2018年12月11日 (火)

法人企業景気予測調査に見る景況感と設備投資動向の乖離は何が原因か?

本日、財務省から10~12月期の法人企業景気予測調査が公表されています。ヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は今年2018年10~12月期+4.3の後、先行き来年2019年1~3月期には+4.7と見込まれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10-12月大企業景況感、プラス4.3 建材・自動車向け好調
財務省と内閣府が11日発表した法人企業景気予測調査によると、10~12月期の大企業全産業の景況判断指数(BSI)はプラス4.3(7~9月期はプラス3.8)となった。プラスは2四半期連続。建材や自動車向けの需要が好調だった。
大企業のうち非製造業はプラス3.7(7~9月期はプラス2.4)。卸売業で建材向けの需要が好調だった。鉄鋼やエネルギーの販売価格上昇も寄与した。製造業はプラス5.5(7~9月期はプラス6.5)だった。化学工業で自動車向けの需要が増えた。
先行き2019年1~3月期の見通しは大企業全産業でプラス4.7だった。製造業がプラス4.2、非製造業がプラス5.0だった。4~6月期の見通しは全産業でプラス1.4だった。
18年度の設備投資は前年度比9.1%増となる見通し。前回調査(9.9%増)から小幅に下方修正した。19年度の設備投資見通しを見ると、大企業で「増加」が「減少」を上回った。
18年度の経常利益の見通しは0.4%増と前回調査(0.4%減)から上方修正した。
財務省と内閣府は企業の景況感について「政府の月例経済報告で『景気は緩やかに回復している』という判断が示されているが、そうした経済全体の傾向を反映した動き」としている。
景況判断指数は「上昇」と答えた企業と「下降」と答えた企業の割合の差から算出する。今回の調査は11月15日時点で、資本金1000万円以上の企業1万2895社が回答した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIのグラフは以下の通りです。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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今回の結果は、上のグラフの景況感とテーブルの引用はしませんが設備投資計画で企業マインドが乖離しているように見える点に絞って考えたいと思います。まず、結論から明らかにすると、景況感については、足元の今年2018年10~12月期から先行き2019年1~3月期の見通しは上向くわけで、今週金曜日公表予定のの日銀短観も見てみたい気はしますが、この法人企業景気予測調査については2018年4~6月期にマイナスをつけた後に上昇に転じており、統計の特性からして1期くらいリードを取るとしても、今年2018年年央くらいが企業マインドの一時的な底だったのかもしれません。日銀短観で確認したいと思いますが、景況感に現れる企業マインドは目先は上向きなのかもしれません。ただ、設備投資計画は下方修正されていますから、もっと長い期間を考えると、設備投資につながるような長期的なマインドは決して上向きではないように見えます。このあたりの乖離はビミョーな違いながら直観的にはあり得るところで、短期的に目先の景況感は決して悪くないものの、設備投資に現れるようなもう少し先の長い企業マインドはそれほど楽観できない、というふうに取りまとめられるのではないかと私は考えています。

いずれにせよ、今週金曜日に日銀短観が公表され、企業マインドの決定版のような統計ですので、さらに詳細な情報が明らかになることと期待しています。その前に、明日か明後日にでも各シンクタンクの日銀短観予想を取りまとめておきたいと予定しています。

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2018年12月10日 (月)

大きく下方修正された7-9月期GDP統計2次QEから景気の現状をどう見るか?

本日、内閣府から7~9月期のGDP統計速報、いわゆる2次QEが公表されています。1次QEの前期比年率▲0.3%のマイナス成長から2次QEでは▲0.6%と大きく下方改定されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

GDP、年率2.5%減に下方修正 7-9月改定値
内閣府が10日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.6%減、年率換算では2.5%減だった。速報値(前期比0.3%減、年率1.2%減)から下方修正となった。法人企業統計など最新の統計を反映した。
QUICKがまとめた民間予測の中央値は前期比0.5%減、年率2.0%減となっており、速報値から下振れすると見込まれていた。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.7%減(速報値は0.3%減)、年率は2.7%減(同1.1%減)だった。
実質GDPを需要項目別にみると、個人消費は前期比0.2%減(同0.1%減)、住宅投資は0.7%増(同0.6%増)、設備投資は2.8%減(同0.2%減)、公共投資は2.0%減(同1.9%減)。民間在庫の寄与度はプラス0.0ポイント(同マイナス0.1ポイント)だった。
実質GDPの増減への寄与度をみると、内需がマイナス0.5ポイント(同マイナス0.2ポイント)、輸出から輸入を差し引いた外需はマイナス0.1ポイント(同マイナス0.1ポイント)だった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは、前年同期に比べてマイナス0.3%(同マイナス0.3%)だった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2017/7-92017/10-122018/1-32018/4-62018/7-9
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)+0.7+0.4▲0.30.7▲0.3▲0.6
民間消費▲0.8+0.4▲0.3+0.7▲0.1▲0.2
民間住宅▲1.8▲3.3▲2.1▲1.9+0.6+0.7
民間設備+1.7+1.1+0.4+2.8▲0.2▲2.8
民間在庫 *(+0.4)(+0.2)(▲0.2)(+0.0)(▲0.1)(+0.0)
公的需要▲0.3▲0.1+0.0▲0.0▲0.2▲0.2
内需寄与度 *(+0.1)(+0.5)(▲0.4)(+0.8)(▲0.2)(▲0.5)
外需寄与度 *(+0.6)(▲0.1)(+0.1)(▲0.1)(▲0.1)(▲0.1)
輸出+2.7+2.1+0.5+0.3▲1.8▲1.8
輸入▲1.0+3.1+0.2+1.0▲+1.4▲+1.4
国内総所得 (GDI)+0.8+0.1▲0.6+0.6▲0.6▲0.9
国民総所得 (GNI)+1.0▲0.1▲0.8+0.9▲0.7▲1.0
名目GDP+1.0+0.5▲0.6+0.5▲0.3▲0.7
雇用者報酬+0.9▲0.4+1.0+1.6▲0.5▲0.4
GDPデフレータ+0.2+0.1+0.5+0.0▲0.3▲0.3
内需デフレータ+0.6+0.6+0.9+0.5+0.7+0.7

