2020年9月25日 (金)

8月統計の企業向けサービス価格指数(SPPI)は消費税率引上げの影響を除けばマイナス幅拡大!!!

本日、日銀から8月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+1.0%でした。消費税率引上げの影響をのぞけば、△0.8%の下落でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の企業向けサービス価格、増税除き0.8%下落 マイナス幅拡大
日銀が25日発表した8月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は103.8と、前年同月比で1.0%上昇した。19年10月の消費税率引き上げの影響を除くと前年同月比で0.8%下落した。下落は6カ月連続で、下落幅は7月から拡大した。宿泊サービスや国内航空旅客輸送の下げ幅が拡大したことなどが、価格の押し下げ要因となった。
新型コロナウイルスの影響で、都市部を中心に宿泊サービスの需要が減少した。また国内航空旅客輸送では、航空会社の座席の供給量に対して需要が伸び悩んだ。不動産では賃料が売り上げや業績に連動する物件を中心として前年比で価格の下押し圧力となった。
またテレビやインターネットを通じた広告のサービス価格は依然として前年比で大きくマイナスになっている。日銀は「緊急事態宣言の解除後にみられた価格回復が足踏みしている」(調査統計局)状況としており、引き続き新型コロナによる影響を注視する姿勢だ。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1枚目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。財の企業物価指数(PPI)の国内物価よりも企業向けサービス物価指数(SPPI)の方が下がり方の勾配が小さいと見るのは私だけではないような気がします。いずれも、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に認定しています。

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今年2020年に入ってからの企業向けサービス価格指数(SPPI)上昇率の推移を概観しておくと(カッコ内は昨年2019年10月からの消費税率引上げの影響を除くベース)、2月統計の+2.1%(+0.4%)の後、3月統計の+1.5%(△0.4%)で消費税率引上げを除く、いわば、「実力ベース」で前年同月比マイナスに転じ、4月統計の+0.9%(△1.0%)から5月統計は+0.5%(△1.4%)まで、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で一気に上昇率が縮小しましたが、6月統計では+0.8%(△1.0%)、7月統計でも+1.1%(△0.7%)、そして、本日公表の8月統計では+1.0%(△0.8%)の上昇とやや一服感があります。国際運輸を除く総合で定義されるコアSPPIの前年同月比上昇率も同じように縮小していましたが、前年同月比上昇率としては5月統計を底に、6月統計から7月統計にかけては消費税率引上げを除くベースで上昇幅が拡大し、あるいは、消費税率引き上げを含むベースでは下落幅が縮小していましたが、わずかに△0.1%ポイントとはいえ、SPPI8月統計では上昇幅の拡大ないし下落幅の縮小の動きは反転しました。まあ、速報ベースですし、±0.1%ポイントの動きは計測誤差範囲といえますから、それほど気にする必要はないのかもしれません。少しだけ、いくつかの項目をピックアップしておくと、先週の消費者物価(CPI)と同じことながら、宿泊サービスがGoToトラベルなどの影響により大きく下げています。消費税率の引上げを含めた前年同月比のベースで、前年同月比で7月の▲34.4に続いて、最新の8月統計でも△37.1%の下落です。大類別では景気に敏感といわれる広告が7月の▲8.0%の下落に続いて、8月も△7.1%の下落、ヘッドラインに対する寄与度でも△0.33%あります。特に、テレビ広告の下落が大きくなっています。

何度か繰り返して書きましたが、10月統計からは物価の前年同月比上昇率は消費税率引上げの影響が剥落して、大きく上昇幅が縮小ないし下落に転じる可能性が高いと考えるべきです。

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2020年9月24日 (木)

第一生命経済研のリポート「携帯料金引き下げの家計への影響再考」やいかに?

予定通りに新総理大臣に就任した菅総理ですが、いろんな経済政策の中で、携帯電話通信料の値下げが注目されています。官房長官のころからの持論で、日本の携帯電話通信料が高すぎるとしばしば指摘してきたのも事実です。その意味で、やや旧聞に属する話題ながら、9月18日に明らかにされた第一生命経済研リポート「携帯料金引き下げの家計への影響再考」を簡単に取り上げておきたいと思います。
というか、その前に、ここ数年、総務省で実施している「電気通信サービスに係る内外価格差調査」というのがあり、この調査結果がそもそも発端となっています。例えば、今年2020年6月30日の公表後の最新結果のうち、各国でシェア1位の事業者の大容量プラン20GBの料金を比較したものであり、総務省の調査結果(概要)から引用しています。

