2026年5月31日 (日)
2026年5月30日 (土)
ホームラン攻勢でロッテに連勝
| 一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
| 阪 神 | 1 | 0 | 2 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 6 | 2 | |
| ロ ッ テ | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 3 | 7 | 1 |
【神】 村上、岩崎、ドリス - 坂本
【ロ】 唐川、八木、高野脩 - 佐藤
ロッテ相手に、交流戦に連勝でした。
先発村上投手は8回途中まで3失点、自責点2とナイスピッチングでした。8回のピンチは岩崎投手が火消しを務め、最終回はドリス投手が締めました。打つ方はどうも調子が上がらないように見受けますが、佐藤輝選手の先制ソロに続いて、森下選手がツーラン、ソロとホームランが飛び交いました。ヒーローインタビューは、2ホーマー3打点の森下選手かと思いましたが、エラーの失点があって、岩崎投手が淡々とインタビューに答えていました。
明日も、
がんばれタイガース!
今週の読書は経済史の専門書をはじめとして計5冊
今週の読書感想文は以下の通りです。
まず、バリー・アイケングリーン『世界大恐慌とリーマンショック』(勁草書房)は、1929-33年の大恐慌と2008-09年のリーマンショック、などを経済史の観点から統計データを用いつつ解き明かそうと試みており、リーマン・ショックでは政策当局により最悪の事態を回避したと評価しています。宮田珠己『そして少女は加速する』(幻冬舎)では、東京都多摩地区の私立高校の陸上部に所属するショート・スプリントの女子部員数名を主人公に、2年に渡るインターハイ出場を目指した青春小説です。高校生らしく恋愛や勉学・進学の話題もありますが、緊張感あふれるラストは読みどころたっぷりです。脇田滋『いまどうするか日本経済』(ちくま新書)では、主流派エコノミストの分析により、利益剰余金を通した企業の貯蓄主体化が日本経済の長期停滞の主因との視点から、「家計軽視・企業重視の政策がマクロ経済の基礎体力を弱めてしまった」(p.302)と結論しています。齊藤誠『日本経済を診る』(ちくま新書)では、2018年末から2020年半ばの円安は金利平価説から逸脱していて、「明解に説明することができない」と率直に結論していたりしますが、貯蓄投資バランスを考える際に貯蓄過剰主体化した企業部門を抜きに、政府だけの財政規律を求めるにはムリがあると感じました。まさきとしか『大好きな人、死んでくれてありがとう』(新潮文庫)は、男性アイドルグループの元メンバーだった30代後半男性が、引退後に暮らしていた北海道で刺殺された事件をめぐって、関係者が章ごとに視点を提供する意味での主人公となり、最後に驚くべき真犯人が明らかにされるイヤミスです。
今年2026年の新刊書読書は、1~4月に合わせて97冊、5月に入ってから先週までの24冊に今週の5冊を加えて合計126冊となります。これらの読書感想文については、別途読んだ学術論文などとともに、できる限り、FacebookやX(昔のtwitter)、あるいは、mixi、mixi2などのSNSでシェアしたいと予定しています。
まず、バリー・アイケングリーン『世界大恐慌とリーマンショック』(勁草書房)を読みました。著者は、米国カリフォルニア大学の旗艦校であるバークレイ校の経済学特別教授・政治学教授です。経済史学会会長の経験もあり、ご専門は経済史だと思います。本書の英語の原題は Hall of Mirrors であり、2015年の出版です。原書の出版から10年余りを経過していますが、決して賞味期限は切れていないと私は感じました。参考文献リストや注などを含めると、軽く500ページを超える力作です。邦訳タイトル通り、1929-33年の大恐慌と2008-09年のリーマンショック、さらに、いくつかの金融危機を経済史の観点から統計データを用いつつ解き明かそうと試みています。さすがに、世界大恐慌ではなく、リーマンショックについて焦点を当てて私は読みました。リーマンショックの政策的失敗の最大の原因のひとつは、いわゆるノンバンクに対する行政権限が財務省にも連邦準備制度にも、どちらにもなかった点を上げています。もちろん、政策当局がモラルハザードを懸念してリーマン・ブラザーズの救済に躊躇した、というのも原因のひとつです。それでも、約100年前の世界大恐慌とリーマンショックやその後の金融危機の大きな違いは、政策当局により最悪の事態を回避した点にある、と評価しています。リーマンショックもひどかったという見方はあるにせよ、統計データから見て、世界大恐慌ほどの事態が回避できたことは疑うべくもありません。もちろん、それでも大きなショックだったし、さらに回避可能な部分があり得る点は私も理解していますし、本書でも、p.229以下で政策対応について議論しています。特に、欧州についてはギリシアの財政危機の発生など、危機脱却後の緊縮財政への転換が早すぎた点を上げています。本書のスコープ外ながら、日本でも、2014年の消費税率引上げがアベノミクスのデフレ脱却の成功を阻害した可能性があるのと同様かもしれません。いずれにせよ、そのあたりの詳細は読んでいただくしかありません。加えて、英国の当時のエリザベス女王のように、なぜ予測できなかったのか、という疑問はありえます。その点について、本書ではそれほど深く掘り下げてはいませんが、歴史学に基づく議論が必要、というよりは経済学の科学としての限界なのだろうと私は考えています。最後に、戦前日本の金融恐慌からの脱却については、第17章で「高橋是清のリベンジ」と題して歴史の観点から分析されています。
次に、宮田珠己『そして少女は加速する』(幻冬舎)を読みました。著者は、作家なのですが、紀行エッセイを中心に、日常エッセイ、書評、小説なども執筆と紹介されています。本書はエッセイではなく小説であり、舞台は東京多摩地区、高幡不動のたぶん近くの設定であろうと推察される私立の高幡高校、その陸上部、それも女子部員が中心です。第1部で第1年目、また、第2部で第2年目の2年に渡っており、主人公は主として5人、第1部で2年生だった2人の女子陸上部員と1年生だった3名の女子陸上部員、第2部ではその5人が、そのまま学年が繰り上がります。主人公の女子陸上部員はショート・スプリントの選手たちであり、本書で「4継」と陸上競技用語で表現されている100m×4人のリレーのチームを組み、インターハイ出場を目指します。はい、高校生の主人公による青春小説です。高校生による青春小説ですから、恋愛や勉学・進学などもトピックとして扱われてはいますが、ほぼほぼ焦点は陸上に限定されます。その点をどう読みこなすかは、本書を評価する上でのひとつのポイントかもしれません。私は陸上競技には疎くて、その分、楽しめなかった気もします。ただ、陸上競技は超をつけてもいいくらいに個人競技なのですが、そこにリレーという団体競技の要素も加味し、少しでも幅広い読者層に受け入れられる可能性を広げている点は理解できます。スポーツだけにいまだに理不尽なやり方がまかり通っている部分も残っていますし、高校生くらいまでは1年の差が大きく、先輩と後輩の序列も明確です。もちろん、それぞれの女子陸上部員が置かれている家庭生活も千差万別です。加速する少女たちの目標はインターハイ出場なのですから、青春小説としてラストは判りきっているにもかかわらず、最後の数十ページは緊張感あふれる筆致でグイグイと読ませます。ただ、やっぱり、陸上競技に詳しくない読者には500ページ近いボリュームは少し骨かもしれません。
次に、脇田滋『いまどうするか日本経済』(ちくま新書)を読みました。著者は、東京都立大学経済経営学部の教授です。私は何度か役所のセミナーなどでお会いしたことがあります。実に、主流派のエコノミストだと受け止めています。本書の結論は、p.302にあるように、「家計軽視・企業重視の政策がマクロ経済の基礎体力を弱めてしまった」という点につきます。はい、私もその通りだと思います。冒頭でも、本書の視点として、「利益剰余金を通した企業の貯蓄主体化が日本経済の長期停滞の主因」を上げています。マクロ経済政策、それも景気浮揚を目指す政策の主眼は、貯蓄過剰主体の貯蓄を低減して貯蓄投資バランスを投資に向かわせることです。その意味で、日本ではバブル崩壊からしばらくして企業が貯蓄過剰になって投資をしなくなったため、政府と海外が大赤字を出してバランスを取っている、取らざるを得ない形になっています。ただ、だからといって米国の標準モデルを日本に当てはめることを問題と考える本書の見方には、私は賛同できません。経済モデルを正しく日本的に修正すればいいだけで、バックグラウンドのモデルは決して誤っていないと私は見ています。そのモデルに従った本書のエコノミストのカテゴライズがおもしろいのですが、物価を重視するリフレ派、生産性を重視する構造改革派、そして、やや構造改革派に近いながら役所だけでなくアカデミアにも少なくない財政重視派に分類しています。そして、本書の見立てでは、日本の長期停滞の一因はメインバンク制の崩壊にあるということで、メインバンクを頼れなくなった企業がせっせと内部留保の積増しに走り、貯蓄過剰主体になったのがひとつの要因と指摘しています。そうかもしれませんが、逆に、金融市場の未成熟も忘れるべきではない、という気はします。メインバンクからオーバーボロウしていたのが、自己資本比率に関するBIS規制もあって、もちろん、バブルが崩壊して、さらに、国際化が進み銀行に頼れなくなった企業が合理的な行動として内部留保を積み増すというのはありえます。ただ、アベノミクスでそれを助長し、消費税率を引き下げては法人税率を引き下げるという本書や私から見れば逆向きの経済政策を取ったものですから、日本経済の停滞が長期化したのは事実であろうと考えます。アベノミクスが想定したトリクルダウンがまったく生じなかったのは歴史的事実ですし、企業収益から派生する株高など、高所得者層の収入が増加した一方で、低所得者層が本書で「奥田の一喝」(p.83)と指摘しているような賃金抑制があって、さらに、雇用の非正規化が進んで、経済的格差が拡大したのも新自由主義的なアベノミクスの大きな弊害のひとつでした。ほかに、労働生産性計測上の問題、海外M&Aの失敗、日経新聞について政府の「上意」のプロパガンダ機関化、などなど、読むべき主張が満載です。ただ、タイトルの問いには正面から回答できているとはいえません。診断はとっても正確でオススメですが、処方箋はどうなのでしょうか?
次に、齊藤誠『日本経済を診る』(ちくま新書)を読みました。著者は、國學院大學経済学部教授です。本書では、タイトル通りに、日本経済についてマクロ経済の面からデータをていねいに読み解こうと試みています。その上で、意外性ある処方箋を出そうという意気込みではなく、割合と正直に判らないことは判らないと積み残している点は好感が持てます。典型的には、第5章にあるように、2018年末から2020年半ばの円安は金利平価説から逸脱していて、「明解に説明することができない」と結論しています。金利平価説より現実をよく説明できる適当なモデルを探している、といったところでしょうか。続く第6章では、現在の株高は企業収益に支えられたものであり、労働分配率を低下させて株高が実現している点を率直に診断しています。私も同じ結論です。ただ、労働分配率を上昇させるには賃上げだけでは不十分という診断であり、その理由は賃上げが価格に転嫁されるという前提です。今までは、賃金停滞をせっせと企業収益に注ぎ込んできたことを率直に認めつつも、賃上げは価格に転嫁されて分配率にはそれほど響かないという非対称性の根拠を私は読み取ることができませんでした。企業が収益を上げている事実を背景に株高が進行していて、逆に、労働者への還元がそれほどではなく、株高に関係薄い国民が取り残されている、という事実をどう考えるかはひとつの視点だと思うのですが、そういった議論はそれほど重要ではないと見なしているのかもしれません。もうひとつ、私が疑問に思ったのは、貯蓄投資バランスが政府と家計の間だけで議論されている点です。本書では企業が貯蓄過剰主体になった点についてはまったく無視されています。例えば、本書に限らず、なのですが、コロナショックの時期の政府の特定給付金は貯蓄に回って経済下支えにはつながらなかった、かのごとき議論を見受けますが、ホントに問題なのは企業が内部留保を溜め込んで、一定部分は株主に還元しているとしても、賃上げや設備投資という形で国民経済に広く還元してこなかったのが日本の長期停滞の一因と私は考えていますが、本書では円安について、円安で収益を上げやすくなる輸出企業と輸入品の価格上昇で苦しむ国民を対比させている一方で、企業行動については、ほとんど本書でいう「診断書を書く」ことがなされていません。やや不思議な気がしました。そして、最後の第11章では「健全な経済」のための政策処方箋として、章タイトルの副題になっている「財政規律の回復」を目指したプライマリバランスの黒字化の必要性を主張しています。結局、これが主たる眼目なのだろうか、と考え込んでしまいました。貯蓄過剰主体となった企業を抜きに、政府だけの財政規律を論ずる意味を私は理解できませんでした。
次に、まさきとしか『大好きな人、死んでくれてありがとう』(新潮文庫)を読みました。著者は、ミステリ作家であり、本書も殺人事件から始まり、犯人が明らかにされる驚愕のラストが待ち受けています。ただ、世間的にいえばイヤミスということになるかもしれません。繰返しになりますが、ストーリーの始まりは30代男性の殺人事件です。殺害の現場は北海道Y市とされていて、夕張を強烈にイメージさせます。殺害された被害者は南田蒼太といって、かつて「ファンキーカラーズ」という7人組男性アイドルグループの一員でした。しかし、数年前に解散して、郷里の北海道に帰って親族の経営する菓子メーカーに勤務し、専務になっていました。それなのに、廃ホテルで刃物でメッタ刺しにされて殺害されたわけです。章ごとに、視点を提供するという意味での主人公が入れ替わり、さまざまな事実関係を浮かび上がらせます。章番号が付されていないのですが、第1話では事件当夜に蒼太と接触していた職場のパート女性、第2話では元はといえば同じアイドルグループの一員だった男性、第3話ではかつてアイドルだった被害者に異常な執着と狂信的な愛情を向ける熱狂的ファン、第4話ではアイドルデビューする前に孤児となった蒼太を引き取って育てた伯母、第5話ではアイドルグループだったころの敏腕マネージャー、第6話ではかつてのアイドルグループだったころの絶対的センターと恋愛関係にあって捨てられた女子アナ、がそれぞれ視点を提供します。そして、これも繰返しになりますが、驚愕のラストで真犯人が明らかにされます。ただ、証拠を基に名探偵が推理をめぐらせて真相を明らかにするというわけではありません。どのように真相が明らかにされるかは、真相そのものとともに読んでみてのお楽しみです。ただ、タイトル通りに、被害者が殺害されて、むしろ、喜んでいる人が少なくない、という意味でイヤミスといえます。
2026年5月29日 (金)
いずれも意外と堅調な4月の鉱工業生産指数(IIP)と商業販売統計と雇用統計と5月の消費者態度指数
本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)と商業販売統計が、さらに、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも4月の統計です。IIPのヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から+0.8%の増産、3か月ぶりの増産となります。商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額もは、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+2.1%増の13兆2170億円を示し、季節調整済み指数も前月から+1.3%の上昇となっています。また、失業率は前月から▲0.2%ポイント低下して2.5%、有効求人倍率は前月から横ばいで1.18倍を記録しています。まず、ロイターのサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
4月鉱工業生産は0.8%増、3カ月ぶりプラス 判断「一進一退」据え置き
経済産業省が29日に公表した4月の鉱工業生産指数速報(2020年=100)は前月比0.8%上昇し、3カ月ぶりにプラスに転じた。ロイターの事前予測調査では同0.9%低下と予想されていた。基調判断は「生産は一進一退」で据え置いた。
同時に公表している出荷指数では、ナフサが前月比16.2%減となった。経産省では定期修理などが要因と説明。鉱工業生産全体への中東情勢の影響については「範囲も含めて一概に言えない」と説明している。
4月の生産を押し上げたのは「汎用・業務用機械」や「電気・情報通信機械」などで、このうちコンベヤが前月比2.1倍、半導体・IC測定器が44.3%増えた。
指数を押し下げる方向に寄与したのは「自動車工業」や「無機・有機化学工業」、「化学工業」で、普通乗用車が2.1%、パラキシレンが29.9%減産となった。
企業の生産計画に基づく予測指数は5月が前月比5.1%上昇、6月が同0.4%低下だった。
予測指数には上振れ傾向があるため、これを考慮した5月予測指数の補正値は前月比2.1%増としている。
4月小売業販売額は前年比 2.1%増、自動車・エアコン好調
経済産業省が29日公表した商業動態統計によると、4月の小売販売額は前年比2.1%増の13兆2170億円となった。ロイターがまとめた民間予測は1.3%増だった。自動車販売が好調だったほか、補助金効果などでエアコン販売が数量・金額ともに過去最高だったことなどが押し上げ要因。
<ドラッグストアでラップ・ビニール袋販売好調>
業種別では「自動車小売業」が前年比15.4%増、「機械器具」5.5%増、「その他小売業」が4.3%増などとなった。
業態別では家電大型専門店が12.1%増、ドラッグストア6.6%増、百貨店4.5%増、ホームセンター4.6%増、スーパー1.7%増、コンビニ0.8%増といずれもプラスだった。
家電大型専門店はエアコンの販売が増加。一部自治体の補助金効果に加え、省エネ基準改定を控えた需要増もみられた。ゲーム機やスマートフォンも好調だった。
百貨店は高額品やインバウンド(訪日外国人)需要が寄与。「円安で購買単価が増えている」(経産省)という。
ドラッグストアは菓子・コーヒーなど食品販売が増えたほか、ラップ・ビニール袋などが好調だった。
中東情勢の影響については「一概には言えない。動向を注視したい」(経産省幹部)と述べるにとどめている。
4月の完全失業率は2.5%に改善、有効求人倍率1.18倍で横ばい
政府が29日に発表した4月の雇用関連指標は、完全失業率が2.5%と、前月から0.2ポイント改善した。就業者数が増加した一方、完全失業者数が減少した。有効求人倍率(季節調整値)は1.18倍で、前月と同水準だった。
ロイターの事前予測調査で完全失業率は2.7%、有効求人倍率は1.18倍が見込まれていた。
総務省によると、4月の就業者数は季節調整値で6876万人と、前月に比べて61万人増加。完全失業者数(同)は179万人で、前月から7万人減少した。
総務省の担当者は「年度の切り替わりで転職した人も多かったのではないか。これまで働いていなかった人が新たに働き始めたというケースも多いとみられる」と指摘。労働力の供給側からみると「雇用情勢は悪くない」との認識を示した。
厚生労働省によると、4月の有効求人数(季節調整値)は前月に比べて0.4%増加した。製造業では半導体などの成長産業で求人が堅調だった。ただ、物価高や省人化の取り組みなどで事業者側に求人を見直す動きもみられた。
有効求職者数(同)は0.8%増加。より良い条件を求めて離職した人が職を求める動きが出ている。
有効求人倍率は、仕事を探している求職者1人当たりに企業から何件の求人があるかを示す。厚労省の担当者は「人手不足の状況は変わらず、雇用状況が悪化しているとはみていない」と語った。
多くの統計が公表されましたので、とてつもなく長くなりましたが、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは次の通りです。上のパネルは2020年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

まず、引用した記事の最初のパラにもありますが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、ともに、ロイターと同じように4月の鉱工業生産は▲0.9%の減産が予想されていましたので、実績の+0.8%の増産は大きな上振れと考えるべきです。この結果だけを見ると、足元では米国とイスラエルによるイラン攻撃に端を発する中東情勢の不安定化による影響は小さいと言えるかもしれません。ただし、引用した記事にもあるように、ナフサやパラキシレンなどの石油製品は減産となっています。統計作成官庁である経済産業省では生産の基調判断については、「一進一退」で据え置いています。一昨年2024年7月から2年近く連続して据え置かれています。先行きについては、製造工業生産予測指数を見ると、足下の5月は+5.1%の増産で、翌6月は▲0.4%の減産となっており、指数の上振れ傾向を補正した試算値でも5月は+2.1%の増産とされています。ナフサなどの化学製品の先行きの行く方が気にかかります。経済産業省の解説サイトによれば、4月統計における生産を見ると、増産方向に寄与したのは、コンベヤや運搬用クレーンなどの汎用・業務用機械工業が前月比+5.3%増で+0.39%の寄与度、半導体・IC測定器や開閉制御装置などの電気・情報通信機械工業が前月比+3.5%増で+0.30%の寄与度、再生・半合成繊維やおう版印刷などのその他工業が前月比+1.6%増で+0.10%の寄与度、などとなっています。逆に、減産方向に寄与したのは、普通乗用車や駆動伝導・操縦装置部品などの自動車工業が前月比▲2.4%減、寄与度▲0.32%、パラキシレンやポリカーボネートなどの無機・有機化学工業が前月比▲1.8%減、寄与度▲0.07%、乳液・化粧水類や石けん類などの化学工業(除く、無機・有機化学工業・医薬品)が前月比▲1.2%減、寄与度▲0.06%、となっています。

続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整済みの2020年=100となる指数をプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。小売業販売のヘッドラインは季節調整していない原系列の前年同月比で見るのがエコノミストの間での慣例なのですが、見れば明らかな通り、2023年年央あたりで前年同月比の伸び率が+5%から+6%台でピークを付けた後、前年同月比はプラスであるもののプラス幅が徐々に縮小し、4月統計では+2.1%増を記録しています。ただし、この伸びは、引用した記事の最初のパラにあるように、ロイターによる市場の事前コンセンサスの+1.3%から上振れしました。また、季節調整済み指数の前月比も、+1.3%の上昇を記録しています。統計作成官庁である経済産業省では基調判断について、季節調整済み指数の後方3か月移動平均により機械的に判断して、本日公表の4月統計までの3か月後方移動平均の前月比が+0.1%の上昇であることから、先月3月統計で1ノッチ上方修正した「緩やかな上昇傾向」で据え置いています。また、参考まで、消費者物価指数(CPI)との関係では、4月統計ではヘッドライン上昇率は+1.4%、生鮮食品を除く総合のコアCPI上昇率も同じく+1.4%となっていますので、名目で計測した商業販売統計の4月統計も実質消費がプラスになっている可能性が十分あると私は考えています。ただし、販売ですので、国内消費にインバウンドを加えたものとなっており、国内消費が商業販売統計ほど堅調であるかどうかは微妙なところかもしれません。

続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの統計であり影を付けた部分は景気後退期を示しています。引用した記事の2パラ目にロイターによる市場の事前コンセンサスが、失業率2.7%、有効求人倍率1.18、と示されていて、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、まったくどうおyに、失業率が2.7%、有効求人倍率は1.18倍が予想されていました。本日公表された実績で、失業率2.5%は市場予想を下回る堅調さを見せ、有効求人倍率1.18倍は市場の事前コンセンサスにジャストミートしました。ですので、雇用統計を見る限り、雇用情勢は引き続き悪くなく底堅いと私は考えています。その最大の要因は人口減少に起因する人手不足です。引用した記事にもあるように、4月は年度替わりの月であり、卒業した学生諸君も労働市場に参入し、雇用市場は活発化しているように見えます。ここでも、中東情勢の不透明さによる雇用の悪化は見られません。有効求人倍率のグラフなどから、雇用の改善はピークを超えた可能性が示唆されていると考えるべきですが、少なくとも、従来の経験からして、景気後退局面での雇用の悪化はもっと急速なスピードで現れます。現在の統計を見る限り、景気後退局面での雇用悪化とは少し違っている可能性も十分あると私は受け止めています。

