2021年9月16日 (木)

大きな赤字を記録した8月貿易統計の先行きを考える!!!

本日、財務省から8月の貿易統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列で見て、輸出額が前年同月比+26.2%増の6兆6057億円、輸入額も+44.7%増の7兆2411億円、差引き貿易収支は+▲6353億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから統計について報じた記事を引用すると以下の通りです。

8月の貿易収支、3カ月ぶり赤字 輸出は26.2%増
財務省が16日発表した8月の貿易統計速報によると、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は6353億円の赤字だった。貿易赤字は3カ月ぶり。米国やアジア向け輸出が堅調だった一方、原油高で輸入額が急増した。
輸出額は前年同月比26.2%増の6兆6057億円だった。鉄鋼や半導体などの製造装置、自動車部品などが伸びた。輸出は6カ月連続の増加となった。新型コロナウイルスの感染が広がる前の19年8月と比べても7.6%多かった。
輸入は44.7%増の7兆2411億円だった。原油の輸入額が2倍超になった影響が大きい。数量ベースでは約2割の増加だった。コロナワクチンの輸入拡大で医薬品は75.9%増えた。
地域別にみると米国への輸出が1兆1505億円と22.8%伸びた。船舶用エンジンなどの原動機や自動車部品が増えた半面、自動車は12.4%の減少に転じた。半導体不足のほか、東南アジアでのコロナ感染拡大で自動車各社が減産を強いられている影響が出た可能性がある。
欧州連合(EU)向けは29.9%増の6187億円、中国向けは12.6%増の1兆4210億円だった。アジア向けは鉄鋼や半導体などの製造装置が大きく伸びて、26.1%増の3兆8825億円だった。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスで貿易収支は約▲500億円の赤字で、レンジの下限が▲3111億円の赤字でしたので、この下限を下回る大きな貿易赤字でした。季節調整済みの系列はもちろん、季節調整していない原系列のデータでも、輸出入ともに増加のトレンドにあり、それほど大きな悲観材料とはならないように私は受け止めています。特に、輸入についてはワクチン輸入という特殊要因もあるとはいえ、石油価格の前年からの上昇が我が国輸入額の増加に寄与している印象です。なお、ワクチンを含む医薬品の輸入額は季節調整していない原系列の前年同月比で+75.9%増を記録しています。いずれにせよ、主として欧米の景気回復に従って我が国の輸出は今後とも増加基調を続けるものと私は予想しています。ただし、中国は別としても、特に東南アジアで新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のデルタ株による感染拡大が深刻となってきている点については注意が必要です。そして、この東南アジアにおけるCOVID-19感染拡大とも関連して、半導体の供給制約から自動車生産が停滞しており、この先の輸出に一定の影響を及ぼす可能性が大きくなっています。8月統計では、季節調整していない原系列の統計で見て、自動車は数量ベースで前年同月比▲1.1%減、金額ベースで+4.0%増となっており、昨年2020年がCOVID-19の影響でかなり落ち込んでいた点を考慮すると、かなり停滞している印象を私は持っています。例えば、一般機械+31.8%増や電気機械+17.1%増と比べて、我が国のリーディング・インダストリーであり、競争力も十分な自動車が+4.0%増というのは、いかにも伸び率が小幅な気がします。この自動車の動向に加えて、先進各国におけるデルタ株の感染拡大とともに、我が国の輸出への影響は無視できないと考えられますが、このあたりは、COVID-19の経済的影響が今一度大きくなっていて、私のようなエコノミストの守備範囲を超えているような気がします。

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2021年9月15日 (水)

横ばいないしややプラスが続く機械受注の先行きをどう見るか?

本日、内閣府から7月の機械受注が公表されています。統計のヘッドラインとなる変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比+0.9%増の8597億円を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じた記事を引用すると以下の通りです。

7月の機械受注0.9%増 半導体関連が好調
内閣府が15日発表した7月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」(季節調整済み)は前月比0.9%増の8597億円となり、2カ月ぶりのプラスだった。半導体関連の需要などが増えた製造業で設備投資への意欲が底堅く、全体をけん引した。
製造業は6.7%増の4311億円で、4カ月連続の増加となった。半導体製造装置の需要が拡大している電気機械が33.5%増、自動車製造装置に使われるコンピューター機器やシステム関連部品などの引き合いが増えた自動車・同付属品が11.0%増と好調だった。
一方、非製造業は9.5%減の4259億円と3カ月ぶりにマイナスとなった。建設業や卸売業・小売業、運輸業・郵便業などが前月の反動で落ち込んだ。
内閣府は基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。足元ではアジアでの新型コロナウイルスの感染拡大で自動車部品などのサプライチェーンの停滞が懸念されている。内閣府の担当者は「自動車関連の設備投資の動きは弱くないが、先行きではリスクに気をつけなければならない」と警戒感を示した。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールにより勝手に直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に同定しています。

