2019年8月23日 (金)

7月統計では消費者物価指数(CPI)の緩やかな上昇が続く!

本日、総務省統計局から7月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月と同じ+0.6%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価、7月0.6%上昇 緩やかな上昇続く
総務省が23日発表した7月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101.5と前年同月比0.6%上昇した。プラスは31カ月連続。伸び率は前月と同じだった。QUICKがまとめた市場予想の中央値は同じく0.6%上昇だった。
菓子類など、生鮮食品を除く食料で広がっている値上げの流れが物価を押し上げた。高止まりしている電気代やガス代、人件費が高騰している外食なども、物価上昇に寄与した。
電気掃除機など家庭用耐久財も上昇した。総務省は「新製品の発売に加え、消費増税前の駆け込み需要の影響もありそうだ」との見方を示した。
一方、ガソリン価格の下落傾向や、大手各社の値下げによる携帯電話の通信料の下落が物価の下げ圧力となった。
生鮮食品を除く総合では302品目が上昇した。下落は164品目、横ばいは57品目だった。総務省は「緩やかな上昇が続いている」との見方を据え置いた。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は101.5と前年同月比0.6%上昇した。生鮮食品を含む総合は101.6と0.5%上昇したが、キャベツなど生鮮野菜の値下がりが物価上昇を抑えた。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入れずにコア財に含めています。政府の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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ということで、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは+0.5~+0.6%のレンジで中心値が+0.6%でしたので、ジャストミートしたといえます。加えて、6月統計から7月にかけての変化はそれほど大きくなく、私がいつも物価への影響力大きいと分析しているエネルギーについても、前年同月比寄与度で+0.04%のプラス寄与に過ぎませんでした。いわゆる小動きであり、10月の消費税率引き上げを前に企業が様子見をして価格の動きが小さくなっているそうな気すらします。もっとも、石油価格は下落を続けており、ガソリンの寄与度▲0.10%を含めて、石油製品の寄与は▲0.09%とマイナスであり、石油価格からラグをもって変動する電気代とガス代の寄与度が合わせて+0.14%ありましたので、エネルギー全体としてのくくりではプラス寄与を示しています。6月から始まった携帯電話、特に、スマートフォンの通信料の値下げについては、先月6月統計の通信料(携帯電話)が前年同月比で▲5.8%の下落、前年同月比への寄与度で▲0.12%に達していましたが、本日公表の7月統計では前年同月比で▲5.7%の下落、前年同月比への寄与度でも前月統計と同じ▲0.12%を示しています。先月のCPI統計公表時にも、このブログに書いた記憶がありますが、10月から消費税率が引き上げられる一方で、幼児教育の無償化が同時に始まれば、エネルギー価格の鈍化と相まって、この先CPI上昇率はさらに縮小する可能性が高いと私は予想しています。すなわち、消費税率引き上げの影響を除くベースで考えて、当面の足元では6月統計並みの+ゼロ%台半ばが続き、10月以降はゼロ%台前半にまで上昇率が縮小する可能性が十分あると見込んでいます。

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2019年8月22日 (木)

デロイトトーマツ試算のFTA活用による関税削減可能額やいかに?

今週月曜日8月19日にデロイトトーマツから「FTA活用による関税削減可能額 2019年に約1.1兆円」と題するニュースリリースが明らかにされています。試算の詳細を含めたpdfのリポートもアップされています。国別の削減可能な関税額は以下の通りです。

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縮小してしまったため、見にくくなっていますが、対象国別の削減額では、日EU EPAを締結したEU向け輸出が2019年に最大で約1708億円、ついでメキシコ向けが1557億円、マレーシア向けが1456億円となっています。もちろん、試算したデロイトトーマツではFTAの積極的な活用、さらに、締結国の拡大をオススメしています。

最後に、上の画像の米国を除く一番下の2国、すなわち、ペルーとチリなんですが、国旗が間違って逆になっています。私はペルーには行ったことがありませんが、チリでは経済アタッシェとして大使館に3年間勤務しました。それなりに馴染みあるこの両国の国旗取り違えはとても残念です。

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2019年8月21日 (水)

日経シサーチによるQR決済サービス利用者・非利用者のCrossMappingやいかに?