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上のグラフを少しアレンジして、以下のニュースでも取り上げられています。

第一生命経済研のリポートでは、携帯電話通信料は徐々に値下がりしている一方で、消費支出に占める携帯電話通信料はむしろ上昇を示していると主張しています。その根拠となるグラフを第一生命経済研のリポートから引用すると以下の通りです。グラフの通り、平均では2人以上世帯の消費支出に占める携帯電話通信料の比率は3.6%なんですが、当然ながら世代別に差があり、29歳以下では5.6%に達する一方で、30歳代と40歳代は4.4%、50歳代になると4.3%にわずかに低下し、60歳代では3.4%、70歳以上では2.3%に大きく低下しています。これは、携帯電話通信料を消費支出で割っているわけですから、若い世代ほど携帯電話をよく使っているという分子の要因とともに、所得や消費支出が年齢に従って増加するという分母の要因もあります。

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もしも、携帯電話通信料が引き下げられれば「若年層や子育て世帯への恩恵がより大きくなるが、移動通信端末の利用率が低い高齢者層への恩恵が少ない」第一生命経済研のリポートでは指摘しています。シルバー民主主義の時代に支持を得られるかどうかはまた別問題です。ほかに、第一生命経済研のリポートでは、仮に移動通信通話料金が1割安くなると、国民1人当たり年間▲5,300円超、家計全体では▲6,700億円超の負担軽減になると試算しています。ただし、これも当然ながら、所得により携帯電話通信料引き下げの恩恵は異なります。すなわち、世帯主の年収階層別では、年収が650万円以上の世帯では年間▲1.5万円超の負担軽減がある一方で、年収400万円未満では年間▲1万円を下回る軽減にしかならない、とも指摘しています。

いつも、このブログで私が主張している通り、個別の業界の個別の財・サービスをターゲットにして補助金を出したり、あるいは、逆に、料金引き下げを求めるのも、もちろん、それなりの理由はあることなんでしょうが、広く家計一般の購買力を高めるような政策が必要、と私は常々考えています。

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2020年9月23日 (水)

経済協力開発機構(OECD)の「経済見通し中間報告」やいかに?

先週から昨日の4連休まで、論文を書いて紀要に投稿したり、野球を見たり、大学院の学位授与式に出席したりと、いろいろとやっていて、と言い訳しつつ、先週9月16日に公表された経済協力開発機構(OECD)による「OECD経済見通し中間報告」OECD Interim Economic Outlook をすっかり見逃していました。pdfの全文リポートや記者発表時のプレゼン資料などもアップされていて利用可能です。なお、サブタイトルは Living with Uncertainty とされています。不確実性は、もちろん、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に起因しています。まず、OECDのサイトから成長率見通しの総括表を引用すると以下の通りです。

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上のグラフは、国名のアルファベット順でソートしてありますが、OECDのサイトにあるのはフラッシュであり、2019~2021の年の成長率でのソートも可能です。ということで、今年2020年の成長率でソートすると、我が日本は▲5.8%のマイナス成長であり、カナダとドイツに挟まれています。世界平均が▲4.5%、なぜか、OECD加盟国平均がないんですが、米国が▲3.8%、ユーロ圏欧州が▲7.9%、G20が▲4.1%ですから、まあ、日本の▲5.8%というのは、やや低いとはいえ、こんなもんか、というところです。

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次に、上の画像は記者発表の際のプレゼン資料から引用しています。今回の経済見通しのキモとなる Key messages です。政策当局はまずまずよくやっていて、ロックダウン措置(confinement measures)は緩和されつつあるものの、まだ経済活動や心理的には弱いままで、政策的なサポートが必要、と結論しています。

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そして最後に、OECD経済見通しのもっとも特徴的なCOVID-19第2波の感染拡大による2番底シナリオのグラフは上の通りです。リポート p.7 の Figure 6. A partial recovery is projected to continue を引用しています。ラインの色や実線・破線は凡例の通りです。今年2020年の10~12月期にもう一度、というか、第2波のCOVID-19の感染拡大の可能性については、私はまったく判りかねます。でも、決してゼロではないんだろうとも思います。

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2020年9月21日 (月)

京都の国勢調査広報ポスターは京アニの「響け!ユーフォニアム」!!!

