石油輸入が激減した4月の貿易統計とならせば持ち直しが続く3月の機械受注
本日、財務省から4月の貿易統計が、また、内閣府から3月の機械受注が、それぞれ公表されています。統計のヘッドラインについて、貿易統計では季節調整していない原系列で見て、輸出額が前年同月比+14.8%増の10兆10兆5073億円に対して、輸入額は+9.7%増の10兆2054億円、差引き貿易収支は+3019億円の黒字を計上しています。機械受注では、民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月から▲9.4%増の1兆109億円と、2か月ぶりの前月比減を記録しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
貿易黒字、4月は3019億円 中東からの原油輸入量は67%減
財務省が21日発表した4月の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は3019億円の黒字となった。黒字は3カ月連続。前年同月は1495億円の赤字だった。半導体などの電子部品や非鉄金属の輸出が伸び、黒字を維持した。
輸出額は10兆5073億円で前年同月と比べて14.8%増えた。増加は8カ月連続。中国向けの半導体などの電子部品やボイラーなどの原動機の伸びが支えた。
輸入額は10兆2054億円で9.7%増だった。アジアからの半導体などの電子部品や、韓国からの灯油などの石油製品の輸入が増えた。
中東情勢の悪化を受け、原油の輸入量は急減した。日本が多くを依存してきた中東からの輸入量は384万キロリットルと前年同月比で67.2%減となった。この数量は比較できる1979年以降の単月で最も少なくなった。金額は3832億円と55.5%減少した。
世界全体で見ても、原油の輸入量は448万キロリットルで63.7%減だった。こちらも79年以降の過去最少となった。金額は4542億円と49.9%減った。減少は15カ月ぶり。
一方、米国などからの原油の代替調達が進んだ。米国からの輸入量は45万キロリットルと38.8%増加した。ナフサ(粗製ガソリン)については27万キロリットルで206倍となった。
機械受注の1~3月6.4%増、2四半期連続プラス 3月単月は9.4%減
内閣府が21日発表した機械受注統計によると、設備投資の先行指標とされる民需(船舶・電力除く、季節調整済み)は1~3月期に3兆1092億円と前期比で6.4%増えた。2四半期連続のプラスとなった。
製造業は10.0%増だった。化学機械や合成樹脂加工機械などの化学工業のほか、造船業、運搬機械などの汎用・生産用機械の受注が押し上げた。
非製造業は6.2%増だった。電子計算機器を含む情報サービス業や金融・保険業からの受注がプラスに寄与した。不動産業も堅調だった。
3月単月は1兆109億円で前月比で9.4%減少した。2カ月ぶりにマイナスに転じた。2月に大型の受注案件があった反動減が要因だという。製造業、非製造業ともに減少した。
内閣府は中東混乱による原油の調達難などの影響は明確には読み取れないとして、3月の基調判断を「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。
4~6月期の受注見通しについては3月末時点で前期比0.3%増となった。製造業が0.9%減、非製造業が1.9%増だった。
民需以外も含めた2025年度の受注総額は41兆3704億円だった。前年度を11.4%上回り、比較可能な05年度以降で過去最大となった。
包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

まず、引用した記事にはありませんが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、+300億円くらいの小幅な貿易黒字が見込まれていましたので、実績の+3019億円の黒字はやや上振れした印象です。ただし、統計をよく見ると、引用した記事にもあるように、中東からの石油などについては、十分な輸入ができなかったために黒字が大きくなっている可能性があります。また、季節調整済みの系列で見ると、貿易収支は1月黒字、2月赤字から3-4月は黒字を計上しており、4月の貿易収支は+2364億円の黒字となっています。いずれにせよ、私の主張は従来から変わりなく、輸入は国内の生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易収支や経常収支の赤字と黒字は何ら悲観も楽観もする必要はない、逆に、4月の貿易統計のように、十分な輸入ができていないために貿易収支が黒字になっているとすれば、むしろ、日本経済には望ましくない可能性が高い、と考えています。固定為替相場制度を取っていた1950-60年代の高度成長期のように、「国際収支の天井」を意識した政策運営は、現在の変動為替制度の下ではまったく必要なく、比較優位に基づいた貿易が実行されればいいのですが、地政学リスクにより比較優位に基づく貿易が現時点では阻害されている可能性が否定できない、と考えています。すなわち、米国とイスラエルによるイラン攻撃に端を発する石油輸入の量と価格の動向が大きな問題と考えるべきです。先行きの見通しが不透明であれば、家計の消費というよりも、企業の設備投資活動がある程度抑制される可能性が否定できません。
本日公表された4月の貿易統計について、季節調整していない原系列の前年同月比により主要品目別に少し詳しく見ておくと、まず、輸入については、もっとも注目されている原油及び粗油がキロリットルの数量ベースで▲63.7%減、金額ベースでも▲49.9%減となっています。特に、中東からの原油及び粗油の輸入は、数量ベースで前年同月から▲67.2%減となっています。果たして、ここまで原油及び粗油の輸入量が減少して、日本経済が短期的に活動水準を維持できるのだろうか、という疑問が残るくらいの減り方だと私は考えています。さらに、エネルギーに次いで注目されている食料品は金額ベースで+2.7%増となっています。原料品のうちの非鉄金属鉱は重量ベースで+7.9%増ながら、商品市況の高騰により金額ベースでは+39.9%増を記録しています。輸出に目を転ずると、輸送用機器のうちの自動車が台数ベースで▲3.1%減、金額ベースでは+3.5%増となっています。ただし、米国向けの自動車輸出について、さらに詳しく見ると、数量ベースで▲7.0%減、金額ベースで▲2.3%減となっており、引き続き、トランプ関税による影響が少しずつ現れ始めている可能性があります。自動車を別にすれば、電気機器は金額ベースで+28.6%増、一般機械も+12.5%増となっています。

まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前月比▲10.4%減が見込まれていましたので、実績の▲9.4%減は、一見大きな減少に見えますが、市場予想を上回っている点は忘れるべきではありません。前月の2月の前月比が+13.6%に達していましたし、1~3月期は3兆1092億円と前期比で+6.4%増、4~6月期見通しも+0.3%増と見込まれていますので、統計作成官庁である内閣府では、基調判断を「持ち直しの動きがみられる」と据え置いています。業種別に前月比で見て、前月2月に+30.7%増と大きく伸びた製造業が反動もあって▲14.2%減、他方、非製造業では▲6.0%減でした。
日銀短観などで示されたソフトデータの投資計画が着実な増加の方向を見込んでいる一方で、機械受注やGDPなどのハードデータで設備投資が増加していないという不整合があり、現時点ではまだ完全には解消されているわけではないと私は考えています。人手不足は見込み得る範囲の近い将来にはまだ続くことが軽く予想されますし、DXやGXに向けた投資が盛り上がらないというのは、低迷する日本経済を象徴しているとはいえ、大きな懸念材料のひとつです。かつて、途上国では機械化が進まないのは人件費が安いからであるという議論が広く見受けられましたが、日本もそうなってしまう可能性が否定できません。設備投資の今後の伸びを期待したいところですが、先行きについては決して楽観はできません。特に、日銀が金利の追加引上げにご熱心で、市場における積極財政の評価もあって、長期金利はかなり高い水準にまで上昇しています。本日終了した日銀金融政策決定会合で政策金利は据え置かれたとはいえ、為替への影響を別にしても、金利に敏感な設備投資には悪影響を及ぼすことは明らかです。米国とイスラエルによるイラン攻撃をはじめ、地政学的なリスクも不透明ですし、どう考えても、先行きについてリスクは下方に厚いと考えるべきです。
| 固定リンク


コメント