今週月曜日8月19日に日経リサーチから20~39歳のミレニアル世代を対象としたQR決済サービス利用の現状に関するネット調査結果が明らかにされています。私のような定年退職者は対象外の調査なんですが、まず、グラフは省略して、ミレニアル世代ですら、QRコード決済を使っているのは31.1%にとどまっています。利用頻度で見て、LINE Payと楽天PayとPayPayがビッグスリーとなっており、登録・保有比率が20%を超えています。続いて、d払い、QUIC Pay、メルペイ、Origami Pay、au Pay、Amazon Pay、ゆうちょPayの順となっています。繰り返しになりますが、ビッグスリーでも登録・所有者が20%程度、年に数回以上の利用者が13~14%程度にとどまっています。まあ、先日、7Payが大きくコケて9月30日でサービス終了となりましたが、背景として我が国でのQRコード決済の低調さが上げられるかもしれません。そして、日経リサーチの分析手法として有名なCrossMappingによるミレニアル世代のQRコード決済の利用者・非利用者のマッピングは以下の通りです。日経リサーチのサイトから、図2. QR決済利用者の特徴マップ と図3. QR決済非利用者の特徴マップ の画像を私の方で結合させています。

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まず、上のパネルですが、QRコード決済サービス利用者の特徴をいくつか取りまとめ他グループがあり、左上の「バーチャル先端」グループから順に時計回りに解説があり、まず、第1に、「バーチャル先端」は先端的なツールやサービスの中でも、バーチャルな体験を好むグループであり、第2に、「リアル先端」は先端的なツールやサービスの中でも、リアルな体験を伴うものを利用し、利便性の向上を重視するグループとされています。第3に、「日用品ネット購入」はそのまんまで、楽天市場やメルカリなどで日用品を購入するグループです。第4の「娯楽品ネット購入」も同じで、特に、キャンペーンを利用してネットでダウンロードも含めて娯楽品を購入するグループだそうです。第5に、「現金代替」はネットではなく、実店舗でQR決済サービスを利用するグループであり、ポイント還元や現金・小銭を使わなくて済む利便性にメリットを感じていて、当然ながら、利用可能な店舗が増えることを期待している、とされています。最後に、「メルカリ利用」もその名の通りで、先端的なサービスの中でも、敷居の低いメルカリをよく利用するグループです。
次に、下のパネルの非利用者の特徴も、いくつかのグループに分けてあります。これも左上の「安全性希求」から時計回りに説明があり、第1に「安全性希求」はその名の通り、サービスの安全性が担保されているのかどうかに関心があり、使っていないグループです。第2に、「プロセスが面倒」もそのまんまであり、サービスの登録自体が面倒であるとともに、いちいちスマートフォンを取り出して店員に伝えることも面倒であると考えて利用していないグループです。もしも、我が家の上の倅がQRコード決済サービスを利用していないとすれば、ほぼほぼ間違いなくこのグループだろうと私は考えます。次に、第3に、「セキュリティー不安」が上げられていますが、最初の「安全性希求」との違いが私にはよく理解できませんでした。第4に、「利用困難」があり、高齢者などではなくミレニアル世代でも機械操作の不慣れとか、あるいは、可処分所得が低いとかで、そもそもの環境的に、あるいは、QR決済サービスの利用が難しいなどのグループです。最後の第5に、「ワンストップ化不安」として、携帯電話やスマートフォンを保有しておらず、スマホを利用したサービスそのものに対して不安がある、あるいは、スマホのみを利用し、依存してしまうことに不安を抱いているグループが上げられています。

