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2026年9月16日 (水)

1兆円を超える貿易赤字を記録した8月の貿易統計と2か月ぶり前月比マイナスの7月の機械受注

本日、財務省から8月の貿易統計が、また、内閣府から7月の機械受注が、それぞれ公表されています。貿易統計のヘッドラインについて、季節調整していない原系列で見て、輸出額が前年同月比+19.3%増の10兆483億円に対して、輸入額は+28.0%増の11兆1539億円、差引き貿易収支は▲1兆1056億円の赤字を計上しています。また、機械受注では、民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月から▲3.7%減の1兆169億円と、2か月ぶりの減少を記録しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

8月の貿易赤字1兆1056億円 原油と半導体が輸入額を押し上げ
財務省が16日発表した8月の貿易統計(速報)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆1056億円の赤字だった。赤字は4カ月連続。原油価格の上昇が響いた。半導体などの電子部品も輸入額を押し上げた。
輸出額は10兆483億円と前年同月比で19.3%増えた。12カ月連続で増加した。中国向けに電子部品の輸出が伸びたほか、米国向けの自動車も好調だった。
輸入額は11兆1539億円で28.0%増えた。7カ月連続の増加だった。原油高に加え、アジアからの電子部品、米国からの液化天然ガスが輸入額の増加に影響した。
原油の輸入額は1兆1905億円と58.7%増えた。円建ての輸入単価は1キロリットルあたり10万2684円と53.1%上昇した。代替調達が進んでおり、輸入量は1159万キロリットルと3.6%増えた。
原油の輸入を地域別で見ると、米国からの輸入量は365万キロリットルと前年同月に比べ約7倍に増えた。中東情勢が緊迫して以降、米国からの輸入が急増している。
中東からの輸入量は30.9%減の725万キロリットルだった。4月は384万キロリットルと比較可能な1979年1月以降でもっとも少ない量となったが、足元で回復傾向がみられる。
アジアからの代替調達もみられる。輸入量は4万キロリットルと20.8%増加した。
7月の機械受注3.7%減、2カ月ぶりマイナス 判断「持ち直し」維持
内閣府が16日発表した7月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標とされる民需(船舶と電力除く、季節調整済み)は前月比で3.7%減の1兆169億円だった。2カ月ぶりの減少となった。
QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は1.6%減で、市場予測を下回った。
基調判断は「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。6月が9.7%増だったことを踏まえた。月ごとの振れをならした3カ月移動平均は2.6%減となった。
製造業は5186億円と前月から1.0%減った。2カ月ぶりのマイナスとなった。製造17業種のうち8業種がマイナスだった。非鉄金属は6月に約3倍に増加した反動で82.2%減となり、全体を押し下げた。化学工業も前月からの反動減で12.0%減った。
非製造業は船舶・電力を除くベースで2.6%減の5259億円と、2カ月ぶりに減少した。電子計算機などで前月に大型受注があった反動から、情報サービス業が16.9%減、金融業・保険業が6.8%減となった。