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された2018年7~9月期の最新データでは、前期比成長率がマイナスを示し、特に、水色の設備投資がマイナス寄与が大きいのが見て取れます。

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基本的には、7~9月期GDP2次QEのマイナス成長幅の拡大は、自然災害に伴う供給面の制約、物流の停滞などに起因し、それが企業マインドや消費者マインドを冷やした結果であり、足元の10~12月期にはこれらの制約や停滞を脱して我が国経済は緩やかながら回復ないし拡大の軌道に回帰する、というエコノミストのコンセンサスは特に変更を必要としない結果であった、と私は受け止めています。特に、1次QEからの下方修正の主因は法人企業統計にの結果を受けた設備投資の下振れであることは明らかで、上のグラフでも設備投資の水色の積上げ棒グラフが大きなマイナスを示していることが読み取れます。同時に、1次QEから2次QEへの修正については、消費が小幅に下方修正され、住宅投資がこれも小幅に上方修正されています。
ただ、現時点での我が国の景気認識として、足元の今年2018年10~12月期にはプラス成長に回帰するとはいえ、ちょうど1年前の2017年10~12月期くらいからの実質成長率を見ると、2017年10~12月期+0.4%の後に2018年1~3月期が▲0.3%、4~6月期に+0.7%とプラス成長に回帰した後、本日公表の7~9月期にはまたまた▲0.6%とマイナス成長と、プラスとマイナスが交互に並んでおり、2016年1~3月期から2017年10~12月期までまる2年8四半期に渡ってプラス成長を継続していたころの拡大局面とは異なり、やや景気の踊り場的な認識を持っているエコノミストも少なくないと私は考えています。もちろん、この踊り場からそのまま景気後退局面に入るとは、私は必ずしも考えていませんが、先々週の12月5日付けの記事では「来年2019年後半に景気後退の可能性はあるか?」とのタイトルで、来年後半にも景気転換点が来る可能性も無視できないとのリポートを紹介したところです。いずれにせよ、景気拡大局面は後半に入っていることは忘れるべきではありません。そして、その現状認識の下で、来年2019年10月からの消費増税の影響を正しく評価する必要があることはいうまでもありません。

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最後に、本日は7~9月期GDP統計2次QEだけでなく、11月の景気ウォッチャーが内閣府から、また、10月の経常収支が財務省から、同時に公表されています。いつものグラフだけ上に示しておきます。景気ウォッチャーは季節調整済の系列で見て、現状判断DIは前月差+1.5ポイント上昇の51.0を、先行き判断DIは前月差+1.6ポイント上昇の52.2を、それぞれ示しています。経常収支は季節調整していない原系列の統計で+1兆3099億円の黒字を記録しています。

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2018年12月 8日 (土)

11月米国雇用統計は完全雇用に近い水準を示しFEDの利上げをサポートするか?

日本時間の昨夜、米国労働省から11月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+155千人増と、市場の事前コンセンサスだった+190千人程度の増加という予想をやや下回って伸びが原則したものの、失業率は前月と同じ3.7%を示し、約半世紀ぶりの低い水準を続けています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を10パラ引用すると以下の通りです。

Economy added disappointing 155,000 jobs in November
U.S. employers added a disappointing 155,000 jobs in November as hiring slowed amid worker shortages, the country's trade fight with China and wild stock market swings.
The unemployment rate was unchanged at a near half-century low of 3.7 percent, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg had estimated that 199,000 jobs were added last month. Also, employment additions for September and October were revised down by a modest 12,000.
Many analysts expected hiring to slow in November after robust job gains of well over 200,000 the prior month. That total was likely inflated by a rebound in the Carolinas after Hurricane Florence idled workers and curtailed payrolls in September.
Other crosscurrents were also at work last month. Winter storms in the Northeast and Midwest likely reduced employment by about 20,000, Goldman Sachs estimated. Meanwhile, Capital Economics expected a modest bounce-back in job growth in the Florida panhandle after Hurricane Michael tempered October advances but the research firm reckoned the bump would be offset by the effects of the California wildfires.
More broadly, monthly job increases have been surprisingly strong this year, averaging more than 200,000, despite a historically low unemployment rate that's leading to widespread worker shortages.
Some economists expect the brisk pace to slow. The 10 percent tariff the Trump administration slapped on $250 billion in Chinese imports has dinged business confidence and the recent truce between the two nations came after Labor's November jobs survey.
Business optimism also may have been dampened by the stock market's mid-November sell-off and the sputtering global economy. Initial jobless claims, which largely reflect layoffs, have drifted higher in recent months.
Average hourly earnings rose 6 cents to $27.35, leaving the annual gain unchanged at a nine-year high of 3.1 percent.
Employers are likely to continue to bump up wages as they increasingly struggle to find qualified workers. That could lead the Federal Reserve to raise interest rates faster to head off a run-up in inflation. The Fed is expected to raise its key short-term interest rate later this month for the fourth time this year.