私自身はQRコード決済は使っておらず、上の非利用者の特徴からすれば、たぶん、我が家の上の倅と同じで「プロセスが面倒」なんだろうと思います。カード型のNANACOやWAONといった流通系の電子マネーは使っていますし、もちろん、交通系も利用しています。我が家の公共料金はほぼほぼ私のクレジットカードで支払っていますので、キャッシュレス決済は毎月数万円に上ることもあり、決して現金決済に頼っているわけでもなく、まずまずキャッシュレス決済の利用は進んでいる気もします。まあ、QRコード決済サービスでなくても、ほかにもポイントも付けば小銭もいらないなどの利便性が高い決済サービスがある、ということかもしれません。いずれにせよ、7Payは大きくコケましたが、10月の消費税率引き上げに伴うキャッシュレス決済のポイント還元もあり、このリポートで取り上げられたQRコード決済だけでなく、電子マネーやクレジットカードも含めて、現金離れが進むのは間違いありません。

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2019年8月20日 (火)

10月の消費税率引き上げを経て今年度末くらいまでの短期経済見通しやいかに?

先日8月9日に内閣府から公表された本年4~6月期GDP統計速報1次QEを受けて、シンクタンクや金融機関などから2020年度末くらいまでの短期経済見通しがいっせいに明らかにされています。四半期ベースの詳細計数まで利用可能な見通しについて、本年度2019年度末まで取りまとめると以下の通りです。なお、下のテーブルの経済見通しについて詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。計数の転記については慎重を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、各機関のリポートでご確認ください。なお、"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名2019/4-62019/7-92019/10-122020/1-3FY2019
actualforecast
日本経済研究センター+0.4
(+1.8)
+0.1
(+0.3)
▲0.8
(▲3.3)
+0.0
(+0.1)
+0.7
日本総研(+0.6)(▲2.9)(+1.5)+0.8
大和総研+0.0
(+0.1)
▲0.4
(▲1.7)
+0.3
(+1.0)
+0.9
みずほ総研+0.0
(+0.2)
▲0.9
(▲3.4)
+0.1
(+0.3)
+0.7
ニッセイ基礎研+0.2
(+0.7)
▲0.6
(▲2.5)
+0.1
(+0.4)
+0.4
第一生命経済研+0.1
(+0.3)
▲0.5
(▲2.1)
+0.2
(+0.6)
+0.9
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.2
(+0.6)
▲0.6
(▲2.4)
+0.2
(+0.7)
+0.9
三菱総研+0.1
(+0.2)
▲0.6
(▲2.5)
+0.1
(+0.5)
+0.7
SMBC日興証券▲0.6
(▲2.3)
+0.5
(+1.8)
+0.0
(+0.1)
+0.9
農林中金総研+0.0
(+0.0)
▲0.5
(▲2.0)
▲0.4
(▲1.5)
+0.7
明治安田生命+0.0
(+0.1)
▲0.6
(▲2.2)
+0.1
(+0.4)
+0.8

一番右の列の2019年度成長率は前年度比そのままですが、四半期成長率については上段のカッコなしの数字が季節調整済み系列の前期比で、下段のカッコ付きの数字が前期比年率となっています。2019年4~6月期までは実績値、7~9月期からは見通しであり、すべてパーセント表記を省略しています。なお、日本総研のリポートでは前期比年率の成長率しか利用可能ではありませんでした。ということで、見れば明らかなんですが、10月からの消費税率の引き上げの前後の動向については、かなり多くの機関で足元の7~9月期の駆け込み需要はそれほど大きくなく、年率成長率でも潜在成長率水準の+1%に達しない一方で、10~12月期には消費税率引き上げによる成長率の落ち込み、マイナス成長を見込む結果となっています。唯一の例外はSMBC日興証券であり、実は、私はこのSMBC日興証券の「ハウスビュー」の経済見通しの詳細バージョンのニューズレターをメールでもらっているんですが、それを参照するまでもなく、キャッシュレス決済を対象とする5%ポイント還元などの駆け込み需要と反動減をスムージングする政府対策などにより、逆に、7~9月期に買い控えが起こり、増税後の10~12月期にその反動増が生ずる、と見込んでいるようです。官庁エコノミストの経験ある私の目から見て、とても大きな疑問符がつきますし、上のテーブルを見ても、かなりの少数意見のような気がします。
もうひとつの観点は、消費税率引き上げのショックがどの程度長引くかで、これも、多くの機関はマイナス成長は1四半期だけで、来年2020年1~3月期にはプラス成長に回帰すると見込んでいます。逆にいえば、消費税率引き上げ直前の駆け込み需要がそれほど大きくない、ということの裏返しなのであろうと私は受け止めています。この点の少数意見は農林中金総研であり、2020年1~3月期までマイナス成長が2四半期連続で継続すると見込んでいます。ただ、上のテーブルでは省略していますが、農林中金総研のリポートでも2020年4~6月期にはプラス成長に回帰すると予測しています。もしも、農林中金総研の見通しが正しければ、世間では2四半期連続のマイナス成長でテクニカルな景気後退局面入りのシグナルと受け取る可能性がないでもありませんが、まあ、2020年に入れば、東京オリンピック・パラリンピックの経済効果などもあって、それほど長くマイナス成長は続かないんでしょうね。
下のグラフは日本経済研究センターのサイトから短期経済見通しの前期比と寄与度のグラフを引用しています。

