2018年7月14日 (土)

今週の読書は話題の『大英帝国の歴史』など計7冊!

今週は経済書らしい経済書はなく、ファーガソン教授の人気のTVシリーズを書籍化した『大英帝国の歴史』を中心とした読書でした。以下の7冊です。来週こそは4~5冊にペースダウンする予定です。

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まず、ニーアル・ファーガソン『大英帝国の歴史』上下(中央公論新社) です。人気の歴史学ないし経済史学の研究者による2003年放送のTVシリーズの書籍化です。出版も2003年となっていて、TVシリーズ全6回を6章として本書の上下巻に収録しています。上巻の方がやや厚くて「膨張への軌跡」と副題があり、下巻のサブタイトルは「絶頂から凋落へ」となっています。私の方で少し誤解があったんですが、本書はあくまで大英帝国の帝国主義的な海外政策、特に植民地政策や貿易政策などを歴史的に跡付ける研究成果ないしは教養シリーズであり、国内的な産業の発展、すなわち、この時期はいわゆる産業革命に当たる時期を含んでいるものの、ソチラの方への関心はほとんど本書では示されていません。邦訳者あとがきの最後で、日本語タイトルは出版社のご意向ということが明らかにされており、邦訳者は少し抵抗したのかもしれないと勝手に邪推しています。それはともかく、もっぱら、帝国の諸外国に対する対応ぶりに焦点が当てられていて、その際の中心は北米とインドであり、ここでもアジア軽視、というか、例えば、アヘン戦争やシンガポール開発などにはそれほど重点は置かれていません。でも、さすがに、最盛期には太陽没することなき大帝国であった大英帝国の歴史を振り返った重厚な歴史書に仕上がっています。著者のスコットランド人としてのアイデンティティが強調されている部分も見受けられますし、特に、自由と民主主義の価値観を世界に広める上で大英帝国が果たした役割がポジティブに強調されています。また、奴隷制度に関する強く批判的な立場が貫かれています。現在の米国の帝国としての方向性を考える上でも大英帝国の歴史は参考になるかもしれません。

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次に、イアン・ブレマー『対立の世紀』(日本経済新聞出版社) です。著者はご存じ、よく知られた地政学情報の会社ユーラシア・グループを率いています。私はこの著者の本はかなり読んでいるんではないかと思います。本書では、Gゼロ時代に英国のBREXITや米国のトランプ大統領当選、さらに、大陸欧州のいくつかの国でのポピュリズムの台頭を念頭に、邦訳タイトルで「対決」とされていますが、US vs THEM、すなわち、われわれ対彼ら、との対比を設定し、THEMないし彼らを典型的にはイスラム教徒の移民になぞらえて排外的な傾向を見せるポピュリズムを対象にした議論を展開しています。そして、著者のひとつの解決策として提示されるのが、政治や哲学の面からはポピュリスト政治家の主張のような壁を作るのではなく、社会契約の書き換えを目指す方向であり、経済的にはベーシック・インカムの導入です。とても興味深い結論です。安全保障上の本来の集団安全保障とは、世界各国がブロック化せずに国連の下にすべての国が同じ安全保障体制に加われば戦争への抑止力になる、というものではなかったかと、大学で習ったような気がしますが、経済的にベーシック・インカムですべての人を公務員にしてしまえばいい、というのは秀逸な議論ではないかと思ってしまいました。

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次に、ピーター・チャップマン『バナナのグローバル・ヒストリー』(ミネルヴァ書房) です。20世紀初頭から1970~80年代にかけて、ほぼ活動を終息させるユナイテッド・フルーツの活動をグローバル化の視点からリポートしています。典型的には、米国の多国籍企業が中米を舞台に企業活動のためには政権の転覆をはじめとする非合法活動や謀略活動にも手を染めかねない、という活動実態を描き出しています。ユナイテッド・フルーツの基本は中米におけるバナナのプランテーションなんですが、当然ながら、米国内での宣伝活動も含まれており、我が国でよく見かけるフィリピンや台湾のバナナとは違うのかもしれません。ユナイテッド・フルーツのブランドはチキータ、そして、本書で登場するライバル社はドールとデルモンテです。ユナイテッド・フルーツの活動だけではなく、IT&Tが関係したチリのアジェンデ政権に対するピノチェット将軍のクーデタ、イランのパーレビ国王の擁立などもチラリと触れられています。その昔の英国の東インド会社を思わせるような悪逆非道な活動が戦後の20世紀で行われていたのは驚くばかりです。

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次に、青木理『情報隠蔽国家』(河出書房新社) です。著者は共同通信出身のジャーナリストであり、本書は『サンデー毎日』に掲載された記事やコラムなどを収録しています。また、平凡社新書で出版された『日本会議の正体』は私も読んでいます。ということで、権力への対抗軸のひとつとしてのジャーナリズムやメディアの存在意義を感じさせる力作です。主として、私の専門外である安全保障政策やインテリジェンス活動に焦点を当てていますが、本書のタイトルは必ずしも内容を的確に反映していない恨みもあります。私はかなり本書の議論に賛同する部分が少なくないんですが、それでも、2点だけ疑問を呈しておきたいと思います。すなわち、メディアについては権力に迎合するタイプの報道をしているものが少なくないという点と、その背景となっている役所の記者クラブ制度、特にその昔の排他的なクラブ制度については、私は常日ごろから疑問を感じています。メディアのジャーナリストでこれだけ意識高い報道がありながら、それでも現政権が高支持率を維持しているのはなぜなのか、そのあたりも興味あるところです。

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次に、ドン・ロス『経済理論と認知科学』(学文社) です。著者は南アフリカ出身の英国の経済哲学者であり、本書ではミロウスキーの Machine Dreams などを基本として議論を進め、意識、志向性、エージェンシー、セルフ、行動、などなど、生身の人間のこういった経済活動についえ、経済学はこれらをどのように捉えるべきなのか、本書では、伝統的な経済理論の歴史と認知科学の最新の知見に基づいて、両者を結びつける正しい経済学のあり方を探求しています。経済学とはその昔から、人間が登場しないといわれており、生身の人間の経済活動、あるいは選択行動などに関しては、最近の行動経済学や実験経済学などで、伝統的な経済学が前提として来た合理的な経済人の過程を満たさない限定合理性とかが明らかにされつつあり、そういった新たな経済学に哲学的基礎を与えると同時に、認知科学に基づいて合理性を前提とする伝統的な経済学について考え直す、というかなり学際的な試みを展開しています。完全な学術書であり、数式がないにもかかわらず横書きをしていたりしますし、本書で展開されている議論の中身も高度なものがあります。一般のビジネスマン向けとは思えません。

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最後に、河合薫『残念な職場』(PHP新書) です。冒頭の印象的な警句が、日本の会社やオフィスの「現場は一流、経営は三流」というもので、経営サイドの「残念な経営者」や「残念なオフィス」が数多くのケーススタディから明らかにされています。私はキャリアの公務員ながら、いわゆる民間企業でいうところの経営レベルまでは出世しませんでしたので、部分的には判る気もします。特に、著者の関心分野なのか、女性活用については鋭い見方がしばしば提示されています。

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2018年7月 8日 (日)

先週の読書は経済書を中心に計7冊!