とても長くなりましたが、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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まず、非農業部門雇用者の伸びですが、10月実績の237千人から減速し、市場予想の190千人程度も下回って、155千人にとどまりましたが、それでも労働市場がほぼ完全雇用にあるわけですから、労働の供給サイドでは人手不足で、雇用者の伸びが鈍化するのは当然、との受け止めもありますので、USA Today のように失望感を示すエコノミストは少ないように私は受け止めています。また、失業率も3か月連続で3.7%を記録し、1969年以来ほぼ半世紀ぶりの低い水準にあります。米国連邦準備制度理事会(FED)の連邦公開市場委員会(FOMC)のカレンダーでは今月12月の17~18にFOMCが開催される予定となっているところ、今年2018年内4回目の利上げが決定されるとの見方が有力となっており、先物市場では75%近い折り込みとなっています。ですから、注目はむしろ来年2019年以降の利上げペースとなっており、従来は、FEDでは2020年まで金融引き締めを続けて、政策金利であるFFレートを3.5%くらいまで引き上げるシナリオを描いてきたわけなんですが、金利上昇によるドル高が貿易摩擦の激化の中で、想定以上に輸出の伸びを鈍化させる可能性もあり、トランプ政権の圧力も勘案して、FEDがどのような判断を示すかに注目が集まっています。ただ、クリスマス商戦を見る限り、米国景気はまだまだ拡大を続ける方向にあることも確かですので、金融政策の舵取りが難しくなってきていることも事実です。

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最後に、その物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、じわじわと上昇率を高め、9月は前年同月比で+2.8%の上昇と、このところ2か月連続で+3%超の上昇率が続いています。日本だけでなく、米国でも賃金がなかなか伸びない構造になってしまったといわれつつも、日本や欧州と違って米国では物価も賃金上昇も+2%の物価目標を上回る経済状態が続いていて、10年振りに近い+3%超の賃金上昇ですから、12月FOMCでの追加利上げは賃金上昇からも十分に正当化されると私は考えています。他方で、繰り返しになりますが、トランプ政権からの風圧もかなり強く、FEDによる金融政策の舵取りも難しそうです。

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2018年12月 7日 (金)

自然災害による供給制約を脱して上昇した景気動向指数と名目賃金上昇続く毎月勤労統計!

本日、内閣府から景気動向指数が、また、厚生労働省から毎月勤労統計が、それぞれ公表されています。いずれも10月の統計です。景気動向指数のうち、CI先行指数は前月差+0.9ポイント上昇の100.5を、CI一致指数も+2.9ポイント上昇の104.5を、それぞれ記録しています。ともに2か月振りの上昇ですまた、毎月勤労統計のうち、名目賃金は季節調整していない原数値の前年同月比で+1.5%増の27万1333円に上昇しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月の景気動向指数 2カ月ぶり上昇 基調判断は据え置き
内閣府が7日発表した10月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が104.5と2カ月ぶりに上昇した。前月からの上昇幅は2.9ポイントで、1989年3月以来の大きさだった。9月に相次いだ自然災害の制約が解消され、消費や生産、輸出など幅広い分野で数値が上向いた。
景気の基調判断は「足踏みを示している」と前月から据え置いた。「改善」に上方修正されるには、指数の月々の変動をならした「3カ月後方移動平均」が3カ月以上連続して上昇する必要がある。9月には「改善」から「足踏み」に24カ月ぶりに判断が変更された。
一致指数の算出に使う9つの統計のうち、速報段階で公表されている7つのなかで6つがプラスに寄与した。寄与度が大きかったのは生産関連で、自動車やスマートフォン部品などの生産が増えた。数カ月後の景気を示す先行指数は2カ月ぶりに上昇に転じた。
10月の名目賃金、前年比1.5%増 増加は15カ月連続、毎月勤労統計
厚生労働省が7日発表した10月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、10月の名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は前年同月比1.5%増の27万1333円だった。増加は15カ月連続。基本給の増加が続いた。
内訳をみると、基本給にあたる所定内給与が1.3%増の24万4509円だった。残業代など所定外給与は1.9%増。ボーナスなど特別に支払われた給与は6.8%増だった。物価変動の影響を除いた実質賃金は0.1%減だった。名目賃金は増加したが、消費者物価指数が上昇し、実質賃金を押し下げた。
パートタイム労働者の時間あたり給与は2.0%増の1136円。パートタイム労働者比率は0.05ポイント上昇の30.98%だった。厚労省は賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」との判断を据え置いた。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、2つの統計を並べると長くなってしまいました。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は、毎月勤労統計のグラフとも共通して、景気後退期を示しています。