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最後に、私が知る限り、浜銀総研と富国生命が年度半期の上半期と下半期のベースの見通しを、また、信金中金地域・中小企業研が年度の見通しを、それぞれプレスリリースしています。四半期ベースの見通しが利用可能ではなかったので上のテーブルには含めていません。ほかにもあるのかもしれませんが、取りあえず、これら3機関をどうしても見たい方は、下にリンクだけ置いておきます。

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2019年8月19日 (月)

貿易収支が赤字に転じた7月の貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から7月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲1.6%減の6兆6432億円、輸入額も▲1.2%減の6兆8928億円、差引き貿易収支は▲2496億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の貿易収支、2カ月ぶり赤字 中国向け輸出は5カ月連続減
財務省が19日発表した7月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2496億円の赤字だった。赤字は2カ月ぶり。中国向けの半導体等製造装置や自動車部品の輸出が大幅に落ち込んだ。
全体の輸出額は前年同月比1.6%減の6兆6432億円だった。輸入額は1.2%減の6兆8928億円で、イランからの原粗油などの輸入が減った。
中国向けの輸出額は9.3%減の1兆2288億円と、5カ月連続で減少した。財務省は「中国経済が減速している影響を受けた可能性がある」との見方を示した。一方、中国からの輸入額は2.8%増の1兆6126億円と3カ月ぶりに増加した。パソコンなど電算機類(含む周辺機器)の輸入が増えた。
韓国向けの輸出額は6.9%減の4363億円と、9カ月連続で減少した。半導体等製造装置などの輸出が大幅に減少した。日本政府による韓国向けの半導体材料などの輸出管理の強化について、財務省は「(対象となった)3品目は、貨物の形態などによって様々な統計品目番号に分類される可能性がある」と、貿易統計への具体的な影響を示すことは困難と説明している。
対米国の貿易収支は5794億円の黒字だった。半導体等製造装置や建設用・鉱山用機械の輸出が増えた。対欧州連合(EU)の貿易収支は679億円の赤字だった。
7月の為替レート(税関長公示レート)は1ドル=108円00銭で、前年同月に比べ円高・ドル安に振れた。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、貿易収支は▲2000億円の赤字とのことでしたので、実績はこれをやや上回る貿易赤字となりました。ただし、輸出入ともに前年同月から数パーセント減少した上での差し引きの貿易赤字ですから、まあ、縮小均衡と捉える向きもあるかもしれません。もちろん、我が国を含めて世界経済の減速が大きな要因となった輸出入額の減少と考えるべきです。やや別の観点ながら、先月の貿易統計公表時の論評で、韓国との6月統計での貿易額が2桁減となっている点を指摘しましたが、7月統計では引き続き前年同月比マイナスながら下げ幅は縮小しています。ただ、制度的な要因で管理が強化される直前の駆込みがあったとの指摘もあり、日韓貿易の減少に歯止めがかかったようには見受けられません。ですから、米中間の貿易摩擦とともに、マクロの世界経済の減速に加えて、東アジアにおける通商政策による貿易制限的な効果も我が国輸出入の低迷の一因となっていることは確かです。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、まず着目すべきは、先月6月統計まではここ数か月の輸出額の減少はほぼほ数量が減少に寄与していたんですが、ようやく輸出に底入れの兆しが見えます。これは中国向け輸出の回復に依存するわけですが、もちろん、今後、5月に米国が発動した中国製品2000億ドルに対する25%の追加関税の影響が、中国経済に現れることが考えられます。マクロの中国経済はそろそろ底入れしたと考えるエコノミストは少なくないんですが、それほど単純なパスで中国経済が回復に向かうかどうかはまだ不確実性が高いと私は考えています。ただ、私がちょうだいしているシンクタンクのリポートのうちのいくつかで、財務省の公式発表ではなく各機関独自に季節調整を実施している例があり、繰り返しになりますが、輸出数量の季節調整値からは、そろそろ底入れの兆しがうかがえる、とするリポートも複数ありました。