包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは次の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、引用した記事にはありませんが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、▲6000億円を少し超えるくらい貿易赤字が見込まれていましたし、予測レンジ下限でも▲1兆円弱でしたので、実績の▲1.1兆円を超える赤字はレンジに収まらず、下振れした印象です。注目の原油及び粗油の8月統計での輸入は、引用した記事の4パラ目にあるように、キロリットル単位の数量ベースで前年同月比+3.6%増を示していますが、金額ベースでは+58.7%増となっています。中東戦争の影響を受けて、一時的に石油の輸入が滞っていた反動でやや数量ベースで輸入が増加する一方で、単価も大きく上昇しているということです。数量ベースで見る限り、原油及び粗油の供給制約は大きく緩和された、という評価はできるかもしれません。引用した記事にもありますが、季節調整する前の原系列の統計ながら、数量ベースで原油及び粗油の輸入は8月に全世界から1159.4KLを輸入しています。うち、米国365.9万KL、725.5万KLですから、この数字を見る限り、まだまだ原油及び粗油の中東依存は大きいといわざるをえません。いずれにせよ、私の主張は従来から変わりなく、輸入は国内の生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易収支や経常収支の赤字と黒字は何ら悲観も楽観もする必要はない、と考えています。固定為替相場制度を取っていた1950-60年代の高度成長期のように、「国際収支の天井」を意識した政策運営は、現在の変動為替制度の下ではまったく必要なく、比較優位に基づいた貿易が実行されればいいと考えています。地政学リスクにより比較優位に基づく貿易が、現時点では、阻害されている可能性が否定できない、と考えています。すなわち、中東での武力紛争により石油輸入の量と価格の動向が大きな問題と考えるべきです。ですので、政府が「経済安全保障」を理由にエネルギー市場に過度に介入するのは疑問です。
本日公表された8月の貿易統計について、季節調整していない原系列の前年同月比により主要品目別に少し詳しく見ておくと、まず、輸入については、繰返しになりますが、もっとも注目されている原油及び粗油がキロリットルの数量ベースで+3.6%増と供給制約の緩和が見られる一方で、金額ベースでは+58.7%増となっています。さらに、エネルギーに次いで注目されている食料品は金額ベースで+8.0%増となっています。原料品のうちの非鉄金属鉱は重量ベースで▲6.7%減ながら、AIやデータセンター需要により商品市況の高騰により金額ベースでは+8.1%増を記録しています。輸出に目を転ずると、輸送用機器のうちの自動車が台数ベースで+6.3%増、金額ベースでも+16.5%増となっています。米国向けの自動車輸出についても、数量ベースで+4.9%増にとどまっている一方で、金額ベースで+28.0%増となっており、トランプ関税の価格転嫁が進んでいる可能性があります。米国だけではなく世界向けに戻って、自動車を含む輸送用機器は金額ベースで7.9%増、電気機器も+31.5%増、一般機械も+21.0%増となっています。中東戦争が一時の混乱を脱して、比較優位にしたがって貿易すると、もちろん、世界的なAIブームやデータセンター需要を背景にしつつ、このあたりの輸送用機器、電気機器、一般機械などに日本はアドバンテージがあるんだろうと思います。

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引用した記事の2パラ目には「1.6%減」とありますが、私が調べた範囲で、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは▲2.2%減であり、いずれにせよ、実績の3.7%減は市場の事前コンセンサスから下振れした印象です。ただし、上のグラフでも読み取れるように、移動平均で見たトレンドでは十分な増勢を示しているといえます。いずれにせよ、統計作成官庁である内閣府のプレスリリースでも、基調判断について「7月の減少は先月9.7%増加した後の単月の動きであることを踏まえ」と指摘した上で、基調判断は「持ち直しの動きがみられる」に据え置かれています。もう少し時間が経ってからの判断変更でもいい、と私も考えています。なお、業種別に季節調整済み系列の前月比で見て、製造業が前月比▲1.0%減、船舶・電力を除く非製造業も▲2.6%減でした。なお、引用した記事で詳細に言及されていますが、前月統計で大型案件などのややイレギュラーな増加があった反動という側面は否定できません。
日銀短観などで示されたソフトデータの投資計画が着実な増加の方向を見込んでいる一方で、機械受注やGDPなどのハードデータで設備投資が増加していないという不整合があります。先週火曜日に公表になったGDP統計速報2次QEを見ても、民間設備投資は1~3月期に続いて、4~6月期も前期比マイナスを記録しています。人手不足は見込み得る範囲の近い将来にはまだ続くことが軽く予想されますし、DXやGXに向けた投資が盛り上がらないというのは、低迷する日本経済を象徴しているとはいえ、大きな懸念材料のひとつです。かつて、途上国では機械化が進まないのは人件費が安いからであるという議論が広く見受けられましたが、日本もそうなってしまう可能性が否定できません。設備投資の今後の伸びを期待したいところですが、先行きについては決して楽観はできません。特に、日銀が金利の追加引上げにご熱心で、何度か政策金利が引き上げられて今では1.0%に達し、市場の長期金利は3%に迫っています。今週の金融政策決定会合でも追加利上げがあると予想されています。為替への影響を別にしても、金利引上げは設備投資に悪影響を及ぼすことは頭に入れておくべきではないかと思います。

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