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今年は国勢調査の年です。国勢調査は5年に一度の悉皆調査です。総務省統計局が解説した国勢調査2020の特設サイトの広報ギャラリーを見ると、広報ポスターなどは全国的には芦田愛菜のようですが、なぜか、京都は違います。上の画像の通りで、京アニ作品「響け!ユーフォニアム」のポスターです。どうしてかというと、京都新聞のサイトから関係する記事を引用して以下の通りの理由です。

国勢調査、京アニ作品「響け!ユーフォニアム」でPR 京都府、若者にネット回答呼び掛け
調査票の配布が14日に始まった国勢調査で、京都府は、京都アニメーション(宇治市)制作の人気アニメ「響け!ユーフォニアム」をPRに起用している。若者向けの情報発信が狙いで、特設サイトやチラシを作成した。併せて、新型コロナウイルスの拡大予防で接触機会を減らそうと、インターネットでの回答を呼び掛けている。
「響け!ユーフォニアム」は、宇治市を舞台に吹奏楽に打ち込む高校生の青春を描く作品で、原作者の武田綾乃さんも同市出身。府が過去2回(2010年、15年)の国勢調査で別のアニメをポスターなどの広報媒体に活用したところ、若者を中心に反響があったという。

別に、昨年の事件などとは何の関係もなく、すでに10年前の国勢調査から京アニ作品が国勢調査のPRに起用されていると報じられています。一番上に引用した画像は京都府の国勢調査特設サイトから引用しています。我が家の最寄り駅は京都市営地下鉄ですし、地下鉄に乗ると、このポスターをいっぱい見かけます。当然です。
ところで、その10年前といえば、なんと、私は国勢調査のお膝元である総務省統計局に出向していました、国勢調査担当課ではなく消費統計を担当していましたが、国勢調査がいかに一大イベントであるか、ということを統計局勤務で強く実感しました。10月1日に調査が終了してから調査票を回収して、年明けには統計局の北側にプレハブの仮庁舎を建てて集計を始めます。いろいろな観点から集計して膨大な数の報告書を仕上げるわけです。

今年は国勢調査が始まって100年の記念の国勢調査です。統計局勤務経験者として、みなさんのご協力を求めます!!!

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2020年9月18日 (金)

GoToトラベルの値引きより8月の消費者物価(CPI)上昇率はマイナスに転じる!!!

本日、総務省統計局から8月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率はとうとうマイナスに転じて▲0.4%を示した一方で、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は▲0.1%でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価3カ月ぶり下落 8月、GoToで宿泊料下がる
総務省が18日発表した8月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、変動の激しい生鮮食品を除く総合指数が101.3となり、前年同月から0.4%下落した。マイナスは3カ月ぶり。政府の観光支援事業「Go To トラベル」で宿泊料が32.0%下落し、指数を押し下げた。
「Go To トラベル」はホテルや旅館の宿泊費用の35%を割り引く制度で、総務省は割引後の価格をもとに消費者物価指数を集計した。同省の試算では事業がない場合、宿泊料は前年同月比7.1%の下落だったが、事業の影響でさらに24.9%下落した。
宿泊料の下落だけで指数を0.42ポイント押し下げた。同事業の影響を除いた指数は前年同月から横ばいだった。
宿泊料以外では電気代が2.5%、ガソリン代が6.3%下落した。原油価格は春以降持ち直したが、年初の原油価格急落の影響が半年ほど遅れて電気代に反映された。幼児教育・保育の無償化も、引き続き物価上昇の重荷となった。
生鮮食品を含む総合指数は102.0で、前年同月から0.2%上昇した。7月までの日照不足や長雨、8月の猛暑など天候不順が続き、生鮮野菜・果物がほぼ全面高となった。レタスは91.1%、ナシは20.0%上昇した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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コアCPIの前年同月比上昇率は日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲0.4%でしたので、ジャストミートしたといえます。大雑把にいって、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響により、国際商品市況における石油価格が低迷していることに加え、7月22日から始まったGoToトラベルによる値引きで宿泊料が大きなマイナス寄与を示しています。具体的に数字を上げると、電気代やガソリン代をはじめとするエネルギーが▲0.27%の寄与を示し、先月7月統計の▲0.35に比べればマイナス寄与の幅は縮小しましたが、依然として大きなマイナスです。宿泊料は、8月統計では前月比▲18.4%、前年同月比▲32.0%の大きなマイナスで、前年同月比に対する寄与度も▲0.42%に上っています。宿泊料ほどのウェイトはありませんが、外国パック旅行費も▲0.02%の寄与度を示しています。まあ、7月下旬からGoToトラベルが多くの反対を押し切ってはじめられ、10月には東京発着にも拡大される、といった動きの中で、旅行や宿泊などの対人要素の強いサービスはCOVID-19の影響が海外旅行も含めて残っているような気がします。なお、引用した記事にある通り、総務省統計局の資料において、前年同月比で▲32.0%の下落となった宿泊料は、GoToトラベルの影響で▲24.9%、それ以外で▲7.1%との分解結果の試算が示されています。加えて、これも引用した記事にもある通り、幼児教育・保育の無償化も物価にマイナスの影響を及ぼしています。他方、コアCPIの外数ですが、猛暑の影響で生鮮食品が値上がりし、私もスーパーなどで見るにつけ野菜や果物の価格が高いと実感しています。消費者物価(CPI)に限らず、物価指標については、何度過去のブログでも繰り返しましたが、10月統計になると昨年2019年10月の消費税率引上げの影響が剥落します。ですから、来月の9月統計はともかく、消費者物価(CPI)についても、年末にかけて前年同月比上昇率のマイナス幅が拡大することは覚悟しておかねばなりません。