最後に、本日、内閣府から5月の消費者態度指数が公表されています。5月統計では、前月から+1.4ポイント高い33.6を記録しています。米国とイスラエルのイラン攻撃の影響で3月統計に示された消費者マインドが大きく落ち込んで、さらに、4月統計でも小幅に低下した後、本日公表の5月統計ではごくわずかながら上昇を示しました。しかし、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「弱含んでいる」で据え置いています。ただ、消費者態度指数を構成する4項目の意識指標はすべて上昇しています。すなわち、、「暮らし向き」が+3.0ポイント上昇し31.2、「耐久消費財の買い時判断」が+1.2ポイント上昇し24.4、「雇用環境」が+0.9ポイント上昇し38.3、「収入の増え方」が+0.5ポイント上昇し40.3となっています。
2026年5月28日 (木)
今年の交流戦はいきなりの3連敗で始まる
| 一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
| 日本ハム | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 1 | 4 | 8 | 0 | |
| 阪 神 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 | 6 | 0 |
【日】 福島、島本、柳川 - タミヤ
【神】 木下、湯浅、門別、モレッタ、工藤 - 梅野
打線がまったく打てずに、交流戦3連敗でした。
先発木下投手は4回3失点はこれくらいの計算で送り出したのだろうと思います。その後のリリーフ陣も5回で1失点ですから、ほぼほぼ計算通りかという気がします。しかし、敗戦の大きな責任は打線です。3連戦で4得点では勝てません。最終回に佐藤輝選手のホームランが出て、次につながることを期待します。なお、注目のドラ1ルーキー立石選手は3試合全タコでした。
次のロッテ戦は、
がんばれタイガース!
円安の弊害は物価ではない
一昨日の5月26日、明治安田総研から「円安が海外への所得流出に拍車」と題するリポートが明らかにされています。まず、リポートからポイントを3点引用すると次の通りです。
ポイント
- 4月末以降の財務省の数次にわたる為替介入後も、円売り圧力が収まらない状況が続いている。足元のドル・円相場は159円/㌦近辺まで戻しており、いつまた大型介入が入ってもおかしくない水準
- 円安は、輸出増等を通じてGDPを押し上げるが、交易条件の悪化を通じ、所得面から見た概念であるGDIを押し下げる。国民の豊かさの実感により近いのはGDPよりもGDI
- 円安問題の本質は、円安進行時に国内所得が増えにくい産業構造であり、政府としては、エネルギーの自給力強化、戦略分野への国内投資支援等を通じた産業構造改革を進めていく必要
1点目と3点目はともかく、私から見て重要なのは2点目です。円安は輸出を通じて企業収益などへの寄与が大きい一方で、交易条件を悪化させることにより、所得の海外流出を招きます。要するに、円安は企業のためには好都合である一方で、家計には決して好ましいわけではない、と私は考えています。リポートから (図表3) 為替相場の変化のGDP、GDIへの影響 と (図表4) 為替相場の変化の輸出と個人消費への影響 を引用すると次の通りです。
為替が物価に影響を及ぼすという意味でのパススルーは限定的、という点については、以下のいくつかの学術論文から得られる結論です。
- Gagnon, Joseph E. and Jane Ihrig (2004) "Monetary policy and exchange rate pass-through," International Journal of Finance and Economics 9(4), Oct. 2004, pp.315- 38
- Alexius, Annika and Mikaela Holmberg (2024) "Pass-through with volatile exchange rates and inflation targeting," Review of World Economics 160, 2024, pp.377-87
- Sekine, Atsushi (2025) "Commodity Price Pass-Through and Inflation in Japan: A Nonlinear Time Series Analysis," Applied Economics Letters 32(6), 2025, pp.808-11
- An, Lian, Mark A. Wynne and Ren Zhang (2021) "Shock-dependent Exchange Rate Pass-Through: Evidence based on a Narrative Sign Approach for Japan," Journal of International Money and Finance 118, Nov. 2021, 102462
- Sasaki, Takatoshi, Hiroki Yamamoto and Jouchi Nakajima (2023) "Nonlinear Input Cost Pass-through to Consumer Prices: A Threshold Approach," Bank of Japan Working Paper Series No.23-E-9, May 2023
最初の論文は、1980年代から21世紀初頭にかけて為替のパススルーが弱まっている、という概括的な論文です。2番目の論文は、中央銀行がインフレ目標を持っている場合、為替のパススルーは弱くなる、と結論しています。まあ、当然に、為替の変動を物価目標に合わせて相殺するような金融政策が取られるのですから、当たり前ともいえます。3番目の論文は、為替だけでなく商品価格も含めて、低インフレ-低インフレ期待の日本では、輸入コストのパススルーが長期的に低下していることを示しています。4番目の論文は、日本では為替変動の原因によってパススルーが異なり、一般的な円安ショックでは消費者物価への波及は限定的である、と結論しています。最後の論文は、日銀によるものであり、為替だけでなく、広く輸入価格、さらには、賃金などのコストが消費者物価にどのように転嫁されるかを検証していて、通常の範囲ではパススルーはかなり弱く、一定の閾値(threshold)を超えない限り、物価への転嫁が大きくない可能性を示唆しています。広く一般からダウンロードできると思いますので、Panel 2: Nonlinear Pass-through でキンクするパススルーカーブを見れば印象的だと思います。
ですので、私の方で定量的な分析をしたわけではありませんが、現在の物価上昇率を抑えるためには、かなり強烈な円高、たぶん、25-30%くらいの円高が必要になる気がします。そこまでの円高は逆に企業へのダメージが大きくなりすぎる可能性すらあります。加えて、私は為替レートを政策変数として物価に割り当てるのは疑問だと考えています。むしろ、明治安田総研のリポートのように所得を考慮する方がまだ望ましい可能性があります。要するに、私が為替について考える結論は2点あり、第1に、物価安定のために円安を目指すのは経済政策として間違っている可能性が高い、と考えるべきであり、第2に、それでも円高を目指す理由は、国内所得の海外流出を防いで、企業ではなく家計の利益を考慮すべきであるため、ということになります。アベノミクスが失敗したのは、トリクルダウンが生じなかったからであり、企業優遇の円安から、物価安定ではなく、家計重視の円高に政策をシフトすべきであろうと私は考えています。
2026年5月27日 (水)
高止まりする4月の企業向けサービス価格指数(SPPI)
本日、日銀から4月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインの前年同月比上昇率は前月1月からわずかに加速して+2.7%を記録しています。変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIの上昇率も同じくやや加速して+2.7%の上昇となっています。まず、ロイターのサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
4月企業向けサービス価格、前年比3.0%上昇 「外航貨物輸送」は伸び拡大
日銀が27日に公表した4月の企業向けサービス価格指数は前年比3.0%上昇となった。中東情勢の不安定化の影響で「外航貨物輸送」が伸び率を一段と拡大したが、「諸サービス」を中心に値上げ改定の動きが前年と比べて小幅にとどまったことから、全体の価格上昇ペースは前月から鈍化した。前月比は0.5%上昇だった。
「外航貨物輸送」は前年比59.1%上昇と、伸び率が前月(44.6%)から拡大した。「外航タンカー」は、ホルムズ海峡の航行中に攻撃を受ける可能性をリスクプレミアムとして荷主に請求する動きが出たという。外航タンカー以外の外航貨物輸送も、中東情勢の影響で燃料油価格が上昇したことが影響した。
「諸サービス」は前年比2.6%上昇と、伸び率が前月の3.4%から鈍化した。「建物サービス」やプラントエンジニアリングなどの技術サービス、「宿泊サービス」や「機械修理」、「警備」などの伸びがそれぞれ縮小した。
調査対象146品目のうち、上昇は116品目、下落は10品目だった。
日銀の担当者は、中東情勢緊迫の影響を含めた海運市況や国際商品市況の動向、各種コストの上昇分を価格転嫁する動きの持続性、インバウンドの増勢を受けて力強い伸びを示してきた各種サービスの先行きなどを引き続き注視していくとした。
生産額に占める人件費投入比率の違いで分類した指数では「高人件費率サービス」が前年比2.5%上昇と、伸び率は前月から0.4%ポイント低下した。「低人件費率サービス」は同3.5%上昇で、伸び率は前月から横ばいだった。
何といっても、物価指標は現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やや長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは次の通りです。上のパネルから順に、ヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、真ん中のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格とサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。一番下のパネルはヘッドラインSPPI上昇率の他に、日銀レビュー「企業向けサービス価格指数(SPPI)の人件費投入比率に基づく分類指数」で示された人件費投入比率に基づく分類指数のそれぞれの上昇率をプロットしています。影を付けた部分は、景気後退期を示しています。

上のグラフで見ても明らかな通り、モノの方の企業物価指数(PPI)のトレンドはヘッドラインとなる国内物価指数の前年同月比上昇率で見ると、今年2026年に入って、1月+2.4%、2月+2.1%、3月+2.9%の後、もっとも最近のデータが利用可能な4月統計で+4.9%に跳ね上がっています。もちろん、米国とイスラエルのイラン攻撃から始まった中東情勢の不安定化、特に、石油タンカーがホルムズ海峡を安全に航行できないため、ナフサなどの石油製品の供給制約から価格上昇が引き起こされています。同様に、本日公表された企業向けサービス物価指数(SPPI)も、今年2026年に入って、1-2月に+2.7%を記録した後、3月は+3.3%と上昇率が加速し、直近でデータが利用可能な4月統計でも+3.0%となっています。どちらも、まだ+2%を大きく上回って高止まりしています。特に、引用した記事にもある通り、企業向けサービス物価指数(SPPI)では外航タンカーなどの外航貨物輸送が3月の+44.6%に続いて、4月も+59.1%の上昇とリスクプレミアムも含めて跳ね上がっています。もちろん、日銀の物価目標+2%は消費者物価指数(CPI)のうち生鮮食品を除いた総合で定義されるコアCPIの上昇率ですから、企業物価指数(PPI)や本日公表の企業向けサービス価格指数(SPPI)とは指数を構成する品目もウェイトも大きく異なるものの、最近の上昇率を見ると、デフレに慣れきった国民や企業の意識からすれば、かなり高い物価上昇と映っている可能性が大きいと考えるべきです。しかも、4月統計では企業物価指数(PPI)も企業向けサービス価格指数(SPPI)もいずれも、中東情勢によるエネルギー価格の上昇や、その波及を受けた国際運輸の要因から高い上昇率となっています。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて本日公表された4月統計のヘッドラインSPPI上昇率+3.0%への寄与度で見ると、労働者派遣サービスや宿泊サービスや土木建築サービスといった諸サービスが+1.01%ともっとも大きな寄与を示していて、ヘッドライン上昇率の⅓を占めています。諸サービス以外では、中東情勢に起因するエネルギー価格上昇の波及を受けたと考えられる外航貨物輸送をはじめとする運輸・郵便が+0.83%、ソフトウェア開発などの情報通信が+0.58%、さらに、リース・レンタルが+0.31%、不動産も+0.18%、金融・保険が+0.05%、広告が+0.03%などとなっています。
2026年5月26日 (火)
世界銀行リポート State and Trends of Carbon Pricing 2026
ちょうど1週間前の5月19日、世界銀行から State and Trends of Carbon Pricing 2026 と題するリポートが公表されています。もちろん、pdfのリポートもダウンロードできます。まず、世銀のサイトから Key Messages を5点引用すると次の通りです。
Key Messages in 2026
- Carbon pricing now covers nearly 30% of global greenhouse gas emissions.
- Carbon pricing mobilized over $107 billion for public budgets in 2025.
- All large middle-income economies have now either implemented or are planning direct carbon pricing instruments.
- In carbon crediting markets, overall carbon credit issuances rose 8% from 2024 to 2025.
- Carbon credit prices declined slightly across 2025, but certain types of projects continued to have a price premium, including those eligible for use by international airlines, or highly rated forest conservation and reforestation projects.
国別・地域別の炭素税や排出量取引制度(ETS)におけるカーボン・プライシングについて、pdfのリポート p.24 から FIGURE 7 Carbon prices across ETSs and carbon taxes as of April 1, 2026 を引用すると次の通りです。