先週も経済書を中心によく読んで、以下の通りの計7冊です。ただし、今週は少しペースダウンします。昨日、どこかの新聞の書評で見たファーガソン『大英帝国の歴史』上下を読む予定です。

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まず、小林慶一郎[編著]『財政破綻後』(日本経済新聞出版社) です。本書の基礎となった研究分析は東京財団による「財政危機時の政府の対応プラン」(2013年7月)なんだと思うんですが、家計資産残高と政府債務残高の多寡や経常収支の赤字化などについて、危機発生のトリガーと想定されるシナリオを分析した部分がなくなっていて、むしろ、無条件に政府の財政破綻が近づいているような印象がないでもありません。ただ、シルバー・デモクラシーによる高齢者向け施策の過剰な「充実」が財政破綻の引き金になる可能性は増しているとの認識は共有します。トリアージと称したプライオリティ付けが目を引きますが、私の目から見て、統合政府化で日銀の国債買い入れが債務残高とどう関係するかは、やや疑問が残りました。私は日銀が国債を買い入れれば償還の必要がなくなる、というか、償還が形だけになって、その金額が遅かれ早かれ国庫に返納されると考えているんですが、そうではないというのが本書の主張です。よく判りません。財政破綻すれば、既得権益がゼロベースに戻るので、年金や医療・介護などの社会保障の新たな制度設計が重要という指摘は、従来からコッソリと囁かれてきた点ですが、ここまで表に出して主張すると影響力がありそうです。最後に、本書で考えられている程度の財政破綻後の対応策は、とっくに財務省は持っているような気が私はするんですが、いかがなもんでしょうか。

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次に、スティーヴ・キーン『次なる金融危機』(岩波書店) です。私はなじみなかったんですが、著者はオーストラリア出身の英国をホームグラウンドとする経済学者であり、カオス理論を応用して、金融危機が起こるプロセスのシミュレーションに成功したといわれています。特に、民間債務残高の危険度を指標とした予測モデルから導出されるいくつかのグラフィックスはなかなか見応えがあります。もとも、カオス理論でどこまで金融危機の発生が予測できるかは議論の残るところであり、少なくとも、本書で主張するように、利潤最大化を超えて投資を行い資本ストックが積み上がり、その後のストック調整が大規模かつ長期にわたるのは、事実としてそうなっているのは現実経済を見れば明らかな通りに理解できるが、そのカオス理論に基づく根拠が私には不明でした。どうしてそうなるのか、カオス理論で解明できたとは到底思えません。これは、利益最大化を超えて投資するという行為について、利益最大化が何らかの矛盾を持っていると考えざるを得ないと私は予想しているんですが、バブル期に過大にに投資したり、デフレ期に過少な投資しかしなかったりとする投資家心理の問題なのか、それとも、利益最大化の合理性が失われているのか、本質的な疑問に答えてくれていない恨みはあります。

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次に、ルチル・シャルマ『シャルマの未来予測』(東洋経済) です。著者はインド出身でモルガン・スタンレーの市場エコノミストです。私は同じ著者の前著である『ブレイクアウト・ネーションズ』は読んでいないんですが、よく似た内容であり、著者はBRICsやVISTAの台頭を予見したといわれていますので、それほど理論的ではなく、市場エコノミストの直感的な、というか、経験則的な見方で、人口構成・政治サイクル・格差などの本書でいう10の観点から先行きを大胆に予測しています。ということで、モロなネタバレなんですが、成長する国は、日本、アメリカ、メキシコ、アルゼンチン、フィリピン、インドネシア、インド、パキスタン、バングラディシュ、ドイツ、ルーマニア、ケニアで、現状維持は、コロンビア、イギリス、イタリア、スペイン、沈む国は、中国、韓国、台湾、タイ、マレーシア、オーストラリア、ロシア、フランス、トルコ、中東諸国、南アフリカ、ナイジェリア、などとされています。日本についてはアベノミクスの貢献が明記されています。

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次に、丸山俊一『欲望の資本主義 2』(東洋経済) です。前シリーズの『欲望の資本主義』の続巻なんですが、いずれもNHK「欲望の資本主義」制作班によるノベライズです。ですから、基本は対談を文字に書き起こしたわけであって、放送をバッチリと見ていた、聞いていた視聴者には必要ない本なのかもしれませんし、逆に、本で読むならテレビ番組を見る必要はないのかもしれません。副題が「闇の力が目覚める時」とされていて、ややマルクス主義的な考え方がこの「闇の力」に相当するような記述も見られ、私はやや不愉快でした。コンピュータの進化やAIの登場などを細かに主張しながらも、大筋の議論が出来ていない印象があり、細かな表現でテレビ・ラジオ的には映えるのかもしれませんが、ホントに資本主義の今後の方向性を議論する題材にはなりそうもありません。

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次に、ジャック・ペレッティ『世界を変えた14の密約』(文藝春秋) です。邦訳タイトルは英語の原題とかなり違っており、上の画像の帯にあるような「企業間の密約」により世界の動向が決められているかのような本の内容ではありません。14の中身について出版社のサイトから引用すると、「現金の消滅」、「熾烈な格差」、「ダイエット基準」、「買い替え強制の罠」、「フェイクニュースの氾濫」、「投機リスク」、「租税回避のカラクリ」、「薬漬け」、「改革されない働き方」、「新自由主義の誕生」、「企業の政府支配」、「AIに酷使される未来」、「知性の取引」、「21世紀のインフラ」、ということになります。著者はイタリア系英国人のジャーナリストであり、本書の内容はBBCにて映像化されて反響を呼んだようです。14項目がそのまま章立てになっているわけですが、やや内容や視点にバラツキがあるものの、14項目を見るだけでも十分にリベラルで左派的な視点であることは想像されようかと思います。英国の現状だけでなくごろーばる化の進む現在では我が国にもそのまま当てはまるポイントが少なくないと受け止めています。

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次に、西岡壱誠『東大読書』(東洋経済) です。今さらながら、なんですが、私はキャリアの国家公務員であり、東大卒業生の比率が異常に高いオフィスに勤務していますし、日曜日のTBSテレビで東大王なるクイズ番組を見ることがあったりして、それなりに東大生の優秀性は理解しているつもりです。本書では明記されていないんですが、著者の出身高校は宝仙学園とネットでウワサされています。この出身校については私には確認のしようがありませんし、ネットでは疑問が呈されていたりするんですが、ただ、読書を効率よくしっかりと実りあるものにするという点から、本書の中身は秀逸だと思います。少なくとも、読書についてはそれなりに準備すべきという点は忘れるべきではありません。もっとも、本書では読書をものすごく狭い意味でとらえており、少なくとも、教科書をはじめとする学術書や教養書や実用書などに限定しているような気がして、文芸書や小説は本書ではスコープに入っていないようです。その上、私はもっとも読書の内容を濃くするためにはノートを取るべきであると考えており、例えば、大昔に公務員試験の準備や対策をしていたころに、経済学のミクロ・マクロの教科書を読んで取ったノートが我が家にはまだ残っていたりするんですが、本書では付箋で代用されていて、やや中途半端な気がします。それなりにタメになるとはいえ、やや物足りない気もします。加えて、副題が『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく』とされているところ、後者の「地頭力」については何の言及もないような気がしてなりません。これも残念な点です。