我が国景気との関係で、もっとも避けたいシナリオは10月からの消費税率引き上げによる国内経済のダメージに加えて、同時に世界経済、特に、中国経済が米国の関税率の追加引き上げの影響により低迷し、我が国の中国向け輸出が減速して、内外需要が同時に低迷することです。しかし、米国の関税率引き上げはすでに発動されており、我が国の消費税率引き上げもほぼほぼスケジュールされていますので、このタイミングの問題はなかなかに悩ましいところかもしれません。

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2019年8月16日 (金)

帝国データバンク「女性登用に対する企業の意識調査 (2019年)」の結果やいかに?

昨日、帝国データバンクから「女性登用に対する企業の意識調査 (2019年)」の結果が明らかにされています。女性管理職の割合は平均7.7%と前年比+0.5%ポイント上昇したなどとなっています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果の概要を4点引用すると以下の通りです。

調査結果
  1. 女性管理職の割合は平均7.7%と前年比0.5ポイント上昇。「30%以上」とする企業は7.1%(同0.3ポイント上昇)と緩やかな増加をみせた。他方、女性管理職がいない企業は46.7%と半数近くにのぼるが、女性管理職の割合は上昇傾向にある。また、女性従業員の割合は平均25.2%で同0.3ポイント上昇、女性役員の割合は平均9.8%で同0.1ポイント上昇した
  2. 今後、女性管理職の割合が増えると見込んでいる企業は23.6%。また、今後女性役員の割合が増えると見込んでいる企業は7.6%だった
  3. 社内外を問わず女性の活用・登用を進めている企業は50.0%。その効果は、「男女にかかわらず有能な人材を生かすことができた」(68.0%)が約7割となり、突出して高い。以下、「多様な働き方が促進された」(28.4%)、「女性の労働観が変化してきた」(27.5%)が上位となった
  4. 女性の活躍を促進するために重視する上位3項目は、女性の家庭における負担軽減に関する項目が並ぶ。「妊娠・出産・子育て支援の充実」(60.5%)が6割超でトップ。次いで、待機児童や保育士不足の解消などの「保育サービスの充実」(59.0%)、育休復帰支援などの「仕事と子育ての両立支援」(58.4%)が続いた

もう上の調査結果概要以上の情報はほとんどないんですが、リポートからグラフを引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、リポートから 女性の割合(従業員・管理職・役員) の最近3年間の推移を示すグラフを引用すると上の通りです。レンジの構成比を示す棒グラフで見ても判りにくいので、右側の欄外ともいえる平均を見れば、従業員の中の女性比率はここ3年でジワジワと上昇し、今年2019年には25%を超えました。課長職以上の女性管理職比率も7.7%に達しています。やや不思議なのが、女性役員比率であり、管理職比率を上回る10%近くに達しています。創業者一族が多い可能性があると私は受け止めています。