縮小せざるを得なかったので、ものすごく見にくいのですが、左側の赤い下向き矢印が日本の Japan carbon tax です。世界レベルで見ても低い税率だと判ります。赤い下向き矢印のすぐ横の水色の矢印が日本の中でも東京都における Tokyo CaT です。Japan carbon tax よりはずっと高率ですが、東京でも日本の炭素税率は世界的に見てきわめて低いと言わざるを得ません。ちなみに、右端の高率10国をリストアップすると次の通りです。
- Uruguay CO2 tax
- Norway carbon tax
- Sweden carbon tax
- Switzerland carbon tax
- Liechtenstein carbon tax
- Denmark carbon tax
- Netherlands carbon tax
- Switzerland ETS
- EU ETS
- Portugal carbon tax
高率10国のうちの5国は150%を超えていて、その次の3国でも100%を超えています。日本では、東京においてすら10%にも達しません。ハッキリ言って、日本における脱炭素のリテラシーなんてこの程度のものです。そして、このきわめて低い炭素税率は国民の民度を反映している可能性が非常に高いと私は考えています。
2026年5月25日 (月)
UNICEFリポート Unequal Chances に見る子どもの不平等
国連児童基金 UNICEF から Unequal Chances: Children and economic inequality と題するリポートが明らかにされています。37か国を対象に、子どもの経済的格差=Economic inequalitiesが、肉体的な健康=physical health、精神的な幸福度=mental well-being、そして、学力=skills にどのように関連しているかを分析しています。いろんな観点がありますが、私は教師ですので学力=skills について、リポートからグラフを引用しつつ、簡単に見ておきたいと思います。
まず、上のグラフはリポートから p.14 Figure 2: Income inequality (P80-P20 ratio), 2023 or most recent available data; child poverty rate, 2024 or most recent available data を引用しています。調査対象国の所得格差と相対的貧困率です。左側の青い棒グラフは80パーセンタイルの所得が20パーセンタイルの何倍になるか、また、右側のオレンジのグラフは中央値の60%で産出した子どもの貧困率を、それぞれ、格差や貧困率の小さい国から順にプロットしています。左側の所得格差で見ると、日本は6.35倍ありますから対象国の平均的な5倍強よりも格差が大きい方の国となっている一方で、子どもの貧困率は16.7%と小さい国の部類に入っているのが見て取れます。
続いて、上のグラフはリポートから p.32 Figure 12: Academic proficiency in mathematics and reading, 15 years old, 2022 を引用しています。経済開発協力機構(OECD)が実施しているPISA2022から数学力と読解力の結果をスコアの高い順に並べています。見れば明らかな通り、日本は調査対象国の中で3番目の高いスコアを弾き出しています。
続いて、上のグラフはリポートから p.36 Figure 15: Academic proficiency and social skills by socioeconomic group, by country, 2022 を引用しています。上位20%と下位20%の社会経済的グループの間の学力と社会的スキルの格差をプロットしています。左側は基礎的な学力、右側は友人作りという社会的スキルです。これまた見れば明らかな通り、基礎学力では日本は上位20%がトップグループに属し、下位20%も上位20%からそれほど大きな差がない上に、各国比較でもほぼほぼトップの地位を占めています。社会的スキルについても他国と比べても何ら遜色なく、上位20%と下位20%の差もきわめて小さくなっています。要するに、基礎学力でも社会的スキルでも日本の子どもは高いスコアを記録していて、世界で決して見劣りしないうえに、格差も小さいわけです。
これらの結果は、おそらく、義務教育あるいは初等中等教育段階での日本の教育水準の高さや平等性を表した結果なのだろうと考えるべきです。ですから、もしも、その後の高等教育を経て労働市場に参入した後の労働者としての労働生産性が低いのであれば、高等教育あるいは雇用元の企業のどちらか、あるいは、両方の責任であろうという推測が成り立つのではないでしょうか。高等教育を担う教員として、私も考えねばならないのかもしれません。
2026年5月24日 (日)
BKCウェルカムデーに出かける
きょうは、BKCウェルカムデーです。
といわれても、平均的な日本人は何のことか理解できないことと思います。は、私も判っていませんので、草津市役所のサイトから趣旨そのたを引用すると次の通りです。
立命館大学と共催で、立命館大学びわこ・くさつキャンパス(BKC)にて、地域住民・企業・行政・学生や教職員等が一堂に集い、様々な体験ができる「BKCウェルカムデー びわこ・くさつ健幸フェスタ2026」を今年度も開催します。
「アカデミック・サイエンス」「スポーツ」「健康」「パフォーマンス」「地域」「フード」「SDGs」の7つをテーマにした170の企画(出展等)を用意しております。
大人からこどもまで楽しめる体験イベントとなっておりますので、皆様の御来場をお待ちしています。
恒例により、立命館大学びわこくさつキャンパスの新入生クラスが出店、いや、出展することになっています。私は久々に新入生クラスを担当することになり、模擬店エリア一覧にあるカレーとナンの模擬店を出しています。昼過ぎに訪れて適当に売上に貢献しておきました。
2026年5月23日 (土)
今週の読書はケインジアンの経済書をはじめとして計5冊
今週の読書感想文は以下の通りです。
まず、小平武史『ケインジアンが見失ったケインズの財政政策』(昭和堂)では、ケインズの展開したマクロ経済分析を受け継いだ形のいわゆるケインジアン経済学のうちの財政政策について、ケインズ本人による大元の議論と比較して経済学説史的に議論を進めています。ダーシーニ・デイヴィッド『グリーンエコノミー』(かんき出版)では、国民生活の観点から、朝起きて灯りをつけてコーヒーを飲み、着る服を選ぶ段階から、日々の生活実践を追って、それらがどのように地球環境に負荷をかけ、カーボン・フットプリントに影響を及ぼしているかを明らかにしようと試みています。法月綸太郎『法月綸太郎の不覚』(講談社)は、3話の短編と1話の中編から編まれており、ミステリとしての謎解きは十分楽しめるレベルなのですが、本家クイーンの時代には考えられなかったコンプライアンスとか、ネット界隈への接し方で少し混乱を来たしているような気がします。やや、お気の毒かも。加山竜司『「推し」という病』(文春新書)では、世間一般で「推し活」という言葉が流行する中で、インタビューなどに基づいて7章に渡って、アイドル、ホスト、アニメ、VTuber、AV女優アイドル、地下アイドルなどに対するファン、というか、本書でいうところのオタクの熱狂ぶりを収録しています。ジョー・キャラハン『瞬きすら許さない』(創元推理文庫)は、刑事の直感を重視するキャット・フランク警視正が確率を重視する人工知能捜査体であるロックとともに、2件の失踪事件の再捜査を行い、最後は首尾よく解決されます。
今年2026年の新刊書読書は、1~4月に合わせて97冊、5月に入ってから先週までの19冊に今週の5冊を加えて合計121冊となります。これらの読書感想文については、別途読んでいる学術論文などとともに、できる限り、FacebookやX(昔のtwitter)、あるいは、mixi、mixi2などのSNSでシェアしたいと予定しています。
まず、小平武史『ケインジアンが見失ったケインズの財政政策』(昭和堂)を読みました。著者は、よく判らないのですが、出版社のサイトでは「中央官庁において経済政策の企画立案に携わるかたわら、並行して学術研究をこころざし東京大学大学院経済学研究科博士課程修了」とされています。本書では、タイトル通りに、ケインズの展開したマクロ経済分析を受け継いだ形のいわゆるケインジアン経済学のうちの財政政策について、ケインズ本人による大元の議論と比較して経済学説史的に議論を進めています。よく、マルクス主義経済学ではマルクスの直接の著作やメモに当たっての研究がなされている印象を私は専門外ながら持っていて、ケインズについてもスキデルスキー教授の一連の研究はそうなのだろうと思っていましたし、本書もそういったものかと考えることが出来ます。3部構成となっていて、第Ⅰ部でタイトル通りの財政政策、第Ⅱ部で弾力性ペシミズム、第Ⅲ部で国債利子率やリプロダクションといった個別テーマをそれぞれ取り上げています。第Ⅰ部では、私の見方からすれば、第4章のラーナーの機能的財政政策がもっとも興味深いところでした。機能的財政政策は現代貨幣理論(MMT)の主要な柱のひとつであり、私自身はケインズとは切り離しても財政政策運営の重要な方針のひとつになりえるものであると考えています。ただ、本書ではケインズ自身が批判的であったことを根拠に、ケインズが機能的財政論を支持していたとは考えにくいと結論しています。それはそうなのでしょうが、現代的な経済学史観からしてラーナーの機能的財政論がケインジアン的であるかどうかの分析も欲しかったところです。すなわち、ラーナーの機能的財政論は、かなりの程度に、ケインジアン財政政策の理論的な展開の先に位置すると私は考えています。単に、「ご本人がこういっているから、こうなんだ」、ということでは、それは歴史学の領域であって、経済学史としてそれでいいのか、という批判はあり得る可能性を指摘しておきたいと思います。第Ⅱ部で弾力性ペシミズムについては、ケインズが生きていた時代背景としては、本書の指摘がよく当てはまる気がします。ただ、財政政策とも深く関係して、貯蓄投資バランスの観点からの弾力性ペシミズムの議論も合わせて展開してほしかった気もします。私自身は、1980年代後半にプラザ合意後の円高局面で日本の経常収支黒字が一向に減少しないパズルを考えさせられた世代ですので、時代背景とともに経済理論が進化する局面もいっしょに考えることが重要だろうと思っています。すなわち、マルクスにせよ、ケインズにせよ、その主導者がどう言って、何を考えていたのかは、もちろん、それなりの重要性があるのは否定しませんが、おそらく、本書のスコープ外ながら、さまざまな制度要因も変化している中で、例えば、金本位制下の理論がフィアットマネーではどのように考えるべきか、なども含めて、ケインジアン経済学も進化している可能性は考慮する必要があります。
次に、ダーシーニ・デイヴィッド『グリーンエコノミー』(かんき出版)を読みました。著者は、エコノミスト・キャスターで、現在はBBCニュースのチーフエコノミスト・コレスポンデンスだそうです。チーフエコノミストは何人も知り合いがいるのですが、「コレスポンデンス」がつく役職は初めてでした。本書の英語の原題は Environomics であり、2024年の出版です。ですので、ドバイのCOP28がlatestのCOPということになります。本書では、冒頭に明記しているように、生活のひとつひとつから環境問題を考え直すことを目的としています。私がよく大学の授業でいうように、個人レベルで解決しようとする試みと社会や国家のレベルで解決すべき問題という分類をすれば、本書が志向しているのは前者に相当するのであろうと考えます。もちろん、その前提として、二酸化炭素排出がどれくらいに上っており、それだけでなく、本書では水資源ほかにも幅広く目配りしていて、現状の地球環境問題を概観できるようになっています。ただし、本書ではサステイナビリティ向上のための国民生活に対するハウツー本ではありません。むしろ、朝起きて灯りをつけてコーヒーを飲み、着る服を選ぶ段階から、日々の生活実践を追って、それらがどのように地球環境に負荷をかけ、カーボン・フットプリントに影響を及ぼしているかを明らかにしています。加えて、いわゆる「なんちゃってグリーン」のようなグリーンウォッシュ、あるいは、原子力が電力の供給源として決して適当ではない理由なども考え合わせ、地球環境を守る上で国民生活の方向性について議論を深めようと試みています。本書が特にターゲットとしている二酸化炭素排出については、英国や欧州だけでなく日本でも、家庭からの直接の二酸化炭素排出は15-20%を占めるに過ぎませんが、電力消費などの間接的なものを含めると家庭は産業を大きく上回って60%ほどに達します。そのため、「デコ活」といった言葉もありますし、国民生活を見直す観点は絶対に必要です。その際、私から2点指摘しておきたいと思います。第1に、今までは省エネとかで、電気代の負担が減少しつつ地球環境への負荷が軽減される、というwin-winの関係が強調されてきましたが、これからは、個人レベルでは生活の利便性が低下しても、企業レベルでは売上げが減少したり、利益が上がらなかったりしても、そういったコストを負担しつつ、地球環境の負荷軽減を進める覚悟があるか、ということです。本書ではそこまで強調しているわけではありませんが、国民生活のゆたかさが一定犠牲になっても地球環境の負荷軽減を進める必要が示唆されていると私は感じています。第2に、地球環境の負荷を軽減する上で、市場における価格に従った資源配分は決定的に失敗している、という点です。ですから、市場における価格付けを補完するような資源配分方法をアカデミアもしくは政府公務員は考える必要があります。少なくとも、炭素税のようにうまく市場に組み込むことを志向すべき、と私は考えています。そうでなく、市場の資源配分を絶対視するような市場原理主義では、最悪、地球における人類の文明が滅亡するおそれすらあります。
次に、法月綸太郎『法月綸太郎の不覚』(講談社)を読みました。著者は、新本格派と呼ばれるミステリ作家であり、我が母校の京都大学のミス研ご出身です。本書は、作者と同じ氏名の法月綸太郎が父親の法月警視からの情報を下に真相解明に挑むというシリーズの最新作です。短編を3話ともう少し長い中編くらいを1話収録しています。ただ、短編と中編だけながらすべて殺人事件を扱っています。収録順に、まず、「心理的瑕疵あり」では、よろずジャーナリストの飯田から綸太郎に持ち込まれた案件で、ライター仲間の松岡が、首吊り自殺があったと噂の戸越銀座近くの格安アパートに入居したところ、首を吊って死んでいるところを発見されます。東京創元社のアンソロジー『あなたも名探偵』に収録されていましたので、私は既読でした。「被疑者死亡により」では、保険のファイナンシャルプランナーから、養父の交換殺人の疑いをかけられたと綸太郎が相談を受け、別の交換殺人、また、殺人計画が明らかとなります。これも、講談社のアンソロジー『推理の時間です』に収録されていましたので、私は既読でした。「次はあんたの番だよ」では、杉並区善福寺の資産家老女殺しの事件があった2日前に、多摩川河川敷でジョギング中のランナーが殺された老女とそっくりな幽霊のようなものを目撃していました。これも、何かのアンソロジーに収録されていたようなのですが、私は未読でした。最後の中編「平行線は交わらない」は書き下ろしで、これはなかなかいい出来だと思います。事件の発端は、三鷹にある和菓子店の店主である橘迪夫の殺人事件です。そして、その前年の同じ日に経営コンサルタントの松島興賢も殺されていました。和菓子店主の橘迪夫は、本郷にある老舗和菓子店の職長から独立しており、その老舗和菓子店では跡目をめぐって、先妻の子である長男の谷沢宗一郎と後妻の子である次男の谷沢基次郎が対立し、結局、老舗の方は基次郎が継いで、宗一郎はスカイツリー近くの向島に洋菓子の要素を取り入れたスイーツ店を開業しています。宗一郎の妻である美雪はスイーツの開発センス豊かで、叔父の経営コンサルタントの松島興賢の助けもあって宗一郎の店もそれなりに繁盛しています。タイトルにあるのは「平行線」なのですが、実は、殺された橘迪夫はそもそも谷沢基次郎の母親である後妻と仲が悪く、しかも、長男の谷沢宗一郎が妻の美雪の意見に従って洋菓子の要素を盛り込んでいることにも反感を覚えています。谷沢宗一郎と谷沢基次郎はもともとが跡目争いで対立厳しく、要するに、長男次男と元職長の三者で互いに反目し合っていたわけです。とても複雑な事件を法月綸太郎が真相解明に挑みます。ということで、いかにも、新本格派らしい論理的な謎解きが楽しめます。最後に、ミステリとしての謎解きは十分楽しめるレベルなのですが、本家クイーンの時代には考えられなかった問題で少し困難をきたしているような気がします。すなわち、コンプライアンスとネット界隈への接し方です。まず第1に、コンプライアンスで、警察の捜査情報を家族とはいえ部外者に漏洩することについて、いろいろと著者なりに考えているようですが、やや混迷している印象です。同様の点は有栖川有栖作品にも当てはまりそうな気がしますが、火村准教授にはあくまで警察サイドから事件解決を期待して情報を流す、という形を取っている点は違うかもしれません。次に第2に、ネット界隈への接し方については、YouTubeへの配信について、少しスベっています。この点については正解はないのかもしれません。
次に、加山竜司『「推し」という病』(文春新書)を読みました。著者は、漫画ジャーナリスト、ライター、編集者と紹介されています。本書では、インタビューなどに基づいて7章に渡って、アイドル、ホスト、アニメ、VTuber、AV女優アイドル、地下アイドルなどに対するファン、というか、本書でいうところのオタクの熱狂ぶりを収録するとともに、最後の第8章で全体を総括しています。世間的に「推し活」という言葉が流行し、また、宇佐見りんの『推し、燃ゆ』が芥川賞を受賞し、中には、時代は「萌え」から「推し」だと言わんばかりの本も私は読んだりしましたが、だんだんとファンの行動が激しくなっていくのを感じます。『推し、燃ゆ』で私が印象的だったのは「推しは命にかかわる」といった趣旨でしたが、まさに、それに近くなってきている危険性を感じます。私自身を振り返ると、いわゆる全共闘世代と重なる「白け世代」の影響を受けているのかどうか、それほど物事に熱中する方ではありません。したがって、本書で取り上げているような危険なまでの熱中ぶりで表現されている推しとは無関係だと思います。今の立命館大学か、現役公務員だったころに出向した長崎大学だったか、すっかり忘れましたが、最初の授業で「先生への10の質問」を受けて、「ハマっていること」の質問に対して、「何かにハマる性格ではない」と回答したことを覚えています。ただ1点だけ強く指摘しておきたいのは、p.279から展開されている推しの宗教性です。従来から、私は新興宗教と反社会的団体の共通点があって、それは強い金銭への執着だと感じています。有り体に言うと「すべてはカネ」ということです。そして、本書を読んで、同じように「推し」も金次第と結論せざるを得ないと感じています。さらに、近い将来に大阪あたりにIRができれば、ギャンブルも私の頭の中では仲間入りしそうな気がします。これは、究極的には、すべての生産物が商品として市場に供給され、価格をつけられてその価格にしたがって配分されるという意味での資本主義経済の大きな特徴のひとつである、と考えるべきです。もっとも、本書の用語を借りて表現すれば、推しという病にかかっていない人も決して少なくない、というか、むしろ大多数の国民は推しの病にかかっていないわけですので、個人レベルで対応すべき部分が少なくないのも事実だろうと私は考えています。もっとも、さらに進めて、脱商品化、コモンの拡大の方向を目指すべきであることはいうまでもありません。最後の最後に、どうでもいいことながら、表紙画像の帯の女性は高橋七瀬だと聞き及んでいます。
次に、ジョー・キャラハン『瞬きすら許さない』(創元推理文庫)を読みました。著者は、英国ミッドランド地方在住のミステリ作家であり、デビュー作である本書により、2024年度の英国推理協会賞最優秀新人賞受賞を受賞しています。日本でいえば、江戸川乱歩賞受賞でデビュー、といったところかもしれません。本書の英語の原題は In the Blink of an Eye であり、2023年の出版です。英語の原題にある eye は、人間であれば複数形の eyes で使うケースが多いと思うのですが、まあ、何と申しましょうかで AI なら単数の方がふさわしいのかもしれません。本書の舞台は英国イングランド中部のウォーリックシャー警察であり、主人公は2人います。1人はキャット・フランク警視正(DCS)であり、刑事としての直感を重視しています。もう1人はAIDE=Artificially Intelligent Detective Entity、すなわち、日本語で言えば人工知能捜査体であるロックです。当然に、確率を重視した捜査を進めようとします。いずれにせよ、警察を舞台とした警察ミステリです。ストーリーは、新しく就任した内務大臣がITに関連するバックグラウンドを持つことから、人工知能捜査体=AIDEを警察業務に導入し、警察業務の時間とコストの削減を目論みます。ウォーリックシャー警察本部長のマクリーシュはその内務大臣の命に従って、キャット・フランク警視正に失踪事例の再捜査を命じます。ただ、AIDEの活用に対しては否定的な結果を導くように示唆します。失踪事例の再捜査チームは、フランク警視正のほか、南アジア系のハッサン警部補、女性刑事のブラウン部長刑事、そして、もちろん、AIDEのロックと開発者のオコネド国立AI研究所教授で構成されます。オコネド教授は若い黒人女性です。なお、ロックは身長180センチのスリムな黒人のホログラムで現れることがありますが、ピカチュウのホログラムも用意されているようです。どの失踪事件を取り上げるかについては、当然のようにフランク警視正とロックの間で意見が分かれ、フランク警視正は失踪者の家族に寄り添った観点から選び、ロックは解決される確率の高い事案を持ち出します。その両方の事件を再捜査することになり、改めて関係者の事情聴取が行われたりもします。その幕間に、いかにも失踪者が拉致されていることを示唆するようなパートがいくつも挟まれます。そして、捜査は驚くべき展開を見せて、最後は首尾よく解決されるわけです。そのあたりはミステリですし、読んでみてのお楽しみです。最後に、私から3点指摘しておきたいと思います。まず、第1に、すでに本書のシリーズは英国では Kat and Lock のシリーズとして、第3弾まで出版されていると、巻末の解説で明らかにされています。なお、第4弾が完結編となり、近く出版されるという情報もあります。邦訳が出れば、できる限り読みたいと私は考えています。第2に、私の好きなタイプのミステリであり、最後に大きなどんでん返し、あるいは、アツと驚く結末が待っているのではなく、真犯人の意外性はともかく、徐々に情報が明らかにされるとともに事件の真相も明らかになります。第3に、刑事の直感とAIの確率の相違、というか、対立をそれほど期待すべき小説ではありません。ひとつには、英語の原書が2023年1月の出版ですから、3年余り前の技術の到達点に基づいている、という理由も考えられます。ただ、もうひとつの理由は、刑事の直感とAIが重視する統計的な確率の間にはそれほど大きな違いがない可能性を指摘しておきたいと思います。すなわち、刑事の直感だけでなく、多くの人々の直感、あるいは、世間知や集合知と呼ばれているものは、それまでの人類の経験が凝縮されているわけであり、かなりの程度に確率分布に従っている可能性が高い、と私は考えています。その意味で、学術的な専門性は重要ではあるものの、世間知や集合知をバカにするかのような見下した議論は慎むべきであると、一応、大学教授として考えています。ただ、もちろん、大きな技術的あるいは歴史的な転換点では、そういった世間知や集合知が役立たないケースもありえますから、注意すべきであることは当然です。最後の最後に、英国警察に対する批判が盛り込まれています。ホリー・ジャクソンの『自由研究には向かない殺人』から始まる一連のシリーズでは、英国警察に対するきわめて強い批判や不信感が底流にありましたが、そこまでではないとしても、英国警察の闇の部分が盛り込まれていることは事実です。
2026年5月22日 (金)
序盤からドラ1カルテットの打棒が爆発してジャイアンツに先勝
| 一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
| 阪 神 | 3 | 0 | 2 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 7 | 13 | 0 | |
| 読 売 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 3 | 0 | 0 | 4 | 9 | 0 |
【神】 高橋、及川、ドリス、岩崎 - 坂本
【読】 井上、堀田、宮原、船迫、田和 - 岸田、大城
ドラ1カルテットの打棒爆発してジャイアンツに先勝でした。
初回、トップバッターに座った立石選手がいきなりツーベースをかっ飛ばし、大山選手のツーランもあって、3点を先取します。3回と4回にも2点ずつ追加点を奪い、立石選手は3安打して初打点も記録します。立石選手と大山選手のほかにも、森下選手も3安打2打点、佐藤輝選手も2安打1打点と上位打線がよく打ちました。先発高橋投手は6回に失点した後、7回につかまり計4失点しましたが、リリーフ3投手がその後のジャイアンツ打線をノーヒットに抑え込みました。
明日も、
がんばれタイガース!
3か月連続で日銀物価目標を下回った4月の消費者物価指数(CPI)
本日、総務省統計局から4月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の前年同月比で見て、前月からさらに減速して+1.4%を記録し生鮮食品も含めたヘッドラインCPI上昇率も+1.4%、生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIは+1.9%でした。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
4月の消費者物価1.4%上昇、3カ月連続2%割れ 政策でエネ価格抑制
総務省が22日発表した4月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合が112.5となり、前年同月比で1.4%上昇した。政府によるガソリン補助などがエネルギー価格を押し下げ、伸び率は3カ月連続で2%を下回った。
QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は1.7%の上昇だった。日銀が物価安定目標について、消費者物価の前年比上昇率「2%」と定めている。
エネルギー価格は3.9%低下した。ガソリン補助のほかガソリン旧暫定税率の廃止が影響した。ガソリンは9.7%、都市ガス代は5.1%、電気代は2.6%それぞれ下がった。
教育は6.1%下がった。私立の高校授業料が68.8%低下した。政府は26年度から私立の就学支援金の所得制限を撤廃して支給上限額を45万7200円に引き上げた。
生鮮食品を除く食料は4.1%上がった。9カ月連続で上昇率が縮小した。
背景にあるのが小学校の給食費無償化だ。教育にかかる家計負担の軽減策として、26年4月から公立小学校の給食無償化を実施している。学校給食(小学校)は前年同月比で98.0%下がった。24年夏ごろから価格が上昇したコメ類は0.6%上がった。
変動の大きい住宅の設備修繕・維持も増え、システムバスが4.3%、システムキッチンが3.6%それぞれ上がった。総務省の担当者は「中東情勢の緊迫によって資材の供給が不安定になり受注を控える動きがあり、調査に使う価格の収集が難しい地域があった」と述べた。
菓子類は7.7%上昇した。原材料のカカオ豆が高騰しチョコレートは21.6%上がった。
生活実感に近い生鮮食品を含めた総合指数は1.4%上昇した。生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は1.9%上がった。
何といっても、現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やや長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

まず、引用した記事の2パラ目にあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは+1.7%ということでしたし、予想レンジの下限が+1.6%でしたので、実績の+1.4%は大きく下振れした印象です。総務省統計局のプレスリリースによれば、ガソリンの暫定税率廃止及び政策による効果の寄与度が試算されており、エネルギー全体では▲1.08%に上ります。ですので、これを加えれば、コアCPI上昇率はまだ+2.5%程度である、という見方もできます。なお、エネルギー全体で▲1.08%の寄与度の内訳は、ガソリン▲0.87%、灯油▲0.19%、電気代▲0.02%、などとなっています。品目別に消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率とヘッドライン上昇率である+1.4%に対する寄与度を少し詳しく見ると、まず、エネルギーの寄与度は4月統計では、強力な政府の政策効果もあってマイナスであり、前月の3月統計の▲0.45%に対して、4月統計では▲0.31%となっています。したがって、いわゆる寄与度差は+0.14%と計算されます。それにもかかわらず、コアCPI上昇率が3月の+1.8%から4月の+1.4%に▲0.4%ポイントも低下しているわけです。逆にいえば、エネルギーを除く物価が上昇率減速の主因となっている、と考えるべきでます。例えば、生鮮食品を除く食料価格はコメを含む指標ですが、上昇率はまだ大きいとはいえ、前年同月比で3月の+5.2%、寄与度で+1.27%から4月は+4.1%、寄与度+1.01%に減速しています。ですので、寄与度差は▲0.26%に達しています。ただし、上昇率の数字だけを見れば、ヘッドラインCPIの上昇率である+1.4%のかなりの部分が食料価格の上昇に起因するというわけです。引き続き、コメの価格上昇が継続しているものの、コメ以外に価格上昇している食料も少なくない点は見逃すべきではありません。というか、コメについては一時のピークは超えた可能性が大きい、と私は考えています。
まだ前年同月比でマイナスを続けているエネルギーではなく、食料の細かい内訳に注目すると、前年同月比上昇率とヘッドラインCPI上昇率に対する寄与度で見て、繰り返しになりますが、生鮮食品を除く食料が上昇率+4.1%、寄与度+1.01%に上ります。その食料の中で、チョコレートなどの菓子類は上昇率+7.7%、寄与度+0.21%に上っています。特に、その中でも、チョコレートは上昇率+21.6%、寄与度0.09%と大きな寄与度を示しています。調理カレーなどの調理食品が上昇率+4.8%、寄与度+0.19%、コーヒー豆などの飲料も上昇率+9.4%、寄与度0.17%、鶏肉などの肉類が上昇率+4.4%、寄与度0.12%となっており、コアCPIの外数ながら、まぐろなどの生鮮魚介が上昇率+7.5%、寄与度+0.10%、などなどと書き出せばキリがないほどです。また、食料以外にも、引用した記事にもあるように、教育、特に授業料等が▲10.6%、寄与度▲0.18%の下落となっています。高等学校授業料(私立)の下落▲68.8%が最大の要因です。また、設備修繕・維持も保険料の値上げも含めて上昇率+2.9%、寄与度+0.10などとなっています。記事では統計調査の難しさという観点ですが、石油由来の製品の品薄感が生じ始めている点も特筆すべきかと私は受け止めています。当然、価格上昇を引き起こす原因と考えるべきです。さらに、何とも評価の難しいところながら、中央銀行である日銀が物価目標+2%のマイルドなインフレを目指す一方で、政府はエネルギー価格の抑制に補助金を出すという矛盾が生じています。日本の経済政策はどの方向を向いているのでしょうか?
2026年5月21日 (木)
石油輸入が激減した4月の貿易統計とならせば持ち直しが続く3月の機械受注
本日、財務省から4月の貿易統計が、また、内閣府から3月の機械受注が、それぞれ公表されています。統計のヘッドラインについて、貿易統計では季節調整していない原系列で見て、輸出額が前年同月比+14.8%増の10兆10兆5073億円に対して、輸入額は+9.7%増の10兆2054億円、差引き貿易収支は+3019億円の黒字を計上しています。機械受注では、民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月から▲9.4%増の1兆109億円と、2か月ぶりの前月比減を記録しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
貿易黒字、4月は3019億円 中東からの原油輸入量は67%減
財務省が21日発表した4月の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は3019億円の黒字となった。黒字は3カ月連続。前年同月は1495億円の赤字だった。半導体などの電子部品や非鉄金属の輸出が伸び、黒字を維持した。
輸出額は10兆5073億円で前年同月と比べて14.8%増えた。増加は8カ月連続。中国向けの半導体などの電子部品やボイラーなどの原動機の伸びが支えた。
輸入額は10兆2054億円で9.7%増だった。アジアからの半導体などの電子部品や、韓国からの灯油などの石油製品の輸入が増えた。
中東情勢の悪化を受け、原油の輸入量は急減した。日本が多くを依存してきた中東からの輸入量は384万キロリットルと前年同月比で67.2%減となった。この数量は比較できる1979年以降の単月で最も少なくなった。金額は3832億円と55.5%減少した。
世界全体で見ても、原油の輸入量は448万キロリットルで63.7%減だった。こちらも79年以降の過去最少となった。金額は4542億円と49.9%減った。減少は15カ月ぶり。
一方、米国などからの原油の代替調達が進んだ。米国からの輸入量は45万キロリットルと38.8%増加した。ナフサ(粗製ガソリン)については27万キロリットルで206倍となった。
機械受注の1~3月6.4%増、2四半期連続プラス 3月単月は9.4%減
内閣府が21日発表した機械受注統計によると、設備投資の先行指標とされる民需(船舶・電力除く、季節調整済み)は1~3月期に3兆1092億円と前期比で6.4%増えた。2四半期連続のプラスとなった。
製造業は10.0%増だった。化学機械や合成樹脂加工機械などの化学工業のほか、造船業、運搬機械などの汎用・生産用機械の受注が押し上げた。
非製造業は6.2%増だった。電子計算機器を含む情報サービス業や金融・保険業からの受注がプラスに寄与した。不動産業も堅調だった。
3月単月は1兆109億円で前月比で9.4%減少した。2カ月ぶりにマイナスに転じた。2月に大型の受注案件があった反動減が要因だという。製造業、非製造業ともに減少した。
内閣府は中東混乱による原油の調達難などの影響は明確には読み取れないとして、3月の基調判断を「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。
4~6月期の受注見通しについては3月末時点で前期比0.3%増となった。製造業が0.9%減、非製造業が1.9%増だった。
民需以外も含めた2025年度の受注総額は41兆3704億円だった。前年度を11.4%上回り、比較可能な05年度以降で過去最大となった。
包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