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最後に、我孫子武丸『怪盗不思議紳士』(角川書店) です。作者はご存じ新本格派のミステリ作家で京都大学のミステリ研究会出身です。綾辻行人や法月綸太郎や麻耶雄嵩などと同じ系統なわけです。でも、本書の舞台は終戦間もない東京です。戦災孤児の草野瑞樹は上野の闇市での事件をきっかけに探偵の九条響太郎の助手になり、警察にも頼りにされる名探偵・九条響太郎は「不思議紳士」と名乗る怪盗と対決したりします。ということで、江戸川乱歩の少年探偵シリーズをそっくりそのまま、明智小五郎を九条響太郎に、その助手の小林少年を草野瑞樹に、さらに、怪盗20面相を不思議紳士に、それぞれ置き換えているわけですが、とても新たな趣向も取り入れられています。まず、わけも判らず、占領軍の高級将校が事件に介入してきます。もちろん、警視庁の刑事なんぞよりはよっぽどエラそうに捜査を指揮したりします。そして、名探偵・九条響太郎が早々に死んでしまい、その身代わりを立てて少年助手が身代わり探偵を操る、となります。怪盗のサイドでも、本来の「不思議紳士」は怪盗20面相と同じで、殺人はおろか人を傷つけることも忌避する性向があるんですが、最初の事件では被害者の一家皆殺しをしたりします。新本格らしい謎解きではないんですが、それなりに楽しめる作品です。

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2018年7月 3日 (火)

カルチュア・コンビニエンス・クラブによる『読書に関するアンケート調査』の結果やいかに?

やや旧聞に属する話題ですが、6月21日付けでカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)から「読書に関するアンケート調査」の結果が明らかにされています。13~22歳の子供を持つ親に聞いた結果だそうで、我が家の子供達は19歳と21歳ですので、私は対象者の資格があるんではないかと考えていたりします。ということで、まず、調査結果のダイジェストをカルチュア・コンビニエンス・クラブのサイトから5点引用すると以下の通りです。

読書に関するアンケート調査ダイジェスト
  • "親子の日"に子どもへ贈りたいものは、モノ消費よりもコト消費が1位に
    1位「レストランなどでの食事」 2位「衣服・くつ」 3位「書籍」
    中学生の子どもへ贈りたいものは1位「書籍」
  • 書籍を月に1冊以上読む人は4割
    書籍を手に入れる場所 1位「書店」 2位「ネット通販」 3位「図書館で借りる」
  • 子どもへ本を贈りたい人は4割、贈りたい本の1位は「君たちはどう生きるか」
  • 学生時代に親から本を贈られたことがある人は1割 ※小学生時代を除く
    親から本を贈られた時の気持ちは?「うれしかった」「楽しめた」「学べた」
  • 理想の親子だと思う有名人
    1位「高橋英樹さん・高橋真麻さん」 2位「関根勤さん・関根麻里さん」
    3位「三浦友和さん・山口百恵さん・三浦祐太朗さん・三浦貴大さん」

なお、やや不親切だったかもしれませんが、上のダイジェストの冒頭にある「親子の日」とは、7月の第4日曜日を指しており、2003年から始まった記念日、というか、運動のようなものらしく、その日に本を贈る、というアンケートの趣旨なのかもしれません。よく判りません。まあ、この調査結果について、私の興味の範囲で、グラフを引用しつつ自分の読書にも引き付けて簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、カルチュア・コンビニエンス・クラブのサイトから、「あなたは普段書籍を読みますか。」の問いに対する回答を引用すると上のグラフの通りです。30%近い大人が本を読まないと回答しているのには驚きます。私の読書量は毎月15~20冊くらい、年間200冊前後ではないかと思います。たぶん、というか、かなり確実に読書量は多い方だろうと自覚しています。

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次に、カルチュア・コンビニエンス・クラブのサイトから、「あなたは普段本をどこで手に入れますか。」の問いに対する回答を引用すると上のグラフの通りです。常識的に本屋さんか、インターネットで買う、というカンジなんでしょうが、もう還暦を迎えて人生経験長く、本があまり帰っている我が家に置く場所もない私は、年間200冊の読書のうち、買い求めるのは10冊くらいで、残り190冊くらいは、すべて図書館で借りています。最近では話題のダン・ブラウン『オリジン』上下を買いました。三浦しをん『ののはな通信』を買おうかどうしようかと、激しく悩んでいるところです。

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2018年6月30日 (土)

今週の読書は話題のダン・ブラウン『オリジン』を含めて計8冊!

いよいよ昨日で関東甲信が梅雨明けし、自転車で図書館を回るには暑いながらもお天気が安定した季節を迎えました。ということで、話題のダン・ブラウン『オリジン』上下を含めて、今週は以下の8冊とまたまた大量に読みました。数が多いので、少し簡単に取りまとめています。

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まず、トーマス・セドラチェク & オリヴァー・タンツァー『資本主義の精神分析』(東洋経済) です。NHK特集の「欲望の資本主義」でもそうだったんですが、この著者の要諦は借金をしてまで成長を追求する必要はない、ということなんではないかという気がします。あまりにも経済学の見方から外れすぎていて、これなら何を言っても可、という気もします。

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次に、内田樹[編]『人口減少社会の未来学』(文藝春秋) です。かなり大量の著者人を集めた論文集なんですが、左派的な拡大均衡を目指す志向もあれば、右派的な財政圧縮を求める声もあったりで、まとまりの悪さが目立っています。本としての一貫した視点や主張はほぼないに等しいんではないかと受け止めています。

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次に、岡部恭宜[編著]『青年海外協力隊は何をもたらしたか』(ミネルヴァ書房) です。逆に、本書については本としての主張は極めて明確で、青年海外協力隊(JOCV)は有益であり、事業仕分けにより予算削減の憂き目を見るのは困る、ということに尽きます。JOCVの受け入れサイドの意見がまったく取り入れられていないのも大きな特徴のひとつです。

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次に、ダン・ブラウン『オリジン』上下(角川書店) です。ご存じ宗教象徴学者ラングドン教授シリーズ最新作です。今回の舞台はスペインです。コンピュータ科学者が人類、というか地球生命の起源と行く末についてプレゼンしていたんですが、その場で暗殺され、そのプレゼンの続きの動画のパスワードをラングドン教授が謎解きをする、その謎解きに、従来通りのボンド・ガールならぬラングドン・ガールとともに、ウィンストンという名のAIが協力する、というストーリーです。謎解きも、地球生命の起源と行く末も、どちらも、やや物足りませんでしたが、AIの退場は鮮やかでした。一気に読ませるスリリングな作品です。

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次に、麻耶雄嵩『友達以上探偵未満』(角川書店) です。著者の出身地である三重県伊賀の里にある工場を舞台に、JK探偵が殺人事件を解決します。新本格派の著者らしく、論理的に犯人を追いつめます。なお、伊賀は忍者の里であると同時に、その忍者でもあったといわれている俳聖松尾芭蕉の出身地でもありますので、俳句が頻出します。なかなかの作品です。

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最後に、文芸第三出版部[編]『謎の館へようこそ 白』『謎の館へようこそ 黒』(講談社) です。新本格30周年を記念するアンソロジーです。収録作品を以下に列挙すると、『白』は東川篤哉「陽奇館(仮)の密室」、一肇「銀とクスノキ~青髭館殺人事件~」、古野まほろ「文化会館の殺人 - Dのディスパリシオン」、青崎有吾「噤ヶ森の硝子屋敷」、周木律「煙突館の実験的殺人」、澤村伊智「わたしのミステリーパレス」、そして、『黒』ははやみねかおる「思い出の館のショウシツ」、恩田陸「麦の海に浮かぶ檻」、高田崇史「QED ~ortus~ -鬼神の社-」、綾崎隼「時の館のエトワール」、白井智之「首無館の殺人」、井上真偽「囚人館の惨劇」、となっています。

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2018年6月23日 (土)

今週の読書はいろいろ読んで計7冊!!

