本日は月末、というか、年末最後の閣議日ということで、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)と商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも11月の統計です。IIP生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲2.3%の減産でした。また、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+2.8%増の14兆2170億円を示し、季節調整済み指数は前月から+1.8%の上昇を記録しています。雇用統計では、失業率は前月から横ばいの2.5%、有効求人倍率も同じく横ばいの1.25倍を記録しています。まず、ロイターのサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
鉱工業生産11月は2.3%低下、半導体製造装置など減産で3カ月ぶりマイナス
経済産業省が27日公表した11月の鉱工業生産指数速報は前月比2.3%低下の101.7となり3カ月ぶりのマイナスとなった。半導体製造装置や自動車の減産などが響いた。
ロイター集計の民間予想中央値は3.4%低下だった。
基調判断は「一進一退」で据え置いた。
企業の生産計画を基にした予測指数は、12月が前月比2.1%上昇、2025年1月が1.3%上昇だった。
11月実績の内訳は、前月比で半導体製造装置が中国・台湾向け輸出減で14.7%減、液晶などフラットパネル・ディスプレー製造装置が中国向け輸出減で67.1%減など、生産用機械が9.1%の減産となり、指数を大きく押し下げた。
このほか自動車が4.3%減。普通乗用車の輸出減や小型乗用車の一部車種生産停止が響いた。金属製品は前月に橋梁(きょうりょう)の大型案件があった反動で5.7%の減産だった。
生産予測は12月は半導体製造装置など生産用機械が、1月は自動車など輸送機械、半導体など電子部品・デバイスが上昇をけん引する見通し。もっとも経産省では「米中経済動向や米利上げの影響などをリスク要因として注視」(幹部)する構えだ。
小売業販売11月は2.8%増、冬物衣料好調・食品値上げで33カ月連続増
経済産業省が27日公表した11月の商業動態統計速報によると小売業販売額は前年比2.8%増加し、33カ月連続増となった。ロイター集計の民間予想中央値1.7%増を上回った。気温低下による冬物販売好調や食品値上げなどが指数を押し上げた。
<鍋、肺炎用調剤など好調>
業種別では織物・衣服が前年比10.7%増、その他小売業が5.7%増、飲食料品1.4%増などだった。食品は「節約志向で販売点数は回復しておらず、数量よりも値上げ要因とみられる」(経産省幹部)という。自動車は一部メーカーの生産停止などが響き1.9%減だった。
業態別では百貨店が2.7%増、冬物衣料や外国人旅行者向けが好調だった。スーパーは食品値上げに加え、鍋や入浴剤など冬関連商品が伸び3.6%増だった。コンビニエンスストアは、たばこやおにぎりが堅調で1.9%増。家電大型専門店はスマートフォンなどがけん引し3.3%増だった。ドラッグストアもコメや菓子類の販売好調や、マイコプラズマ肺炎・インフルエンザ流行による調剤販売が好調で6.3%増となった。
完全失業率11月は2.5%、有効求人1.25倍 ともに横ばい
政府が27日発表した11月の雇用関連指標は完全失業率が季節調整値で2.5%と、前月から横ばいだった。有効求人倍率も前月比同水準の1.25倍だった。
ロイターの事前予測調査で完全失業率は2.5%、有効求人倍率は1.25倍と見込まれていた。
総務省によると、11月の就業者数は季節調整値で6808万人と、前月に比べて10万人増加。完全失業者数(同)は172万人で、1万人増加した。
厚生労働省によると、11月の有効求人数(季節調整値)は前月に比べて0.7%増。原材料や人件費などのコスト上昇を背景に、足元は求人を手控える動きがみられるものの、9月分の増加が大きく全体ではプラスとなった。求人、求職数ともに3カ月間有効で、データは9-11月の状況が反映される。
有効求職者数(同)は0.6%増。物価高などの社会情勢や最低賃金の引き上げを踏まえ、より良い転職の時期を検討している人が多いという。離転職を踏みとどまって求職活動を続ける動きが出ていた。
有効求人倍率は、仕事を探している求職者1人当たり企業から何件の求人があるかを示す。厚労省の担当者は雇用情勢について「悪くはない」と述べた。
3つの統計から取りましたので、とてつもなく長くなりましたが、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2020年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。