まず、引用した記事にはありませんが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、+300億円くらいの小幅な貿易黒字が見込まれていましたので、実績の+3019億円の黒字はやや上振れした印象です。ただし、統計をよく見ると、引用した記事にもあるように、中東からの石油などについては、十分な輸入ができなかったために黒字が大きくなっている可能性があります。また、季節調整済みの系列で見ると、貿易収支は1月黒字、2月赤字から3-4月は黒字を計上しており、4月の貿易収支は+2364億円の黒字となっています。いずれにせよ、私の主張は従来から変わりなく、輸入は国内の生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易収支や経常収支の赤字と黒字は何ら悲観も楽観もする必要はない、逆に、4月の貿易統計のように、十分な輸入ができていないために貿易収支が黒字になっているとすれば、むしろ、日本経済には望ましくない可能性が高い、と考えています。固定為替相場制度を取っていた1950-60年代の高度成長期のように、「国際収支の天井」を意識した政策運営は、現在の変動為替制度の下ではまったく必要なく、比較優位に基づいた貿易が実行されればいいのですが、地政学リスクにより比較優位に基づく貿易が現時点では阻害されている可能性が否定できない、と考えています。すなわち、米国とイスラエルによるイラン攻撃に端を発する石油輸入の量と価格の動向が大きな問題と考えるべきです。先行きの見通しが不透明であれば、家計の消費というよりも、企業の設備投資活動がある程度抑制される可能性が否定できません。
本日公表された4月の貿易統計について、季節調整していない原系列の前年同月比により主要品目別に少し詳しく見ておくと、まず、輸入については、もっとも注目されている原油及び粗油がキロリットルの数量ベースで▲63.7%減、金額ベースでも▲49.9%減となっています。特に、中東からの原油及び粗油の輸入は、数量ベースで前年同月から▲67.2%減となっています。果たして、ここまで原油及び粗油の輸入量が減少して、日本経済が短期的に活動水準を維持できるのだろうか、という疑問が残るくらいの減り方だと私は考えています。さらに、エネルギーに次いで注目されている食料品は金額ベースで+2.7%増となっています。原料品のうちの非鉄金属鉱は重量ベースで+7.9%増ながら、商品市況の高騰により金額ベースでは+39.9%増を記録しています。輸出に目を転ずると、輸送用機器のうちの自動車が台数ベースで▲3.1%減、金額ベースでは+3.5%増となっています。ただし、米国向けの自動車輸出について、さらに詳しく見ると、数量ベースで▲7.0%減、金額ベースで▲2.3%減となっており、引き続き、トランプ関税による影響が少しずつ現れ始めている可能性があります。自動車を別にすれば、電気機器は金額ベースで+28.6%増、一般機械も+12.5%増となっています。

まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前月比▲10.4%減が見込まれていましたので、実績の▲9.4%減は、一見大きな減少に見えますが、市場予想を上回っている点は忘れるべきではありません。前月の2月の前月比が+13.6%に達していましたし、1~3月期は3兆1092億円と前期比で+6.4%増、4~6月期見通しも+0.3%増と見込まれていますので、統計作成官庁である内閣府では、基調判断を「持ち直しの動きがみられる」と据え置いています。業種別に前月比で見て、前月2月に+30.7%増と大きく伸びた製造業が反動もあって▲14.2%減、他方、非製造業では▲6.0%減でした。
日銀短観などで示されたソフトデータの投資計画が着実な増加の方向を見込んでいる一方で、機械受注やGDPなどのハードデータで設備投資が増加していないという不整合があり、現時点ではまだ完全には解消されているわけではないと私は考えています。人手不足は見込み得る範囲の近い将来にはまだ続くことが軽く予想されますし、DXやGXに向けた投資が盛り上がらないというのは、低迷する日本経済を象徴しているとはいえ、大きな懸念材料のひとつです。かつて、途上国では機械化が進まないのは人件費が安いからであるという議論が広く見受けられましたが、日本もそうなってしまう可能性が否定できません。設備投資の今後の伸びを期待したいところですが、先行きについては決して楽観はできません。特に、日銀が金利の追加引上げにご熱心で、市場における積極財政の評価もあって、長期金利はかなり高い水準にまで上昇しています。本日終了した日銀金融政策決定会合で政策金利は据え置かれたとはいえ、為替への影響を別にしても、金利に敏感な設備投資には悪影響を及ぼすことは明らかです。米国とイスラエルによるイラン攻撃をはじめ、地政学的なリスクも不透明ですし、どう考えても、先行きについてリスクは下方に厚いと考えるべきです。
2026年5月20日 (水)
潜在成長率を引き上げるために資本ストックはどれくらい必要か
やや旧聞に属するトピックながら、先週5月13日、大和総研から「何故、わが国では潜在成長率が低迷しているのか?」と題するリポートが明らかにされています。我が国の潜在成長率を高めるために、労働投入、資本ストック、全要素生産性(TFP)の要素を底上げする必要を明らかにしています。中でも、資本ストックに着目したいと思います。まず、リポートで5点上げている[要約]の中で第3の資本ストックに関する項目だけ引用すると次の通りです。
[要約]
- 資本ストックに関しては、3つの側面から潜在GDPの増加に寄与することが期待される。第一に、資本ストックの量的な側面からは、実際の資本ストックと、当社が推計した「最適資本ストック(=資本と労働の相対価格の関係などから企業の利潤が最大化される資本ストック)」とを比較すると、わが国の資本ストックは290兆円程度不足している可能性が示唆される。第二に、質的な側面からも、設備の老朽化により、わが国の資本生産性(=GDP÷資本ストック)は主要国(フランス、ドイツ、イタリア、英国、米国の5カ国の平均)と比べて10%程度、押し下げられている。第三に、資本ストックの配分という側面でも、日本では資本ストックが低生産性分野に張り付いていることで、資本生産性が主要国と比べて18%程度、低下している。
量的な資本ストックの不足に関して、リポートから 図表 3 実際の資本ストックと最適資本ストック を引用ると次の通りです。
見れば明らかな通り、2010年過ぎあたりを境に、我が国企業は資本ストックを増加させるという意味での設備投資行動で最適化を達成できておらず、資本ストックが最適水準から過小となっていると試算されています。しかも、その過小な幅が年々拡大しているようで、大和総研の試算によれば、直近で▲290兆円、GDPのほぼ半分に達する資本ストック不足が生じています。なお、内閣府の最新の「固定資本ストック速報」では、民間企業設備のストックは877.9兆円ですから、最適資本ストックの約75%で生産をしていることになります。上の折れ線グラフから、「実際の資本ストック」の青いラインがほとんど横ばいで推移しているのが見て取れます。
量的な面に加えて、質的な面を考えると、フランス、ドイツ、イタリア、英国、米国の5か国平均と比較して、設備の老朽化で▲10%、さらに、低生産性分野への偏在で▲18%、合わせて、質的な面から▲18%もの資本生産性の低下を来たしています。なお、生産性本部の「労働生産性の国際比較 2025」によれば、日本の1人当たり労働生産性は98,344ドル、OECD平均129,635ドルの約75%であり、すなわち、▲25%低くなっています。でも、資本ストックが▲35%ほど不足し、老朽化と低生産性分野への偏在で合わせて▲28%の資本生産性が押し下げられている点も考慮する必要があります。
大和総研のリポートでは、労働投入量、資本ストック、全要素生産性(TFP)の3要素をバランスよく底上げする必要を主張していますが、私には疑問が大きいです。日常的に接する大学生を見ても、日本人というのは、粘り強さや協調性や時間を守るなどといった非認知能力がすぐれていて、もちろん、OECDのPISAに現れているように数学をはじめとする認知能力もすぐれていて、それなのに、企業で働き始めた途端に大きく労働生産性が落ちる、というのは、むしろ、企業サイドに問題があるのではないか、と疑問に感じるのは私だけでしょうか。
2026年5月19日 (火)
西勇投手のナイスピッチングとクリンナップの打棒で中日に先勝
| 一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
| 中 日 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 5 | 0 | |
| 阪 神 | 1 | 0 | 2 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | x | 4 | 11 | 0 |
【中】 金丸、藤嶋、杉浦、伊藤、牧野 - 石伊
【神】 西勇、工藤、及川、ドリス、岩崎 - 伏見
年に1度の倉敷マスカットスタジアムで、中日に先勝でした。
先発西勇投手が5回2失点で試合を作り、佐藤輝選手が先制タイムリーとツーラン、大山選手もタイムリーと、クリンナップが力強い打撃で得点を重ねました。しばらくノーヒットの試合が続いていた森下選手も2安打と調子を上げつつあります。得点にからんだわけではありませんが、ドラ1ルーキー立石選手も先発出場して初安打を記録し、打線を活気づけました。
明日も、
がんばれタイガース!
予想を上回る成長を見せた1-3月期GDP統計速報1次QE
本日、内閣府から1~3月期GDP統計速報1次QEが公表されています。季節調整済みの系列で前期比+0.5%増、年率換算で+2.1%増を記録しています。プラス成長は2四半期連続です。なお、GDPデフレータは季節調整していない原系列の前年同期比で+3.4%、国内需要デフレータも+2.6%に達し、2年半10四半期連続のプラスとなっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
1-3月実質GDP、年率2.1%増 予想上回り2四半期連続プラス
内閣府が19日発表した2026年1~3月期の国内総生産(GDP)速報値は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値が前期比0.5%増、年率換算で2.1%増だった。輸出が回復し、2四半期連続のプラス成長となった。
QUICKが事前にまとめた民間予測の中心値は年率1.6%増だった。
GDPの半分を占める個人消費は0.3%増だった。小幅ながら伸びが拡大し5四半期連続でプラスを維持した。外食や衣服が堅調だった。
設備投資は0.3%増で2四半期連続の増加となった。研究開発への支出が増えたほか、汎用機械や電気照明器具もプラスだった。住宅投資は0.5%増で2四半期連続のプラスだった。
民間在庫は成長率に対して0.1ポイントのマイナス寄与となった。
政府消費は0.1%増と4四半期連続で増えた。公共投資は1.4%増で3四半期ぶりにプラスだった。
輸出は1.7%増と2四半期連続の増加だった。米国による一連の関税政策の影響を受けていた自動車のほか、船舶や業務用機械がプラスとなった。製薬関連の研究開発サービスも増えた。
GDP上は輸出に区分するインバウンド(訪日外国人)消費は1.6%減った。中国や中東からの観光客の減少が影響したとみられる。
輸入は0.5%増で3四半期ぶりに増えた。研究開発サービスへの支払いが膨らんだ。
実質成長率に対する寄与度をみると、内需は0.2ポイント、輸出から輸入を差し引いた外需は0.3ポイント、それぞれプラス寄与となった。いずれも2四半期連続のプラスだった。
国内の総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは前年同期比で3.4%上昇した。
名目GDPは前期比0.8%増、年率換算で3.4%増だった。GDPの実額は年換算で実質が593兆6933億円、名目が677兆2334億円だった。
25年度でみると、実質GDPは前年度比0.8%増の591兆9112億円だった。個人消費や設備投資がけん引し2年連続のプラス成長となった。名目GDPは4.2%増と5年連続のプラス成長で、実額は669兆9702億円だった。
ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。なお、雇用者報酬については2種類のデフレータで実質化されていてる計数が公表されていますが、このテーブルでは「家計最終消費支出(除く持ち家の帰属家賃及びFISIM)デフレーターで実質化」されている方を取っています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、です。正確な計数は自己責任で内閣府のリンク先からお願いします。
| 需要項目 | 2025/1-3 | 2025/4-6 | 2025/7-9 | 2025/10-12 | 2026/1-3 |
| 国内総生産GDP | +0.4 | +0.3 | ▲0.3 | +0.2 | +0.5 |
| 民間消費 | +0.7 | +0.2 | +0.5 | +0.0 | +0.3 |
| 民間住宅 | ▲0.5 | ▲0.0 | ▲8.1 | +5.0 | +0.5 |
| 民間設備 | +0.7 | +1.2 | ▲0.1 | +1.4 | +0.3 |
| 民間在庫 * | (+0.7) | (▲0.2) | (▲0.2) | (▲0.4) | (▲0.1) |
| 公的需要 | ▲0.1 | ▲0.0 | ▲0.1 | ▲0.1 | +0.5 |
| 内需寄与度 * | (▲0.1) | (+0.5) | (▲0.1) | (+0.2) | (+0.3) |
| 外需(純輸出)寄与度 * | (▲0.6) | (+0.1) | (▲0.3) | (+0.0) | (+0.3) |
| 輸出 | ▲0.6 | +1.6 | ▲1.6 | +0.2 | +1.7 |
| 輸入 | +2.2 | +1.1 | ▲0.2 | ▲0.0 | +0.5 |
| 国内総所得 (GDI) | +0.2 | +0.9 | ▲0.4 | +0.3 | +0.4 |
| 国民総所得 (GNI) | +0.5 | +0.4 | +0.2 | ▲0.2 | +0.5 |
| 名目GDP | +0.8 | +2.0 | +0.1 | +0.9 | +0.8 |
| 雇用者報酬 (実質) | ▲0.7 | +0.6 | +0.0 | +0.5 | +0.2 |
| GDPデフレータ | +3.6 | +3.2 | +3.5 | +3.4 | +3.4 |
| 国内需要デフレータ | +3.1 | +2.6 | +2.8 | +2.6 | +2.6 |
上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、縦軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された1~3月期の最新データでは、前期比成長率がプラス成長を示し、プラス寄与している中で目立っているのは水色の民間設備くらいで、少し見づらいのですが、マイナス寄与は緑の民間住宅、灰色の民間在庫、黒の純輸出となっています。

引用した記事の2パラ目にある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前期比年率で+1.6%のプラス成長であり、予想レンジの上限が年率+2.9%ということでしたのでレンジ内ながら、実績の年率+2.1%のプラス成長は大きなサプライズはなかった印象です。ただし、引用した記事のあるように、内需のうちマイナスを示したのは在庫だけであり、消費、設備、住宅は軒並みプラスを記録しています。外需についても、インバウンドこそ減少したものの、純輸出は+0.3%ですから、かなり大きなプラス寄与となっています。在庫のマイナス寄与は、むしろ、在庫の圧縮が進んだと評価すべきで、悲観する必要はありません。内需寄与度は+0.2%となっていて、純輸出=外需寄与度も+0.3%となっていて、内外需ともにプラス寄与という結果でした。民間住宅のイレギュラーな制度的要因もほぼほぼ解消された印象です。ですので、1~3月期までは景気の回復基調に大きな変化はなかったということです。ただ、2月末からの米国とイスラエルによるイラン攻撃に端を発する中東情勢の不安定化については、現時点で、私は確たる方向性を示すことは出来ません。

