紀要論文「人工知能(AI)技術は規制が必要か、それとも自由な開発か?」を書き上げる
先週、今夏の夏休みの研究課題である紀要論文「人工知能(AI)技術は規制が必要か、それとも自由な開発か?」を書き上げ、紀要の編集担当者に送っておきました。9月に『立命館経済学』収録論文として公刊される予定です。まず、要旨を引用すると次の通りです。
人工知能(AI)の技術がここ数年で大きく進歩している。分野によっては人間の知的能力・認知能力を超えているとすら考えられている。このAIの活用により生産性が引き上げられ、企業業績が改善するとの期待から、米国だけでなく日本でも株価が上昇している。本論文では、このAI技術が経済に及ぼすインパクトについていくつかの研究成果をサーベイしている。その上で、AIに対する規制の必要性を論じている。まず、AI技術の前提として、ディープラーニングについて簡単に振り返り、さらに、人間の認知能力がどのように決まるかに関する簡単なモデル研究を概観する。この際、人類が歴史的に獲得した知性の分析とともに、人間個々人が幼少期から認知能力を向上させる理論モデルについての双方を取り上げる。続いて、人間の認知能力がAIの使用からどのような影響を受けるかについてアセモグルらによる議論(Acemoglu et al., 2026a)ほかをサーベイする。AIの活用が人間の知性に潜在的に及ぼす否定的結論が導かれている。ただし、AIの活用が生産性に及ぼす好影響の研究成果も多くあり定量的な研究をサーベイし、ほぼすべての研究は多かれ少なかれAIは生産性を向上させるインパクトを持っていると結論している。最後に、これらのAIの否定的・肯定的な両方のインパクトを総括し、AI規制の必要性を考える。
第1章の導入部で現時点におけるAIの能力について考えた後、第2章では、本論に入る前に、AI開発の歴史とともに、ディープラーニングなどの技術的な側面を簡単に振り返っています。さらに、第3章では、人間の認知能力がどのように決まるかに関する簡単なモデル研究を概観しています。この際、ホモサピエンス誕生以来の人類が歴史的に獲得した知性のモデル分析とともに、人間個々人が幼少期から認知能力を向上させるモデルについての双方を既存研究をサーベイをしています。本論に入って、第4章では、そういった人間の認知能力がAIの使用からどのような影響を受けるかについてアセモグルらによる分析結果ほかをサーベイして、AIの活用が人間の知性に及ぼす潜在的ながら否定的な結論を導いています。第5章では、AIが経済にもたらすポジティブな面として、AIの活用が生産性に及ぼす影響について既存研究をサーベイし、ほぼすべての研究は多かれ少なかれAIは生産性を向上させるインパクトを持っていると結論しています。最後に第6章で、これらのAIの否定的な影響と肯定的なインパクトを総括するとともに、残された課題を整理し、本稿を簡単に締めくくっています。
おそらく、AIの開発を自由に行えば、十分なイノベーションの利益が得られることと思います。他方で、AIに対する必要な規制とイノベーションの利益の享受は、おそらくトレードオフの関係にあると考えられます。私はAIのリスクに対応するために、何らかの規制の必要性をこの論文で示したつもりです。ただ、私はエコノミストですので、雇用も含めた経済的なリスクしか考慮に入れていません。論文の最後でも示しましたが、実は、AIの最大のリスクのひとつは軍事利用です。それは今後の研究課題として残っています。
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