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次に、リポートから 女性管理職の平均割合 - 規模別・業界別 の去年と今年の推移を示すグラフを引用すると上の通りです。去年と今年の2年間の推移ですので大きな違いはないんですが、規模別では規模が大きいほど女性管理職の登用が進んでいないのが見て取れます。また、 業界別では、「小売」、「不動産」、「サービス」で高く、「建設」、「運輸・倉庫」、「製造」などが低くなっています。私なりの偏った印象ながら、B to C の接客の要素多い業種で女性管理職比率が高いような気がします。それから、去年から今年にかけて押しなべて女性管理職比率が上昇している一方で、「農・林・水産」のような例外もあるものの、去年女性管理職比率が高かった業種は今年にかけての上昇幅も大きいんではないか、そして、逆は逆なんではないか、といった印象を持ちます。もしも、この傾向が続くとすれば、女性管理職比率の業種間の格差は拡大することになりかねません。時間がかかる課題とはいえ、何らかの意識的な取り組みの必要性を示唆しているような気がします。

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2019年8月15日 (木)

東京脱出組はどういう年齢層か?

参議院事務局から毎月「経済のプリズム」が公表されていますが、8月号の「東京は誰に住みよいか」と題するコラムを読みました。お盆の季節で、特段の経済情報もなく、軽く取り上げておきたいと思います。

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コラムでは、三大都市圏や東京圏への人口流入を歴史的に概観し、バブル崩壊後の1990年代なかばから東京一極集中が進んでいるように見えながら、すべての年代で東京への流入が進んでいるわけではないとし、年齢別に見て、0~14歳が流出超の▲2,489人、15~29歳の若年層はもっとも大きい流入超で+85,607人、30~64歳はそれほどの流入超はなく+240人、そして、65歳以上の高齢層は▲5,872人の流出超となっています。上のグラフは 2014-2018年(平均)の都道府県別の転入超過数 のグラフを参議院のコラムから引用しています。
見れば明らかな通り、8万人近い東京都への人口流入に対して、15~29歳の若年層はこれを上回る8.5万人超の流入超過がある一方で、30~64歳はほぼほぼゼロで、0~14歳の中学生以下層はマイナスですので、かなりの程度に子育てファミリーは東京から流出している可能性が指摘されています。65歳超の高齢層は特別養護老人ホームに入所できない、いわゆる「待機老人」が東京都外の施設に入所するのもさることながら、高齢者には住みにくい東京を脱出する向きも少なくないような気がします。

実は、私も今年3月にすでに定年退職し、もともとが関西圏の京都出身ですし、上の倅はすでに就職して独身寮に入り、下の倅は大阪で下宿しての学生生活ですから、関西圏に限らず、高齢層に入りつつある我が家も東京脱出を考えないでもありません。

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2019年8月14日 (水)

イレギュラーな大型受注で増加を示した機械受注の先行きをどう見るか?