今週は経済書や専門書・教養書は大した読書ではなかったんですが、小説とエッセイについてはとても好きな作家さんの作品を読んで満足のいく読書でした。

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まず、神津多可思『「デフレ論」の誤謬』(日本経済新聞出版社) です。著者は日銀OBであり、典型的にリフレ派の経済学を否定して旧来の日銀理論にしがみついています。ですから、本書の唯一の主張は需要の構造の変化のスピードに供給がついていけていない、という1点なんですが、少し考えれば理解できるように、需要に供給がついていけないのであれば、デフレではなくボトルネック・インフレが生じるはずであり、まったく、私には理解できません。加えて、必ずしも明記されているわけではありませんが、要するに、複合的な要因で持ってデフレに陥っていること、さらに、デフレの何が悪いといわんばかりのマイルド・デフレ肯定論ですから、繰り返しになりますが、旧来の破綻した日銀理論を振り回しているだけであり、特段の見るべき内容はありません。デフレの本質は物価の持続的な下落であり、従って、今日買うよりも明日買う方がおトクなわけですが、それに対する本質的な議論はなされていません。理論的にも実証的にも破綻した大昔の議論を展開しているとしか思えません。ムダな読書だった気がします。

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次に、アーサー R. クローバー『チャイナ・エコノミー』(白桃書房) です。著者は中国在住の英国人エコノミストではないかと思うんですが、確信はありません。極めて包括的に中国経済を論じている一方で、よく見かけるたぐいの中国共産党の決定文書の引用とか、制度論に深入りするとかの傾向が一切なく、私のような中国経済のシロートにもとても判りやすい解説書となっています。特に私の目を引いたのは、第5章であり、国営企業を含む企業に対する見方です。さらに特定すれば、中国企業の成長が資本主義的なイノベーションに基づいているか、それとも、資本と労働を大量に投入することによる要素投入型の成長か、という点に関しては、強く後者であることが示唆されています。その流れの中で第9章のルイス転換点の議論を読むべきです。ただ、ルイス転換点については、私もエレガントに数式を解いたペーパーを書いたりしましたが、現在の我が国の労働市場において賃金が上昇しないこともルイス転換点で説明する向きもあり、おそらく、中国のような人口超大国では数十年のスパンで持って分析する必要がありそうな気がします。ひょっとしたら、中国経済に詳しい向きには物足りないのかもしれませんが、なかなかオススメな1冊です。

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次に、セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ『誰もが嘘をついている』(光文社) です。著者はニューヨーク・タイムズにコラムなどを寄稿する研究者であり、前職ではグーグルのチーフエコノミストであるハル・ヴァリアン教授らと研究をしていたということのようです。特に、大きな影響を受けたのは10年近く前に出版されたレヴィット教授らの『ヤバい経済学』であると明記しています。ということで、博士号も持ったビッグデータ研究のデータサイエンティストと考えてよさそうで、必ずしもポリティカル・コレクトネスに合致しないかもしれないものの、ビッグデータから明らかになる人間の本性のようなものを本書では議論しています。そして、そのビッグデータはグーグル検索から得ています。そして、人間の本性を明らかにする以外で、データサイエンス的に興味深かったのはビッグデータの使い道です。例えば、統計学的に標本の平均は母集団に一致することなどはハナから明らかなんですが、ですから、どマクロ的に平均値を出すのにビッグデータを使うのは意味ありません。ビッグデータはもっと細かいセグメント化されたグループの特徴をあぶり出すのに使うべきだと主張しています。地域別の特徴とか、年齢階級別の特徴とか、ということです。データを使えば、いろんな事が判る、という点では『ヤバい経済学』の続編ともいえそうです。

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次に、中野雅至『没落するキャリア官僚』(明石書店) です。著者は、地方公務員・国家公務員から研究者に転じたようです。私もその一員であるキャリア官僚に関する分析です。キャリア官僚に関する定義はいろいろありますが、広義には最上位の採用試験合格者であり、狭義には採用時の事務次官資格者です。本書は、キャリア官僚を「エリート」として対象にしていますので、大きな違いはないかもしれません。本書では、バブル崩壊後のキャリア官僚について没落の始まりとみなしているんですが、もう少し分析が欲しかった気がします。要するに、経済が成長しなくなって、それまで既得権を保証しつつ経済成長の果実を分配することにより官僚がパワーを奮っていたものが、その成長の果実が消滅したことが没落につながった、ということなのかもしれません。さらに、官界の周辺事情がやや狭く考えられていて、政官関係で私が不思議に感じている選挙制度との関係には行き届いていません。すなわち、中選挙区制度下では与党政治家が複数名当選しなければならないことから、いわゆる族議員として専門領域を持ち、それが政官関係に影響を及ぼしていたのが明らかなんですが、そういった政治家=国会議員の専門性が低下しつつある現在、典型例は税調なんでしょうが、それでも専門性高い官僚が政治家に対して専門性で優位に立てないのは不思議な気がします。終章近い6~7章で右傾化やポピュリズムとの関係を考察していますが、感心しません。

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次に、吉田修一『ウォーターゲーム』(幻冬舎) です。著者はご存じ売れっ子の小説家であり、本書はアジアネット(AN)通信の産業スパイを主人公とするシリーズです。このシリーズは既刊に『太陽は動かない』と『森は知っている』があるらしいんですが、私は前者を読んだ記憶があります。ひょっとしたら、後者も読んだかもしれません。記憶はあいまいです。本書はタイトルから想像される通り、水資源を巡る産業スパイの暗躍をテーマとしています。欧州の水メジャー企業による我が国水資源の制圧などなど、です。そして、水資源を巡る本筋とは別に、シリーズ第2段『森は知っている』でかなり明らかにされているようなんですが、AN通信の産業スパイの訓練とかその前段階のリクルートの秘密について、『森は知っている』未読の私は初めて知りました。そして、そのルートからドロップ・アウトした人物が水メジャーの一角に食い込んだりしています。また、水メジャーの暗躍をすっぱ抜くのが九州のローカル新聞の女性記者だったりするのはなかなか凝った作りになっていますが、長崎出身の著者らしいともいえます。ラストの終わり方がさすがといえます。どうでもいいことながら、相変わらず、謎の女性アヤコが「ルパン3世」の峰不二子のイメージのように私には思えて仕方ありません。

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次に、川上未映子『ウィステリアと三人の女たち』(新潮社) です。久し振りの川上作品短編集です。私はこの作家を極めて高く評価していて、今年こそノーベル文学賞は持ち越しと発表されていますが、我が国で村上春樹に次いでノーベル文学賞に近い作家ではないかと考えています。表題作はとても暗い雰囲気で、「死」を濃厚に感じさせる作品でもありますから、好き嫌いはあるかもしれません。しかも、いわゆる純文学であって、エンタメ作品ではありませんから、起承転結を期待する読者にはややハードルが高い気もします。でも、尋常でないくらいの表現力の豊かさや、何ともいえずに「透明感」ある文体など、文学としても水準の高さを読み取れる読者であれば、この作者のいいところが随所に感じられます。私は5月末の産経新聞のインタビューを見て借りて読む気になったんですが、そのインタビューの最後は「次はまた、まったく違う文体で、一番長い話を書くつもりです」と結ばれています。次回作もとても楽しみです。

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最後に、三浦しをん『ビロウな話で恐縮です日記』(新潮文庫) です。私は三浦しをんの小説やエッセイはかなり読んでいて、この作品も読んだような気になっていたんですが、ブログを遡って確かめると読書感想文の記録がなく、文庫本で出版されたのを機に読んでみました。三浦しをんのエッセイは太田出版で単行本が出て、新潮文庫に収録されるというパターンが多く、本書もそうです。そして、私はついつい対象的なもので、酒井順子のエッセイと三浦しをんを比べてしまうんですが、いかにも優等生が下調べよくリポートを取りまとめたような酒井順子のエッセイに比べて、三浦しをんのエッセイは生活実感が丸出しで、特に本書などでは少女マンガのBLモノに話題が集中しています。まほろ駅前シリーズのバックグラウンドがよく理解できるエッセイです。ただ、好き嫌いはあるかもしれません。

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2018年6月16日 (土)

今週の読書は新書の5冊を含めて大量9冊!!!