上のグラフは、GDPデフレータ、民間消費デフレータ、国内需要デフレータについて、それぞれの季節調整していない原系列の前年同期比上昇率をプロットしています。GDPデフレータが+3%を超え、民間消費デフレータと国内需要デフレータも+2%超の上昇を示している一方で、特に、民間消費デフレータに関してはやや伸びが鈍化しています。ただし、物価の先行きについては中東情勢を考慮すれば楽観はできません。まず、石油をはじめとするエネルギー価格、あるいは、場合によっては穀物などの商品価格の輸入価格上昇により、輸入デフレータが上昇します。輸入がGDPの控除項目であることから、GDPデフレータは輸入デフレータの上昇により一時的に上昇率が減速する可能性もあります。しかし、輸入価格が国内価格に転嫁されると、春闘の賃上げとともに、民間消費デフレータや国内需要デフレータの上昇につながることは明らかです。こういった物価上昇が消費をはじめとする国内需要を抑制する効果を持ちます。中東情勢の先行きが不透明なだけに、我が国景気の先行きも不確かな部分が多いと私は感じています。
2026年5月18日 (月)
明日公表予定の1-3月期GDP統計1次QE予想は2四半期連続のプラス成長か
先月末の鉱工業生産指数(IIP)や先週の家計調査などの必要な統計がほぼ出そろって、明日5月19日に、1~3月期GDP統計速報1次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。ということで、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下のテーブルの通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、GDP統計の期間である1~3月期ではなく、足元の4~6月期から先行きの景気動向を重視して拾おうとしています。先行き経済について言及しているシンクタンクはみずほリサーチ&テクノロジーズと第一生命経済研究所などいくつかあり、特にこの2機関は長々と引用してあります。いずれにせよ、1次情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。ただし、最後の行の東京財団だけは、いわゆるナウキャスティングですので、足元の4~6月期の予想となっています。なお、"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまででクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。
| 機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
| 日本総研 | +0.3% (+1.2%) | 4~6月期の実質GDP成長率もプラス圏で推移すると予想。中長期的な課題解決に向けた企業の投資需要は根強いほか、政府がガソリン価格の上昇を抑えることで、資源高による家計への影響は限定的となる見込み。もっとも、物流の混乱や海外景気の減速を受けて、輸出や生産が弱含むことで、成長率は鈍化する公算。原油輸入は減少が見込まれるものの、減少分を在庫で賄うことで在庫投資も減少し、GDPへの影響は限定的となる見通し。 |
| 大和総研 | +0.7% (+2.9%) | 26年1-3月期の実質GDPは、個人消費や輸出等によって押し上げられることが見込まれ、全体としては力強い結果になるとの見方に変わりはない。4-6月期についてもプラス成長を続けるとみているが、中東情勢が国内外の経済活動に及ぼす影響には警戒が必要だ。 |
| みずほ銀行 | +0.1% (+0.4%) | 1~3月期のGDPには中東情勢緊迫化の影響がまだ本格的に表れていないと考えられる。4~6月期は、サプライチェーンの混乱やマインドの悪化を通じた悪影響が強まり、景気の下押し要因になろう。 |
| ニッセイ基礎研 | +0.5% (+1.8%) | 3月以降の中東情勢の緊迫化を受けて、景気の先行き不透明感は高まっている。現時点では、2026年4-6月期の実質GDPは、原油価格上昇や供給制約の影響で、前期比年率0%台前半まで減速すると予想している。 |
| 第一ライフ資産運用経済研 | +0.4% (+1.7%) | 先行きはイラン情勢悪化の悪影響が顕在化することが予想される。消費者マインドが足元で大きく悪化していることが次第に消費の伸びを抑える可能性があることに加え、調達難による生産活動の下押しも生じるとみられる。一部の品目では調達難による受注制限や納期の遅れ、価格上昇や減産といった動きが生じており、生産活動を中心に景気を下押しするだろう。現時点では4-6月期の成長率はゼロ近傍の低成長にとどまるとみているが、今後の展開次第ではマイナス成長も視野に入る。当面、下振れリスクが大きい状況が続くだろう。 |
| 三菱UFJリサーチ&コンサルティング | +0.3% (+1.0%) | 総じて見れば、2026年入り後も緩やかな景気回復が続いたことを確認できる結果になるとみられる。ただし、先行きについては、イラン情勢緊迫化による原油高や供給制約などの悪影響が表面化することで、景気の下押し圧力が強まる可能性に警戒が必要となる。 |
| 伊藤忠総研 | +0.4% (+1.6%) | 4~6月期は、中東情勢緊迫化による影響から実質GDP成長率は減速する可能性があろう。先行き不透明感によるマインドの落ち込みが個人消費や設備投資の抑制要因となりうる。また、政府のガソリン補助金などの対策でよって個人消費の大幅な落ち込みは回避される見込みであるが、輸入の減少を国内在庫で賄う動きから在庫投資が減少し、GDPの押し下げにつながる可能性がある。 |
| 明治安田総研 | +0.4% (+1.8%) | 4-6月期については、ホルムズ海峡封鎖に伴う物流停滞が生産の足枷となるほか、米国の関税が引き続き自動車を中心に下押し圧力となることで、財輸出は力強さを欠くと見込まれる。燃料価格上昇による航空運賃の値上がりもインバウンド需要の抑制要因となろう。設備投資については、省力化投資の需要が安定的に見込まれることが下支えするとみるが、建築資材の供給制約が進捗の遅れにつながることなどが懸念される。一方、ガソリン代補助の効果でエネルギー価格の上昇が抑制されていることなどから、個人消費の落ち込みは回避できるとみており、全体では小幅なプラスになると予想する。 |
| 農中総研 | +0.5% (+2.1%) | 1~3 月期のGDPについて、実質成長率は前期比 0.5%(同年率換算2.0%)と、2期連続のプラスと予想する。 |
| 東京財団 | +0.28% (+1.13%) | モデルは、2026年1-3月期のGDP(実質、季節調整系列前期比)を、0.37%と予測。※年率換算: 1.47% |
上のテーブルを見れば明らかな通り、1~3月期のGDP成長率は昨年2025年10~12月期から2四半期連続してプラス成長と見込まれています。大和総研の予想だけがやや突飛に高成長となっているのですが、私は大雑把に年率で+1%を少し超えるくらいであり、潜在成長率を大きく上回ることはない、と考えています。加えて、足元の4~6月期も成長率が鈍化を見せるものの3四半期連続でプラス成長の予想が多くなっています。ただ、米国とイスラエルによるイラン攻撃から始まった中東情勢が何とも不透明であり、マイナス成長の可能性も否定できない、というのが実際のところではないかと私は考えています。
最後に、下のグラフは、日本総研のリポートから、実質GDP成長率(前期比年率)のグラフを引用しています。
2026年5月17日 (日)
2026年5月16日 (土)
ナイスピッチングの村上投手が1か月半ぶりの勝利
| 一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
| 広 島 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 5 | 0 | |
| 阪 神 | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | x | 3 | 7 | 0 |
【広】 森下、鈴木、塹江、益田 - 持丸
【神】 村上、ドリス - 坂本
村上投手のナイスピッチングで広島に勝利でした。
9回の最後にドリス投手の救援を仰いで、悔しそうな表情でしたが、何といっても、先発村上投手のピッチングが最大の勝因のひとつであることには確かです。打線も、初回に佐藤輝選手のタイムリーと大山選手の犠牲フライで2点を先制し、4回にも佐藤輝選手のホームランで中押しをしています。ダメ押しはなりませんでしたが、今日の村上投手のピッチングなら3点で十分でした。最後に、相変わらず、ちびっこインタビューは微笑ましくて、私は大好きです。
明日も、
がんばれタイガース!
今週の読書は日本経済に関する経済書をはじめ計6冊
今週の読書感想文は以下の通りです。
まず、星岳雄・松島斉[編著]『日本経済 信頼からの再生』(日本経済新聞出版)では、故宇沢弘文教授による『社会的共通資本』や『自動車の社会的費用』(いずれも岩波新書)などから議論を展開・拡張させていて、自然環境、社会インフラ、制度などのテーマの研究成果を取りまとめています。マーセル・ディルサス『独裁者の倒し方』(東洋経済)の特徴は、独裁者個人に着目するのではなく、システムの中で機能する独裁者を理解しようとしている点であり、冒頭で、独裁システムを走り続ける必要のあるランニングマシンに例えています。膨大な独裁政権やクーデタに関するデータに基づく議論です。栗林文夫『廃仏毀釈はなぜ起きたのか』(山川出版社)では、明治維新期の廃仏毀釈について、特に徹底的にすべての寺院が廃寺され、すべての僧侶が還俗させられた鹿児島の例を歴史学の観点から、『市来四郎日記』などの史料に基づいて解明しようと試みています。平石さなぎ『ギアを上げて、風を鳴らして』(集英社)では、宗教団体「荻堂創流会」の近畿支部で創父=開祖の生まれ変わりである「降り子」として信徒から崇拝の対象となっている吉沢癒知と転勤族の父親について何度も転校を繰り返してきた渡来クミの2人の小学4年生女子を主人公にしています。前田安正『AIに書けない文章を書く』(ちくまプリマー新書)は、生成AIが急速な発展を見せて、生成AIの助けを借りた文章もいっぱい目にするようになった現在、人間の思考や感情に立ち入ることも、表現することもできない生成AIには不可能な文章を書くという作業について考えています。林真理子『マリコ、アニバーサリー』(文春文庫)では、大雑把に2023年中の「週刊文春」に連載されているコラムを取りまとめていて、連載40周年と著者の古希のダブルアニバーサリーだそうです。セレブな著者ながら、決して嫌味にならない上品なトピックでエッセイを盛り上げています。
今年2026年の新刊書読書は、1~4月に合わせて97冊、5月に入ってから先週までの13冊と今週の6冊を加えて合計116冊となります。これらの読書感想文については、別途読んだ学術論文などとともに、できる限り、FacebookやX(昔のtwitter)、あるいは、mixi、mixi2などのSNSでシェアしたいと予定しています。
まず、星岳雄・松島斉[編著]『日本経済 信頼からの再生』(日本経済新聞出版)を読みました。編著者は、2人とも東京大学経済学部教授です。本書は、三井住友信託銀行の委託研究「社会的共通資本と信託」の成果を取りまとめているようです。委託研究のタイトルから想像される通り、故宇沢弘文教授による『社会的共通資本』や『自動車の社会的費用』(いずれも岩波新書)などから議論を展開・拡張させています。序章と終章を別にして3部構成となっており、第1部で自然環境に着目して気候変動や森林などを取り上げ、第2部では社会インフラとして都市や暗号資産を取り上げ、第3部で制度として医療、教育、金融に焦点を当てています。詳細は読んでみてのお楽しみなのですが、第3部に着目したいと思います。いつもの私の主張ですが、市場に商品として供給され、価格による効率的に配分される通常財だけで世界が成り立っているわけではありませんから、医療をはじめとする社会保障あるいは教育については、一定のコントロールを受けた価格により、何らかの社会的必要に応じて供給されることが重要です。典型的には、医療では保険制度が日本では導入され、医療費全額を患者が負担することなく、保険や公費で賄われている部分があります。高額医療だけでなく一般医療も価格に対する制限があり、薬についても保険調剤であれば、需給に基づく自由な価格設定という形にはなっていません。教育についても同様であり、高い購買力を持つ者に高度な教育が提供されるわけではなく、義務教育は憲法の定めにより無償で、義務教育でなくても中等教育の範囲の高校もかなり無償に近いような形で提供され、高等教育である大学については、一定、教育を受ける準備が整っていると試験などで判断された学生に対して提供されています。国公立大学は言うに及ばず、私が勤務する私大に対しても、以前からものすごく減少したとはいえ、一定程度の公費負担がなされています。こういった形の市場における価格付けに基づかない財やサービスの提供を、ピケティ教授が脱商品化と呼んでいるのだろうと私は解釈しています。そして、こういった市場の価格付けに基づかない供給の増加はコモンの拡大と称されるものなのであろうと私は考えています。ただ、本書では、第6章p.195で日本の医療について、「世界でも類を見ない自由放任主義的な体制」と評価している点は付け加えておきたいと思います。さらなる脱商品化の余地が大きいという主張です。他方で、教育については、本書では第7章p.219以下でコモンズとしての公教育の可能性を議論していたりもします。最後に、本書は当然に日本を前提にしていますから、「信託」はtrustであり、custodianではありません。custodianは枯渇性資源、典型的には石油や鉱物資源といったいわゆる天然資源の管理、特に、途上国での経済発展にどのように天然資源を用いるべきか、といった視点を提供します。英国オックスフォード大学のコリアー教授などが提唱しています。私のような開発経済学にも興味あるエコノミストとしては、本書のスコープ外とはいえ、そういったcustodianの信託という視点もどこかで言及してほしかった気がしています。
次に、マーセル・ディルサス『独裁者の倒し方』(東洋経済)を読みました。著者は、ドイツ人のようで、ドイツのキール大学安全保障政策研究所の客員研究員だそうです。ただし、本書は英国で英語の出版が最初のようで、英語の原題は How Tyrants Fall であり、2024年の出版です。本書のひとつの特徴は、独裁者個人に着目するのではなく、システムの中で機能する独裁者を理解しようとしている点です。その昔の「天皇機関説」になぞらえれば、「独裁者機関説」とも言えるかもしれません。まず、独裁システムをランニングマシン(普通は、トレッドミルだと思うのですが、ダメなんでしょうか)に例えています。走り続けないとかえって危険、周囲の政権エリートや軍人が反旗を翻しその座を奪いに来る、というわけです。トレッドミルから下りて、首尾よく亡命できたとしても送還・処刑されるおそれがあります。ただ、独裁者1人では独裁体制が維持できるはずもありません。当然です。ですから、本書では独裁者が必要とする3グループを明らかにしています。第1に、理論上大切な人々、あるいは、名目上の選挙母体、第2に、真の選挙母体、第3に、勝利連合、すなわち、真の選挙母体の中から選ばれる少数者、例えば、キャスティングボードを握る人たち、と指摘しています。そして、側近からの支持や忠誠が独裁者には必要であって、金品や何らかの利益を分与するわけですが、その側近が強力に台頭して独裁者の地位を脅かすことは避けねばなりません。ここにジレンマがあるという指摘です。加えて、軍隊からの支持も必要なのですが、クーデタを防止することにも配慮する必要があります。そして、本書のもうひとつの特徴は、かなり膨大な独裁政権やクーデタに関するデータベースを構築し、構造的あるいはシステム的な分析にとどまらず、他の研究成果からの引用も含めて、それなりのデータに基づく分析をしている点です。例えば、私が選挙とともに重視しているチェノウェス教授が提唱する3.5%ルールについては、失敗の例外を2件指摘していたりしますし、暗殺の確率について1910年代に1%あったが、21世紀の現在では0.3%を下回る、といった指摘もしています。最後に、独裁者の政権交代の難しさを取り上げています。私自身の1990年代前半における在チリ大使館の勤務の直前のピノチェット将軍からの民政移管は大きな例外と感じています。第8章では、外国による政権交代が失敗する理由をいくつか上げています。ただ、私自身の感想としては、たとえ独裁者であろうとも外国の武力介入による政権交代については、疑問を持つべきではないか、と考えています。最後の最後に、本書のテーマはいうまでもなく独裁、ないし、独裁者なのですが、第1に、民主化への道筋を探るという観点も忘れてはいません。第2に、現在の日本の高市内閣や米国のトランプ政権なども含めて、権力というものの本質が本書の分析からいくつか垣間見えます。私は専門外ですし、そういった読み方はしませんでしたが、こういった観点からの読書も十分できる良書だと思います。
次に、栗林文夫『廃仏毀釈はなぜ起きたのか』(山川出版社)を読みました。著者は、鹿児島県歴史・美術センター黎明館調査史料室長です。本書は、明治維新期の廃仏毀釈について、特に、すべての寺院が廃寺され、すべての僧侶が還俗させられた鹿児島の例を歴史学の観点から解明しようと試みています。タイトルはwhyの理由に焦点を当てていて、その回答は、p.195以下に取りまとめてあって、いわゆる「熱しやすく冷めやすい県民性」をはじめとして4点上げられています。ここは、レビューですべてを明らかにしてしまうことは不適当ですので、読んでみてのお楽しみです。本書が典拠としているのは、もちろん、多くの歴史書や史料が上げられていますが、私の目から見て、『市来四郎日記』と木脇啓四郎による『万留』が興味深いところでした。調べてみると、前者は、まさにご著者が勤務する鹿児島県歴史・美術センター黎明館で所蔵されているようです。実は、本書を読んでみようと思い立ったのは個人的な事情があります。すなわち、浄土真宗との関連です。本書では軽く言及されているだけで、まったく重視されていないながら、廃仏毀釈の揺り戻しとして、仏教空白地帯となった鹿児島に対して明治10年1877年の西南の役が終結した後に仏教各宗派の布教団が大挙して押し寄せています。その結果、これは本書でも言及ありますが、一向宗=浄土真宗の信者が大きく増加しています。これまた本書で言及されているところで、そもそも、江戸期から島津藩ではキリスト教はもちろん一向宗=浄土真宗もご禁制でした。ですので、藩主が帰依したり、祈願していたりした臨済宗をはじめとする禅宗や真言宗をはじめとする密教系の仏教が鹿児島では中心的な地位を占めていましたが、「隠れ念仏」は少なくなかった、と本書でも指摘していますので、浄土真宗信者が増える素地はあったといえるかもしれません。そして、実は、その鹿児島に派遣された中の1人が与謝野鉄幹の父でした。鉄幹自身も短期間ながら父親とともに幼少期に鹿児島に滞在しているようです。なお、与謝野鉄幹は西本願寺で得度していますが、私のばあさんもご同様に西本願寺で得度して法名をいただいていましたので、この得度がどの程度のものかは、私には不明です。私のひいばあさん、当然ながら、私の父から見たばあさん、もしくは、私のばあさんの義母は与謝野晶子と交流があり、その縁は浄土真宗だったと私の父は推測していました。そのあたりの興味もあって本書を読んでみた次第です。まあ、個人的な興味範囲でしたので、廃仏毀釈についてはそれほど理解が進んだわけではありません。悪しからず。
次に、平石さなぎ『ギアを上げて、風を鳴らして』(集英社)を読みました。著者は、作家なのでしょうが、この作品で第38回小説すばる新人賞を受賞しています。主人公は、いずれも小学4年生女子の吉沢癒知と渡来クミの2人です。それぞれの視点からのストーリーが交互に進みます。2人は、当然、同じ小学校に通っていますが、クミが普通のクラスであるのに対して、癒知は支援学級であるわかごま学級に通学しています。どうしてかというと、癒知は全国に20万人の信者を有する新興宗教団体「荻堂創流会」の近畿支部において、「降り子」と呼ばれる創父=開祖の生まれ変わりとして信徒たちから崇拝の対象となっている存在であり、頭はいいもののコミュニケーション能力に難があって、他の児童と問題を起こしがちなもので、わかごま学級に通っています。世話役の森田はもちろん、近畿支部長や支部幹部の母親の加奈からでさえ「癒知さま」と呼ばれ、定期的に「浄器の儀」という儀式を司り、教戒に従って食べ物にも制限があり、普通の小学生女子がスイーツを食べて「う~ん、しあわせ」という感覚は理解できません。儀式の折を別にして母親とすら肌を接することを禁じられていて、そういった教戒を破る破戒行為は創父の怒りをかって地獄に落ちるといわれています。宗教団体「荻堂創流会」は全国に20万人の信者を有し、在家のほかに、家族や親族と離れて教団の支部に住まいする信者も少なくありません。「浄器の儀」の儀式では、いかにも多額の玉串料が払われているようです。他方、父親の頻繁な転勤により、クミが関西の片田舎の梢が丘に引っ越してきて、教団近畿支部の癒知を見かけ興味を抱き、学校で接触を試みるところからストーリーは始まります。小学校を離れても、古い山城の隙間の空間を見つけて、まあ、男子小学生でいえば「秘密基地」のようにして2人いっしょに遊んだり、その近くの公園で癒知がクミの助けを得て自転車の練習をしたりするのが前半ストーリーとなります。4月の学年始まりから1年もしない晩秋になって、転勤族である父親の転勤で、クミも転校するのと同じタイミングから、後半ストーリーが大きく展開します。タイトルと表紙画像はリンクしていて、主人公である吉沢癒知と渡来クミが自転車で逃げているところです。なぜ、逃げているか、また、後半ストーリーの展開などは読んでみてのお楽しみです。何分、新興宗教が根底にある小説ですから、好み、というか、好き嫌いがあると思います。でも、しあわせとは何か、家族や親子の関係などなど、いろいろと深い意味も読み取れます。万人へのオススメは出来ませんが、読めば何かが得られる可能性のある小説です。
次に、前田安正『AIに書けない文章を書く』(ちくまプリマー新書)を読みました。著者は、文章コンサルティングファーム「未來交創株式会社」代表取締役だそうですが、長らく朝日新聞社で校閲のお仕事に携わってこられたようです。本書のタイトルを見て、たいそう大上段に振りかぶって力みかえった印象を受けますが、まあ、半分は売上げを意識した編集者の意向を反映しているんではないか、と私は想像しています。よく読めば、「現在の技術水準では」といった趣旨の但し書きが見つかると思います。はい、そのうちに、というか、ここ2-3年でAIの文章能力は多くの人間を凌駕するんだろうと思いますから、本書の賞味期限は短い可能性があります。ということで、生成AIが急速な発展を見せて、人間が自ら考えて文や文章を書くだけでなく、生成AIの助けを借りた文章もいっぱい目にするようになった現在、人間の思考や感情に立ち入ることも、もちろん、表現することもできない生成AIには不可能な文章を書くという作業について考えさせられる奥の深い本だといえます。加えて、私のように、大学生には卒論を、大学院生には修士論文を指導することが多い教師の身としてはとても参考になる部分があります。もちろん、本書で考えている対象は学術論文というよりは、事実関係だけでなく感情的なものも含めたリポート的な文章、それも、それほど長くない文章、という感じだと思います。私独特の本書の読み方かもしれませんが、やや学術論文やリポートの書き方に引きつけてレビューしたいと思います。まず、文章を構成する文は短く、というのはすべてに共通していることと思います。学術論文やリポートでも「一文一義」を大学では教えています。本書でもシンプルな文をオススメしているように見受けます。そして、少し学術論文やリポートとは異なりますが、本書では、よく言及されている5W1Hについては、往々にしてwhyが抜けている、と指摘しています。でも、少なくとも学術論文では、論文で取り上げたテーマについてのwhy=理由は必須です。私は授業の際にジョークとして、どうして卒業論文を書くのかといえば、卒業の必修単位だからというのがホントのところだけれど、そのように書くわけには行かない、と教えています。当然です。そして、本書でも同じですが、かなり曖昧な概念的な用語については注意して、場合によっては定義を明確にするように、あるいは、比較級の形にして、「AはBよりxx的」と書くように、私は注意を促す場合があります。例えば、効率的、多様性、合理的、近代化などです。そういったものを含めて、文や文章を書く上で、とても参考になる良い本だとオススメできます。ただ、私が本書と違う見方をしているのは、良い文章を書くためには、良い文章を読むことが良いトレーニングになるという点です。本書はこの点は必ずしも重視していないようです。ほかに、文章の定義が、冒頭第1章で「大辞林」から引いている定義と第3章の「日本大百科全書」で大きく異なっている点も気にならないわけではありませんし、最初に書いたように、AIはそのうちに軽く人間の文章能力を超えるでしょうし、本書と逆の視点でAIにしか書けない文章もあるでしょうし、いろいろと指摘しておきたいポイントはありますが、文や文章を書く人は読んでおいて損はないと思います。
次に、林真理子『マリコ、アニバーサリー』(文春文庫)を読みました。著者は、エッセイスト、直木賞作家であるとともに、日本大学の理事長職も務めています。本書は、「週刊文春」に連載されているコラムを取りまとめて、単行本として2024年に出版され、そして、今年2026年に文庫本として出版されています。タイトルに見られるように、何でも、コラムの連載開始40年で著者も古希を迎えたダブルアニバーサリーだそうです。なお、大雑把に2023年の「週刊文春」に収録されたコラムですが、2023年5月からの感染法上の分類変更がなされたコロナについては、それほど注目されていない印象でした。著者は、そもそも、文句なしにセレブでしょうし、年齢的にも自慢話が多くなるお年ごろなのだと思いますが、決して嫌味にならない上品なトピックでエッセイを盛り上げています。ですので、私なんぞがうかがいしれないセレブの世界を気軽に垣間見ることが出来ます。例えば、会食には手土産を持っていることが習慣になりつつある、なんてのは、気の置けない仲間との飲み会くらいしか参加しない田舎教師には初めてのお話でした。最後の方の「謦咳に接する」というタイトルのエッセイでは、私くらいの年配者から見ても神様クラスの作家がズラリと登場します。こういった神様クラスの作家の「謦咳」に本書のご著者は接しているんだ、と実感させられました。また、「週刊文春」収録のコラムといいつつ、「週間朝日」や「AERA」や「週刊新潮」やといった同業他誌に堂々と言及しているのも、いいのか、という気がしましたが、私も立命館大学に勤務してお給料をもらいつつ、同業他大学の同志社大学や龍谷大学などにもいっぱい話題にしているので、まあこんなものか、と受け止めています。巻末に収録されているコラム外の皇室モノについては、私はこのご著者の『李王家の縁談』は読んだものの、ちょっと嫌味ではないか、と感じる読者がいそうな一方で、逆に、心から感激する読者もいそうな気がします。いずれにせよ、週刊誌コラムを取りまとめていますので、ちょっとしたスキマ時間のお供に最適です。
2026年5月15日 (金)
+4.9%の上昇と国内物価が跳ね上がった4月の企業物価指数(PPI)
本日、日銀から4月の企業物価 (PPI) が公表されています。統計のヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で+4.9%の上昇となり、先月3月統計の+2.9%から上昇率が大きく加速しています。2021年3月に前年同月比上昇率がプラスに転じてから62か月、すなわち、5年余り連続の上昇です。まず、ロイターのサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
国内企業物価、4月は前月比2.3%上昇 中東情勢不安定化の影響で
日銀が15日に発表した4月の企業物価指数(CGPI)速報によると、国内企業物価指数は前月比2.3%上昇と、3月(1.0%上昇)からプラス幅を大幅に拡大した。中東情勢の不安定化やホルムズ海峡の事実上の封鎖を受け、石油・石炭製品や化学製品など幅広い品目の価格が上昇した。
石油・石炭製品は前月比11.8%上昇。3月下旬以降の原油市況の上昇を反映し、ナフサ、軽油、B重油・C重油などの価格が上昇した。
化学製品は同6.1%上昇。ホルムズ海峡の事実上の封鎖を背景としたナフサ供給懸念の高まりを受け、エチレン、プロピレン、キシレンをはじめ石油化学基礎製品の多くが値上がりした。
非鉄金属は同2.7%上昇。イランの攻撃を受けたことでアルミニウム生産拠点の操業度が低下し、供給懸念が高まったことなどからアルミニウム市況が上昇、アルミニウム合金・同二次合金地金やアルミ圧延製品が値上がりした。
<国内企業物価の前年比上昇率、23年5月以来の高い伸び>
国内企業物価指数の前年比は4.9%上昇となった。3月(2.9%上昇)から大幅にプラス幅を拡大。ウクライナ情勢の影響が表れた2023年5月(5.4%)以来の大きな伸びとなった。
全515品目中、前年比で上昇したのは386品目、下落は106品目。日銀の担当者は、原油・ナフサ市況の上昇が幅広い品目に波及しつつあると説明した。
同時に発表された輸入物価指数(円ベース)は前年比17.5%上昇と、3月(8.0%上昇)からプラス幅を拡大した。2022年12月以来の高い伸びとなった。原油やジェット燃料油、ナフサなどが押し上げ方向に影響した。
ロイターがまとめた民間調査機関の予測中央値は前年比3.0%上昇、前月比0.7%上昇だった。
インフレ動向が注目される中で、長くなってしまいましたが、いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価指数(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下のパネルは国内物価指数そのものを、それぞれプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。なお、ちょっと見づらいかもしれませんが、下のパネルの指数水準が急にスティープになったのは先月の2026年3月からです。

まず、企業物価のうちヘッドラインとなる国内物価上昇率は、引用した記事の最後のパラにあるように、ロイターのによる市場の事前コンセンサスは+3.0%でしたし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも同じく+3.0%でした。ですので、実績の+4.9%は大きく上振れしていて、ちょっとしたサプライズと私は受け止めています。なお、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスのレンジ上限は+3.7%でしたから、実績上昇率は軽く+1.0%ポイントを超えて上振れしました。ヘッドラインとなる国内物価だけでなく、輸出物価は+18.9%、輸入物価も+17.5%の2ケタ上昇を示しています。市場の事前コンセンサスを大きく超える上昇率となった理由は、引用した記事にもあるように、米国とイスラエルによるイラン攻撃から引き起こされた中東情勢の不安定化、それに伴う石油価格の上昇です。

