国連環境計画リポート Limiting Overshoot - Navigating exceedance of 1.5°C and pathways towards return

先週水曜日の9月2日、国連環境計画(UNEP)から Limiting Overshoot - Navigating exceedance of 1.5°C and pathways towards return と題するリポートが公表されています。国内でもいくつか報道があったと聞き及びましたが、今後数年で産業革命前からの気温上昇がオーバーシュートして+1.5°Cを超えることになる、と結論しています。もちろん、pdfの全文リポートもアップロードされています。まず、国連環境計画(UNEP)のサイトからリポートのAbstractを引用すると次の通りです。
Abstract
A new spotlight report by the UN Environment Programme finds that as global temperature rise gets set to cross 1.5°C, pushing climate risks and impacts to dangerous new heights, the world must strive to return to below 1.5°C as soon as possible and simultaneously reduce the vulnerability of societies, communities and economies to climate impacts. The report, Limiting Overshoot: Navigating exceedance of 1.5°C and pathways towards return, finds that the world can achieve this goal by acting now to get on an 'overshoot, peak, and decline' pathway.
要するに、いわゆるカーボンニュートラル、二酸化炭素の排出がネットでゼロとなっても、一時的なオーバーシュートによって、産業革命からの気温上昇が+1.5°Cを超える時期が現れる、ということです。そのオーバーシュートのコンセプトをリポートの Figure 1.1: Key pathway concepts がよく示しています。次の通りです。
では、気にかかるのが、気温上昇がどのくらいに達し、その期間がどれくらい続くのか、ということです。リポートでは、もっとも楽観的なシナリオで+1.8°C (Even an optimistic scenario of current government pledges (full implementation of all national climate plans plus meeting additional net-zero targets) puts expected peak temperature rise at 1.8°CC.)に達する、としています。その上で、現状の政策の延長で考えると2100年の気温上昇の中央値は+2.6°C (Under current policies, median projected global warming reaches around 2.6°C by 2100 (range 1.9-3.6°C).)と指摘しています。そして、当然ながら、この気温上昇に程度により、気温が+1.5°Cを上回る期間も違ってきます。
私は、従来から何度か指摘している通り、グローバルレベルで2050年にカーボンニュートラルが達成できそうもないと予想しています。日本とか、欧州のいずれかの国とかの国レベルでは2050年カーボンニュートラルを達成する国は少なくないものと思いますが、グローバルに考えると、ものすごく難易度が高いと思っています。もしも、パリ協定のラインに沿って温室効果ガス排出が減少するとしても、この国連環境計画のリポートに基づけば、オーバーシュートして気温が+1.5°Cを上回る期間が一定生じうるわけです。まだ、そのレベルに達していない今年ですら、これほど猛暑・酷暑が続き、私が小学生だったころには聞いたこともない「線状降水帯」なんてもので水害が頻発しているのは、日本ではよく知られている通りです。加えて、環境に関しては不可逆的な現象が生じます。例えば、ネパール国境で生じた土石流は、ヒマラヤの氷河の崩落によって生じたと考えられていますが、オーバーシュートした後の気温が産業革命前と同程度に戻っても、ヒマラヤの氷河は元には戻りません。ですので、まさに、気候変動問題は人類喫緊の課題であり、悪くすれば、人類の文明が崩壊する危険すらあるんではないか、と私は考えています。
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