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2026年5月14日 (木)

信頼性高い統計はどれくらいの価値があるのか?

全米経済研究所(NBER)から "The Value of Reliable Statistics" と題するワーキングペーパーが明らかにされています。米国のトランプ大統領が昨年2025年8月に米国労働省の労働統計局(BLS)の責任者(Commissioner)を解任(fire)した際に観測された不確実性の高まりがマクロ経済に及ぼす影響を計測しています。まず、論文の引用情報は次の通りです。

続いて、NBERのサイトからABSTRACTを引用すると次の通りです。

ABSTRACT
On August 1, 2025, President Trump fired the head of the U.S. Bureau of Labor Statistics (BLS) and claimed that the agency's data were "rigged." In the aftermath, measures of economic policy uncertainty rose sharply, consistent with the idea that reduced trust in official data increases uncertainty for investors, businesses, and households. We use an event-study design to estimate the effect of the firing on policy uncertainty, and then map that increase in uncertainty into implied macroeconomic outcomes. This yields a back-of-the-envelope estimate of the marginal value of public trust in official statistics. Our baseline estimate implies that preserving trust in the integrity and quality of official statistics generates economic benefits of about $25 for every $1 spent on the agency's budget.

まず最初に、論文では、トランプ政権から米国労働統計局(BLS)が無能であったり、データ操作がなされているという根拠はまったく示されていない "No evidence of incompetence or manipulated data at BLS has ever been presented by the Trump administration." 点が強調されています。ただし、この解任がいくつかの方法で不確実性を高めたと指摘し、具体的には3点上げています。第1に、トランプ政権の主張が直接に米国労働統計局(BLS)の統計のデータに対する客観性や正確性への疑問 "doubt on the objectivity and accuracy" に及ぼす影響です。これはトランプ政権への信頼が高い場合ですが、逆に、Commissioner解任前の米国労働統計局(BLS)への信頼の方が高い場合には以下の2点があると指摘しています。すなわち、第2に、信用できない責任者(Commissioner)が就任する可能性、さらに、第3に、米国労働統計局(BLS)が混乱を来たしてデータの品質が低下する "face turmoil going forward that could degrade data quality" 可能性です。論文では、トランプ政権への信頼が高くて不確実性が高まるのか、あるいは、米国労働統計局(BLS)への信頼が高くて不確実性が高まるのか、については特段の評価を下していませんが、結果として、引用したABSTRACTにあるように、統計の信頼性は米国労働統計局(BLS)の予算1ドルに対して約25ドルの価値があると結論しています。

photo

上のテーブルは、論文から Table 3. Estimated Economic Impacts of the Increase in Economic Policy Uncertainty Resulting from Erika McEntarfer's Firing を引用しています。Panel C. の -$19.30 をハイライトしたのは引用者です。論文 p.18 にはBLSの予算が704百万ドル "The BLS budget for FY2025 was $704 million" であるとされており、ベースラインの▲19.3十億ドルを分子にして、BLSの予算額の704百万ドルで除すと、BLSの予算額のの予算1ドル当たり27.4ドル、という結果が出ますが、論文では丸めて25ドル、すなわち、米国労働統計局(BLS)のデータの質と信頼性に対する信頼が限界的に低下することにより、米国労働統計局(BLS)への政府の直接的な支出1ドル当たり約25ドルの損失となる "the marginal erosion in public trust in the quality and integrity of BLS data cost the nation about $25 for every $1 of direct government spending on the agency." との結論を導いています。

私は日本の総務省統計局の消費統計の責任者=課長を務めましたが、正確な統計の重要性を改めて認識した気がします。ただ、すべてを金額に換算するのは少し抵抗もあります。その点は付け加えておきます。

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