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まず、中身に入る前に、今日の公表から景気動向指数は、内閣府のお知らせ通り、2015年=100に基準年を改定されています。従って、上のグラフも従来のものに比べて、少し印象が異なるかもしれません。ということで、9月の自然災害に起因する供給制約や物流の停滞から復旧が見られ10月のCI一致指数は大きくジャンプしました。引用した記事にもある通り、前月差上昇幅+2.9ポイントは1989年3月以来の大きさを記録しています。プラスの寄与度で見て大きい順に、鉱工業用生産財出荷指数、商業販売額(卸売業)(前年同月比)、投資財出荷額(除輸送機械)、生産指数(鉱工業)、耐久消費財出荷指数となっています。これまた、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府の基調判断は2か月連続で「足踏み」となっているんですが、上方改定されると仮定すれば1ノッチ上の景気判断は「拡大」ですから、3か月連続で3か月後方移動平均がプラスに転じなければならず、10月統計はまだ1と月目なもので最短で12月統計を待って「拡大」に戻るかどうかが基調判断変更の基準となると私は受け止めています。いままでも、何回か、このブログでお示ししたように、現在の景気拡大局面が来年2019年1月まで継続すれば、米国のサブプライム・バブルに対応する戦後最長の景気拡大期間72か月を超える計算です。もちろん、単純に景気が拡張しているか後退しているかどうかの2項判断ですから、景気拡大の実感乏しいのは広く認識されている通りであり、私自身は主として賃金上昇が鈍いことが大きな要因のひとつを考えています。

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続いて、毎月勤労統計のグラフは上の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額ときまって支給する給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、3番目のパネルはこれらの季節調整済み指数をそのまま、そして、1番下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。ということで、景気に敏感な製造業の所定外時間指数は自然災害による供給制約からの復旧ととともに鉱工業生産指数(IIP)に連動して10月は上昇しており、賃金もそれなりに上向きと私は見ています。2番目のパネルの季節調整していない原系列の賃金指数の前年同月比のプラス幅も、3番目の季節調整済みの系列の賃金指数も、ともに上向きです。季節調整していない名目賃金指数の前年同月比上昇率が+1.5%ですから、消費者物価(CPI)上昇率とほぼ均衡しています。さすがに、世上いわれているように人手不足がここまで進んでいますので、正規雇用の増加とともに、それなりに賃金上昇の圧力は大きいと私は受け止めています。

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2018年12月 6日 (木)

来週月曜日に公表予定の7-9月期2次QE予想は下方修正か?

月曜日に公表された法人企業統計をはじめとして、ほぼ必要な統計が出そろい、来週月曜日の12月10日に今年2018年7~9月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の10~12月期以降の景気動向を重視して拾おうとしています。もっとも、2次QEですので法人企業統計のオマケの扱いも少なくなく、明示的に先行き経済を取り上げているシンクタンクは決して多くありませんでした。その中で、みずほ総研と第一生命経済研と伊藤忠経済研は長めに、ほかのシンクタンクもそれなりに、それぞれ引用してあります。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE▲0.3%
(▲1.2%)
n.a.
日本総研▲0.5%
(▲2.1%)
7~9月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資と公共投資が下方修正となる見込み。その結果、成長率は前期比年率▲2.1%(前期比▲0.5%)と1次QE(前期比年率▲1.2%、前期比▲0.3%)から下方修正される見込み。
大和総研▲0.4%
(▲1.8%)
2018年7-9月期GDP二次速報(12月10日公表予定)では、実質GDP成長率が前期比年率▲1.8%と、2四半期ぶりのマイナス成長となった一次速報(同▲1.2%)から下方修正されると予想する。
みずほ総研▲0.5%
(▲1.9%)
今後の日本経済については、良好な雇用環境を背景に消費が底堅く推移するほか、省人化投資ニーズの顕在化により、設備投資も堅調な推移を見込んでいる。ただし、中国経済の減速やIT需要のピークアウトを受けて、輸出の伸びは減速し、景気回復のテンポは鈍化する見通しだ。
また、当面のリスクとして、貿易摩擦の激化に注意が必要だ。現時点では、日本経済への影響は限定的なものにとどまっているが、米中間の貿易摩擦が更に高まった場合、日本に間接的ながら景気下押し圧力として働く可能性がある。また、米国が自動車への追加関税を強行した場合、自動車の輸出低下に留まらず、関連産業への波及、雇用を通じた消費への影響がでる恐れも十分にある。そのほか、不確実性の高まりが企業の投資マインドの下押し材料になる懸念もあり、その点でも留意が必要だろう。
ニッセイ基礎研▲0.4%
(▲1.5%)
12/10公表予定の18年7-9月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比▲0.4%(前期比年率▲1.5%)となり、1次速報の前期比▲0.3%(前期比年率▲1.2%)から下方修正されると予測する。
設備投資は前期比▲0.2%から同▲1.5%へと下方修正されるだろう。
第一生命経済研▲0.5%
(▲2.1%)
設備投資が足元で変調をきたしているという評価は妥当ではないだろう。人手不足に対応した合理化・省力化投資の拡大、インバウンド対応等による建設投資需要の増加、根強い研究開発投資需要など設備投資を取り巻く環境は良好である。日銀短観等の各種アンケート調査でも18年度の設備投資計画は非常に強く、企業の設備投資意欲の強さが示されている。7-9月期の減少は一時的で、10-12月期は再び増加する可能性が高い。設備投資は先行きも景気の下支え役として貢献するだろう。
伊藤忠経済研▲0.4%
(▲1.7%)
7~9月期のGDPが本予測の通り修正されたとしても、自然災害による一時的なマイナス成長という評価は変わらず、10~12月期には個人消費や輸出の持ち直しによりプラス成長に転じよう。実際に10月の小売販売や輸出数量指数、訪日外国人数など、個人消費や輸出の関連指標は復調している1。前期比マイナスに転じた設備投資は循環的なピークが近づいている可能性が高いものの、今年度補正予算での追加を受けて公共投資は増加に転じるとみられるほか、前回より小規模ながらも年明け後は消費増税を控えた駆け込み需要が出始めよう。そのため、今後の景気は、消費増税までは緩やかな拡大が続くと見込まれる。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲0.5%
(▲2.1%)
12月10日に内閣府から公表される2018年7~9月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比▲0.5%(年率換算▲2.1%)と1次速報値の同▲0.3%(同▲1.2%)から下方修正される見込みである。
三菱総研▲0.4%
(▲1.6%)
2018年7-9月期の実質GDP成長率は、季調済前期比▲0.4%(年率▲1.6%)と、1次速報値(同▲0.3%(年率▲1.2%))から下方修正を予測する。

