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2026年8月 4日 (火)

データ経済の新しいモデル

データ経済の新しいモデルを考える論文 "A Model of the Data Economy" を読みました。この論文では、「データ」について、生産活動の副産物ではなく、企業が生成し、蓄積し、活用し、さらには、売買する無形資産(intangible asset)として明示的に組み込んだ一般均衡モデルを示しています。まず、論文の引用情報は次の通りです。

続いて、ジャーナルのサイトから論文のAbstractを引用すると次の通りです。

Abstract
In a data economy, transactions of goods and services generate data, which is stored, traded and depreciates. How are the economics of this economy different from traditional production economies? How do these differences matter for measurement of GDP, firm values, depreciation rates, welfare and externalities? We incorporate active experimentation and data as an intangible asset to devise a tractable recursive representation of the data economy. The model rationalizes why apps are often “free” and why even non-digital economic activity might be greater than GDP suggests. Calibrating the model using a combination of macroeconomic and financial moments suggests that the mis-measurement in U.S. GDP due to missing value of data has been as high as 6% in 2018.

繰返しになりますが、本論文では、データを単なる生産活動に付随する副産物ではなく、企業がその目的で生成し、蓄積・活用し、さらには、売買までする無形資産(intangible asset)として扱い、そういった属性を有するデータを明示的に組み込んだ一般均衡モデルを提示しています。従来の経済モデルでは、生産活動は財・サービスを作り出して終了しますが、この論文で示されているモデルでは、生産された財・サービスの取引そのものが新たなデータを生み、そのデータが将来の生産性向上やAIなどの性能改善につながるという循環構造を導入しています。データは蓄積される一方で陳腐化(depreciation)し、企業はデータ獲得のために積極的な実験(active experimentation)を行います。この枠組みにより、データ経済では短期的に収益が低くてもデータ資産の形成、すなわち、データの蓄積によって企業価値が高まる点が強調されます。同時に、アプリが無料提供されること、GDPには計上されないデータ間での物々交換(data barter)が存在すること、などが示されています。この一般均衡モデルによる知識のフローと蓄積をもっともよく示しているのが Figure 1 であり、ジャーナルのサイトから引用すると次の通りです。

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直感的に理解できることと思いますが、Figure 1 は、企業におけるデータの流入と流出の動態を示しています。データの生産量は、データの流出線よりも上方に位置することもあれば、下方に位置することもあります。実線で示されたデータの流入と破線のデータの生産との差は影がつけられており、データの購入に相当します。こうした購入は流入線を上方へ押し上げ、収束を加速させる要因となります。長期的な均衡点は青いドットで示されています。
さらに、論文では、米国データに基づくキャリブレーションでは、GDPはデータ資産の価値を十分に反映しておらず、2018年には実際の経済価値を約6%過小評価していた可能性を指摘しています。論文では、AI時代のデータ駆動型経済を分析するには、設備投資や人的資本だけでなく、データ蓄積を新たな資本として扱う理論が不可欠であると結論付けています。

最後に、どうしてアプリが無料で提供されるのか、についても論文では回答を示しています。すなわち、アプリを販売して利益を上げるよりも、無料アプリを配布して利用者を拡大する方がより大きな収益につながるから、ということです。なぜなら、無料アプリを利用する多くのユーザから行動履歴、検索履歴、位置情報、購買履歴、AI学習データなどを収集することが可能となり、それらを用いて、AIの精度向上、広告のクリック率向上、リコメンデーションの精度向上などにつなげることが出来ることからです、少数のユーザにアプリを販売するのではなく、格段に多数のユーザに無料アプリを配布してデータを収集する方が収益につながる、という判断があるものと考えるべきです。

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