今週は先週のプラットフォームに関する一連の経済書の続きをはじめ、一挙に9冊読みました。昨日のご寄贈本を含めると10冊に上ります。新書が半分の5冊を占めるとはいえ、日本経済学会春季大会が開催された神戸への往復新幹線も含めて、よく読んだものだと自分でも感心しています。

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まず、アンドリュー・マカフィー & エリック・ブリニョルフソン『プラットフォームの経済学』(日経BP社) です。著者は米国MITの研究者であり、前作は『ザ・セカンド・マシン・エイジ』であり、ムーアの法則に基づく指数関数的なコンピュータの高性能化や経済のデジタル化が、19世紀の第1次機械時代に匹敵する衝撃を社会にもたらす、と論じられたわけですが、本書では第1部でマシンを、第2部でプラットフォームを、第3部でクラウドとコアの3つに焦点を合わせており、本書のタイトルはかなりミスリーディングです。というのも、商店としてあげた3つの潮流のうち、実は、第2部のプラットフォームはもっとも軽く扱われているからです。かなり容易に想像される通り、第1部のマシン編では当然のようにAIやロボットが取り上げられ、第2部のプラットフォーム編ではAmazonやFacebookやGoogleなどのネット企業のビジネスについて分析され、第3部のクラウド編では資金やアイデアのクラウド・ソーシング活用の現状がフォーカスされます。先行きにかなりのバリエーションがあって、必ずしも確定的な方向性を提示できないのは理解しないでもないんですが、研究者ですのでもう少し今後の方向を提示してほしかった気がします。ジャーナリスト的にいろんな事実を羅列するにとどまっているのは少し残念です。

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次に、外山文子・日下渉・伊賀司・見市建[編著]『21世紀東南アジアの強権政治』(明石書店) です。東南アジアのいわゆるASEAN創設時の5か国のうち、シンガポールを除くタイ、フィリピン、マレーシア、インドネシアの4か国におけるストロングマン時代のリーダーを概観しています。タイについてはタクシン-インラックの兄妹政権におけるポピュリスト的な傾向の政治、フィリピンの義賊ドゥテルテ政権、マレーシアのナジブ政権、インドネシアのジョコ大統領です。このうち、マレーシアのナジブ首相については、何と、90歳超のマハティール首相が政権に返り咲いています。東南アジアの民主化についてはフィリピンのマルコス大統領の追放がもっとも先駆けていましたが、いまではドゥテルテ大統領が麻薬追放などで人権虫の非合法活動を容認するような「規律」を展開しています。ただ、ドゥテルテ大統領については、ダバオ市長のころのアンパトゥアン一家に対抗する上で、少し勘違いした、という点もありそうな気がします。また、インドネシアのジョコ大統領は私の考えでは決してストロングマンではないと考えるべきです。いずれにせよ、例えば四国4県の知事さんの共通項があるとは限らないように、東南アジアを一色で染めようとする試みは無謀だという気がします。

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次に、クリストフ・ボヌイユ & ジャン=バティスト・フレソズ『人新世とは何か』(青土社) です。著者2人はフランスの国立科学研究センターの研究員であり、同時に、社会科学高等研究院でも教えていると著者紹介にあります。本書では、人新世 Anthropocène を18世紀半ばの蒸気機関の発明から現在までと提唱し、環境や資源などの有限性を基に、サステイナブルではない人間生活について、必ずしもタイトルと落ちに地質学的な分析ではなく、かなりの程度に社会科学的な研究成果が明らかにされています。その意味で第3部がメインになることは明らかなんですが、熱の発生、戦争を含む死の累積、爆食の実態、環境破壊、などなどが取り上げられ、現在の生産と消費のあり方のままでは、地球が気候や環境をはじめとして、決して、サステイナブルではない現状と悲観的な先行き見通しをこれでもかと並べています。著者2人の主張も判らなくもないんですが、先行きの技術革新を含めて、私はもう少し楽観的です。

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次に、新書5冊を一挙に、橋本健二『新・日本の階級社会』(講談社現代新書)、吉川徹『日本の分断』(光文社新書)、野口功一著『シェアリングエコノミーまるわかり』(日経文庫)、新戸雅章著『江戸の科学者』(平凡社新書)、太田肇『「ネコ型」人間の時代』(平凡社新書) の5冊です。上の2冊は我が国の格差社会について分析を加えています。格差はもはや階級に転じたとの主張や大学進学を境目に乗り越えられない分断が社会に生まれた、との見方が示されています。私の従来からの主張通りに、格差や貧困に対する「自己責任論」が粉砕されています。3つ目はAirbnbやUberなどのシェアリング・エコノミーについての概説書です。仕事の関係もあって少し読んでみましたが、まあ、私のように研究対象にしているエコノミストからすれば、参考程度の内容ではないかという気がします。4冊目の新書では、江戸の科学者について、人口に膾炙した平賀源内や和算学者の関孝和をはじめとして、さまざまな分野の科学者が紹介され、江戸末期には当時の西洋先進国に遜色ない陣容であった点が強調されています。最後は、イヌ型人間とネコ型人間が対比され、標準的な小品種大量生産の近代工業社会ではイヌ型人間が有利であった一方で、情報化社会が進展しデータやノウハウの重要性が高まった現代はネコ型人間の時代を迎えた可能性が示唆されています。

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最後に、綾辻行人ほか『7人の名探偵』(講談社ノベルス) です。どこからカウントするのか、私にはイマイチ不明なのですが、帯にある通り、昨年2017年が新本格ミステリ30周年であったことを記念するアンソロジです。我が母校の京大ミス研の3人を中心に、7つの短編を収録しています。すなわち、麻耶雄嵩「水曜日と金曜日が嫌い - 大鏡家殺人事件 -」、山口雅也「毒饅頭怖い 推理の一問題」、我孫子武丸「プロジェクト: シャーロック」、有栖川有栖「船長が死んだ夜」、法月綸太郎「あべこべの遺書」、歌野晶午「天才少年の見た夢は」、綾辻行人「仮題・ぬえの密室」で、最後の綾辻作品だけはミステリかもしれませんが、エッセイとして仕上がっています。少なくとも、タイトルに異議ありで、綾辻作品には名探偵は登場しません。いずれも読み応えある短編ミステリです。なお、出版社である講談社の「新本格30周年記念企画」のサイトには本書のほか、『謎の館へようこそ 白』と『謎の館へようこそ 黒』、さらに、『名探偵傑作短編集 御手洗潔篇』、『名探偵傑作短編集 法月綸太郎篇』、『名探偵傑作短編集 火村英生篇』などが紹介されています。ご参考まで。

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2018年6月15日 (金)

ご寄贈いただいた『そろそろ左派は<経済>を語ろう』(亜紀書房) を読む!