上のグラフは、企業物価指数のうちの輸入物価の中から原油価格上昇率の推移をプロットしています。円建てと契約通貨建ての2本の折れ線です。ただ、2021年5月と6月は、それぞれ、円建てで+243.9%と+177.0%という途方もない上昇率でしたので、縦軸のスケールを調整しています。実は、円建ての原油価格上昇率は一昨年の2024年9月から今年2026年3月までほぼ1年半に渡って前年同月比でマイナスを続けていました。しかし、4月統計では一気に+16.8%の上昇率となっています。上のグラフからは、それほど大きな上昇率との印象は受けませんが、1年半に渡って前年同月比マイナスを続けてきた石油価格が急に2ケタ上昇となったのですから、それなりのショックと考えるべきです。私はエネルギー動向に詳しくないので、日本総研「原油市場展望」(2026年4月)を参考として見ておくと、WTI原油先物価格の先行き見通しについては、「イラン戦争の5月までの終結を前提とする標準シナリオでは、原油価格は100ドル前後で当面高止まりした後、緩やかに下落する見通し」としつつも、当然、5月に終わる可能性が大きいわけでもなく、「戦闘が再開すれば、価格が急騰するリスクも」と指摘しています。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比上昇率と下落率で少し詳しく見ると、まず、注目の石油・石炭製品は3月▲7.1%でしたが、4月統計では+5.3%の上昇となっています。これに伴って、化学製品も3月の+0.8%から4月には+9.2%に跳ね上がっています。ナフサについてはさらに品薄感が強まっているという報道も見かけました。電力・都市ガス・水道は政府の電気・ガス料金負担軽減支援事業により3月▲6.3%、4月▲1.3%と下落が続いています。加えて、農林水産物が3月の+17.5%から、4月も+12.5%と2ケタの高い上昇率を示しています。農林水産物の価格上昇に伴って、飲食料品の上昇率も4月は+4.1%と、前月3月の+4.3%と大きな違いはない上昇となっています。非鉄金属は3月+31.5%、4月+37.9%と、きわめて高い上昇率が続いています。しています。
2026年5月14日 (木)
信頼性高い統計はどれくらいの価値があるのか?
全米経済研究所(NBER)から "The Value of Reliable Statistics" と題するワーキングペーパーが明らかにされています。米国のトランプ大統領が昨年2025年8月に米国労働省の労働統計局(BLS)の責任者(Commissioner)を解任(fire)した際に観測された不確実性の高まりがマクロ経済に及ぼす影響を計測しています。まず、論文の引用情報は次の通りです。
続いて、NBERのサイトからABSTRACTを引用すると次の通りです。
ABSTRACT
On August 1, 2025, President Trump fired the head of the U.S. Bureau of Labor Statistics (BLS) and claimed that the agency's data were "rigged." In the aftermath, measures of economic policy uncertainty rose sharply, consistent with the idea that reduced trust in official data increases uncertainty for investors, businesses, and households. We use an event-study design to estimate the effect of the firing on policy uncertainty, and then map that increase in uncertainty into implied macroeconomic outcomes. This yields a back-of-the-envelope estimate of the marginal value of public trust in official statistics. Our baseline estimate implies that preserving trust in the integrity and quality of official statistics generates economic benefits of about $25 for every $1 spent on the agency's budget.
まず最初に、論文では、トランプ政権から米国労働統計局(BLS)が無能であったり、データ操作がなされているという根拠はまったく示されていない "No evidence of incompetence or manipulated data at BLS has ever been presented by the Trump administration." 点が強調されています。ただし、この解任がいくつかの方法で不確実性を高めたと指摘し、具体的には3点上げています。第1に、トランプ政権の主張が直接に米国労働統計局(BLS)の統計のデータに対する客観性や正確性への疑問 "doubt on the objectivity and accuracy" に及ぼす影響です。これはトランプ政権への信頼が高い場合ですが、逆に、Commissioner解任前の米国労働統計局(BLS)への信頼の方が高い場合には以下の2点があると指摘しています。すなわち、第2に、信用できない責任者(Commissioner)が就任する可能性、さらに、第3に、米国労働統計局(BLS)が混乱を来たしてデータの品質が低下する "face turmoil going forward that could degrade data quality" 可能性です。論文では、トランプ政権への信頼が高くて不確実性が高まるのか、あるいは、米国労働統計局(BLS)への信頼が高くて不確実性が高まるのか、については特段の評価を下していませんが、結果として、引用したABSTRACTにあるように、統計の信頼性は米国労働統計局(BLS)の予算1ドルに対して約25ドルの価値があると結論しています。
上のテーブルは、論文から Table 3. Estimated Economic Impacts of the Increase in Economic Policy Uncertainty Resulting from Erika McEntarfer's Firing を引用しています。Panel C. の -$19.30 をハイライトしたのは引用者です。論文 p.18 にはBLSの予算が704百万ドル "The BLS budget for FY2025 was $704 million" であるとされており、ベースラインの▲19.3十億ドルを分子にして、BLSの予算額の704百万ドルで除すと、BLSの予算額のの予算1ドル当たり27.4ドル、という結果が出ますが、論文では丸めて25ドル、すなわち、米国労働統計局(BLS)のデータの質と信頼性に対する信頼が限界的に低下することにより、米国労働統計局(BLS)への政府の直接的な支出1ドル当たり約25ドルの損失となる "the marginal erosion in public trust in the quality and integrity of BLS data cost the nation about $25 for every $1 of direct government spending on the agency." との結論を導いています。
私は日本の総務省統計局の消費統計の責任者=課長を務めましたが、正確な統計の重要性を改めて認識した気がします。ただ、すべてを金額に換算するのは少し抵抗もあります。その点は付け加えておきます。
2026年5月13日 (水)
またまた桐敷投手が打ち込まれてヤクルトに逆転負け
| 一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
| 阪 神 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 6 | 0 | |
| ヤクルト | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | x | 4 | 7 | 1 |
【神】 高橋、湯浅、桐敷、モレッタ - 伏見
【ヤ】 山野、清水、荘司、キハダ - 鈴木叶
またまた桐敷投手が終盤に打ち込まれて、ヤクルトに逆転負けでした。
終盤まで2-1でリードし、7回表の攻撃で好投の高橋投手に代打を送り、阪神は継投に入ります。7回の湯浅投手は何とかゼロに抑えたものの、8回に桐敷投手がヤクルト打線に捉まり3点を奪われます。どうして昨夜も投げた桐敷投手だったのか。首位攻防戦でリリーフ投手をケチったのは理解できません。昨夜は終盤に大差がついて、岩崎投手とドリス投手を温存したのですから、1点差で両投手をつぎ込むべきではなかったか、と考えるのは私だけでしょうか?
甲子園に戻っての広島戦は、
がんばれタイガース!
2か月連続で低下した4月の景気ウォッチャーと大きな黒字を計上した3月の経常収支
本日、内閣府から4月の景気ウォッチャーが、また、財務省から3月の経常収支が、それぞれ公表されています。統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲1.4ポイント低下の40.8となった一方で、先行き判断DIは+0.7ポイント上昇の39.4を記録しています。経常収支は、季節調整していない原系列の統計で過去最大の+4兆6815億円の黒字を計上しています。まず、それぞれの統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから引用すると以下の通りです。
街角景気4月は1.4ポイント低下、中東情勢でマインド下押し 先行きは小幅上昇
内閣府が13日に発表した4月の景気ウオッチャー調査で現状判断DIは40.8となり、前月から1.4ポイント低下した。2カ月連続のマイナス。ウオッチャーの景気の見方は「中東情勢によるマインド面の下押しを中心に、このところ持ち直しの動きに弱さがみられる」とした。
指数を構成する3部門では、家計動向関連が前月から1.2ポイント低下し40.5、企業動向関連が1.6ポイント低下し41.5、雇用関連は1.7ポイント低下し41.4となった。
2-3カ月先の景気の先行きに対する判断DIは、前月から0.7ポイント上昇の39.4。3カ月ぶりのプラス。内閣府は先行きについて「中東情勢による不透明感がみられる」とまとめた。
経常黒字3月は4兆6815億円で過去最大、25年度年間も=財務省
財務省が13日に発表した国際収支状況速報によると、3月の経常収支は4兆6815億円の黒字だった。黒字幅は前年同月から1兆0562億円増えて過去最大。海外子会社からの配当受け取りなどの収入が伸長した。ロイターが民間調査機関に行った事前調査の予測中央値は3兆5487億円程度の黒字だった。2025年度1年間の経常収支も最大の黒字幅で、34兆5218億円だった。
3月の内訳をみると、貿易・サービス収支は前年同月から12億円増え、5728億円の黒字だった。うち貿易収支は8305億円の黒字で、サービス収支の2578億円の赤字を相殺した。
2000年ごろから経常収支の稼ぎ頭になった「第1次所得収支」は、4兆6307億円の黒字だった。海外子会社からの配当受け取りなどの収入が増え、前年同月から7981億円増加した。第2次所得収支は5220億円の赤字だった。前年同月から赤字幅が2569億円縮小した。
同時に発表した25年度の経常収支は、34兆5218億円の黒字だった。前年度から4兆4902億円増加した。アジア向けに半導体など電子部品の輸出が伸び、貿易収支が黒字化した。貿易黒字は昨年度1兆3631憶円で、2020年度(3兆7853億円)以来5年度ぶりに黒字化した。
いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、景気ウォッチャーのグラフは上の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

景気ウォッチャーの現状判断DIは、最近では昨年2025年10月統計の48.2まで6か月連続で上昇または横ばいを記録した後、今年2026年1月統計までジワジワと低下した後、2月統計で48.9、前月差+1.3ポイントと4か月ぶりに上昇したものの、米国とイスラエルによるイラン攻撃に起因する大幅なマインド低下により、3月統計ではでは前月から▲6.7ポイントと大きく低下して42.2となった後、本日公表の4月統計でもさらに▲1.4ポイント低下し、40.8を記録しています。ただ、4月統計の先行き判断DIは前月から+0.7ポイント上昇しています。これは、3月統計が前月差▲11.3ポイントと、あまりにも大きく低下した反動と考えるべきであり、先行き判断が改善した、と見なすのはやや軽率に過ぎるのではないか、と私は受け止めています。一応、本日公表の4月統計の季節調整済みの現状判断DIをより詳しく前月差で見ると、家計動向関連のうちでは、住宅関連が▲7.0ポイント、飲食関連が▲3.8ポイント、サービス関連も▲1.6ポイント、小売関連が▲0.2ポイント、すべてのコンポーネントが軒並み低下しています。企業動向関連では、非製造業は先月3月統計から▲1.8ポイント低下した一方で、製造業も▲1.6ポイント低下しています。家計も企業もすべて軒並みマインドを悪化させています。家計動向関連のうちの住宅関連が特に大きな低下を見せているのは、中東情勢に起因するナフサ由来の資材不足が原因なのかもしれません。もしそうなら、例の「カルビーポテチのパッケージのモノクロ化」が大きく報道されていますので、さらに、住宅関連以外でも低下する可能性があります。統計作成官庁である内閣府では基調判断を2月統計から「中東情勢によるマインド面の下押しを背景に、このところ持ち直しの動きに弱さがみられる」に下方修正し、今月4月統計でも据え置かれています。経済政策だけではこのマインド悪化は手に余るような気がします。景気判断理由の概要については、記事で引用されているほかに、内閣府の調査結果の中から北陸地方の家計動向関連に着目すると、「石油関連の値上げが続いており、購買の心理的な負担になっている(衣料品専門店)。 」といった石油関連の見方もありました。

続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。引用した記事の通り、ロイターによる市場の事前コンセンサスは+3.5兆円余りの黒字ということでしたし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、同じように+4兆円近いの黒字の見込みでしたので、実績の+4.7兆円近い黒字はやや上振れした印象です。季節調整済み系列の統計でも、+3.9兆円余りの黒字を計上しています。ただし、1-2月の経常収支は季節調整していない原系列の統計はもちろん、季節調整がなされていても、旧暦で決まる中華圏の春節の日取りによって大きく変化します。ですから、季節調整以外の方法でも均して統計を見る必要があります。他方で、何といっても、日本の経常収支は第1次所得収支が巨大な黒字を計上していますので、貿易・サービス収支が赤字であっても経常収支が赤字となることはほぼほぼ考えられません。引用した記事の通りです。トランプ関税によって貿易収支や貿易・サービス収支の赤字が拡大したとしても、第1次所得収支で十分カバーできると考えるべきです。ただ、石油価格の動向については、米国とイスラエルのイラン攻撃からきわめて不透明といえます。2011年3月の東日本大震災から2015年いっぱいくらいまで貿易サービス収支が赤字を続けた期間もあります。いずれにせよ、対外不均衡の問題が経常収支にせよ、貿易・サービス収支にせよ、たとえ赤字であっても何ら悲観する必要はありません。エネルギーや資源に乏しい日本では消費や生産のために必要な輸入をためらうことなく、経常収支や貿易収支が赤字であっても何の問題もない、逆に、経常黒字が大きくても、日本の国際競争力が高いわけでもなく、ましてや特段めでたいわけでもない、と私は考えています。
2026年5月12日 (火)
2か月連続の上昇で基調判断が上方修正された3月の景気動向指数と2か月連続の実質マイナスとなった3月の家計調査
本日、内閣府から景気動向指数が、また、総務省統計局から家計調査が、それぞれ公表されています。いずれも3月の統計です。景気動向指数のヘッドラインとなるCI先行指数は前月から+1.3ポイント上昇の114.5、CI一致指数も2か月ぶりの上昇で+0.3ポイント上昇の116.5を記録しています。家計調査の方は、2人以上の世帯消費支出の前年同月比は、実質▲2.9%の減少、名目も▲1.3%の減少となりました。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから引用すると以下の通りです。
景気一致指数3月は0.3ポイント上昇、基調判断1年10カ月ぶり上方修正
内閣府が12日公表した3月の景気動向指数速報(2020年=100)によると、足元の景気を示す一致指数が前月比0.3ポイント上昇の116.5で、2カ月ぶりのプラスとなった。一致指数から一定の計算式で決まる基調判断は、前回の「下げ止まりを示している」から「上方への局面変化を示している」に引き上げた。基調判断の上方修正は1年10カ月ぶり。
一致指数を押し上げたのは、輸出数量指数、鉱工業用生産財出荷指数、商業販売額(小売業)など。アジアや米国向けの輸出が増加。はん用・業務用機械や非鉄金属の出荷などが押し上げ要因となった。小型車や軽自動車などの販売も堅調だった。
一方、生産指数(鉱工業)は押し下げ要因になった。中東情勢緊迫化の影響などで化学製品や石油・石炭製品が減少した。
基調判断は上方修正されたものの、前月比の上昇は0.3ポイントと小幅にとどまっており、これから出てくるデータによっては今月下旬に発表される確定値でマイナスになったり横ばいになったりする可能性には留意が必要という。
先行指数は前月比1.3ポイント上昇の114.5と、10カ月連続でプラスだった。新規求人数や最終需要財在庫率指数、鉱工業用生産財在庫率指数などが押し上げた。
実質消費支出3月は2.9%減、中東情勢受け一部商品で買いだめも
総務省が12日に公表した3月の家計調査によると、物価変動を除いた1世帯(2人以上)当たりの実質消費支出は前年比2.9%減少した。食料品や自動車への支出減などで4カ月連続のマイナスとなり、下げ幅は昨年10月以来の大きさだった。一方、中東情勢の混乱を受け、一部商品には買いだめ傾向がみられた。
主な内訳では、酒類・外食など食料が前年比2.9%減少し2カ月連続のマイナス、自動車関連など交通・通信が16.8%減少し4カ月連続の前年割れとなった。
ロイターが集計した調査では、消費支出は前年比1.3%減と予想されていた。
一方、総務省の担当者によるとポリ袋、サランラップ、トイレットペーパーなどへの支出が増え、中東情勢の緊迫化で「買いだめの影響を受けている可能性がある」という。教養娯楽サービスでも外国パック旅行が減少する一方で国内旅行が伸びており、イラン情勢が影響している可能性があると分析している。
2025年度の実質消費支出は前年同期比0.1%増で、わずかながら3年ぶりのプラスとなった。食料品価格が高騰する中で、自動車関連支出やパック旅行がけん引したという。
消費支出に占める食費の割合であるエンゲル係数は、2024年度(28.3%)から伸長して28.8%となり、1980年度(28.9%)以来、45年ぶりの高水準となった。
SMBC日興証券シニアエコノミストの宮前耕也氏は、足元で実質賃金がプラスになるなど前向きな動きが出ているものの、消費の改善は「一時的な動き」になるかもしれないと分析する。
同氏は、家計消費の趨勢は「弱い」とみている。今後夏場に向けて、食料品やエネルギー価格の上振れが生じると、実質賃金のマイナスへの再転換を招き、消費の下押しになりかねない、と注意を促した。
いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。ただし、統計公表直後の記事を引用していますので、その後、追加記事や差替え記事が出ている可能性があります。続いて、景気動向指数のグラフは次の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、CI一致指数が前月から+0.3ポイントの上昇、先行指数も同じく+1.3ポイントの上昇と予想されていました。実績の一致指数+0.3ポイント、先行指数+1.3ポイントのそれぞれ上昇はジャストミートしました。繰返しになりますが、3月統計のCI一致指数は、2か月ぶりの上昇となります。さらに、内閣府のプレスリリースによれば、3か月後方移動平均は+0.70ポイント上昇し、3か月連続の上昇となり、加えて、7か月後方移動平均も前月から+0.37ポイント上昇し、これは4か月連続の上昇となっています。統計作成官庁である内閣府による基調判断は、昨年2025年5月統計から「下げ止まり」に下方修正されていましたが、本日公表の3月統計で「上方への局面変化」に上方修正されています。ただし、基調判断は上方修正ながら、すでに「過去の数字」である可能性が否定できません。先行きに関しては、私はいろいろと紆余曲折を経つつも、米国経済がソフトランディングに成功するとすれば、そう簡単には日本経済が景気後退局面に入ることはない、と考えています。ただし、そもそも、米国経済でも日本経済でもまだまだインフレが高止まりしており、特に、日本ではすでに景気回復・拡大局面の後半に入っている点は忘れるべきではありません。それにもまして、米国とイスラエルによるイラン攻撃から、先行きはまったく不透明になったと考えるべきです。石油価格は指標となるWTI先物がバレル当たり100ドル近辺で推移しています。東証の日経平均株価だけは最高値を記録しましたが、長期金利が2.5%超となっている中で、多くのエコノミストが円高を展望して待ち望んでいる金融引締めは景気を下押しすることが明らかです。日米同時リセッションの可能性が否定できません。
一応、本日公表の統計のうち、CI一致指数の前月差+0.3ポイント上昇への寄与度を見ておくと、引用した記事にもあるように、輸出数量指数の+0.36ポイントのほか、 商業販売額(小売業)(前年同月比)が+0.24ポイント、 商業販売額(卸売業)(前年同月比)が+0.20ポイントのそれぞれプラスの寄与度と、引用した記事のタイトルにもあるように、生産や出荷の押上げ効果が大きくなっています。

