4か月ぶりに上昇率が鈍化した6月の消費者物価指数(CPI)
本日、総務省統計局から6月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の前年同月比で見て、前月の+3.7%からやや減速して+3.3%を記録しています。伸び率鈍化とはいえ、まだまだ+3%台のインフレが続いています。日銀の物価目標である+2%以上の上昇は2022年4月から39か月、すなわち、3年余り続いています。ヘッドライン上昇率も+3.3%に達しており、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率も+3.4%と高止まりしています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
6月消費者物価上昇3.3%に鈍化 全国、ガソリン定額補助が伸び抑制
総務省が18日発表した6月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合が111.4となり、前年同月と比べて3.3%上昇した。5月の3.7%を下回り、4カ月ぶりに伸び率が鈍化した。ガソリンの小売価格を抑えるための定額補助が伸びを抑えた。コメ類の上昇幅は100.2%だった。
QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は3.3%の上昇だった。
エネルギー価格全体は2.9%上がり、5月の8.1%上昇からは伸び率が大幅に縮んだ。ガソリンが1.8%下がった。5月は4.8%上昇だった。下落は8カ月ぶりとなる。5月22日から1リットル当たり最大10円の定額補助が始まった影響を受けた。直近の原油安も反映された。
電気代は5.5%上昇だった。5月の11.3%上昇から伸びが縮小した。都市ガス代も2.8%上昇したが、5月の6.3%からは縮小した。燃料価格の下落などの影響を受けた。
生鮮食品除く食料は8.2%の上昇だった。8.8%上昇だった23年9月以来、1年9カ月ぶりの高い伸びとなった。6月に価格改定したチョコレートが39.2%値上がりした。ブラジルの天候不良で出荷量が減少したコーヒー豆が40.2%上がるなど、幅広い品目が上昇した。
コメ類は100.2%上がった。5月の101.7%からは上昇幅が縮小したが、引き続きコメ価格は1年前の2倍の水準にある。CPI上のコメ類には備蓄米は含まず、コシヒカリといった銘柄米の値動きを反映する。
コメをつかったおにぎりは19.1%、外食のすしは6.5%それぞれ上昇した。
携帯電話の通信料は11.9%のプラスだった。通信大手による新料金プランの導入などがあった。
水道代は2.3%値下がりした。東京都の水道の基本料金無償化の影響が出た。公立の高等学校授業料は94.1%下落した。
何といっても、現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やたらと長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

私が確認した範囲で、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+3.4%ということでした。ただ、引用した記事には「3.3%」となっているのは不明です。いずれにせよ、実績の+3.3%の上昇率は予想の範囲内といえます。また、エネルギー関連の価格については、引用した記事にもある通り、5月22日から始まった「燃料油価格定額引下げ措置」によるガソリン価格の引下げなどが反映されています。この制度の詳細については、当然ながら、資源エネルギー庁の資料「新たな燃料価格支援策 (燃料油価格定額引下げ措置) について」が詳しいです。品目別に消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率とヘッドライン上昇率に対する寄与度を少し詳しく見ると、まず、食料価格の上昇が引き続き大きくなっています。すなわち、先月4月統計では生鮮食品を除く食料の上昇率が前年同月比+7.7%、ヘッドラインCPI上昇率に対する寄与度+1.84%であったのが、6月統計ではそれぞれ+8.2%、+1.96%と、一段と高い上昇率と寄与度を示しています。寄与度差は+0.11%ポイントあります。他方で、政府の「燃料油価格定額引下げ措置により、エネルギー価格の上昇率はやや鈍化しました。すなわち、エネルギー価格については5月統計で+8.1%の上昇率、寄与度+0.63%でしたが、本日公表の6月統計では上昇率+2.9%、寄与度+0.23%となっています。したがって、生鮮食品を除く食料とエネルギーだけで6月のヘッドラインCPI上昇率3.3%のうちの+2.2%ポイントほどを占めることになります。特に、食料の中で上昇率が大きいのはコメであり、生鮮食品を除く食料の寄与度+1.84%のうち、コシヒカリを除くうるち米だけで寄与度は+0.39%に達しています。引用した記事にもあるように、上昇率は前年同月比で+100.2%ですから、昨年から2倍に値上げされている、ということになります。また、電気代も高騰を続けており、5月統計の+11.3%の上昇ほどではありませんが、6月も+5.5%の上昇と、消費者物価平均を上回る上昇が続いています。
多くのエコノミストが注目している食料の細かい内訳について、前年同月比上昇率とヘッドラインCPI上昇率に対する寄与度で見ると、繰り返しになりますが、生鮮食品を除く食料が上昇率+8.2%、寄与度+1.96%に上ります。その食料の中で、これも繰り返しになりますが、コシヒカリを除くうるち米が2倍超に値上がりしていて、寄与度も+0.39%あります。備蓄米が出回り始めたとはいえ、銘柄米はまだまだ高止まりしています。うるち米を含む穀類全体の上昇率は+29.0%、寄与度は+0.67%に上ります。コメ価格の推移は下のグラフの通りです。コメ値上がりの余波を受けたおにぎりなどの調理食品が上昇率+6.9%、寄与度+0.26%、同様にすしなどの外食も上昇率+4.5%、寄与度+0.22%を示しています。主食のコメに加えて、カカオショックとも呼ばれたチョコレートなどの菓子類も上昇率+9.0%、寄与度+0.24%に上っています。特に、その中でも、チョコレートは上昇率+39.2%、寄与度0.14%を示しています。ほかの食料でも、鶏肉などの肉類が上昇率+6.0%、寄与度+0.16%、コーヒー豆などの飲料も上昇率+8.7%、寄与度0.15%、などなどと書き出せばキリがないほどです。食料やエネルギーは国民生活に欠かせない基礎的な財であり、実効ある物価対策とともに、価格上昇を上回る賃上げを目指した春闘の成果を期待しています。
最後に、総務省統計局の小売物価統計を元にした農林水産省資料「小売物価(東京都区部)の推移(総務省小売物価統計)」から引用した コメの小売価格 のグラフは下の通りです。昨年2024年年央くらいまで長らく5キロで2000~2500円のレンジにあったのですが、最近時点ではコシヒカリは5000円を超えており、コメの猛烈な価格上昇が見て取れると思います。

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