最後に物価を離れて、10年余り前のリーマン・ショックの後の景気後退期には、政権交代後の民主党内閣で家電エコポイントとエコカー減税という耐久消費財の代表格の家電と自動車に補助金を出しました。そして、今回のCOVID-19ショックでは自公政権がGoToトラベルでサービス分野の旅行業界に補助金を出しています。私はエコノミストとして、こういった個別業界への補助金ではなく、特定給付金のような家計の購買力を向上させる経済政策が必要と考えています。そういった左派リベラルの経済政策は出てこないもんでしょうか?

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2020年9月17日 (木)

訪日外国人客やインバウンド消費の決定要因を分析した論文を書き上げる!!!

4月から今の大学に再就職して半年が経ち、ようやく、1本だけ学術論文を書き上げました。「訪日外国人客数およびインバウンド消費の決定要因の分析: VAR過程に基づく状態空間モデルの応用」と題して、その名の通り、訪日外国人客数やGDP統計であるSNAベースのインバウンド消費の決定要因を分析しています。今まで、インバウンド消費といえば、そもそも実態把握すらそれほど進んでいなかった分野ですので、第1に、マイクロな購買活動分析で、何が買われているのかから始まって、そういったマイクロな分析はそれなりに蓄積があります。次に、インバウンド消費が地域経済活性化のひとつの起爆剤となりうることから、第2に、波及効果を含めた広い経済効果の分析、というか、試算もいっぱい蓄積されています。そして、政策分析、というか、第3に、受入れ側の日本における政策対応、特に、VISAの要件緩和に関しても研究が進められていました。過去形です。しかし、私のやったような観光客の送出し国における所得の伸びがどれだけ寄与しているのか、あるいは、決定要因になっているのか、という第4のタイプの研究はそれほど多くありません。ということで、やってみました。

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やってみて判ったんですが、経済学の伝統的な考えに従って、所得要因と価格要因で回帰分析したのですが、価格要因で回帰モデルに入れた実質実効為替レートはほとんど有意性を持ちません。従って、所得要因だけで分析を進め、実績としての訪日外国人客数やインバウンド消費をもたらす所得要因を状態空間モデルから推計しています。いわゆる観測不能変数の推計です。その試算された観測不能な所得と実績の観測された所得の差分をプロットしたのが上のグラフです。上の青線が訪日外国人客数ベースで、下の赤線がSNAのインバウンド消費ベースです。
四半期データの対数1階階差でモデルを組んでいるので、リバウンドが目立つ場合もあります。四半期データを用いたのは、中華圏の春節が1月になったり、2月になったりするので、月次データを不適当と判断したからです。実績と推計値で乖離が目立っているのは以下の4期間です。すなわち、第1に、2008年ころからの尖閣諸島問題などに関して、中国世論に起因すると考えられる下振れです。第2に、2011年3月の東日本大震災と福島第一原発事故の直後の2011年4~6月期に大きく落ち込んでいます。第3に、その後、2013年ころから周辺アジア諸国の所得の伸びを上回るような順調な上振れ期間が観察されます。この間に、平均的な所得の伸びよりも訪日するような富裕層の所得の伸びが上回っていた可能性があります。そして、第4に、直近2020年1~3月期の大きな落ち込みです。いうまでもなく、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響です。これは、2011年の東日本大震災の影響を上回っています。