まず、引用した記事にはある通り、ロイターによる市場の事前コンセンサスでは、鉱工業生産指数(IIP)は▲3.4%の減産、また、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、同じく▲3.5%の減産が予想されていましたので、実績の前月比▲2.3%の減産はやや上振れた印象です。前月からマイナスの減産とはいえ、市場の事前コンセンサスからやや上振れていますので、統計作成官庁である経済産業省では生産の基調判断については、「一進一退」で据え置いています。先行きの生産については、製造工業生産予測指数を見ると、引用した記事にもある通り、足下の12月は補正なしで+2.1%の増産ですが、上方バイアスを除去した補正後では、#x25B2;0.3%の減産と試算されています。先行き生産は2か月連続の減産を見込んでいるわけです。ただし、来年2025年1月は+1.3%の増産との予想となっています。経済産業省の解説サイトによれば、11月統計における生産は、生産用機械工業が前月比で▲9.1%の減産で▲0.86%の寄与度を示したほか、自動車工業が▲4.3%の減産で▲0.58%の寄与度、金属製品工業が前月比▲5.7%の減産で▲0.25%の寄与度、などとなっています。他方で、生産低上昇に寄与したのは、汎用・業務用機械工業が+6.4%の増産で+0.44%の寄与度、輸送機械工業(除、自動車工業)が+15.2%の増産で+0.38%の寄与、石油・石炭製品工業が+2.1%の増産で+0.03%の寄与度、などとなっています。
続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整済みの2020年=100となる指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。見れば明らかな通り、小売業販売のヘッドラインは季節調整していない原系列の前年同月比で見るのがエコノミストの間での慣例なのですが、伸び率はまだプラスを維持しているものの、プラス幅が落ちてきているのが見て取れます。その上、季節調整済みの系列では9-10月統計で2か月連続して前月比マイナスを記録し、今月11月統計では+1.8%の伸びとなっています。引用した記事にある通り、ロイターでは前年同月比で+2.8%の伸びを市場の事前コンセンサスとしていましたので、上振れした印象を持つエコノミストも多かろうと思います。ただ、統計作成官庁である経済産業省では基調判断について、季節調整済み指数の後方3か月移動平均により、経済産業省のリポートでかなり機械的に判断していて、本日公表の11月統計までの3か月後方移動平均の前月比が▲0.3%の減少となりましたので、先々月9月の段階で「上方傾向」から「一進一退」と明確に1ノッチ下方修正した後、今月も「一進一退」で据え置かれています。鉱工業生産と同じ表現となっています。加えて、参考まで、消費者物価指数(CPI)との関係では、11月統計ではヘッドライン上昇率が+2.9%、生鮮食品を除くコア上昇率も+2.7%、生鮮食品及びエネルギーを除くコアコアCPI上昇率も+2.4%となっていますので、小売業販売額の11月統計の前年同月比+2.8%の増加は、インフレ率との関係はビミョーであり、実質消費はプラスか、マイナスか、きわどいところといえます。さらに考慮しておくべき点は、国内需要ではなく海外からのインバウンドにより、部分的なりとも小売業販売額の伸びが支えられている可能性です。したがって、小売業販売額の伸びが国内消費の実態よりも過大に評価されている可能性は考慮されるべきです。
続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。よく知られたように、失業率は景気に対して遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数ないし新規求人倍率は先行指標と見なされています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。記事にもある通り、ロイターでは失業率に関する事前コンセンサスは前月と同じ2.5%、有効求人倍率も前月から横ばいの1.25倍が見込まれていました。人口減少局面下の人手不足を背景に、失業率・有効求人倍率ともに前月から横ばいながら、どちらの指標も雇用の底堅さを示す水準が続いています。ただし、グラフからも明らかなように、雇用は堅調ながら、そろそろ改善局面を終えた可能性がある、と私は評価しています。ただ、それでも、季節調整していない前年同月差の増減で見て、11月統計では就業者が+34万人増、雇用者も+67万人増と大きな増加を示しています。なお、失業者数も▲5万人減少しています。もちろん、そろそろ景気回復局面は後半期に入っている可能性が高いと考えるべきですし、その意味で、いっそうの雇用改善は難しいのかもしれません。ただ、あくまで雇用統計は最近の失業率と有効求人倍率のように横ばいや改善と悪化のまだら模様である一方で、人口減少下での人手不足は続くでしょうし、米国がソフトランディングの可能性を高めている限り、それほど急速な雇用や景気の悪化が迫っているようにも見えません。
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