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とても久し振りに図書をご寄贈いただきました。ブレイディみかこ×松尾匡×北田暁大『そろそろ左派は<経済>を語ろう』(亜紀書房) です。私個人のブログなんぞはとても貧弱なメディアなんですが、図書をご寄贈いただいた折には、義理堅く読書感想文をアップすることにしております。当然です。
まず、私自身については、官庁エコノミストにして左派、という独特の立ち位置にあり、少なくとも左派であることを隠そうとはしていません。例えば、もう定年に達しようという年齢なんですが、そもそもの採用面接でのアピール・ポイントとして、「大学においては経済学の古典をそれなりに読んだと自負している。スミス『国富論』、リカード『経済学と課税の原理』、マルクス『資本論』全3巻、ケインズ『雇用、利子および貨幣の一般理論』などである。」と、堂々とマルクス『資本論』を読んだことを明らかにした上で経済官庁に採用されたりしています。まあ、その後、立身出世とは縁遠い人生を送ったことも事実ではあります。
ということで、本書の関連としては、著者のおひとりである松尾教授の『この経済政策が民主主義を救う』(大月書店) をほぼ2年前の2016年5月28日の読書感想文で取り上げ、「ジャカルタから2003年に帰国して以来、ここ十数年で読んだうちの最高の経済書でした。まさに、私が考える経済政策の要諦を余すところなく指摘してくれている気がします。」と極めて高く評価しています。その折にも指摘したところですが、痛みを伴う構造調整による景気拡大でなければ「ホンモノ」ではなく、金融緩和による「まやかし」の成長は歪みをもたらし、加えて、財政赤字を累増させるような拡張的財政政策なんてとんでもないことで、逆に増税で財政再建を進め、デフレや円高を容認して、それらに耐えるように構造改革を進めるべし、といったウルトラ右派的かつ新自由主義的な経済政策観が幅を利かせる一方で、現在のアベノミクスの基礎をなしているリフレ派な、かつケインジアンな政策に対する世間一般の理解が進まないことを私自身はとても憂慮しています。そして、こういった私の懸念を払拭するために強力なサポートが本書でも得られるととても喜んでいます。
北田教授の社会学的な視点などの専門外の部分は別にして、そういった100点満点の本書であることを前提に、ご寄贈に応えるために、今後のご出版のご参考として私見をいくつか書き加えると、国際経済の視点をもう少し盛り込んだ経済政策論が欲しい気がします。というのも、本書で指摘されている通り、右派は内向きであり、左派は外向き、というのはその通りで、私はそれをナショナリストとインターナショナリストと呼んだりもするわけですが、米国や欧州におけるポピュリズムの台頭も横目で見据えつつ、本書では移民に対する左派的な promotive な見方が示されている一方で、自由貿易に対する見解はまったく見受けられません。私は、移民政策も同じなんですが、自由貿易についても、基本は条件付き賛成です。すなわち、移民にせよ、自由貿易にせよ、国民経済全体としてはプラスのインパクトがある一方で、平たい表現をすれば、損をする集団もあれば、得をする集団もあるわけで、その得をする集団の経済的厚生増加の一部を、たとえ期間限定であっても、損をする集団に補償することが必要です。その分配政策なしで無条件に、まあ、誤解を招きそうな表現かもしれませんが、いわば「弱肉強食」に近い形で、移民や貿易の自由化を進めるのは、私は大いに疑問を持っています。例えば、実証なしの直観的な議論ですが、高度な技能を持った移民は大企業に有利にはたらく一方で、低賃金な移民は中小零細企業で活用できそうな気がしますし、レシプロカルに自由貿易を進めると仮定すれば、メリッツ教授らの新々貿易理論の示す通り、大雑把に大企業ではないかと想像される国際競争力ある産業に有利なことはいうまでもなく、逆に、国際競争力ない産業や途上国の低賃金労働に支えられた製品と競合する産業には不利であり、後者は極めて大雑把に、大企業も含まれているかもしれないものの、中小企業も少なくないような気がします。もうひとつは、現在の日本経済の景気観です。左派は多くの場合、景気が悪くて賃金が上がらず、失業が蔓延している、といった否定的な景気観を表明することがあり、本書でもそのラインが踏襲されているような気がします。日本経済の現状は、景気局面について、左派はどう考えているのか、失業率が大きく低下しながら賃金が上がらない、あるいは、労働分配率が低下を続けるのはなぜかのか、そして、それはどのように経済政策で対応すればいいのか、とても重要なポイントのように私は受け止めています。特に、現在の安倍政権のアベノミクスを左派的な視点から高く評価しつつも、他方で、党派的な見地からか、何なのか、本書でも踏襲されている「実績が上がっておらず、景気が悪い」と、一見すれば矛盾するような結論を示されると、私のような左派でありながらも頭の回転の鈍い人間には、なかなか左派の語る経済に関する理解がはかどらないような気がします。最後の方は少し筆が滑りましたが、以上の2点はいずれも本書を批判するわけではありません。あくまで、今後のご出版のご参考です。失礼いたしました。
いずれにせよ、過去何度かの選挙結果を見れば、国民がアベノミクスの経済政策をかなりの程度に支持していることは明らかです。メディアなどで見受けるオピニオン・リーダーらの経済実感と違って、国民の経済観や景気観は決して悪くないんだろうと、少なくとも選挙結果からはうかがえます。もちろん、森友・加計問題の解明や安全保障政策の議論、さらに、憲法改正に対する意見表明などはとても大事ですが、日々の生活を抱えた国民の支持を得られるような経済政策の提示は、いずれの政党党派においても極めて重要な課題であり、その昔の米国大統領選挙で当時のクリントン候補の掲げた "It's the economy, stupid." は今でも忘れるべきではないポイントだと私は考えています。

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2018年6月 9日 (土)

今週の読書は経済書などいろいろあって計7冊!

本日、6月9日の土曜日は別途の予定があり、極めて異例ながら、未明の早い時間帯に読書感想文のブログをアップしておきます。経済書をはじめとして、フリードマンの最新作にして最後の著書と示唆されている『遅刻してくれて、ありがとう』を含め、以下の7冊です。

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まず、太田康夫『没落の東京マーケット』(日本経済新聞出版社) です。著者は日経新聞のジャーナリストであり、本書に代表されるように、金融セクターに強いんではないかと想像しています。我が国の金融市場のアジア、ひいては世界におけるプレゼンスが1990年前後のバブル期から大きく低下している事実を取り上げています。そして、その原因のひとつとして日銀による緩和的な金融政策運営を上げ、規制緩和なども進んでいない現状を批判していたりします。確かに、著者の主張は私にも判らないでもないんですが、では、金融市場でそれ相応の金利を復活させて金融機関の利益が上がるようにするのが、果たして国民経済にとっていい金融政策なのか、といわれると大いに疑問です。金融政策は金融機関の健全な経営や運営もマンデートのひとつなんでしょうが、国民経済を犠牲にしてまで特定業界の利益を図るとすれば別問題で、私は大いに疑問です。そもそも、エコノミストの中には金融産業が我が国の比較優位であるかどうかを疑問視する意見もありますし、比較優位にないからこそ、本書でいうところの「没落」する産業なのに、どこまで政策リソースをつぎ込むかは見方が分かれるといわざるを得ません。著者ご自身が取材の対象としていて、おそらくは、知り合いも多いと考えられる業界の支援策をどこまで優先順位高いと考えるかは、ジャーナリストとしての資質にもかかわる可能性すらあります。