加えて、データ、モデルの定式化、推計アルゴリズムに関する将来課題も提示していますが、かなり学術的に難しい内容です。いずれにせよ、関西に戻ってインバウンド消費の重要性が今さらながらに実感できましたので、それを取り込むとともに、加えて、足元の経済社会的な大問題である新型コロナウィルス感染症(COVID-19)にも少しだけながら言及することを心がけました。一応、学内の紀要に収録していただくべく、然るべき方面に提出しておきました。

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2020年9月16日 (水)

8月貿易統計に見る輸出の回復やいかに?

本日、財務省から8月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列で見て、輸出額は前年同月比▲14.8%減の5兆2326億円、輸入額も▲20.8%減の4兆9843億円、差引き貿易収支は+2482億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

8月輸出14.8%減 自動車など低迷、減少幅は縮小
財務省が16日発表した8月の貿易統計速報によると、輸出の総額は5兆2326億円で前年同月から14.8%減った。新型コロナウイルスの影響による経済停滞で自動車を中心に低迷が続いているが、減少幅は3カ月連続で小さくなった。
経済活動をいち早く再開した中国向けの輸出は1兆2616億円で5.1%増えた。増加は2カ月連続となる。スマートフォン関連の需要を映して半導体などの製造装置が増えた。欧州連合(EU)向けも19.2%減の4762億円となり、減少幅が縮小した。
米国向けの輸出は21.3%減の9368億円。減少幅は前月の19.5%より大きくなった。航空機のエンジン部品や医薬品、建設用・鉱山用機械などが落ち込んでいる。新型コロナの影響で今春から急減していた自動車輸出は4%の減少にとどまった。
貿易収支は2482億円の黒字になった。黒字は2カ月連続で、109億円だった7月から拡大した。黒字の拡大は国内の需要の弱さを反映して輸入の大幅な減少が続いている影響も大きい。8月の輸入額は4兆9843億円で20.8%減った。
輸入の減少は燃料の需要減によるものが大きい。原油はアラブ首長国連邦(UAE)からの輸入を中心に52.5%減った。液化天然ガス(LNG)は44.2%減、石炭も42.3%減と落ち込みが続いている。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲73億円の貿易赤字が予想されていて、レンジはかなり広いながら、黒字の上限が+1500億円でしたので、レンジを超えています。世界経済全体の回復レベルに比較して、我が国の景気の回復が遅れている、ないし、そもそも回復に至っていない可能性が示唆されています。いずれにせよ、輸出入ともに前年同月から減少しているのは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響といえますので、単純に景気局面から考えると、輸出が伸びて、輸入が伸び悩んでいるということですから、COVID-19の感染状況で我が国が世界平均と比べてまだパンデミックにあるとか、ではなく、COVID-19の感染拡大の状況というよりも、むしろ、ロックダウンなどによって感染拡大防止を優先するのか、それとも、経済再開の方に重点を置いているか、に依存する可能性が高いと考えるべきです。ですから、日本はまだ感染拡大への警戒感が強いのか、世界平均と比較して経済再開よりも感染拡大防止に重点が置かれている可能性が示唆されています。ただし、中国については、もともとのepicenterであった一方で、感染拡大についてはピークを過ぎた可能性もあるのは広く知られている通りで、貿易統計にもそれが示されています。すなわち、日本から中国への輸出額を前年同月比で見て先月7月は+8.2%の増加を示した後、直近の8月統計でも+5.1%と伸びを示しています。しかし、輸入額の方は、7月▲9.6%減、8月▲7.0%減とまだ減少を続けています。