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引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て、前月比で+3.1%増でしたので、実績はやや下振れた印象がありますが、レンジの下限はマイナスでしたので、大きなサプライズはありませんでした。特に2か月前の5月+7.8%増の後で6月▲1.5%減とリバウンド小さく、直近で利用可能な7月も+0.9%増ですから、まあ、何と申しましょうかで、横ばいないしややプラス、といったところでしょう。上のグラフのうちの上のパネルの移動平均の太線から見ても、横ばいないしややプラスと思います。ただし、業種別のばらつきがあって、国内需要に依存する割合の大きな非製造業が前月比で▲9.5%となった一方で、輸出に牽引される割合の高い製造業は+6.7%増を記録しています。加えて、上のグラフのうちの下のパネルで見ても外需の伸びが大きくなっています。もちろん、海外景気の牽引されての動きですが、機械受注統計の場合、外需が先行指標となりますので、外需の伸びに伴って少し遅れて機械受注全体が伸びる方向にある可能性も十分あります。目先の懸念は半導体の供給制約による自動車生産の停滞の影響なのですが、その供給制約の原因を作っている「半導体製造装置」と「電子計算機」の合計である「電子計算機等」は、季節調整済みの系列は入手できませんでしたが、ここ2-3か月で季節調整していない原系列の受注額の伸びがかなり大きくなっています。すなわち、5月31.2%増、6月22.6%増、そして、直近の7月73.5%増となっています。自動車の動向は気にかかりますが、もう少し長い目で見るとペンとアップの挽回生産も含めて、増加に寄与する可能性が十分あると私は考えています。

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2021年9月14日 (火)

The death of behavioral economics by Jason Hreha について考える!!!

Jason Hreha という人が The death of behavioral economics と題して、メモを書いてポストしています。一部のエコノミストの間で話題になっています。以下のサイトです。

どういう人かというと、Co-founder of the Walmart Behavioral Science Team や Global Head of Behavioral Sciences at Walmart などのウォルマートの行動科学の研究所や Lead researcher in the Stanford Persuasive Technology Lab の関係者らしいです。私は専門外なので、よく判りません。
私がザッと読んだ印象では、(1) 再現性がなく、(2) ナッジなどの影響力は極めて小さい、という2点が批判の中心になっているように受け止めました。まあ、そもそもが、捏造データに基づくアリエリー教授の研究の発覚に対する批判の一環である可能性はあります。私自身の行動経済学に対する批判は、すでに8月20日の記事で明らかにしていますが、繰り返すと、(1) 学問的な究明よりも、実際の営業担当者のマーケティングの方が経験的に確かであり、実務家の方がデータを持っている、(2) ソーシャル・エンジニアリングなどで設定された目的が社会的に正しいかどうかの検証が不可能、防衛研究が典型ですが、研究費補助次第でどんな目的も正当化されかねない、(3) データがどこまで正確か検証できない、ということになります。私の(3)が「再現性ない」に近いと考えています。もちろん、私にはナッジなどの影響力の大きさは判っていませんでしたので、それはそれで新たな視点かもしれません。
加えて、行動経済学に限定される批判ではありませんが、独自データを取得して進められる研究については、データの検証や再現性について、かなり、幅広く当てはまりかねない批判だという気がします。すなわち、少し前の「小保方問題」なわけです。もっとも、経済学では政府統計などの幅広く検証されたデータが利用可能な一方で、いわゆる理系の自然科学分野では実験データに頼らざるを得ない部分があるのも事実です。そういった分野では、データのチェックはかなり難しい面があるといえます。経済学の場合、独自データを利用するのであれば、例えば、それをどこかにポストして、広く研究者が使えるようにするという手段も考えられます。実際に、東大社研にはデータアーカイブ研究センターが設置され、研究だけでなく、教育目的でも利用可能なデータが大量にポストされています。例えば、結局ヤメにしましたが、私は大学院の授業でマクロミルの Macromill Weekly Index を消費データ分析で利用しようかと真剣に考えたことがあります。こういったアーカイブにデータをポストし、幅広く利用できるようになれば、ピアチェックによってデータの検証や再現性にも有益な気がします。
行動経済学かつ独自データということになれば、捏造データに基づくアリエリー教授の研究までいかなくても、タップリと研究資金さえ得られればどんな研究も可能になる恐ろしい可能性も指摘しておかねばなりません。典型的な例では、6月26日付けの読書感想文で取り上げた瓜生原葉子『行動科学でよりよい社会を作る』です。臓器移植への意識改革と称して、医薬業界から多額の寄付や研究費をせしめれば、まさに、「行動経済学的な」調査票の設定により、かなりの恣意的な結果が得られる可能性が排除できない、と私は恐れています。加えて、独自データに基づく世界にひとつしかない研究成果であれば、ジャーナルの査読に通る可能性も十分あります。そうすると、政治の世界でカネが投票を左右して政権に近づけるのと同じように、学会でもカネで研究成果が買えることになりかねません。防衛研究で特に注意が必要そうな気がするのは私だけでしょうか?