上のテーブルを見れば明らかな通り、各シンクタンク軒並み1次QEの前期比年率▲1.2%から下方修正の予想で足並みがそろっています。その要因は、今週月曜日に公表された法人企業統計、特に設備投資ではなかろうかと私は想像しています。おおむね、上のテーブルの線はいいところで、私は▲2%に達するまで下方修正されることはないだろうと直観的にみていますが、web上にオープンな情報ではなくニューズレターでちょうだいしている某証券会社のエコノミストの中には、▲3%を超える大幅な下方修正を示唆している予想もありました。ひょっとしたら、証券会社の予想は何の営業かによってポジション・トークをしている場合があったりするんでしょうか。私にはよく判りませんが、債券営業のサポートをしているエコノミストは経済見通しを悪い方向で出して金利は上がらず債券価格は上昇との方向を示唆するのに対し、株式営業サポートのエコノミストは景気上向きの予想を出して株価上昇の方向を示唆する、というジョークを聞いた記憶もあります。あまり上品なジョークではないんですが、当たっているのかいないのか、何ともビミョーなところです。
ということで、最後に、下のグラフはみずほ総研のリポートから引用しています。ご参考まで。

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2018年12月 5日 (水)

来年2019年後半に景気後退の可能性はあるか?

昨日、12月4日付けで第一生命経済研から「2019年の経済展望」と題するリポートが明らかにされています。

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そのリポートの中の pp.5-6 で、2019年秋以降の景気後退局面入りの可能性を示唆しています。10月1日からの消費税率引き上げは、引き上げ幅が+2%ポイントで、家計負担も年2.2兆円にとどまる上に、私が報道で接する限りでも、(1)キャッシュレス決済によるポイント還元、(2)プレミアム付商品券、(3)住宅購入支援、(4)自動車購入支援、などの増税対策も実施されることから、全体としての家計負担はさらに小さくなる一方で、東京オリンピックの建設需要のピークは大会開催の1年前の2019年夏ころになる可能性があり、加えて、米中貿易摩擦やその結果としての中国をはじめとする新興国経済の減速などにより、我が国経済も下振れリスクとして影響を受ける可能性を示唆しています。なお、上のグラフはリポートから消費増税前後の家計の負担額と東京五輪前後の経済成長率を引用しています。
何度もこのブログでも主張している通り、景気拡大局面は後半戦に入っている可能性が高く、もっとも早ければこのリポートが示唆するくらいのタイミングで景気転換点を迎える可能性は無視できないと私も考えています。そして、早期の景気後退局面入りを回避するためには、適切な政策対応もさることながら、我が国企業の賃上げがもっとも効果的な気がします。ひいては、賃上げはデフレ脱却や国民にとっても実感ある景気拡大に多いに資するんではないか、と私は期待しています。

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2018年12月 3日 (月)

内部留保は積み上がるものの労働分配率が高まらない法人企業統計!!

