%増の400兆6499億円、経常利益は+4.7%増の30兆270億円に上っています。さらに、設備投資も+6.5%増の15兆3865億円を記録しています。また、設備投資を季節調整済みで見ると、GDP統計の基礎となる系列については前期比+3.5%増となっています。雇用統計については、失業率は前月から+0.1%ポイント上昇して2.7%、有効求人倍率も前月から▲0.02ポイント低下して1.18倍と、それぞれ雇用は悪化しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

10-12月法人企業、設備投資6.5%増 都市開発や情報関連伸び
財務省が3日発表した2025年10~12月期の法人企業統計によると、全産業(金融・保険業を除く)のソフトウエアを含む設備投資は前年同期比6.5%増の15兆3865億円だった。4四半期連続でプラスだった。都市開発やデータセンター関連の投資が伸びた。
法人企業統計は上場企業に限らず日本企業全体の動向を調べている。設備投資は10~12月期としては過去最高だった。
非製造業は10.1%増と4四半期連続で増えた。10~12月期の伸び率は前期から加速した。不動産業や情報通信業が全体をけん引した。運輸業・郵便業は落ち込んだ。
製造業は前年同期と比べて横ばいだった。半導体材料や医薬品の生産体制を増強する動きがみられ、化学が18.7%伸びた。情報通信機械や生産用機械は落ち込んだ。
季節調整済みの前期比でみると、設備投資は3.5%増となり、2四半期ぶりのプラスになった。非製造業が全体をけん引した。
経常利益は前年同期比で4.7%増の30兆270億円だった。5四半期連続のプラスだった。
非製造業は7.1%増加した。飲食店で価格改定が進み収益力が改善したほか、娯楽分野で客数が増加したことなどで、サービス業が20.7%増だった。デジタル関連の需要が強く、情報通信業も20.9%増えた。
製造業は0.9%増と小幅の伸びだった。情報通信機械が52.9%増と全体の押し上げに寄与した。人工知能(AI)やデータセンター関連の需要がみられた。
売上高は0.7%増の400兆6499億円だった。製造業は電気機械が、非製造業は卸売業・小売業が全体をけん引した。
財務省の担当者は今回の結果について「景気が緩やかに回復しているという政府の認識と齟齬(そご)がない」との判断を述べた。
1月の失業率2.7%、5カ月ぶり上昇 有効求人倍率は1.18倍に低下
総務省が3日発表した1月の完全失業率(季節調整値)は2.7%だった。前月と比べて0.1ポイント上昇した。上昇は5カ月ぶり。より良い待遇を求めて仕事探しをする人が増えた。
厚生労働省が3日発表した1月の有効求人倍率(季節調整値)は1.18倍と、前月から0.02ポイント下がった。低下は3カ月ぶり。省人化投資の広がりや最低賃金の引き上げに伴って求人を控える動きがみられた。
有効求人倍率は全国のハローワークで職を探す人について、1人あたり何件の求人があるかを示す。有効求人数は0.1%減った。有効求職者数は0.9%増だった。よりよい条件を求めて仕事を探す動きがあった。
景気の先行指標とされる新規求人数(原数値)は前年同月と比べて4.6%減った。主要産業別でみると、宿泊・飲食サービス業が13.8%減、卸売・小売業は11.6%減、情報通信業は7.0%減だった。
教育・学習支援業が4.3%増、製造業は0.8%増だった。製造業の動きに関して担当者は「政府の戦略分野である造船や半導体、防衛などにおいて求人が増えた」という。

長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上高と経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影を付けた部分は景気後退期となっています。