続いて、家計調査のグラフは上の通りです。上のパネルは、名目及び実質の消費支出の前年同月比の推移であり、下は季節調整済みの名目指数及び実質指数です。いずれも影をつけた期間は景気後退期です。引用した記事の3パラ目にある通り、ロイターによる市場の事前コンセンサスは前年同月比で▲1.3%減でしたし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、同じく、実質消費支出の前年同月比が▲1.3%減と予想されていました。実績の▲2.9%は大きく下振れした印象ながら、もともとが振れの大きな統計ですし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスのレンジ下限が▲4.3%減でしたので、大きなサプライズというほどのことはありません。それでも、下振れということは変わりありません。品目別に、これも引用した記事の4パラ目にある「ポリ袋、サランラップ、トイレットペーパー」への支出増は、「買いだめの影響を受けている可能性」が指摘されていて、中東情勢に起因する価格高騰やモノ不足の傾向に対して、政府が節約の要請や呼びかけを一切していないにもかかわらず、買いだめを示唆する消費行動が始まっている可能性がある、と私は受け止めています。加えて、私が注目していたのは食料なのですが、前年同月比で見て名目+0.6%増、実質▲2.9%減でした。食料支出の名目増加・実質減少は食費の支出が増えているにもかかわらず、購入できている量が減少している、ということです。引用した記事にもあるエンゲル係数の上昇とともに、国民生活が貧しくなっていることを、生活実感だけでなく統計からも確認された気がします。
2026年5月11日 (月)
世界の貧困削減はいかに進んだのか?
全米経済研究所(NBER)から "How Poverty Fell" と題するワーキングペーパーが明らかにされています。世界的に貧困が劇的に削減された経緯を分析しています。まず、論文の引用情報は次の通りです。
続いて、NBERのサイトからABSTRACTを引用すると次の通りです。
ABSTRACT
The share of the global population living in extreme poverty fell dramatically from an estimated 36% in 1990 to 9% in 2015. We describe how this decline happened: the extent to which changes within as opposed to between cohorts contributed to poverty declines, and the key changes in the lives of households as they transitioned out of (and into) poverty. We do so using cross-sectional and panel sources that are representative or near-representative of five countries that collectively accounted for 75% of global poverty decline between 1990 and 2015. The data show that overlapping birth cohorts experienced the decline of poverty together over time, such that poverty decline can be viewed as a primarily within-cohort phenomenon. Within cohorts, the data reveal substantial churn, casting the challenge of escaping poverty as a "slippery slope" more than a long-term trap. The data also illustrate a diversity of pathways out of poverty: sectoral transitions, migration, and changing occupational choices and female labor force participation can all account for some part of poverty reduction, but in all but a handful of cases, a majority of households exiting poverty did so without experiencing these changes.
続いて、論文から Figure 6: Structural change and poverty status を引用すると次の通りです。
世界の先進国、日本も含めて、先進国となった国々では、かなりの程度にペティ=クラークの法則が当てはまります。ペティ=クラークの法則とは、私は最近の論文 "How Tourism Promotes Economic Development: A Case of Cambodia" の最後で、クズネッツ教授の Modern Economic Growth を引用して、(1) Agriculture declines; (2) Industry rises, then stabilizes; and (3) Services expand. と要約しています。すなわち、付加価値額=GDPや労働者数などで見て、経済の中心が第1次産業から第2次産業、そして、第3次産業へとシフトする、というのが通常の経済発展の姿であると考えられてきました。しかし、上のグラフを見ても明らかな通り、貧困削減が進んだ中国、インド、インドネシア、メキシコ、南アフリカの5国では Ag→Ag、すなわち、農業への就業を継続したままで貧困が削減された割合が少なくなく、産業構造が変化し、生産性が向上する中での貧困削減とばかりは言い切れない、ということです。ですから、引用したABSTRACTの最後でも、データは貧困からの脱却経路の多様性を示していて、産業構造の変化、労働移動、職業選択の変化、女性の労働参加などはすべて貧困削減を説明できるが、すべてではないものの多くの場合、貧困から脱却した多くの家計はそういった変化を経験せずに脱出している "The data also illustrate a diversity of pathways out of poverty: sectoral transitions, migration, and changing occupational choices and female labor force participation can all account for some part of poverty reduction, but in all but a handful of cases, a majority of households exiting poverty did so without experiencing these changes." と指摘しています。
公務員だったころ、私は役所の同僚とともに、ペティ=クラークの法則も含めて、日本の経済発展の経験を新興国や途上国に伝える目的で "Japan's High-Growth Postwar Period: The Role of Economic Plans" を取りまとめた経験があり、世銀リポート Resilient Industries in Japan なんかにも引用されているのですが、認識をアップデートする必要があるのかもしれません。
2026年5月10日 (日)
2026年5月 9日 (土)
今週の読書は経済書・歴史書、それに現代小説や時代小説にミステリまで計7冊
今週の読書感想文は以下の通りです。
まず、野村総合研究所コンサルティング事業本部『日本の差別化戦略』(東洋経済)では、人口減少とそれに伴う人手不足、加えて、生産性の低さなどに起因する経済成長の停滞といった日本の弱点に対して、国や地方、企業、また、個人がどのように対応すべきかを議論しています。ダリン M. マクマホン『<平等>人類史』(作品社)では、原始共産制のような段階から説き起こして、搾取に伴う奴隷制が始まった一方で、キリスト教が神の愛の平等を説き、啓蒙主義的な近代的な平等思想から、20世紀初頭のロシアにおける共産主義革命における平等の追求など、平等の歴史を概観しています。綿矢りさ『グレタ・ニンプ』(小学館)では、4年続けた不妊治療や妊活を諦めた途端、自然妊娠した妻が、見た目も、言葉使いも、行動も大きく変化し、最初は驚きばっかりだった夫も段々と受け入れるようになっていく変化がとても、何というか、綿矢ワールド全開で描写されています。ブリアン・クリスナ『どうせ死ぬなら、最後にミーアヤム』(春秋社)では、巨漢で色黒、見た目が悪い上に、体臭もきつく、お付き合っていた女性から振られたアレが、37歳の誕生日に24時間後に自殺を決意し、翌朝に屋台のミーアヤムを食べようとするのですが、それからさまざまなことが起こります。中村隆之『今こそ経済学を問い直す』(講談社現代新書)では、市場における金銭の支払い意思で示される購買欲求に応じたリソースの配分ではなく、社会的な必要に応じた配分という経済学を志向しています。とてもいい経済書です。広くオススメできます。貴戸湊太『有能助手は名探偵を操る』(ハーパーBOOKS+)では、ビジュアルはいいものの推理はへっぽこな名探偵とその名探偵を操る有能な助手のコンビが主人公で、ただし、そういった逆転をコミカルに描き出すだけではなく、しっかりと本格的な謎解きが展開されているところが魅力です。砂原浩太朗『藩邸差配役日日控』(文春文庫)では、徳川期の神宮寺藩7万石の江戸藩邸の差配役を務める里村五郎兵衛が、今でいえば総務部総務課長のような役どころで、藩邸内の「なんでも屋」と揶揄されるように、さまざまな出来事に対処します。さまざまな伏線が最後に回収されます。
今年2026年の新刊書読書は、1~4月に合わせて97冊、5月に入って先週の6冊と今週の7冊を加えて合計110冊となります。これらの読書感想文については、できる限り、FacebookやX(昔のtwitter)、あるいは、mixi、mixi2などのSNSでシェアしたいと予定しています。
まず、野村総合研究所コンサルティング事業本部『日本の差別化戦略』(東洋経済)を読みました。著者であるコンサルティング事業本部が所属する野村総合研究所(NRI)は、1965年に日本初の本格的な民間総合シンクタンクとして設立され、2025年で創立60周年を迎えたそうです。本書の最大の問題意識は人口減少とそれに伴う人手不足です。それらに加えて、生産性の低さが経済成長の足を引っ張っているという事実も忘れるべきではありません。こういった日本の弱点に対して、国や地方、企業、また、個人がどのように対応すべきかを本書では議論しています。ですので、冒頭章で人口減少や人手不足をデータで概観した後、続く3章で国だけでなく地方の戦略の重要性を指摘し、企業の成長シナリオを論じ、最後に個人の働き方やその基礎となるキャリア形成について分析しています。まず、何と言っても、国と地方の戦略でもっとも重荷になるのが医療や介護をはじめとする社会保障経費です。また、ここでは、私の所属する高等教育の役割も議論されています。留学生対応だけではなく、大学での英語授業の拡大をひとつの解決策として考えています。私は留学生向けの修士論文指導を英語でやっていますが、それほど簡単ではないのは容易に理解できると思います。労働力不足についても、いくつか興味深い試算を提供しています。第1章の最後のpp.34-35では、人口減少を前提とした豊かな社会実現について、3つの視点を提供しています。このあたりは、読んでみてのお楽しみです。第2章の国や地方向けの差別化戦略では、東京はいいとしても、地方の企画人材やグローバル人材の偏在を分析し、国内外の経験を収録しています。ただ、コンサルらしく失敗例は見受けられません。第3章の企業向けの成長戦略では、単に規模別だけでなく、グローバル大企業、グローバルニッチ企業、地域の大企業、地域のニッチ企業、フォロワーやスタートアップの中小規模企業の5つのカテゴリーから分析を進めています。最終章の個人向けの視点では、企業スペシフィックなスキルアップではなく、キャリア自律を目指す社会情動的スキル(SES)を提唱し、北欧諸国の例などに言及しています。最後の最後に、いつもこういったコンサルの事例紹介を含めた分析結果を見るにつけ、私なりに考えるのですが、成功例の紹介の裏には失敗例もいっぱいあるんだろうな、という気がします。加えて、この成功例が実践できないからこそ、現在の日本があるのではないか、と考える読者もいっぱいいそうです。
次に、ダリン M. マクマホン『<平等>の人類史』(作品社)を読みました。著者は、米国ダートマス大学の歴史学教授だそうです。英語の原題は Equality: The History of an Elusive Idea であり、2023年の出版です。本書はタイトル通りに、不平等ではない平等の歴史を概観しています。昨年2025年の今ごろの5月に、私は田中将人『平等とは何か』(中公新書)を読んでいます。そこでは、ロールズやスキャンロンの平等観を発展させて、実証研究ではなく規範研究の方法を取って平等について考えていました。本書では、まず冒頭の序文で、平等の歴史であって、不平等の歴史ではない点が強調されています。しかも、生物学的に、というか、何というか、チンパンジーやボノボの世界は決して平等ではない、という点も強調されています。ついでながら、マルクス-エンゲルスも平等と平等主義の政策には批判的だった、とも言及されています。その上で、太古の昔のいわゆる原始共産制のころから始めて、平等について歴史的な見方を示しています。注を含めて500ページを超える力作であり、3部構成となっています。マルクス主義的な歴史区分で示せば、第Ⅰ部で原始共産制から奴隷制くらいまで、第Ⅱ部で古典古代のギリシア-ローマ時代から近代初頭のフランス革命くらいまで、第Ⅲ部でそれ以降の近代から現代に焦点を当てています。私の勝手な読み方かもしれませんが、生産拡大とともに剰余生産物を獲得するため、初期国家に神々が創造されて、その片方で奴隷も誕生し、搾取が始まって平等は失われます。古典古代のギリシアやローマでは奴隷が生産に従事し、平等とは市民、とくに、男性の市民の間での関係性となります。女性、奴隷、外国人は公共の場での活動から除外されます。そして、キリスト教が広まります。神のもとでの平等が導入され、神の愛により自由民と奴隷は平等と考えられるようになります。さらに、ストア派は人間の潜在能力の同等性を主張しはじめ、これは人々の解放の可能性を秘めていた、と本書では主張しています。このあたりは、キリスト教の教義には詳しくないので、私には微妙に理解が進まない点だったりします。そして、暗黒の中世をすっ飛ばして、人類の平等の近代的な起源は啓蒙主義との指摘があります。これは大方のコンセンサスかと私は考えています。ルソーの『人間不平等起源説』や米国独立革命についても言及されています。ただ、この両者の平等観に大きな違いがあるのは周知の事実かと思います。また、私の専門分野に関連して、経済学の父であるアダム・スミスの平等観がp.199にあり、各人の生まれつきの才能の違いは実際には小さい、との指摘が『国富論』から引用されています。フランス革命を経て、さらに、20世紀初頭のロシアにおける共産主義革命から、平等の追求が大きく前進した、との指摘は、まあ、そうなのだろうと私も考えます。ただ、同時に、プルードンからの引用ながら、共産主義とは不平等なものであり、弱者が強者を搾取する、という観点も言及しています。そして、再度、マルクスが共産主義について平等・公平と考えていた根拠は何らない、と指摘されています。ファシズムにおける平等観は少し難解であり、国連の設立により国家間の平等は制度上は担保されたように見える一方で、安全保障理事会での拒否権などにより、国家間での平等はほとんどないに等しいという現状の指摘も、その通りかと私は考えています。最終章の平等を達成する導き手や結論性については、やや難解ながら読んでみてのお楽しみです。
次に、綿矢りさ『グレタ・ニンプ』(小学館)を読みました。著者は、芥川賞作家です。本書の主人公は、呉田俊貴であり、舞台は武蔵小杉です。主人公はオフィスが同じビルにあることから、控えめで笑顔が可愛い由依と知り合って結婚します。夫婦で妊活や不妊治療を4年続けた末、結局、子どもを諦めて夫婦2人で生きていくと決めた矢先に、俊貴が仕事から帰宅すると、由依がまるで『八つ墓村』のように、妊娠検査薬を角のように頭に刺して、さらに髪の毛も短くした珍妙な格好で踊っていました。要するに、妊活を諦めた途端、自然妊娠したわけです。妊娠した喜びなのか、何なのか、由依は内面外見ともに豹変してしまいます。髪型はデニス・ロッドマンのようにベリーショートかつパープルに染め上げられていて、喋り方は『ドラゴンボール』の孫悟空のようなべらんめえ調になっています。最初は驚きばっかりだった夫の俊貴も段々と受け入れるようになっていく変化がとても、何というか、綿矢ワールド全開で描写されます。産婦人科での受診、出産時期と重なった転勤・転居、もちろん、出産と夫婦の両親がすべて集合したお宮参り、などなど、繰返しになりますが、綿矢ワールド全開です。そのあたりの詳細は読んでみてのお楽しみですが、綿矢りさのファンであればぜひとも読んでおくべき作品です。したがって、私は読みました。最後に収録されている短編「深夜のスパチュラ」は、文春文庫のアンソロジー『二周目の恋』に収録されていましたので、私は既読でした。最後の最後に、まったくどうでもいいことながら、その昔、「マル金」と「マルビ」の流行語を生み出した『金魂巻』を思い出させるように、フォントが所々で大きくなったり、太字にされたりで、強調されているところがあります。『グレタ・ニンプ』だけでなく、「深夜のスパチュラ」もそうなっています。アンソロジーで読んだ際にはそうではなかったような気がします。
次に、ブリアン・クリスナ『どうせ死ぬなら、最後にミーアヤム』(春秋社)を読みました。著者は、インドネシアの作家です。たぶん、本書が本邦初訳ではないかと思います。インドネシア語の原題は Seporsi Mie Ayam Sebelum Mati であり、2025年の出版です。私は家族とともに3年間ジャカルタで暮らしていた経験がありますが、インドネシア語はほぼほぼ理解できません。主人公はジャカルタのダウンタウンにあるスディルマン地区のオフィスに勤める男性のアレです。巨漢で色黒、見た目が悪い上に、体臭もきついらしく、お付き合いしていた女性からも振られて独身です。オフィスの同僚などからは、からかい、ないし、いじめの対象になっています。こうしたことから、37歳の誕生日に、24時間後に自殺することを決意します。でも、これがタイトルなのですが、死ぬ前にいつも行きつけの屋台のミーアヤムを食べることにします。で、翌朝、その屋台を訪れると、何と、屋台の店主が亡くなっていて、アレは店主の自宅での葬式に出席し、棺を持つうちの1人になったりします。そうこうするうちに、身に覚えのない冤罪で留置所に入れられ、ギャングのボスと知り合って気に入られてしまいます。冤罪はすぐに晴れて留置所から出ますが、同時に出所したギャングのボスの手下になって働く羽目になります。それから、いろいろあって、ラストはハッピーエンドで終わりますが、そのあたりの詳細は読んでみてのお楽しみです。最後に、ジャカルタ生活3年の経験者として、ひとくさり書きとめておきます。まず第1に、本書ではイスラム教的な要素はほとんど見られません。お祈りの時刻を知らせるアザーンが聞こえる、といった下りはいくつか見ました。まあ、日本の小説でも神道や仏教の宗教的な要素はほぼほぼ含まれませんので、そういったものか、という気はします。第2に、ミーアヤムとは、本書を読めば判りますが、鶏肉のヤキソバです。「ミー」は、たぶん、現地では「ミエ」と発音されるような気もしますが、麺を指します。アヤムが鶏肉です。なお、コメはナシですから、ナシアヤムというのもあるんだろうと思います。ナシゴレンは焼き飯です。ただ、日本人的な感覚では、ミーアヤムを朝食に食べるというのは少し違和感があります。現地の人だけかもしれません、第3に、移動手段にも注目です。主人公はオフィス勤務ですから、それなりのお給料を取っていてバイクも買えるようですが、平均的なジャカルタ市民は、少なくとも私が住んでいた20年余り前には、バイクには手が届かなかったような気がします。20年以上経過していますので所得も向上していることと想像しています。また、本書では1箇所だけ「三輪タクシー」として登場していますが、バイクの後ろにオレンジ色のホロを被せた席を設けているバジャイ bajaj という交通手段が20年余り前にはいっぱいありました。これも時代の経過とともに少なくなっている可能性があります。最後に第4に、やたらと喫煙シーンが登場します。主人公もタバコを吸います。これは、20年前から所得が向上したとはいえ、まだ、喫煙習慣は大いに残っている、ということなのかもしれません。
次に、中村隆之『今こそ経済学を問い直す』(講談社現代新書)を読みました。著者は、青山学院大学経済学部教授であり、ご専門は経済史、経済思想史だそうです。京都大学経済学部の八木先生の門下生だったようですから、マルクス主義経済学がご専門かもしれません。結論として、とてもいい経済書です。ひょっとしたら、少し前に取り上げた私の同僚である松尾匡先生の『「上」vs.「下」の経済学』より良質の経済書かもしれません。すなわち、私が普段から感じている点について、それなりの正しい方向性を示している気がします。冒頭で、経済成長の限界を2点から説き起こします。第1に、自然環境の制約です。第2に、経済の成熟化に伴う変化であり、金銭の支払い意思で示される購買欲求と必要性の乖離です。まず、マイクロな経済では、伝統的な経済学は、売り手と買い手がともに市場で交換すれば、本書でいうところのwin-winの関係になることを示しています。しかし、実際には、本当に社会的必要性を満たしているかは疑問であると本書では指摘しています。そして、マクロ経済のフィールドでは、ケインズ卿が指摘するように、市場は雇用の自動調整機能を持たない、と指摘しています。ほぼほぼ、私は本書の指摘や結論に賛成していますが、私なりの言葉で言い換えれば、経済学では労働サービスも含めて市場に商品として供給される財やサービスに価格をつけて、その価格を支払える購入者にそういったリソースを配分する機能を有していることは事実です。そして、そういった価格に応じた資源配分がもっとも効率的であることも証明されています。ただし、購買力たる貨幣は持たないが必要性の高い企業や家計に財やサービスを供給する機能はありません。ですから、日本をはじめとする先進各国で典型的に市場における供給と購買力に基づいた配分を部分的なリとも回避する仕組みがあるのが、現時点では、医療をはじめとする社会保障と教育です。私が活動している教育、大学教育に引き付ければ、高いレベルの教育を提供する大学の教育サービスは市場における価格に従って、すなわち、高い値段でオークションのように競り落とされるわけではなく、入学試験を通して、教育を受ける準備が整っている学生に対して提供されます。医療はもっと必要に応じて、社会的に標準とされる価格で提供されます。私はこういった社会的な必要に応じた供給というものが広がる必要を感じています。社会的な必要に応じた供給という本書の大きなテーマのひとつは、ピケティ教授のいうところの脱商品であり、斉藤准教授のいうコモンの拡大にほかなりません。現在の日本では、まだ医療をはじめとする社会保障や教育にとどまっている社会的な必要に応じた供給、市場を通じない脱商品としての供給を、さらに拡大して、まずは住宅、さらに、交通や通信、もっと拡大するべき分野も少なくないと思っています。そういった方向性を指し示し、かなりの程度に理論的な展開も本書では見せています。多くのひとにオススメです。
次に、貴戸湊太『有能助手は名探偵を操る』(ハーパーBOOKS+)を読みました。著者は、ミステリ作家です。私は、本書の著者の作品の中では、『その塾講師、正体不明』や『図書館に火をつけたら』といったミステリを読んでいます。タイトルから軽く想像されるように、探偵がへっぽこで、実は有能な探偵助手が謎解きをしている、というパターンです。それほどめずらしいものではなく、いくつかあると思います。本書は、そういった探偵と助手の逆転をコミカルに描き出すとともに、それでも、コミカルに終わるだけではなく、しっかりと本格的な謎解きが展開されているところが魅力です。ということで、実はへっぽこながら、ビジュアルがよい名探偵が志谷禄郎、ウラで謎解きをしているのが助手の和戸村丈となります。標準的なボリュームの中で5年前の過去編と現在編に別れ、さらに、オマケでもないでしょうが、名探偵と助手の2人の出会いの大学時代編もあったりします。プロローグの事件で軽く名探偵と助手が登場した後、本編の現在編に入り、都内のバーでアルコール度数の高い酒をかけられて焼死させられるという事件が発生し、名探偵の叔父の警視副総監である福田宗寛から呼出しを受けて名探偵と助手が事件現場に臨みます。現在のこの事件が、5年前の菜の花山荘の事件と深く関係していることから過去編に飛び、5年前の事件の真相が謎解きされます。そして、現在に戻って、冒頭の事件の謎解きが展開され、最後に、名探偵と助手の出会いの大学時代を振り返ることになります。ミステリですので、詳細は読んでみてのお楽しみです。私自身の推理の謎解きのレベルは、本書のへっぽこ名探偵である志谷禄郎並みかそれ以下ですので、有能助手の和戸村丈が名探偵の志谷禄郎に出すヒントがとても有り難くて、その意味でスラスラと読み進めます。失礼ながら、そういったレベルの読者にも楽しめるミステリに仕上がっています。また、ついでながら、有能助手の和戸村丈は、謎解きに実際に取り組む探偵として有能なだけではなく、キチンと解決への伏線を文中にバラまいておく記述者のワトソン役としても有能だと私は感じました。ただ、そのヒントも含めて、推理のまっ最中に、へっぽこ名探偵と有能助手の両者の間のやり取りが冗長だと感じる読者もいるかもしれません。
次に、砂原浩太朗『藩邸差配役日日控』(文春文庫)を読みました。著者は、時代小説作家であり、私は『高瀬庄左衛門御留書』と『黛家の兄弟』を読みました。でも、葉室麟作品のような華やかさ、というか、エンタメ性に欠けた作品で、最近は読んでいませんでした。本書は単行本からすでに文庫本化されており、私はその文庫本を読みました。すでにシリーズ第2弾の『星月夜』も単行本で出版されています。本書は連作短編が5話収録されています。まず、本書の舞台は徳川期の江戸であり、主人公の里村五郎兵衛は、代々、神宮寺藩7万石の江戸藩邸の差配役を務めています。タイトル通りなわけです。主人公が常駐する上屋敷は本郷にあります。今の本郷にある東大キャンパスは、赤門が残っているように、その昔の加賀前田藩の上屋敷でしたので、場所柄は同じようなものです。ただし、主人公は常駐している上屋敷だけでなく、中屋敷や下屋敷にも出向くことがあります。差配役とは、今でいえば総務部総務課長のような役どころとされていて、藩邸内の「なんでも屋」と揶揄される時もあったりします。どういった働きをするかといえば、最初の短編「拐し」では、藩主の世子である亀千代ぎみがお忍びで上野の花見に出かけたところ、行方不明になってしまいます。江戸家老の大久保重右衛門からは「むりに見つけずともよいぞ」と言われてしまいますが、もちろん、里村五郎兵衛は副役の野田弥左衛門や下役の安西主税らとともに必死で探します。続いて、「黒い札」では、皿や椀などの奥向きの調度を納入する商人を選ぶ入札で不審があり、入札をやり直したりします。続いて、「滝夜叉」では、里村五郎兵衛が不在の折に副役の野田弥左衛門が口入屋から雇い入れた女中の滝夜叉こと、お滝をめぐる騒動が持ち上がります。続いて、「猫不知」では、藩主の正室であるお熙の方の愛猫の万寿丸が姿を消したため、差配役の里村五郎兵衛以下で屋敷の内外を探し回ります。このあたりから、江戸家老の大久保重右衛門と留守居役である岩本甚内の2人による藩内の派閥争いが激化し、お世継ぎを誰にするかを含めて、いかにも時代小説らしいお家騒動が始まります。最後の短編「秋江賦」は短編中でもっともボリュームがあり、病気で上府がかなわなかった藩主の和泉守正親が江戸にやって来て、お家騒動が決着します。5話の短編が強くリンクし、それぞれにさまざまな伏線がばらまかれていて、最後にそれらが回収されます。とてもよい構成の時代小説でした。でも、繰返しになりますが、葉室作品のようなエンタメ性には欠けます。エンタメ性には欠けると言っているものの、私は本シリーズの次作も読みたがるような気がします。強くします。
2026年5月 8日 (金)
景気の底堅さを示す4月の米国雇用統計
日本時間の今夜、米国労働省から4月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は、3月統計の+185千人増から4月統計では+115千人増となり、失業率は3月から横ばいの4.3%を記録しています。まず、CNNのサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
The US economy added a better-than-expected total of 115,000 jobs in April
The US economy added a stronger-than-expected 115,000 jobs last month and the unemployment rate stayed at 4.3%, an indication of resilience at a time when war and high gas prices loom large.
April's employment gains mark an expected retreat from March, when a revised 185,000 jobs were created, boosted by factors such as the end of large labor strikes as well as favorable weather, according to Bureau of Labor Statistics data released Friday.
However, the job growth seen last month was much stronger than the 65,000 that economists had estimated. No change in the unemployment rate was anticipated.
It's the first month of back-to-back job gains in more than a year, as uncertainty and other factors have rattled the labor market. The monthly payroll numbers have been especially volatile through the first part of this year - in part due to weather, labor strikes and methodological changes.
When smoothing out that volatility, monthly job gains are running at a three-month average of 48,000.
While the war in the Middle East wasn't expected to negatively affect April's employment numbers, it still presents a risk: The health of the US labor market and the broader economy could be negatively affected if gas prices stay persistently high and cut into consumer spending, raise business costs, as well as trickle into higher prices for other goods and services.
Hiring decisions take a few months to come to fruition, and consumers have yet to significantly cut back because of high gas prices, but that could change if their earnings are eaten away by inflation.
In April, average hourly earnings rose 0.2% to put the annual rate of pay gains at 3.6%, landing it above inflation - for now.
The April Consumer Price Index, the most widely used inflation gauge, is expected to show that the annual rate of inflation accelerated to 3.9% from 3.3% in March, FactSet consensus estimates show.
Stock futures were higher after the data release. Dow futures were up 230 points, or 0.46%. S&P 500 futures 0.6%, and futures tied to the Nasdaq 100 were up 0.9%.
注目の経済指標ですので長くなりましたが、よく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは2020年2月を米国景気の山、2020年4月を谷、とそれぞれ認定しています。ともかく、2020年4月からの雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたのですが、それでもまだ判りにくさが残っています。その上、米国連邦政府のシャットダウンにより、2025年10月の失業率は公表されていません。よ~く見ると、下のパネルの失業率がその部分が欠損値になっているのが見て取れます。

米国の雇用は非農業部門雇用者の増加については、引用した記事のタイトルにも現れているように、市場の事前コンセンサスを上回り、米国景気の底堅さを示す結果となりました。失業率も4%台前半から半ばを続けています。米国労働省の労働統計局(BLS)のヘッドラインではは "Payroll employment edges up by 115,000 in April; unemployment rate unchanged at 4.3%" と評価しています。グラフはお示ししませんが、平均時給は前年比+3.6%と市場の事前コンセンサスは下回りましたが、3月の+3.5%より上昇率は加速しています。3月の消費者物価指数のヘッドライン上昇率が+3.3%であったことも考え合わせると、雇用はまだ堅調でインフレ圧力も残っている、と考えるべきです。もちろん、中東情勢がきわめて不透明で、石油価格の上昇がさらに進むかもしれませんし、逆に、企業マインドが悪化して雇用の減少につながる可能性も残されています。
米国連邦準備制度理事会(FED)は2025年中に175ベーシスの利下げを実行していますが、4月28-29日の連邦公開市場委員会(FOMC)では金利が据え置かれています。米国とイスラエルによるイラン攻撃に端を発する中東情勢の緊迫化は、石油価格の上昇を通じて明らかにインフレ圧力を高める可能性が高い一方で、経済活動には下押し圧力をもたらすと考えられます。雇用と物価のデュアルマンデートを背負う米国連邦準備制度理事会(FED)は難しい金融政策の舵取りを担うことになります。
3か月連続で実質賃金が上昇した3月の毎月勤労統計
本日、厚生労働省から3月の毎月勤労統計が公表されています。統計のヘッドラインを見ると、賃金指数について季節調整していない原系列で見て、名目の現金給与総額は31万7254円と前年同月比+2.7%増となり、消費者物価上昇率を上回ったため実質賃金は前年同月比で+1.0%増と、3か月連続のプラスを記録していますまず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから報道を引用すると以下の通りです。
3月の実質賃金1%増、3カ月連続プラス 減税・補助でエネ価格抑制
厚生労働省が8日発表した3月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比で1.0%増えた。プラスは3カ月連続。減税や補助金などによる政府のエネルギー価格の抑制策が効いた。
名目賃金を示す1人当たりの現金給与総額は31万7254円と2.7%増えた。基本給に当たる所定内給与が27万1313円と3.2%増えた。3%以上の伸び率が3カ月続くのは1992年10月以来となる。2025年の春季労使交渉による賃上げや最低賃金の引き上げが広がっている。
実質賃金の計算に使う3月の消費者物価指数(持ち家の家賃換算分を除く総合)の上昇率は1.6%だった。エネルギー価格が前年同月比5.7%下がり、指数を押し下げた。25年末にガソリン税の旧暫定税率が廃止され、26年1月には電気・ガス代の補助も再開されるなど政府の政策が物価を抑え込んでいる。
総実労働時間は132.7時間と横ばいだった。就業形態別では一般労働者が0.8%増の158.9時間、パートタイム労働者が2%減の76.9時間だった。
厚労省は25年3月分から実質賃金の算出に消費者物価の総合指数を使う新方式を導入した。新方式による3月の実質賃金は1.3%増と、従来方式よりも0.3ポイント高くなっている。
いつもの通り、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、毎月勤労統計のグラフは下の通りです。上のパネルは名目及び実質の賃金上昇率の前年同月比であり、下は景気に敏感な製造業における所定外労働時間指数の推移です。いずれも影をつけた期間は景気後退期です。