本日、内閣府から6月の機械受注が公表されています。変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、大型受注案件が入って、季節調整済みの系列で見て前月比+13.9%増の9603億円を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月機械受注、前月比13.9%増 鉄道車両の大型受注で
内閣府が14日発表した6月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比13.9%増の9603億円だった。増加は2カ月ぶりで、市場予想の中央値である1.5%減を大きく上回った。伸び率は比較可能な2005年4月以降で最も高くなった。製造業の受注は減少した一方、非製造業が大きく伸びた。内閣府は「非製造業の運輸業・郵便業で、鉄道車両の大型受注案件が複数みられたことが大きく影響した」と分析した。
6月の受注額は製造業が1.7%減の3644億円だった。減少は2カ月連続。その他製造業で、火水力原動機や通信機などの受注が減った。非製造業は30.5%増の6147億円。増加は2カ月ぶり。大型案件のほか、その他非製造業で電子計算機等や原子力原動機の受注が増えた。前年同月比での「船舶、電力を除く民需」の受注額(原数値)は12.5%増だった。
基調判断は「持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。「6月は高い伸び率となった一方、前月がマイナスだったことなどを踏まえて、判断した」という。
4▲6月期は前期比7.5%増の2兆7169億円だった。増加は3四半期ぶりだが、3月末時点の見通しよりは低い伸び率となった。製造業は2.5%増、非製造業は13.1%増だった。
7▲9月期は前期比6.1%減と、2期ぶりに減少する見通し。製造業は2.8%増。工作機械や産業機械などの増加で2期連続で増加する見込み。非製造業は12.5%減と鉄道車両などの受注減で2期ぶりの減少となる見通し。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは、季節調整済みのコア機械受注の前期比で▲1.5%減でしたから、実績の2桁増はちょっとびっくりでしたが、これも引用した記事にある通り、「非製造業の運輸業・郵便業で、鉄道車両の大型受注案件が複数みられたことが大きく影響した」とのことですので、どこまでが、いわゆる「実力」なのかは不明です。コア機械受注の前月比の伸びが+13.9%、ただし、産業別の内訳を少し詳しく見ると、米中間の貿易摩擦などで世界経済減速の影響大きい製造業は▲1.7%のマイナスであり、船舶と電力を除く非製造業は+30.5%増を示したものの、その中でも、運輸業・郵便業が大型案件の受注というイレギュラーな要因で+91.4%増を記録しています。ただ、5月から6月にかけての前月差を見ると、コア機械受注全体で+1175億円増、うち、イレギュラーな運輸業・郵便業は+845億円増ですから、この寄与が決定的に大きいとはいうものの、差額の+330億円増は残りの産業で叩き出していますので、季節調整済みの系列は個別の産業を足し合わせても合計と一致しないという留保条件はあるものの、決して、イレギュラーな大型案件だけでコア機械受注が前月比でプラスになったわけではない、と考えるべきです。さて、機械受注は変動の激しい指標ですので、6月統計が利用可能になった段階で、少し四半期統計にも目を向けておくと、まず、コア機械受注については、昨年2018年10~12月期▲3.2%減、今年2019年1~3月期も同じく▲3.2%減の後、4~6月期には+7.5%増を記録しています。上のグラフの上のパネルを見ても、太線の6か月後方移動平均のトレンドで見て、今年の1~3月期をボトムとしてジワリと4~6月期に増加しているのが見て取れます。ただし、同時に、先行き7~9月期の見通しは前期比でマイナスであり、コア機械受注が▲6.1%減の2兆5,525億円、内訳としては、製造業は+2.8%増である一方で、船舶と電力を除く非製造業は▲12.5%減と見込まれています。さのさらに先の先行きについては、製造業が世界経済の低迷により投資意欲が高まらず、緩やかな減少を示すと考えられる一方で、非製造業は人手不足などに対応する省力化や合理化投資が伸びる余地があり、投資も増加すると考えられます。ただ、コア機械受注全体としては横ばいないし緩やかな減少ではないか、と私は予想しています。

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機械受注の四半期データが利用可能となりましたので、コア機械受注の季節調整済みのベースでの達成率のグラフを久し振りに書いてみました。上の通りです。エコノミストの経験則として、コア機械受注の達成率90%が景気転換点といわれているんですが、今年2019年1~3月期に96.3%を記録した後、4~6月期は91.2%まで低下しています。このまま7~9月期に90%を下回る可能性も否定できません。

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2019年8月13日 (火)

7月統計で下落幅が拡大した企業物価(PPI)の今後の方向感やいかに?