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輸出額の前値同月比で見ると、5月が▲28.3%でほぼ直近の底と考えられます。その後、6月▲26.2%とややマイナス幅を縮小し、7月▲19.2%、8月▲14.8%と着実にマイナス幅が縮小しています。ですから、いくつかのシンクタンクのリポートを読んでいると、財務省の公式統計をもとにシンクタンク独自に季節調整した結果は前月比プラスが示されているようです。前年同月比のマイナス幅縮小、あるいは、前月比のプラスを見るにつけ、私の実感では、輸出はかなりの回復を見せています。具体的には、2020年8月統計の輸出数量指数は117.8であり、季節調整していない原系列の統計ですので、単純な比較はできませんが、2018年平均の121.2と2019年平均の112.0の間に収まります。シンクタンクなどでも同様の見方が広がっており、例えば、ニッセイ基礎研のリポートでは、輸出は金額・数量ともに2020年2月のCOVID-19パンデミック前の「9割程度の水準まで回復」した、と結論しています。Guerrieri et al (2020) によるNBER Working Paper でも、今回のCOVID-19の影響による経済の落ち込みはケインズ的な需要ショックではなく、対人サービス部門などで発生した供給ショックの可能性を2部門モデルを用いて論じていますし、そうであれば、対人サービス部門の供給ショックは輸出には影響薄いのかもしれません。

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2020年9月15日 (火)

東京財団政策研究所による第1回中長期経済見通し研究会の議論やいかに?

やや旧聞に属するトピックですが、9月11日に東京財団政策研究所から第1回中長期経済見通し研究会の開催結果が報告されています。主催の東京財団政策研究所はみごとなくらい徹底したネオリベな経済政策を志向しているので、私は何ら興味ないんですが、この研究会だけは私の見知ったエコノミストが何人かご出席で、それなりの経済見通しが示されているような気もします。一応、ごく簡単にフォローしておきたいと思います。

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まず、GDP水準が新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の前の水準、直近のピークの2019年7~9月期とに戻るのは、「2024年中のどこかというのがコンセンサスであった」と報告されています。上のグラフは、東京財団政策研究所のサイトから引用していますが、今回のCOVID-19後のGDP水準と以前のリーマン・ブラザーズ破綻などの米国サブプライム・バブル崩壊後を比較しています。まあ、3~4年かかるというコンセンサスは私も共有します。
また、コロナ禍で潜在成長率が低下する可能性が指摘されていて、結局、「高齢化要因などを踏まえると日本の潜在成長率は0%台後半という見通しが研究会メンバーのコンセンサス」と結論しています。私自身はもう少し高いと見ていますが、出席者の中から、「消費増税を含めて、財政の立て直し圧力が出てくると潜在成長率以下に成長が抑えられる」可能性が指摘されていたようです。当然です。ほかにも、日銀の非伝統的金融政策、基礎的財政収支の見通しなんかも議論されており、いかにもネオリベ政策集団という気がします。

なお、8月28日に安倍首相が辞任を表明したのは研究会開催後だったそうですが、政策の継続性などを考え合わせると、「中長期見通しへの影響はなさそう」と結論しています。笑う場面ではないんでしょうが、微笑ましく感じてしまいました。

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2020年9月14日 (月)

インテージによる「新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大に伴う外出自粛による家庭のエネルギー消費への影響分析」やいかに?

やや旧聞に属する話題ながら、先週水曜日の9月9日にインテージから「新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大に伴う外出自粛による家庭のエネルギー消費への影響分析」と題するリポートが明らかにされています。住環境計画研究所との共同調査のようです。まず、インテージのサイトから調査結果のポイントを5点引用すると以下の通りです。

[ポイント]
  • 在宅勤務とエネルギー消費量の関係: 集合住宅に住む単身世帯では、在宅勤務実施がエネルギー消費量に与える影響が大きい
  • 在宅勤務実施世帯の省エネ意識: 在宅勤務日数の増えた世帯では、省エネ意識が高まった世帯と少々緩んだ世帯がそれぞれ若干増加している
  • 在宅勤務実施世帯における負担感・満足度: 在宅勤務日数が増えると、仕事の負担を感じる割合が若干増加している。一方で生活全般については、不満を感じる割合も、満足を感じる割合も若干増加している
  • 在宅勤務と自宅での調理食数: 在宅勤務日数の増えた世帯において、平日昼の調理食数が顕著に増加している
  • 在宅勤務と光熱費の意識: 在宅勤務日数が増えると、光熱費が増えたと感じる割合が高くなり、今夏の光熱費を心配する割合も高くなっている

ということで、ほぼほぼ、これでもう十分という気がします。でも、それでは愛想がなさそうに思いますので、少しグラフを引用しておきます。

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上のグラフは、インテージのサイトから 家庭内エネルギー消費量(電気・ガス合計)2020年2-4月の推移 を引用しています。季節的に、徐々に春うららかとなって、暖房目的をはじめとするエネルギーが減少するんですが、真ん中のパネルの集合住宅に住む単身世帯においては、在宅勤務の日数変化によるエネルギー消費量への影響が大きい、という結果が現れています。在宅勤務が多くなって家にいるために、エネルギー消費の減り方が鈍いわけです。逆に、一戸建てにせよ集合住宅にせよ、2人以上世帯のエネルギー消費に在宅勤務が影響しない方がむしろ不思議な気がするのは、私だけでしょうか?