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法人企業統計の結果について、基本的に、企業業績は好調を維持していると考えるべきです。ただし、法人企業統計の売上高や営業利益・経常利益などはすべて名目値で計測されていますので、物価上昇による水増しを含んでいる点は忘れるべきではありません。ですので、数量ベースの増産や設備投資増などにどこまで支えられているかは、現時点では明らかではありません。来週のGDP統計速報2次QEを待つ必要があります。他方で、その物価上昇も含めて、企業業績が昨年来の株価に反映されているわけで、米国とイスラエルによるイラン攻撃から始まった中東の地政学的リスクの顕在化の前まで、東証平均株価は5万円を超えて6万円に近づいていたわけです。ただし、所得の伸び悩みに起因する個人消費などと違って、企業業績は基本的に好調を維持しているものの、何といっても、中東の地政学的リスクが顕在化し、エネルギー価格がどうなるか次第といえます。先行きが不透明であることはいうまでもありません。先行きの景気への影響という点に関しては、中東情勢に伴うエネルギー価格とともに、トランプ関税の今後の動向も懸念されます。製造業、中でも影響の大きい自動車産業の動向が今後一段と悪化する可能性が高いと考えられます。景気動向に関しては自動車をはじめとする製造業に注目しつつ、設備投資動向に関しては人手不足による影響が大きい非製造業、中でも、比較的労働集約的な業種の動向が注目されます。いずれにせよ、最大の懸念材料は中東情勢とエネルギー価格、さらに、米国の関税率や通商政策だろうとお考えるべきです。いずれも、先行き不透明です。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金、最後の4枚目は人件費と経常利益をそれぞれプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。人件費と経常利益も額そのものです。利益剰余金を除いて、原系列の統計と後方4四半期移動平均をともにプロットしています。見れば明らかなんですが、コロナ禍を経て労働分配率が大きく低下を示しています。もう少し長い目で見れば、デフレに入るあたりの1990年代後半からほぼ一貫して労働分配率が低下を続けています。そして、現在でも労働分配率の低下は続いています。いろんな仮定を置いていますので評価は単純ではありませんが、デフレに入ったあたりの1990年代後半の75%近い水準と比べて、最近時点では▲20%ポイント近く労働分配率が低下している、あるいは、コロナ禍の期間の65%ほどと比べても▲10%ポイントほど低下している、と考えるべきです。名目GDPが約600兆円として50-100兆円ほど労働者から企業に移転があった可能性が示唆されています。加えて、一昨年2024年や昨年2025年の春闘では人口減少下の人手不足により賃上げ圧力が高まった結果として、労働分配率が下げ止まった可能性が示唆されていましたが、統計を見る限り決してそうはなっていません。昨年今年と春闘ではあれだけの賃上げがありながら、まだ労働分配率は低下し続けている可能性が高いと考えるべきです。しかも高インフレが続いており、これでは消費は伸びません。中東情勢に起因してエネルギー価格が上昇すれば、さらに物価上昇に拍車が掛かる可能性も大いにあります。いずれにせよ、日本経済には大きなマイナス要因だと私は考えています。設備投資/キャッシュフロー比率も底ばいを続けています。DXやGXに対応した設備投資の本格的な増加が始まったことが期待される一方で、決して楽観的にはなれません。他方で、ストック指標なので評価に注意が必要とはいえ、利益剰余金はまだまだ伸びが続いています。また、4枚めのパネルにあるように、直近統計で2020年くらいからは、人件費の伸びが高まっている可能性が見て取れますが、人件費以上に経常利益が伸びているのがグラフの傾きから明らかです。労働分配率の低下と整合的なデータであると考えるべきです。アベノミクスではトリクルダウンを想定していましたが、企業業績から勤労者の賃金へは滴り落ちてこなかった、というのがひとつの帰結といえます。しかし、先月の総選挙ではアベノミクスをなぞるような「責任ある積極財政」を掲げる高市内閣が圧倒的な信任を受けました。さらに、企業に傾斜し国民生活を顧みない経済政策が強化されるおそれすらあります。反対に、勤労者の賃金が上がらない中で、企業業績だけが伸びて株価が上昇する経済が終焉して、資本分配率が低下して労働分配率が上昇することにより、諸外国と比べても高いインフレにならずに日本経済が成長するパスが実現できる可能性が生じており、それは中期的に望ましい、という私の考えは代わりありません。

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法人企業統計を離れて、雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの統計であり影を付けた部分は景気後退期を示しています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、失業率が2.6%有効求人倍率は1.19倍が予想されていました。本日公表された実績で、失業率2.7%、有効求人倍率1.18倍はともに、市場の事前コンセンサスより下振れしました。ただし、雇用情勢は引き続き悪くなく、雇用は底堅いと私は考えています。というのは、失業率が上昇している背景を考えると、確かに失業者数が増加していて、季節調整していない原系列の統計で見て、失業者数は1月に+16万人増加しているのですが、非自発的な離職が6万人いる一方で、よりよい労働条件を求めるなど、自己都合で自発的に離職した人が5万人、さらに、新たに求職を始めた人も5万人います。雇用者は前年同月から+22万人増加しています。逆に、非労働力人口が減少を続けています。1月は前年同月から▲41万人減となっています。専業主婦や高齢者、だけとは限りませんが、労働市場に参入していなかった非労働力人口が労働市場に参入して、雇用者と失業者をともに増加させている、という図式です。基本は、実質所得を増加させるには不十分とはいえ、春闘から続く賃上げによって就業意欲が高まる、という形で、賃金上昇に伴って労働市場への参入が増加し、雇用者も失業者もともに増加している、その相対的な増え方の差で失業率が上昇している、と考えるのが伝統的な経済学の見方であろうと思います。加えて、総務省統計局のプレスリリースによれば、1月統計では「正規の職員・従業員」は前年同月から+57万人増加した一方で、「非正規の職員・従業員」は▲37万人減少しています。雇用者の待遇も改善していると考えるべきです。

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