« 哲学の道でお花見 | トップページ | 育児と介護の女性負担はどれくらい不公平か? »

2026年4月 1日 (水)

3月調査の日銀短観もやっぱり「過去の数字」

本日、日銀から3月調査の短観が公表されています。日銀短観のヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは12月調査から+1ポイント改善して+17、他方、大企業非製造業は横ばい+36となりました。また、本年度2026年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比+1.3%増で始まっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業製造業の景況感、4四半期連続で改善 日銀3月短観
日銀が1日に発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感が4四半期連続で改善した。人工知能(AI)関連需要などの増加が景気を支えている。米国とイスラエルによるイランの攻撃でエネルギー価格が高騰しており、先行き3カ月の景況感は製造業、非製造業ともに悪化した。
中東情勢の悪化に伴う企業への影響を確認する初の調査となる。
大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はプラス17と、前回2025年12月調査から1ポイント改善した。大企業非製造業の業況判断DIはプラス36と横ばいだった。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた数値になる。回答期間は2月26日~3月31日。対象企業の99%が回答した。3月12日までにおおむね7割の回答があった。民間エコノミストの予想では大企業製造業は改善、大企業非製造業は悪化を見込んでいた。
大企業製造業ではデータセンターや半導体といったAI関連需要が堅調に推移し、幅広い業種の景況感の改善につながった。円安も収益改善の追い風となった。業種別にみると、生産用機械が10ポイント改善のプラス26、非鉄金属が10ポイント改善のプラス23、自動車は4ポイント改善のプラス13だった。
エネルギー価格の上昇により一部の業種では景況感が悪化した。石油・石炭製品は18ポイント悪化のプラス18、化学は5ポイント悪化のプラス14だった。
大企業非製造業では宿泊・飲食サービスが18ポイント改善のプラス34、小売が5ポイント改善のプラス26だった。人件費などの価格転嫁が進んだ。原油高が収益に響く運輸・郵便は8ポイント悪化のプラス23となった。
先行きの景況感は大企業製造業が3ポイント悪化のプラス14、非製造業が7ポイント悪化のプラス29だった。事業環境の不透明感に加え、エネルギー価格の上昇に伴うコスト増や消費の鈍化が懸念材料となっている。
日銀は調査対象の企業を3月の短観から見直した。25年12月調査の大企業製造業の業況判断DIをプラス15からプラス16、大企業非製造業の業況判断DIをプラス34からプラス36にそれぞれ修正した。
企業の事業計画の前提となる26年度の想定為替レートは全規模全産業で1ドル=150円10銭だった。25年度は148円29銭で、やや円安方向に修正された。輸出企業の収益改善につながる可能性がある。
日銀は27~28日に金融政策決定会合を開く。春季労使交渉で賃金を引き上げる企業が目立ち、イラン攻撃後も景況感は大幅に悪化しなかった。日銀は支店長会議などで経済物価情勢の分析を続け、利上げに動ける状況かを判断する。

いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

photo

月曜日に、日銀短観予想を取りまとめた際にも書いたように、業況判断DIに関しては、製造業・非製造業ともにおおむね横ばい圏内ながら、ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは小幅に改善、との予想が緩やかなコンセンサスであったと私は考えています。例えば、私が見た範囲で、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、大企業製造業が前回12月調査からやや改善の+17と予想されていました。本日公表された大企業製造業の景況判断DIの+17という実績は、市場の事前コンセンサスに一致しましたし、横ばい圏内の動きという意味でも、動きの幅のマグニチュードでも大きなサプライズはありませんでした。ただ、先行きについては大企業・中堅企業・中小企業の規模を問わず、また、製造業・非製造業の産業を問わず、業況判断指数DIが悪化する結果となっています。米国とイスラエルによるイラン攻撃やその結果としてのホルムズ海峡封鎖などが、この短観に対する回答にどこまで織り込まれていたかは不明な部分もありますが、いずれにせよ、何度か同じことをほかの経済指標の発表の際にも繰り返しましたが、足元の統計は過去の数字であり、先行きはまったく不透明、ということです。

photo

続いて、設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。経済学における生産関数のインプットとなる資本と労働の代理変数である設備と雇用人員については、方向としては過剰感がほぼ払拭されました。特に、雇用人員については足元から目先では不足感がますます強まっている、ということになります。グラフを見ても理解できる通り、大企業・中堅企業・中小企業ともコロナ禍前の人手不足感を上回っています。今春闘での賃上げが高水準だった背景でもあります。ただし、何度もこのブログで指摘しているように、名目賃金が物価上昇以上に上昇して、実質賃金が安定的に上向くという段階までの雇用人員の不足は生じているかどうかに疑問があり、その意味で、本格的な人手不足かどうか、賃金上昇を伴う人手不足なのかどうか、については、まだ、私は日銀ほどには確信を持てずにいます。すなわち、不足しているのは低賃金労働者であって、賃金や待遇のいい decent job においてはそれほど人手不足が広がっているわけではない可能性がある、と私は想像しています。加えて、我が国人口がすでに減少過程にあるという事実が、かなり印象として強めに企業マインドに反映されている可能性があります。ですから、マインドだけに不足感があって、経済実態として decent job も含めた意味で、どこまでホントに人手が不足しているのかは、私にはまだ謎です。実質賃金、すなわち、名目賃金が物価上昇に見合うほど上がらないために、そう思えて仕方がありません。特に、雇用については不足感が拡大する一方で、設備については不足感が大きくなる段階には達していません。要するに、繰り返しになりますが、非正規雇用のような低スキルしたがって低賃金労働者が不足しているだけであって、外国人を含めて低賃金労働の供給があれば、生産要素間で代替可能な設備はそれほど必要性高くない、ということの現れである可能性が十分あるのではないかと感じます。

photo

続いて、設備投資計画のグラフは上の通りです。日銀短観の設備投資計画のクセとして、今回の3月調査は年度始まりの前の時点ですので、まだ年度計画を決めている企業が少ないためか、マイナスか小さい伸び率で始まった後、6月調査で大きく上方修正され、景気がよければ、9月調査ではさらに上方修正され、さらに12月調査でも上方修正された後、その後は実績にかけて下方修正される、というのがあります。今回の3月調査では全規模全産業で+13%増のプラスの伸びが計画されています。ただ、先行き不透明感が大きく、この先、6月調査や9月調査で3月調査よりも上積みされるかどうかは不明です。もっとも、AI活用、デジタルトランスフォーメーション(DX)、カーボンニュートラルを目指したグリーントランスフォーメーション(GX)、さらに、グローバリゼーション=国際化などに対応した投資がいよいよ本格化しなければ、ますます日本経済が世界から取り残される、という段階が近づいているような気がして、設備投資の活性化を期待しています。ただ、GDPベースの設備投資やその先行指標である機械受注などのハードデータと日銀短観に示されたソフトデータの間でまだ不整合が残っているような気がします。計画倒れにならないことを願っています。

最後に、引用した記事の最後のパラにあるように、本日公表の日銀短観では業況判断DIだけでなく、雇用人員判断DIや生産・営業用設備判断DI、さらに、設備投資計画などから判断して、4月最終週の金融政策決定会合でどのような判断が示されるか注目しています。新たにボードメンバーに加わった浅田先生の発言にも私は注目しています。

|

« 哲学の道でお花見 | トップページ | 育児と介護の女性負担はどれくらい不公平か? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 哲学の道でお花見 | トップページ | 育児と介護の女性負担はどれくらい不公平か? »