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2021年9月13日 (月)

+5%超の上昇を続ける企業物価(PPI)の国内物価の先行きやいかん?

本日、日銀から8月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+5.6%を記録しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短に引用すると以下の通りです。

8月の企業物価指数、前年比5.5%上昇 前月比横ばい
日銀が13日発表した8月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は105.8で前年同月比で5.5%上昇、前月比で横ばいだった。市場予想の中心は前年比5.6%上昇だった。
円ベースで輸出物価は前年比10.9%上昇、前月比で0.2%下落した。輸入物価は前年比29.2%上昇、前月比で1.8%上昇した。

とてもコンパクトに取りまとめられています。続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期であり、2020年5月を直近の景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで同定しています。

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このところ、順調に足元で物価が下げ止まりつつあると私は評価しています。引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスではPPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比で+5.6%の上昇と予想されていましたからほぼジャストミートした印象です。国際商品市況における石油をはじめとする資源価格の上昇に起因するとはいえ、このところ、順調に物価上昇率が拡大していると私は受け止めています。もっとも、この動きが一巡すれば上昇率で計測した物価も元に戻ることは覚悟せねばなりません。ということで、国内物価について品目別で前年同月比を少し詳しく見ると、木材・木製品が+40.4%、石油・石炭製品が+31.5%、非鉄金属が+28.0%、鉄鋼+13.1%、化学製品+12.2%などが2ケタ上昇となっています。ただし、鉄鋼と化学製品を除く類別については、直近で利用可能な8月統計の上昇率は前月7月統計を下回っており、前年同月比上昇率で見ればピークアウトしつつある印象を私は持っています。この点については、季節調整していない原系列の統計ながら、前月比が横ばいだったことから明らかであろうと思います。基本的に、国際商品市況における石油ほかの1次産品価格の上昇とともに、中国をはじめとする新興国における景気回復に伴って、基礎的な資源価格の上昇が背景にあると考えるべきです。

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また、本日、財務省から7~9月期の法人企業景気予測調査が公表されています。統計のヘッドラインとなる大企業全産業の景況判断指数(BSI)は足元7~9月期で+3.3、続く10~12月期で+6.8でした。いつものグラフだけ、上の通りです。さて、10月1日に公表される予定の9月調査の日銀短観やいかに?

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2021年9月10日 (金)

電通総研「サステナブル・ライフスタイル意識調査2021」の結果やいかに?

一昨日9月8日付けで、電通総研から「サステナブル・ライフスタイル意識調査2021」の結果が、副題「消費は『私的満足を優先』の日本・欧米と、『公的意義を優先』の中国・ASEAN」とともに、明らかにされています。国連のSDGsについては、なぜか、私の勤務する大学での意識は低いものの、社会的な関心も高く、私もそれなりに研究などに取り入れようという意欲を持っているところ、この12カ国に渡る調査結果についても簡単に取り上げておきたいと思います。まず、電通総研のサイトから12か国比較で見る日本の特徴を7点、引用すると以下の通りです。

12か国比較で見る日本の特徴
  1. 【関心のある社会課題】「少子化・高齢化」が上位に入るのは日本のみ。日本は1位「自然災害」57.2%、2位「少子化・高齢化」45.6%、3位「大気汚染」41.6%
  2. 【リサイクル行動】「エコバッグ」使用率78.8%、「詰め替え商品」購入率67.8%は平均よりも高い
  3. 【社会活動の支援】「署名・寄付などの社会活動」に高関与の人は12か国中で最も低い割合の28.0%
  4. 【社会課題に関心を持つきっかけ】日本は「ニュース・記事」が56.0%、ASEANは「SNS投稿」の方が高い
  5. 【サステナビリティのイメージ】欧米同様に「地球環境」51.8%、「循環型社会・サーキュラーエコノミー」29.2%が上位に入る
  6. 【2030年のイメージ】日本のみ「不安」34.6%が上位に入る
  7. 【経済意識】「今の生活を守ることに精いっぱい」が12か国中で最も高い割合の61.2%