まず、賃金については、3か月連続の前年同月比プラスというのは、そもそも、現金給与総額が前年同月比で+2.7%増となった上に、帰属家賃を除く消費者物価上昇率が+1.6%にとどまったことに起因します。さらに、よりくわしく、賞与と3か月を超える通勤手当の変動の大きな部分を除いた「きまって支給する給与」と「所定内給与」を見ると、名目の現金給与指数で見て、「きまって支給する給与」が+3.0%増、「所定内給与」も+3.2%増となっています。逆に、賞与と3か月を超える通勤手当の合計である「特別に支払われた給与」が▲1.5%減と落ちています。最近時点での消費者物価指数(CPI)の前年同月比で見たインフレ率が+2%を下回っていますので、賃金上昇がようやくインフレを上回る状態になった、ということが出来ます。要するに、業績見合いのボーナスではなく、経済学的にいう恒常所得に近い概念の「きまって支給する給与」や「所定内給与」がようやくプラスになった、ということが出来ますので、この恒常所得の伸びは消費の増加に直結することが期待されます。
なお、理由は定かではありませんが、引用した記事の最後のパラにあるように、厚生労働省では実質賃金の算定に新しい方式を取り入れています。すなわち、従来は帰属家賃を除く消費者物価指数(CPI)の上昇率で実質化していたところ、2025年3月から帰属家賃を除かないヘッドラインCPIの上昇率で実質化する系列も公表を始めています。私の方で厚生労働省の記者発表資料を見たところ、ヘッドラインCPIの上昇率のほうが低いようなので、実質賃金上昇率が高く出るような印象を受けました。まあ、グッドハートの法則(Goodhart's Law)でいうように、実質賃金が目標になると適切な目標ではなくなり、逆に、それを何らかの意味で飾るような傾向が出るのかもしれません。
2026年5月 7日 (木)
ICE による不法移民取締りは米国生まれ労働者にメリットあったのか?
全米経済研究所(NBER)から "Labor Market Impacts of ICE Activity in Trump 2.0" と題するワーキングペーパーが明らかにされています。第2期目の米国トランプ政権で移民・税関捜査局=ICE: Immigration and Customs Enforcement による不法移民 undocumented immigrants 取締りが米国雇用にどのように影響を及ぼしたかを分析しています。まず、論文の引用情報は次の通りです。
続いて、NBERのサイトから論文のABSTRACTを引用すると次の通りです。
ABSTRACT
We provide the first causal, national empirical analysis of the labor market impacts of heightened immigration enforcement during the second Trump administration. Enforcement increased everywhere, but, we take advantage of the fact that the increases have been uneven across geographic areas to classify areas as treated or control and then implement an event study and difference-in-differences design. Areas that experienced particularly large increases in the number of arrests also experienced a decrease in work among likely undocumented immigrants who remain in the U.S., compared to areas with smaller increases in arrests. We find no evidence of positive spillover effects to U.S.-born workers and U.S.-born workers who work in immigrant-heavy sectors are harmed.
要するに、地域と業種での分析結果が明らかにされています。ICEによる逮捕者が多い地域で、米国生まれ労働者 U.S.-born workers へのポジな波及効果は見られなかった一方で、移民が多く働く業種 immigrant-heavy sectors でも、悪影響をこうむっている harmed ことが計量的な分析で明らかとなっています。ワーキングペーパーから米国生まれ労働者へのポジな影響がないとする Figure 7: Event Study Estimates on U.S.-Born Labor Market Outcomes in Likely Affected Sectors を引用すると次の通りです。
結論 Conclusion として、ICEの大量逮捕は不法移民と米国生まれ労働者の補完性を失わせることにより、米国生まれ労働者の不利益となっている可能性 If anything these U.S.-born workers are harmed as a result, likely due to complementarities in production between the different jobs undocumented immigrants and U.S.-born workers typically take. を示唆しています。
最後に、日本について考えるたいと思います。繰返しになりますが、米国では、労働供給のサイドから不法移民が米国に入り込んできて米国生まれ労働者の職を奪う=代替する、という考えが本論文では否定されています。むしろ、不法移民と米国生まれ労働者は補完的であり、不法移民がいなくなれば、米国生まれ労働者に不利益になる、という結論です。日本では、外国人労働者は勝手に入り込んでくる不法移民ではなく、日本にある企業から需要された労働力です。ですから、直感的には米国よりも日本の方がより現地生まれ労働者との補完性が強いんではないか、と私は想像します。ですから、外国人労働者がいなくなれば、逆に、日本人労働者のデメリットが大きくなる可能性が高い、と考えるべきです。
2026年5月 6日 (水)
高橋遥人投手がわずか2安打で3試合連続完封
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| 阪 神 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 2 | 7 | 0 | |
| 中 日 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 |
【神】 高橋 - 伏見
【中】 高橋宏、齋藤 - 石伊
高橋遥人投手3連続完封でした。前回の完封は3安打でしたから、次は1安打で、次の次はノーヒットノーランかもしれません。
阪神球団60年ぶりの3連続完封ですから、神がかりといえます。マウンドではピンチらしいピンチもなく、最後のインタビューだけがピンチだったのかもしれません。得点は、打った瞬間の高寺選手のツーランだけでしたが、十分お釣りが来るほどでした。ベンチの采配も最後の最後にレフトに守備固めを出すだけで、ただただ高橋投手のピッチングを見守るだけでした。ゴールデンウィーク9連戦もこれで5勝4敗の勝越しで終えました。
次の横浜戦も、
がんばれタイガース!
2026年5月 5日 (火)
2026年5月 4日 (月)
2026年5月 3日 (日)
2026年5月 2日 (土)
クリンナップの打棒爆発してジャイアンツに快勝
| 一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
| 読 売 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 4 | 5 | 7 | 0 | |
| 阪 神 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 4 | 1 | x | 7 | 16 | 1 |
【読】 又木、石川、ルシアーノ - 岸田
【神】 大竹、桐敷、モレッタ、ドリス - 伏見
クリンナップの打棒爆発でジャイアンツに快勝でした。
先発大竹投手が7回1失点と好投し、9回のモレッタ投手が2発被弾しましたが、危なげない勝利でした。ただ、相変わらず、1-2番が機能していません。ですので、クリンナップがチャンスを作って、クリンナップで返す、という形になっています。佐藤輝選手の打棒がものすごい上に、前後を打つ森下選手、大山選手ともども得点力はまだまだありますが、1番岡城、2番福島は、これから考えどころです。小幡選手の調子がいいのであれば、1-2番のどこかに入れることもあり得るのではないでしょうか。最後に、ドリス投手NPB100セーブおめでとう。でも、ドリス投手よりもモレッタ投手の方が、私にはスペイン語が判りやすかったりします。
明日も、
がんばれタイガース!
今週の読書はいろいろ読んで計6冊
今週の読書感想文は以下の通りです。
まず、アンガス・ディートン『格差の国の経済学』(みすず書房)では、主流派である米国の経済学や経済学者=エコノミストについて、英国出身の著者なりの見方を示していて、効用ないし幸福度を考える際に、金銭へ固執してきた点を批判し、不平等の問題についても教育や健康まで幅広く考えています。情報処理演習教材作成委員会[編]『経済系のデータサイエンス』(学術図書出版社)では、立命館大学経済学部の教授陣が、Excel操作から始まって、データ分析の基礎として時系列データと横断面データを学び、さらに寄与度分析などを大学新入生向けに解説しています。読売新聞大阪本社取材班『絶望の凶弾』(中央公論新社)は、2022年7月8日の参議院選挙のさなかに、安倍晋三元総理が奈良で暗殺された事件から、その銃撃犯である山上徹也に対して奈良地裁が求刑通りの無期懲役の判決を下すまでの1294日の取材結果を取りまとめています。藤崎翔『お梅は魔法少女ごと呪いたい』(祥伝社文庫)は、戦国時代の呪いの人形であるお梅のシリーズ第3作であり、「ハッピー魔法少女イライザ」なる昭和45年に作られた西洋人っぽい外観の人形と出会いますが、相変わらず、人を不幸にするのではなく幸福をもたらしています。葉室麟『峠しぐれ』(文春文庫)は、徳川期の藩境にある峠の茶屋を部隊に、武芸の達人である半平と峠の弁天様と称される志乃の夫婦を軸に、さまざまな人間模様が描かれ、最後に、夫婦2人の謎が明らかにされます。個性的かつ魅力あふれるキャラクターが多数登場しエンタメ性に富んでいます。織守きょうや『キスに煙』(文春文庫)は、フィギュアスケート界を舞台に、ややBL小説的な展開を見せています。ミステリではありませんし、ラストにサプライズがあるかどうかは、読んでみてのお楽しみです。ただ、ちょっと拍子抜けかも。
今年2026年の新刊書読書は、1~4月に合わせて97冊、5月に入って今週の6冊を加えて合計103冊となります。これらの読書感想文については、できる限り、FacebookやX(昔のtwitter)、あるいは、mixi、mixi2などのSNSでシェアしたいと予定しています。また、学術論文や国際機関のリポートなどもSNSで適宜取り上げたいと予定しています。
まず、アンガス・ディートン『格差の国の経済学』(みすず書房)を読みました。著者は、英国生まれで、米国プリンストン大学公共・国際問題大学院シニア・スカラー、同大経済学・国際問題名誉教授であり、2015年にノーベル経済学賞を受賞してます。ご専門は、貧困、不平等、医療、経済開発となっています。もっとも最近のご著書では、奥様のアン・ケース教授との共著で『絶望死のアメリカ』を私は読みました。なお、本書の英語の原題は Economics in America であり、2023年の出版です。本書は、英語の原題の通り、米国の経済学について、英国生まれの著者なりに概観しています。すなわち、大雑把に言って、シカゴ学派に代表されるミクロ経済学については、効率性を重視する余り不平等を許容し、いわゆる経済力を持つ経済主体、個人や企業に有利な見方を提供しかねない点を強調しています。他方で、ケインズ卿に由来するマクロ経済学については期待感が示されている気がします。まあ、私自身がマクロエコノミストですので、勝手な見方かもしれません。本書は経済学や経済学者=エコノミスト、特に主流派中の主流派である米国の経済学や経済学者=エコノミストについて、英国出身の著者なりの見方を示していますが、いくつかのメッセージを読み取ることが出来ます。まず、主流派の経済学ないしエコノミストが、効用ないし幸福度を考える際に、金銭へ固執してきた点を批判しています。現在では経済学だけでなく、すべての基準が金銭換算されかねないわけで、例えば、何らかの損害賠償は金銭支払いで済ませる場合が少なくないですし、何らかの代替基準の必要はあるかもしれません。さらに、経済発展や狭い経済学の範囲にはこだわらず医療や健康問題への言及も豊富に収録されています。不平等の問題についても、金銭的な不平等だけでなく、教育や健康まで幅広い問題を考え、特に、サンデル教授が『実力も運のうち』で指摘している大卒者の持つ大きな特権も、サンデル教授と同じように批判しています。最後の方の8章から11章は経済学者の実態に焦点を当てています。さすがに、ノーベル賞受賞のエコノミストですので、私なんぞとはまったく違う世界を垣間見ることが出来ました。ノーベル賞の授賞式に孫まで含めて一家旅行できるなんて、また、時の大統領にホワイトハウスに招待されるなんて、ごくごく限られたエコノミストだけに与えられる特権なのだと思います。
次に、情報処理演習教材作成委員会[編]『経済系のデータサイエンス 第2版』(学術図書出版社)を読みました。著者は、聞き慣れない委員会に見えるのですが、本の奥付けや出版社のサイトを見れば担当章別の執筆者が4名上げられており、すべて立命館大学経済学部の教授となっています。はい。私の同僚です。私自身は授業を見ていないのでわからないのですが、たぶん、新入生に対する情報処理演習の授業のテキストなのではないか、と想像しています。5章構成であり、最初に第1章でExcelの基本操作などを習得した後、第2章でデータ分析の基礎として時系列データと横断面データを学び、第3章で寄与度分析、第4章でグラフや統計量でデータの特徴を捉え、最後の第5章で回帰分析を取り上げています。大学新入生向けのテキストですから、私が熱心に読む必要あるレベル感ではありませんが、それほどExcelに習熟していない向きには、大学新入生でなくても有益ではなかろうかと思います。ただし、私は新入生から1年を経過した2年生向けの授業で第3章までを復習させることにしています。本書に書いてある内容を「習っていない」と主張する2回生は少なくないのが実情です。たぶん、「習っていない」のではなく、「覚えていない」が正しいのではないかと私は想像しています。
次に、読売新聞大阪本社取材班『絶望の凶弾』(中央公論新社)を読みました。著者は、新聞社の取材班です。表紙を見ての通りで、2022年7月8日の参議院選挙のさなかに、安倍晋三元総理が奈良で暗殺された事件から、その銃撃犯である山上徹也に対して奈良地裁が求刑通りの無期懲役の判決を下すまでの1294日の取材結果を取りまとめています。山上徹也だけを追っていますが、管見の限り、この事件に関するもっとも信頼性の高いルポルタージュだと思います。旧統一協会の妄信的な信者出会った母親、自殺した父と兄、もっとも熱心な援助を寄せていた父の兄である伯父、などなど、山上徹也を取り巻く親族との関係を明らかにし、親族や働いていた会社の関係者などへの取材を通じて明らかになった山上徹也の実像が、決して十分とは言えないながらも、明らかにしようと試みています。ただ、まだ判決が確定したわけではないという意味で裁判が終わったわけではありませんし、旧統一協会の解散問題も決着していません。戦後初めての総理大臣経験者の暗殺という事件の全貌、特に、旧統一協会の闇の部分の真相解明はまったく不十分です。政界との関係も明らかにされていません。最後に、本筋から離れて事実関係ながら3点だけ示すと、まず第1に、銃撃された安倍元総理に最初に駆けつけた、というか、呼ばれたのは、私の高校の同級生です。薄々漏れ聞いてはいました。そして第2に、本書もそうですが、旧統一教会と表記されています。私は旧統一協会と表記するのが正しいと考えています。本書p.32でも言及されている通り、文鮮明によって1954年に設立されたのは世界基督教統一神霊協会でした。第3に、本書では、旧統一協会の政治部隊である勝共連合にまったく言及がありません。こういった点を含めて、本書の取材記録もそのまま鵜呑みにするのではなく、それなりに批判的な目でもって読まれるべき本である可能性を指摘しておきたいと思います。
次に、藤崎翔『お梅は魔法少女ごと呪いたい』(祥伝社文庫)を読みました。著者は、元芸人にして現在ではもっとも売れている小説家の1人ではないかと思います。本書は、お梅シリーズの第3弾です。かつては戦国大名の一族を滅亡させたほどの呪いの人形なのに、約500年ぶりの令和に復活してからはまったく呪いの人形らしくもなく、人々を幸せにしてばかりいるお梅が主人公のコメディです。この第3作目では「ハッピー魔法少女イライザ」なる昭和45年に作られた西洋人っぽい外観の人形と出会います。イライザはそれほど流行らなかったアニメに由来し、お梅と反対で、人に幸せをもたらすという設定なのですが、失敗続きでそれほど人の幸せには役立っていません。でも、お梅が羨むような瞬間移動=ワープなどの特殊能力を持っています。イライザと出会う「ぷろろをぐ」と意外な展開の「ゑぴろをぐ」を別にして、5話の連作短編から構成されており、いつも通り、実に緻密で素晴らしい出来のコメディに仕上がっています。収録順にあらすじは以下の通りです。まず、「孝行息子を呪いたい」では認知症で記憶が怪しくなった老婆、そして、老婆を世話する中年男性ごと呪おうとします。続いて、「さっかあ少年を呪いたい」では、弱小チームの補欠をしているサッカー少年の試合の場で、両チームの不和を増幅しようとします。続いて、「修学旅行を呪いたい」では、田舎の高校の修学旅行のタクシー研修の4人の友人なし高校生の不仲を拡大しようと試みます。続いて、「とっぷすたあを呪いたい」では、シンガーソングライターにして俳優としても超トップクラスの男性一家を呪おうとします。最後に、「理解不能男女を呪いたい」では、ホストに貢ぐために風俗嬢になった女性と相手のホストの不幸を願います。「修学旅行を呪いたい」を例外として、ほかの短編では完全な勧善懲悪のストーリーとなっています。冒頭で、「人々を幸せにしてばかりいる」と書きましたが、正確には悪人はこってりと罰せられます。イライザとのかけ合いはおもしろいのですが、まあ、お梅単独でもいいかな、という気はします。「ゑぴろをぐ」の最後の最後に、本シリーズの今後の方向性に言及されていますが、実現するかどうかは、というか、作者に実現させようという意欲があるかどうかは不明です。
次に、葉室麟『峠しぐれ』(文春文庫)を読みました。著者は、時代小説家であり、2017年に亡くなっています。少し前に読んだ『蛍草』もそうでしたが、この作品も個性的かつ魅力あふれるキャラクターが多数登場しエンタメ性に富んでいます。本書は、双葉社から単行本で出版され、双葉文庫で1次文庫化された後、2024年に文春文庫で再文庫化されていて、私は文春文庫で読みました。時代は徳川期であり、岡野藩と結城藩の藩の境あたりの岡野藩側にある峠の茶屋が部隊となります。主人公は半平と志乃の夫婦です。半平は40過ぎで、峠の茶屋で町人に身をやつしながら、時代小説のチートスキルである武芸の達人です。志乃は30代半ばで峠の弁天様と称される美人です。その峠の茶屋に隣国の結城藩から味噌問屋がうまくいかずに夜逃げしてきた吉兵衛一家をはじめ、殺人も厭わぬ女盗賊が首領となっている盗賊団、半平に倅の剣の指南を乞う役人、そしてもちろん、時代小説の最大のテーマであるお家騒動などなど、最後に、半平と志乃の夫婦の深い闇のような秘密が解き明かされます。正義とはなにか、親子の情の重要性、そういった葉室流の時代小説の真髄が楽しめます。
次に、織守きょうや『キスに煙』(文春文庫)を読みました。著者は、エンタメ作家で、私は何冊かこの作家のミステリ作品を読んでいます。読んだうちで一番いい出来だったのは明らかに『花束は毒』で、本書の宣伝文句でも『花束は毒』と同じ作者である点が強調されている気がします。でも、本作品はミステリではありません。どちらかといえばBL小説と見なす読者が多そうな気がします。はい、深入りはしません。本作品の主人公は、たぶん、塩澤と志藤の2人の男性フィギュアスケート選手だろうと思います。ただ、塩澤はすでに引退し服飾デザイナーとして活躍しています。志藤もこの作品の進行中にフィギュアからアイスダンスに転向します。ペアの女性は実の姉だったりします。そういった折に、2人の先輩フィギュアスケート選手で、今は引退して日本でコーチをしていたミラーが自宅のバルコニーから転落死します。4部構成なのですが、基本、神の視点、というか、主人公ではない第3者の視点から描写されます。ただ、視点を提供するわけではないものの、最初が塩澤、2部が志藤、3部がもう一度塩澤、そして、4部がミラーを中心としたストーリー展開です。ただし、プロの小説家にしては文章がそれほどうまくなくて、読者によっては混乱する部分もあります。まあ、私の読み方が悪いだけかもしれません。それから、この作者のことですから、ラストに大きなサプライズがあるかという気がして読み進んだのですが、まあ、そのあたりは読んでみてのお楽しみです。読んでみてのお楽しみなのですが、全体的に、本書の出来は『花束は毒』よりは大きく落ちます。それほど期待すべきではありません。ただ、繰返しになりますが、BLファンであれば平均的な読者よりも高く評価する可能性はあります。
2026年5月 1日 (金)
村上投手がジャイアンツに打ち込まれて負ける
| 一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | R | H | E | ||
| 読 売 | 0 | 2 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | 7 | 0 | |
| 阪 神 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 3 | 10 | 0 |
【読】 田中将、船迫、高天瑛、田和、高梨、マルティネス - 大城
【神】 村上、湯浅、及川、工藤、津田 - 坂本、伏見
ジャイアンツ打線に村上投手が打たれて敗戦でした。
村上投手が2回3回と計5失点です。タイガース打線も10安打とよく打ったのですが、6回と8回の決定的なチャンスで押出フォらボールの1点にとどまりました。トップバッターに抜擢した岡城外野手には6回に代打を送った一方で、福島外野手には代打を送りませんでした。結果、4回、6回、8回と福島選手でイニングを終えることになり、その次の5回、7回、9回には3番の森下選手が先頭打者になってしまう形で、1-2番が機能せず打線が切れる結果となっています。昨夜は2番に入っった岡城選手がよく打って打線がつながって大量点を上げたのと対象的でした。
明日は、
がんばれタイガース!
全京都統一メーデーに参加する
今日は、5月1日メーデーです。私は二条城前広場の全京都統一メーデーに参加し、京都市役所までのコースを立命館大学の仲間らとともにデモ行進してきました。従来から何度も主張しているように、ここ数年に渡って物価上昇に追いつかない賃上げしか実現できず、したがって、労働分配率が低下を続けています。ですので、企業の利潤を削減することにより、物価上昇を引き起こすことのない賃上げは十分可能だと考えられます。そういった労働側の春闘要求が出ないのは、とっても不思議です。




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