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次に、デヴィッド S. エヴァンス & リチャード・シュマレンジー『最新プラットフォーム戦略』(朝日新聞出版) とニコラス L. ジョンソン『プラットフォーム革命』(英治出版) です。一方向への直線的な経済活動を行う伝統的な企業と異なり、ITC技術の進展に裏付けられたデジタル・エコノミーの発達とともにマルチサイドのプラットフォーム企業の活動の場が整備されて来ています。もちろん、中小企業金融などで、その昔からマルチサイドなプラットフォーム企業、あるいは、そういった経済活動は決して存在しなわけではありませんでしたが、民泊などのシェアリング・エコノミーやアマゾン、グーグル、マイクロソフト、アリババ、フェイスブック、ツイッターなどはプラットフォームを顧客に対し提供し、顧客同士がつながるビジネスを展開しています。ここで取り上げる2冊のうち、『最新プラットフォーム戦略』の方がやや理論的な側面が強く、『プラットフォーム革命』はビジネスの実務的な側面が強いといえます。私は開発経済学を施文とするエコノミストとして、『最新プラットフォーム戦略』で取り上げられているケニアのMペサの成功などがとても参考になりました。ただ、『プラットフォーム革命』でも、3~4章あたりではかなり理論的な解説を加えており、5章からの実務的なケーススタディと少し趣きが異なります。『最新プラットフォーム戦略』では、Rochet and Tirole (2003) "Platform Competition in Two-sided Markets" の理論がキチンと解説されています。なお、同じように「プラットフォーム」というバズワードをタイトルに含むマカフィー & ブリニョルフソン『プラットフォームの経済学』(日経BP社) も手元に届きましたので、来週の読書感想文で取り上げたいと思います。

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次に、元村有希子『科学のミカタ』(毎日新聞出版) です。著者は毎日新聞のジャーナリストであり、科学環境部長を務めています。章別に、「こころときめきするもの」とか、「すさまじきもの」とかの、『枕草子』の引用をタイトルにしており、物理、化学、生物をはじめとする自然科学を広くカバーしつつ、さらに、宇宙、医療、気象、などなど、親しみやすいテーマで取り上げています。教育学部出身ながら教員免許は「国語」ということで、必ずしも専門知識のない一般読者にも判りやすく解説を加えています。私は第Ⅱ章 すさまじきもの が印象的でした。気候変動や生物多様性の問題など、今後の地球に対する科学的なリスクが取り上げられています。最終章の医療分野の尊厳死や再生医療などは科学的にできることと社会的に受け入れられることの違いがキチンと表現されていたような気がします。さすがに、ジャーナリストらしく読みやすい文章で、スラスラと一気に読めます。ただ、それだけに、頭に残りにくいような気がしたのは私だけかもしれません。

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次に、トーマス・フリードマン『遅刻してくれて、ありがとう』上下(日本経済新聞出版社) です。著書はご存じの通りの「ニューヨーク・タイムズ」のジャーナリストであり、世界的なベストセラーとなった『レクサスとオリーブの木』や『フラット化する世界』の著者でもあります。本書では、現代を「加速の時代」と位置づけ、そのバックグラウンドにはICT技術の中でも、いわゆるムーアの法則に則った指数的なハードウェアの高集積化、さらにこれに伴うソフトウェアも高度化高速化しています。グーグルのマップリデュースからハドゥープといったソフトウェアがまさにそれに当たります。他方で、著者は『孤独なボウリング』的なコミュニティの崩壊には同意せず、特に第12章以降では著者が生まれ育ったミネソタ州のユダヤ人の比率の高いコミュニティへの回帰を希望を持って楽観的に示唆しています。ただ、ICT技術の発展と対をなすグローバル化の進展で、もはや、中スキルで高所得といった職はなくなったことも事実として受け入れています。本書のタイトルは、宣伝文句にあるように、今までの常識が通用しない世界に入りつつある、ということと、同時に、少し立ち止まって遅刻した相手を待つ間にでも思考のための一時停止が必要、という二重の意味を込めているようです。伏見威蕃の訳であり、クルーグマン教授の著書の翻訳で有名な山形浩郎や少し前にクイーンの国別シリーズの新訳を上梓した越前敏弥などとともに、私のもっとも信頼する翻訳者の1人です。

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最後に、スティーブン・スローマン & フィリップ・ファーンバック『知ってるつもり』(早川書房) です。心理学とマーケティングのそれぞれの認知科学の学際領域の専門家2人が共著者となっています。何を論じているかでどちらの著者が書いているのかがよく判ったりします。幅広くいろんなテーマについて認知の問題を論じているいんですが、特に秀逸だったのは認知の観点から民主主義のあり方を論じた第9章、そして、賢さについて論じている第10~12章です。ポピュリズムの議論を待たずとも、直接民主主義は代議制の間接民主主義よりも望ましい制度とは私にはとても思えなかったんですが、本書の著者たちも同じ考えのようで心強かったです。また、少し前に人間と動物の賢さについて生物学的な観点から論じたフランス・ドゥ・ヴァール『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』を昨年2017年11月4日に取り上げましたが、同じような問題意識が共有されているような気がしました。難をいえば、いわゆるボケ老人の認知症についても何らかの言及が欲しかった気がしますが、何かが判ったようで判らない、認知の不思議さに触れた気がします。

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2018年6月 3日 (日)

先週の読書は経済書・経営書を中心に大量8冊!!

ここ何週か経済書の比率が少ないように感じてきましたが、先週の読書はどど~んと経済書や経営書を大量に読みました。以下の8冊です。昨日のうちに自転車で近くの図書館をいくつか回り、今週も大量に読みそうな予感です。

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まず、 カール・シャピロ + ハル・ヴァリアン『情報経済の鉄則』(日経BPクラシックス) です。クラシックスのシリーズ名通り、前世紀の終わり、1998年だか、99年だかに出版された本です。さすがに、現時点で読み返すと、ロータス1-2-3が出て来たりして、ややふるさは感じられるんですが、「ネットワーク外部性」とか、「規模の経済」とか、「勝者総取り」とか、「ロックイン」などは情報経済で今でも有効な分析の視点だという気はします。クラシックス=古典と銘打たれていても、そこは『国富論』や『資本論』なんぞとは違うわけですから、出版された時点の制約を十分に意識して、読みこなせば役立つんではないかという気がします。

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次に、森健・日戸浩之・[監修]此本臣吾『デジタル資本主義』(東洋経済) です。野村総研が取りまとめたデジタル経済分析の第1弾であり、3部作として出版される予定と明記してあります。最終的には、GDPではない新しい指標の構築について議論する、ということのようですので、それなりの試算も示されることともいます。基本的な出発点は、日本経済におけるGDPの成長がほぼ停止したにもかかわらず、それなりに豊かな経済社会を提供しているのは、GDPに計上されない消費者余剰が大きいからではないか、という疑問から始まっていて、私の現時点での研究課題にかなり近いと思います。

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次に、竹中平蔵・大竹文雄『経済学は役に立ちますか?』(東京書籍) です。著者2人の対談です。何ともいえずに、その昔の用語を使えば、とても市場原理主義的な香りがしてしまいます。大竹教授の専門分野ですから、半ばくらいに「働き方改革」のお話が出てくるんですが、この話題について私が常に不満に思っているところで、要するに、企業サイドの利点しか思いつかないようで、「働き方改革」ではなく「働かせ方改革」であることが明らかです。働く労働者の権利や待遇についてはまったく考慮されていません。どこまで適切かは自信がありませんが、マルクス主義的な観点でいえば、末期の状態を迎えた資本主義において企業がいかに労働者をさらに搾取するかを助ける法律ではないのか、という疑いが払拭されません。