本日、日銀から7月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲0.6%の下落と、先月統計からマイナスに転じて、今月はマイナス幅が拡大しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の企業物価指数、前年比0.6%下落 16年12月以来の下げ幅
日銀が13日発表した7月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は101.2で前年同月比で0.6%下落した。下落幅は2016年12月以来2年7カ月ぶりの大きさ。6月に2年6カ月ぶりのマイナスとなったが、7月は2カ月連続での下落となった。
前月比でみると横ばいだった。米中貿易摩擦によるリスク警戒感の高まりで原油相場が下落し、「石油・石炭製品」「化学製品」「プラスチック製品」などが低下した。一方で夏季電力料金の適用期間に入ったことから「電力・都市ガス・水道」が上昇した。夏季電力料金の影響を除くと前月比0.2%のマイナスとなっている。
円ベースでの輸出物価は前年比で4.7%下落し、3カ月連続のマイナスとなった。前月比では0.3%下落した。輸入物価は前年比8.1%下落し、3カ月連続のマイナスとなった。前月比では1.8%の下落となった。中国経済の先行き不透明感の強まりで「化学製品」などが低下した。軟調な原油相場も下落に影響した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。公表している744品目のうち前年比で上昇したのは373品目、下落したのは280品目だった。上昇と下落の品目差は93と6月の確報値(122品目)から29品目減った。
日銀の調査統計局は「米中貿易摩擦の影響で商品市況が悪化しており、これが物価下落の要因となっている。今後も注視が必要だ」との見通しを示した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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企業物価指数(PPI)のうちのヘッドラインとなる国内物価は、前年同月比で見て先月公表の6月統計が2016年12月以来の1年半振りにマイナスに転じて▲0.1%を示した後、7月にはさらにマイナス幅を拡大して▲0.6%となりました。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは、前年同月比で▲0.5%の下落ということでしたので、ほぼジャストミートしました。国際商品市況における石油価格の低迷により、国内物価のうちの石油・石炭製品が前年同月比で見て▲8.7%と下落幅を拡大し、輸入物価では石油・石炭・天然ガスが▲13.8%を記録しています。加えて、米中貿易摩擦に起因する中国経済の停滞などにより、同じく非鉄金属が▲6.7%、化学製品が▲3.7%、などと下落を続けています。上のグラフを見ても明らかな通り、ヘッドラインとなる国内物価も、輸出物価も輸入物価も、需要段階別で見て、素原材料も中間財も最終財も、すべて7月統計では前年同月比でマイナスを付けました。
人手不足の中で人件費比率の高い企業向けサービス価格指数(SPPI)を除けば、企業物価(PPI)が下落し始め、消費者物価(CPI)も上昇幅が縮小しています。先行きについても、本日公表のPPIでは国際商品市況や中国経済の影響を受け弱含みの動きが見込まれます。特に、円ベースの輸入物価の前年同月比上昇率は、昨年2018年8月にピークの+12.3%を付けていますので、来月統計までさらに下落幅を拡大する可能性があります。CPIも、10月から消費税率が引き上げられますが、その影響を除けば、幼児教育無償化のインパクトなどによりさらに上昇幅が縮小すると予想されています。ますます物価目標から遠ざかるような気がします。特に、気がかりなのは為替相場です。従来から、私は日本経済の先行き最大のリスクは為替相場であると強く主張してきていますが、東京市場におけるドル・円為替のスポット中心相場の月中平均の前年同月比で見て、今年2019年6月は▲1.8%、7月は▲2.8%の、それぞれ円高となっています。この6~7月の円ドル相場は108円台だったんですが、今週は105円台で推移していたりもします。広く報じられている通り、米国の連邦準備制度理事会(FED)が利下げに転じています。日銀はどういった動きを示すんでしょうか?

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2019年8月12日 (月)

最新技術のAI・ドローン・自動運転に関連する法人設立やいかに?

先週木曜日の8月8日に東京商工リサーチから、「『AI・ドローン・自動運転』関連事業者の新設法人調査」の結果が明らかにされています。昨年2018年に設立された法人数は12万8,610社で前年から▲2.7%の減少だったんですが、このうち、主要事業目的として「AI」を記載した企業は211社で+52.8%の増加、すなわち、前年比1.5倍増と急増しています。また、「ドローン」を記載した法人は195社で+9.7%減ながら、「自動運転」を記載した法人は7社と+250.0%増となっています。少し長い目で見て2014年から2018年にかけて、特に、AIとドローンの法人設立が急増しています。これ以上の情報はありませんが、以下のグラフを東京商工リサーチのサイトから引用しておきます。

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