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上のグラフは、インテージのサイトから 平日昼の世帯員1人当たり調理食数の1月以前からの変化 を引用しています。見れば明らかな通り、在宅勤務日数が増加した世帯では平日昼の調理食数が増加しています。当然です。これまた当然ながら、5日以上増の世帯では世帯員1人当たりの平日昼の調理食数が大きく、0.5人分以上増加した割合が特に大きいセグメントを赤い枠線で囲っています。1月比で見て、4月にはかなり増加を見せている一方で、慣れがあったのか、6月ではそうでもないのが少し不思議な気もします。

もう、もっとも暑い時期は過ぎた気もしますが、今夏のエネルギー事情はどうだったのでしょうか。あくまで一般論ながら、各家庭で個別にエアコンを使うよりも、オフィスで多人数を一気に冷やしたほうがエネルギー効率がいいように、私のようなシロートには思えるます。でも、夏の甲子園野球が中止になったりして、その分、エネルギー消費も少なかった可能性がなくはありませんし、在宅勤務と併せてどのような実態だったのか、やや気にかかるところです。

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2020年9月11日 (金)

マイナス幅を縮小させつつある企業物価指数(PPI)上昇率の先行きやいかに?

本日、日銀から8月の企業物価 (PPI) が公表されています。企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲0.5%の下落を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の企業物価指数、前月比0.2%上昇 石油製品など寄与
日銀が11日発表した8月の企業物価指数(2015年平均=100)は100.4と、前月比で0.2%上昇した。上昇は3カ月連続。新型コロナウイルスの感染拡大で抑制されていた経済活動が徐々に再開する中、商品市況の回復が企業物価を押し上げた。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。類別では、石油・石炭製品や非鉄金属の物価上昇への寄与度が大きかった。
ただ、企業物価を前年同月比でみると0.5%下落と、3月から下落が続いている。新型コロナが企業物価の重荷となっている状況は変わっていない。
円ベースでの輸出物価は前月比で0.4%上昇、前年同月比では1.5%下落した。円ベースでの輸入物価は前月比で1.2%上昇、前年同月比で10.9%下落した。
企業物価指数は消費税を含んだベースで算出している。消費増税の影響を除いた企業物価指数は前月比で0.2%上昇、前年同月比で2.1%下落した。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで勝手に直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に認定しています。

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まず、企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは、中央値で前月同月比▲0.5%の下落、ということでしたので、まさにジャストミートしました。企業物価(PPI)も、いずこも同じ新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響により、昨年2019年10月からの消費税率引き上げの影響がまだ残っているにもかかわらず、国内企業物価の前年同月比で見て、3月▲0.5%とマイナスに転じ、4月にはマイナス幅を拡大して▲2.5%、そして、5月に▲2.8%で最大のマイナス幅を記録した後、6月▲1.6%、7月▲0.9%、そして、本日公表の直近で利用可能な8月統計では▲0.5%までマイナス幅が縮小してきています。ですから、各種経済指標とともに、企業物価(PPI)についても、今年2020年5月で底を打った可能性が高いと考えて差し支えありません。加えて、現在の国内景気だけから考えると、9月統計ではさらにマイナス幅を縮小させる、あるいは、プラスに転じる可能性も小さくないと私は期待しています。
ただし、企業物価(PPI)の先行きを考えると、第1に、何分、我が国の物価は石油価格に影響される部分が大きく、その意味で、国際商品市況に依存しています。例えば、8月統計の国内物価の前月比上昇率+0.2%への寄与を見ると、ガソリンをはじめとする石油・石炭製品の寄与が+0.23%に上っており、この石油・石炭製品で前月比上昇率を超えてしまいます。その意味で、国際商品市況次第で物価上昇率が振れる可能性も否定できません。加えて、第2に、9月統計ではインフレ目標に近づくとしても、10月には昨年の消費税率引上げの影響が剥落します。指数レベルではともかく、前年同月比上昇率では大きく下振れすることが確定しているわけです。何とも、物価の先行きについては評価し難いと考えざるを得ません。

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