最後の方の第6点目、第7点目あたりでは、いかにも経済が停滞し先行きの暗い日本経済を基盤とする国民生活の姿が浮かび上がっているように考えるエコノミストは、決して私だけではないように思います。いくつか、私なりの興味でグラフをピックアップしたいと思います。

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まず、上のグラフは電通総研のサイトから 図1 関心のある社会課題 について、調査対象の12か国の上位3位までを列挙しています。最初の「12か国比較で見る日本の特徴」にもありましたが、「少子化・高齢化」が上位に入るのは日本だけであり、「自然災害」についても、ドイツやベトナムを除けば、それほど多くの国で課題として上げられているわけではありません。また、日本以外で私が注目したのは米国であり、世界のGDPトップの米国で貧困・飢餓がトップに上げられているのは、格差や不平等の問題が大きいからではないか、と私は受け止めています。

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続いて、上のグラフは電通総研のサイトから 図16 消費は、公的な意義優先か、私的な満足優先か について、調査対象の12か国を、比較できる場合は2010年と直近2021年の結果を並べてプロットしています。ここでは、当然に、2010年から2021年への変化に注目すべきであり、比較ができないドイツ・米国・英国を別にすれば、アジア各国では圧倒的に私的な満足優先から公的な意義優先へとシフトしている一方で、わずかながら、日本では私的な満足優先のシェアが拡大しています。日本では所得が伸び悩んで、それだけ生活に余裕やゆとりがなくなっていることが読み取れます。

最後に、昨日9月9日付けの朝日新聞夕刊の記事「石油・ガス6割『掘ってはいけない』 気温上昇1.5度抑制へ試算」の基となる Nature 掲載の論文は以下の通りです。この論文は、平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5度に抑えるという国際目標を達成するための試算で、2050年時点での確認埋蔵量の石油の58%、ガスの59%、石炭の89%が unextractable reserves である、と結論しています。サステイナビリティの議論に関連して、何らご参考まで。

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2021年9月 9日 (木)

毎日新聞「『「余暇は無駄』との考え方は幸せを損なう?」の記事の基となる研究論文を調べる!!!

一昨日9月7日付けの毎日新聞の記事「『「余暇は無駄』との考え方は幸せを損なう?」について、ツイッタだか何かのサイトで、基となる学術論文のありかが示されていました。そのツイッタのサイトは失念しましたが、論文のサイトは以下の通りです。

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論文から Fig. 2. Study 3: Enjoyment by Beliefs about Leisure Prime. Note. Error bars represent ±1 standard error を引用すると上の通りです。New York Times のロゴをあしらったフェイクニュース記事3種類、すなわち、"Is Leasure Wasteful? - A recent poll says yes," "Is Leasure Unproductive? - A recent poll says yes," "Is Leasure Productive? - A recent poll says yes" を見せられての実験的な結果なのですが、まあ、常識的な結果かもしれません。

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2021年9月 8日 (水)

1次QEから上方修正されたものの前期からのリバウンドにも達しない4-6月期GDP統計2次QEをどう見るか?

本日、内閣府から今年2021年4~6月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.5%、年率では+1.9%と、1次QEから上方修正されています。新たな変異株や高齢者以外へのワクチン接種も含めて、先行きはまだ不透明感が残ります。まず、日経新聞のサイトから長い記事を引用すると以下の通りです。