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次に、佐藤将之『アマゾンのすごいルール』(宝島社) です。2000年のアマゾン日本法人立ち上げから15年間勤務したアマゾニアン経験者によるアマゾンのすごいところを詰め込んでいます。ただ、私が疑問に思うのは「顧客優先第一主義」はどこの企業でもそれなりに浸透しているんですが、その逆もアマゾンはすごい点は忘れるべきではありません。すなわち、私の友人が少し前に酒の席で言っていたんですが、アマゾンは納入業者と配送業者から利益を得ており、さらに、倉庫の非正規社員を低賃金で雇っており、これも利益の源泉となっている、という説もこれありで、私は本書にかかれていない納入業者・配送業者・倉庫番の非正規社員についても実態を知りたいと思います。まさに、外資系企業だからできたことであり、日本企業ではこういった利益の上げ方は難しいんだろうと思います。なお、上に取り上げた『トマト缶の黒い真実』の著者であるジャン=バティスト・マレはフランスのアマゾン配送センターに臨時工として勤務したルポをものにしています。ただし、邦訳は出版されていないような気がします。

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次に、安岡孝司『企業不正の研究』(日経BP社) です。いくつかの最近起きた企業の不正事案のケーススタディを第1部で展開し、第2部でもう少し一般化したリスク・マネジメントに関する問題点のQ&Aを示しています。かなり幅広く企業不正を考えているようですが、本書にもあるように、経営トップの指示による不正事案、例えば、その昔の山一証券や最近の東芝の粉飾決算については、企業内部では防ぎようがないような気もします。それをいかにして経済社会への影響をミニマイズするかの観点は、本書では持ち合わせていないような気がして残念です。会社が消滅するくらいのインパクトを持った企業不正事案、山一證券の粉飾ですとか、雪印の事件を取り上げていない恨みはあります。それから、本書で俎上に載せている企業不正やリスク・マネジメントなどの経営学の分野については、ケーススタディがメインで、それらに共通する一般法則のようなものの抽出は難しそうな気がします。たくさんのリンゴが落ちるところを観察しつつも、それぞれに異なる原因で落ちているような気が私はしますし、万有引力の法則の発見に至るには私は力不足です。

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次に、ヨハン・ノルベリ『進歩』(晶文社) です。その昔の2011年1月29日付けの読書感想文のブログで取り上げているマット・リドレー『繁栄』と同じような趣旨で、邦訳の山形浩郎があとがきで書いている通り、100年くらいの長いスパンで括った場合、ほぼほぼ常に現在は過去よりもいい状態にある、ということなんだろうと思います。ただ、リドレー『繁栄』の方がイノベーションを基本に先行きの明るい方向性を強調していたのに対し、本書では過去を振り返った歴史書の側面が強そうな気がします。

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次に、ジャン=バティスト・マレ『トマト缶の黒い真実』(太田出版) です。著者はフランス出身のジャーナリストであり、我が国での邦訳書出版は初めてのようですが、フランスのアマゾン配送センターに臨時工として勤務したルポをものにしていたりします。本書では、トマトのピューレを題材にしてグローバル化された世界経済における食品流通の問題点を浮き彫りにしようと試みています。すなわち、例えば、中国で3倍に濃縮されたトマト・ピューレをイタリアに持ち込んで2倍濃縮にしただけで「イタリア産」の表示で世界に流通するとか、その生産・流通過程における劣悪な労働環境やマフィアの介在、などなどを明らかにしています。身近な隣国として中国の暗躍が目につくのは私だけではなさそうな気がします。

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最後に、藤井青銅『「日本の伝統」の正体』(柏書房) です。現時点で、我が国の「伝統」と考えられていて、古くから連綿と続いているように受け止められているしきたりや風習や生活慣行や文化について、必ずしも古くからの歴史があるとは限らない、という視点から考え直したものであり、実は、ここ100年くらいで発見あるいは発明された「伝統」がかなりあり、そういったものを集めて解説しています。エッセイストの酒井順子の作品のように、なかなかよく下調べが行き届いている気がします。まあ、一見すると、どうでもいいような知識の詰め合わせかもしれませんが、「何かおかしい」と思えるようなリテラシーを身につけるにはいいように思います。

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2018年5月26日 (土)

5月後半の読書、来週からブログを再開します!!

来週からブログを再開します。その前に、5月後半の読書のうち、まず、5月第3週、すなわち、5月13日(日)から5月19日(土)の読書は以下の通りです。

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まず、今野敏『棲月』(新潮社) です。隠蔽捜査シリーズ第7話です。シリーズの主人公は竜崎なんですが、隠れキャラの戸髙に続いて竜崎署長に対して「マジっすか?」とタメ口を聞く署員が現れたりする一方で、大森署での最後の事件です。サイバー犯罪への対応も初めてです。

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次に、陳浩基『13・67』(文藝春秋) です。中華圏ミステリの連作短篇集です。タイトルの通りに、香港での事件を2013年から1967年にさかのぼります。

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次に、連城三紀彦『悲体』(幻戯書房) です。島田荘司にもあるんですが、在日朝鮮人のストーリーは私は少し苦手です。

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最後に、ダヴィド・ラーゲルクランツ『ミレニアム 5 復讐の炎を吐く女』上下(早川書房) です。スティーグ・ラーソンのシリーズを引き継いだシーズン2の第2作です。次の第6話で終了予定と私は聞き及んでいます。

次に、5月第4週20日(日)から本日26日(土)の読書は以下の通りです。

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まず、村田晃嗣『銀幕の大統領ロナルド・レーガン』(有斐閣) です。同志社大学の前の学長である政治学者の分析した米国1980年代ののレーガン大統領伝です。やや強引に映画と結びつけたりしています。久し振りに、とても読み進むのに苦労しました。私にしては3日がかりというのはとても遅いペースです。

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次に、生駒哲郎『畜生・餓鬼・地獄の中世仏教史』(吉川弘文館) です。仏教徒として考えさせられ、勉強にもなる本でした。

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次に、関根達人『墓石が語る江戸時代』(吉川弘文館) です。墓石に残された記録を読み解く歴史書です。その昔に、九成宮醴泉銘を書道のお手本にお稽古に励んだ記憶が蘇ってしまいました。

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次に、ステファノ・マンクーゾ『植物は<未来>を知っている』(NHK出版) です。植物に関する知性や進化の考え方が大きく改めさせられます。とても美しい写真も満載です。

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次に、山本理顕・仲俊治『脱住宅』(平凡社) です。やや手前味噌な住宅に対する考え方が見受けられますが、土地制約の大きな日本で住宅にとどまらないコミュニティのあり方に関する興味深い分析です。ただ、経済性はまったく無視されている気がします。

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最後に、イサベル・アジェンデ『日本人の恋びと』(河出書房新社) です。少し前に、平野啓一郎『マチネの終わりに』を読んで感激した記憶がありましたが、本書も大人の恋の物語です。著者はチリのアジェンデ元大統領の姪だったりします。私はチリの大使館に3年間勤務しましたので、なんとなく親しみを勝手に覚えています。スペイン語の翻訳がとてもいいです。

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