本日、財務省から7~9月期の法人企業統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高は8四半期連続の増収で前年同期比+6.0%増の358兆8846億円、経常利益も9四半期連続の増益で+2.2%増の18兆2847億円、設備投資はソフトウェアを含むベースで製造業が+5.1%増、非製造業が+4.2%増となり、製造業と非製造業がともに伸びを示し、全産業では+4.5%増の11兆2784億円を記録しています。GDP統計の基礎となる季節調整済みの系列の設備投資は前期比▲4.0%減となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7-9月期の設備投資、8四半期連続増 生産能力増強などで 法人企業統計
財務省が3日発表した2018年7~9月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の設備投資は前年同期比4.5%増の11兆2784億円だった。増加は8四半期連続。製造業で自動車向け素材の生産能力増強や建設機械向け投資が堅調だった。全産業ベースの経常利益は前年同期比2.2%増の18兆2847億円で、9四半期連続の増益だった。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となる「ソフトウエアを除く全産業」の設備投資額は季節調整済みの前期比で4.0%減と5四半期ぶりに減少した。
設備投資の前年同期比の動向を産業別にみると、製造業は5.1%増加した。化学産業で自動車向け素材の生産能力を増強したほか、建設機械向け投資も寄与した。非製造業は4.2%増加した。オフィスビルの再開発や通信設備投資などの分野が増加した。
「ソフトウエアを除く全産業」の設備投資額の内訳は、製造業が季節調整済み前期比5.3%減、非製造業が3.3%減だった。
全産業ベースの経常利益は、製造業が1.6%減と2期ぶりにマイナスとなった。情報通信機械業で研究開発費が増加したほか、金属製品業で原材料や燃料などのコスト増が響いた。非製造業は4.6%増だった。情報通信業で端末の販売価格が上昇した。
売上高は6.0%増の358兆8846億円と8四半期連続で増収となった。製造業は4.3%増だった。車載向け半導体部品や半導体製造装置、建設機械の販売が増加した。非製造業は6.6%増だった。販売価格が上昇した卸売業や小売業、大型工事が増えた建設業などが増加した。
同統計は資本金1000万円以上の企業収益や収益動向を集計した。今回の18年7~9月期の結果は、内閣府が10日発表する同期間のGDP改定値に反映される。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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上のグラフのうちの上のパネルで季節調整済みの系列の売上げと経常利益を見て、やや私も戸惑ったんですが、この7~9月期は広く認識されているように、豪雨、台風、地震など相次ぐ自然災害が経済活動を阻害して、先月公表された7~9月期1次QEでもGDPはマイナス成長を記録し、そのほか鉱工業生産指数などの経済統計も同様の傾向にあったんですが、法人企業統計では経常利益こそ前期から低下したものの、売上げは伸びており、売上げと経常利益で乖離が生じています。同様に、下のパネルに見られる通り、設備投資は経常利益と同じ方向、つまり、前期から減少を記録しています。基本的に、統計に表れていないながら、売上げについては原油高などの価格転嫁が進み、実質ベースでは売り上げも低下している可能性があるのではないか、と想像しています。繰り返しになりますが、価格の統計からはこの事実は読み取れませんので、単なる私の想像です。いずれにせよ、季節調整済みの統計を見ている限りでは、売上げが伸びたのは謎として除外すると、経常利益と設備投資は前期からマイナスを示しているんですが、基本的に、7~9月期は自然災害による停滞が見られただけであり、緩やかな回復基調が継続していることは企業活動についても同じであると、私は受け止めています。ただ、このブログで何度も繰り返しましたが、景気循環の拡大局面が後半に入っていることも事実ですので、それなりに注意する必要はいうまでもありません。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。この2つについては、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。利益剰余金は統計からそのまま取っています。ということで、上の2つのパネルでは、太線の移動平均のトレンドで見て、労働分配率はグラフにある1980年代半ば以降で歴史的に経験したことのない水準まで低下し上向く気配すらなくまだ下落の気配を見せていますし、キャッシュフローとの比率で見た設備投資は50%台後半で停滞し底ばっており、これまた、法人企業統計のデータが利用可能な期間ではほぼ最低の水準です。他方、いわゆる内部留保に当たる利益剰余金だけは、グングンと増加を示しています。これらのグラフに示された財務状況から考えれば、まだまだ雇用の質的な改善の重要なポイントである賃上げ、あるいは、設備投資も大いに可能な企業の財務内容ではないか、と私は期待しています。ですから、経済政策の観点から見て、企業活動がここまで回復ないし拡大している中で、企業の余剰キャッシュを雇用者や広く国民に還元する政策が要請される段階に達しつつある可能性を指摘しておきたいと思います。

最後に、本日の法人企業統計を基に、いわゆる2次QEが来週月曜日の12月10日に内閣府から公表される予定となっています。1次QEでは季節調整済みの系列の前期比▲0.3%、前期比年率▲1.2%の成長率が、私の直感的な印象ながら、設備投資を中心に2次QEで下方修正される、と予想しています。これまた、直観的に何の根拠もなく、下方改定幅はかなり大きく、▲2%近くか、ひょっとしたら、▲3%を下回るかもしれないという気がします。

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2018年11月30日 (金)

大きな増産を記録した鉱工業生産指数(IIP)と小幅に悪化したものの完全雇用に近い水準が続く雇用統計!!

本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP) が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、さらに、内閣府から11月の消費者態度指数が公表されています。鉱工業生産指数と雇用統計は10月の統計です。鉱工業生産指数は季節調整済みの系列で前月から+2.9%の増産を示し、失業率は前月から+0.1%ポイント上昇したものの2.4%と低い水準にあり、有効求人倍率も前月から▲0.02ポイント低下の1.62倍と、タイトな雇用環境がうかがえます。消費者態度指数は前月から▲0.1ポイント低下して42.9を記録し、まだ反転の兆しも見えません。まず、3つの統計を取り上げますので長くなりますが、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

10月の鉱工業生産、2.9%上昇 基調判断を上方修正
経済産業省が30日発表した10月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み、速報値)は前月に比べて2.9%上昇の105.9だった。QUICKがまとめた民間予測の中心値(1.2%上昇)を上回った。経産省は10月の生産の基調判断を「緩やかな持ち直し」に上方修正した。
生産指数は15業種のうち13業種で前月を上回った。業種別に見ると、コンベヤや水管ボイラなど汎用・業務用機械工業が最も上昇に寄与した。電子部品・デバイス工業はスマートフォン向けに使われるアクティブ型液晶パネル(中・小型)の生産が好調だった。自動車工業は国内向けの普通乗用車や小型乗用車の生産が増えた。
出荷指数は前月比5.4%上昇し106.6。在庫指数は1.4%低下の101.2、在庫率指数は7.4%低下の97.4だった。
同時に発表した、メーカーの先行き予測をまとめた11月の製造工業生産予測指数は前月比0.6%の上昇となった。12月の予測指数は2.2%上昇だった。
10月求人倍率8カ月ぶり低下 1.62倍、なお高水準
厚生労働省が30日発表した10月の有効求人倍率(季節調整値)は前月を0.02ポイント下回り1.62倍だった。8カ月ぶりに低下したが、水準そのものはなお高い。総務省が同日発表した10月の完全失業率(季節調整値)は前月比0.1ポイント悪化し2.4%だった。よりよい条件を求め、自発的に職を探す人が増えている。
有効求人倍率は仕事を探す人1人に対し、企業から何件の求人があるかを示す。正社員の有効求人倍率(季節調整値)は前月から0.01ポイント下がり1.13倍だった。
求人倍率が下がったのは、9月の自然災害で滞った求職活動が再開され、求職者が増えたため。新規求職の申込件数は前年同月から3.0%増え42万2089件だった。
10月の完全失業率(季節調整値)は2.4%で3カ月ぶりに悪化した。完全失業者数(同)が8万人増えて168万人になったことが影響した。特に男性で自発的に仕事を辞め、よりよい条件の職を探す動きが活発になった。15~64歳の男女合計の就業率は前月から0.1ポイント上昇し77.4%。女性の就業率は70.5%で、いずれも過去最高を更新した。
人口が減る一方、働く人の数は増えている。就業者数は6725万人と、2カ月連続で過去最多を更新した。高齢者や主婦に加え、アルバイトで働く若者が増えた。
求人があっても職種や年齢などで条件があわない「ミスマッチ失業」は3%程度とされる。失業率が3%を下回ると完全雇用状態にあるといえる。潜在的な労働力の掘り起こしがいっそう重要になってくる。
11月の消費者態度指数、前月比0.1ポイント低下の42.9
内閣府が30日発表した11月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は、前月比0.1ポイント低下の42.9だった。内閣府は消費者心理の判断を「弱い動きがみられる」に据え置いた。
態度指数は消費者の「暮らし向き」など4項目について、今後半年間の見通しを5段階評価で聞き、指数化したもの。全員が「良くなる」と回答すれば100に、「悪くなる」と回答すればゼロになる。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。一番上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、真ん中は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。そして、一番下のパネルは、後述のように、今回の統計では基準改定がなされていますので、旧来の2010年基準指数と新しい2015年基準指数を並べてプロットしてみました。どちらも、2015年=100となるように基準化されています。

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まず、このブログでは注目していませんが、9月確報の公表時点から統計の基準が2015年基準に改定されています。すなわち、生産や出荷などの指数の基準年が2010年=100から2015年=100になったわけです。ウェイト算定年次はもちろん、業種分類や採用品目が変更されています。この基準改定に関する詳細は経済産業省のホームページに関連情報がアップされていますが、概要だけ軽く触れると、付加価値額ベースの生産指数の10,000分比のウェイトで、食料品・たばこ工業(613.9→1313.8)が倍増したのをはじめ、汎用・業務用機械工業(571.9→728.6)がウェイトを増加させている一方で、電気・情報通信機械工業(1121.1→839.3)や電子部品・デバイス工業(818.6→580.8)が低下を見せています。食料品のウェイト倍増というのは、なかなか想像できませんでした。ただ、食料品・たばこ工業は速報時には算入されませんので、確報時に大きく修正される可能性が高まった可能性はあり、その点は注意が必要です。
そして、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは+1.2%の増産でしたから、軽くこれを上回りました。基本的には、9月の豪雨・台風・地震といった自然災害に伴う供給制約や物流の停滞からの自然な復旧であると私は受け止めています。要するに、俗にいうところの「挽回生産」なわけです。従って、統計作成官庁である経済産業省では、基調判断を前月の「生産は緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」から「生産は緩やかに持ち直している」に上方改定しています。ただ、製造工業生産予測調査を見ると、11月生産は10月統計公表時の▲0.8%の減産から上方修正されたとはいえ、本日の11月統計公表時でも+0.6%の増産にとどまっていますので、プラスの上方バイアスを持つ製造工業生産予測調査のクセを修正すると、▲3.1~▲1.1のレンジで減産となる可能性が高いと推計されています。そうであっても、7~9月期GDPはマイナス成長でしたが、10~12月期GDPはプラス成長に回帰する可能性が高いと私は受け止めています。

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失業率、有効求人倍率、正社員有効求人倍率がそろって前月から悪化した結果を示していますが、依然として雇用指標はかなり完全雇用に近い水準にあり、そろそろ賃金が上昇する局面に入りつつあると私は受け止めています。もっとも、賃金については、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、非正規雇用ではなく正規雇用が増加することから、マクロの所得としては増加が期待できる雇用状態であり、加えて、雇用不安の払拭から消費者マインドを下支えしている点は忘れるべきではありません。ただ、賃上げは所得面で個人消費をサポートするだけでなく、デフレ脱却に重要な影響を及ぼすことから、マクロの所得だけでなくマイクロな個人当たりの賃上げも早期に実現されるよう私は期待しています。

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消費者態度指数の4つのコンポーネントについて、前月差で少し詳しく見ると、、「暮らし向き」が▲0.6ポイント低下、「雇用環境」が▲0.2ポイント低下した一方、「収入の増え方」は+0.5ポイント上昇、「耐久消費財の買い時判断」は前月と変わらず、となっています。収入が増えながら暮らし向きが悪化する、というのはよく理解できないところですし、自然災害による生鮮食品価格も落ち着きに向かっているわけですから、なおさらです。消費者態度指数は今年2018年1月の44.6から今年はほぼ一貫して低下を続けているわけですが、12月の冬のボーナスの後に反転する可能性はあるんでしょうか。

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2018年11月29日 (木)

燃料価格の上昇により10月商業販売統計の小売販売額は増加!!

本日、経済産業省から10月の商業販売統計が公表されています。ヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+3.5%増の11兆9280億円、季節調整済み指数の前月比は+1.2%増を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月の小売販売額、前年比3.5%増 石油製品の価格上昇で
経済産業省が29日発表した商業動態統計(速報)によると、10月の小売販売額は前年同月比3.5%増の11兆9280億円だった。前年実績を上回るのは12カ月連続。経産省は小売業の基調判断を「緩やかに持ち直している」に据え置いた。
業種別では燃料小売業が14.7%増と伸びが目立った。原油高による石油製品の価格上昇が続いた。自動車小売業は6.6%増。新型普通車の販売が好調だった。医薬品・化粧品小売業は6.2%増となった。一方、織物・衣服・身の回り品小売業は0.4%減。気温が高く冬物衣料が振るわなかった。
大型小売店の販売額は百貨店とスーパーの合計で0.2%減の1兆5862億円だった。既存店ベースは0.8%減だった。コンビニエンスストアの販売額は横ばいの9986億円だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期です。

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ということで、引用した記事もある通り、昨年11月から12か月連続で小売販売額は前値同月比プラスを続けており、その12か月の中でも直近2018年10月統計の+3.5%増は、昨年2017年12月の3.6%に次いで大きな伸びを示しています。加えて、上のグラフを見ても理解できる通り、季節調整していない系列の前年同月比で見ても、季節調整済みの指数で見ても、今年2018年5月から伸びがグングンと高まっています。ただ、商業販売統計は名目ですから最近の消費者物価(CPI)の動向にも左右される部分があり、実は、生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比上昇率が、今年2018年5月の+0.7%を直近の底として、上昇幅を拡大させているのにも、ある程度は、相関していると考えるべきであり、引用した記事の石油製品価格の上昇にシンクロして小売販売額が伸びている、という見方も成り立ちます。燃料小売業の販売額を季節調整していない原系列の統計で見ると、昨年2017年11月から1兆円の大台に乗せ、今年2018年3月の+7.1%増を唯一の例外として、昨年2017年11月から、これまた、12か月のうちの11か月で前年同月比2ケタ増を記録しています。来週公表される総務省統計局の家計調査の結果も気がかりなんですが、物価上昇を考慮した実質の消費の伸びは、少なくとも、CPI上昇率がプラスなわけですから、名目消費の伸びよりも小さいと考えるべきです。国際的にも、例えば、本日2018年11月29日付けの日経新聞経済教室で主張されている通り、アベノミクスの下で日本経済は好調に推移している一方で、家計消費が伸び悩んでいるのはパズルである、という結論になりそうな気がします。日経新聞経済教室では、アベノミクスにより円安が進んで輸出企業が利益が増えた一方で、輸入価格の上昇に消費者がが直面し、家計から輸出企業に所得が移転した一方で、企業部門が賃金や投資に資金を回さないため、賃上げが進まず労働分配率が低下する、という流れを提示しています。輸出企業の利益が賃金上昇の形で家計に還元されないわけです。従って、私を含む多くのエコノミストの考えでは、日本では賃上げとそれに伴う消費の拡大が喫緊の課題であり、景気の観点からも、デフレ脱却のためにも、賃上げの必要性は大きいといわざるを得ません。

最後に、今年の米国のクリスマス商戦 Holiday Shopping 最近5日間の売上げが全米小売業協会 (NRF) から明らかにされているようです。NRF のサイトにはプレスリリースを発見できなかったので、参照したニュースメディアのサイトだけ、以下に示しておきます。今年の米国年末商戦の序盤戦はやや期待外れ、という印象かもしれません。

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2018年11月28日 (水)

リクルートジョブズによる9月のアルバイト・パート及び派遣スタッフの賃金動向やいかに?

明日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる非正規雇用の時給調査、すなわち、アルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の10月の調査結果を見ておきたいと思います。

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ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、アルバイト・パートの平均時給の上昇率は引き続き+2%前後の伸びで堅調に推移していて、三大都市圏の10月度平均時給は前年同月より+2.6%、26円増加の1,047円となり、2006年1月の統計開始以来の最高値を記録しています。職種別では「製造・物流・清掃系」前年同月比+3.0%、「事務系」+2.9%、「販売・サービス系」+2.7%、「フード系」+2.3%など、全職種で前年同月比プラスとなり、地域別でも、首都圏、東海、関西のすべてのエリアでプラスを記録しています。一方で、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、最近では2017年9月から12か月連続でプラスを続けた後、9月が▲4円、▲0.2%減の1,640円の後、直近の10月は▲13円、▲0.8%減の1,639円と続落しています。ただし、職種別に詳しく見ると、「オフィスワーク系」、「営業・販売・サービス系」、「IT・技術系」、「クリエイティブ系」、「医療介護・教育系」の5職種のうち、「IT・技術系」と「クリエイティブ系」が前年同月比でマイナスと落ち込み、地域別では東海、関西はプラスなのに対して、首都圏がマイナスを記録しています。マイナスとなった「IT・技術系」をさらに詳しく見ると、運用管理・保守が▲3.4%減と特に低下が大きく、また、カテゴリ全体では初任給アップの「医療介護・教育系」でも看護師・准看護師は▲11.4%減と大きな低下を見せています。全体としてはパート・アルバイトや派遣の非正規職員の雇用も堅調と私は受け止めていますが、景気循環の後半に差しかかって、そろそろ非正規から雇用に陰りが見え始めた、と受け止めるエコノミストもいそうな気がします。

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