GDP、年1.9%増に上方修正 4-6月改定値
内閣府が8日発表した4~6月期の国内総生産(GDP)改定値は物価変動の影響を除いた実質で前期比0.5%増、年率1.9%増だった。8月に公表した速報値(前期比0.3%増、年率1.3%増)から上方修正した。企業の設備投資などが上振れしたのが要因だ。
改定値では財務省が1日発表した4~6月期の法人企業統計を設備投資や民間在庫変動に反映した。設備投資は前期比2.3%増で、速報値(1.7%増)から上方修正した。一方、民間在庫変動のGDP押し上げ効果は速報段階のマイナス0.2ポイントからマイナス0.3ポイントに下方修正した。
政府消費は1.3%増で、速報値(0.5%増)から大きく上振れした。速報段階以降に公表された統計で6月の医療費が当初想定より多かったため、全体を押し上げた。
GDPの半分以上を占める個人消費は0.9%増と、速報値(0.8%増)から小幅上方修正した。8月に行われた消費者物価指数の基準改定や一部のサービス関連の統計を踏まえた結果、上向きに見直された。
名目GDPは前期比0.1%減、年率0.5%減で、速報値(前期比0.1%増、年率0.2%増)から下方修正された。消費者物価指数の基準改定によりGDPデフレーターが下振れしたことが押し下げた。
法人企業統計によると4~6月期の全産業の設備投資は前期比3.2%増で、製造業・非製造業ともに増加していた。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2020/4-62020/7-92020/10-122021/1-32021/4-6
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)▲7.9+5.4+2.8▲1.1+0.3+0.5
民間消費▲7.2+2.7+1.9▲0.6+0.8+0.8
民間住宅+0.6▲5.7+0.0+1.0+1.0+2.1
民間設備▲6.0▲2.1+4.3▲1.3+1.7+2.3
民間在庫 *(+0.1)(▲0.2)(▲0.5)(+0.4)(▲0.2)(▲0.3)
公的需要+1.1+2.3+1.7▲1.6+0.1+0.7
内需寄与度 *(▲5.1)(+2.7)(+1.8)(▲0.8)(+0.6)(+0.8)
外需寄与度 *(▲2.9)(+2.6)(+1.0)(▲0.2)(▲0.3)(▲0.3)
輸出▲17.5+7.3+11.7+2.4+2.9+2.8
輸入▲0.7▲8.2+4.8+4.0+5.1+5.0
国内総所得 (GDI)▲6.9+5.3+2.8▲1.7▲0.1+0.1
国民総所得 (GNI)▲7.1+5.1+3.1▲1.6▲0.0+0.1
名目GDP▲7.6+5.4+2.3▲1.1+0.1▲0.1
雇用者報酬▲3.5+0.8+0.9+2.1▲1.4▲0.7
GDPデフレータ+1.4+1.1+0.1▲0.2▲0.7▲1.1
内需デフレータ▲0.1+0.0▲0.8▲0.5+0.6+0.2

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された今年2021年1~3月期の最新データでは、前期比成長率が小幅ながらプラス成長を示し、GDPのコンポーネントのうち赤の消費と水色の設備投資のプラス寄与が大きくなっています。

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月曜日のこの私のブログでも1次QE予想を取り上げましたが、小幅な上方改定を予想するシンクタンクが多かったように記憶しています。また、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは年率で+1.7%のプラス成長でしたから、大きなサプライズはないとはいえ、やや上振れした印象を持つエコノミストも少なくない気がします。ただし、1~3月期が前期比で▲1.1%のマイナス成長の後の4~6月期の+0.5%のプラス成長ですから、4~6月期は前期のマイナス成長からのリバウンドも半分にも達しません。ですから、潜在成長率と比較すればそれなりのプラス成長とはいえ、決して力強い成長という評価はできません。昨年2020年後半は2020年7~9月期+5.4%、10~12月期+2.8%のそれなりのプラス成長を2四半期続けたのですが、2021年に入って日本経済は停滞を続けていると私は受け止めています。ただし、今回は何が生じているのか、デフレータの動きがやや不思議な気が私はしています。すなわち、伝統的に物価なので、デフレータだけは季節調整していない原系列の前年同期比を取っていて、季節調整済み系列の前期比をで見る成長率とはベースが異なるので、何ともいえませんが、上のテーブルからも明らかな通り、GDPデフレータ上昇率が1次QEの▲0.7%から2次QEでは▲1.1%に下方修正されており、同様に、内需デフレータ上昇率も+0.6%から+0.2%に修正されています。デフレータが下方修正されていて、名目GDP成長率は1次QEの+0.1%成長から▲0.1%に下方修正されています。ただし、実質値のGDIやGNIは上方修正されています。いずれにせよ、実感により近い名目GDP成長率が下方修正されている点は、実質成長率が上方修正されたとはいえ、日本経済の停滞をより強く印象づけているような気もします。加えて、月曜日の2次QE予想でもありましたが、足元の7~9月期はほぼゼロ成長ではないか、と見込むエコノミストも少なくないと私は受け止めています。

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GDP統計のほか、本日、内閣府から8月の景気ウォッチャーが、また、財務省から7月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲13.7ポイント低下の34.7、先行き判断DIも▲4.7ポイント低下の43.7を記録しています。新型コロナ感染症(COVID-19)パンデミックに対応して、首都圏などに緊急事態宣言の影響もあって、大きな低下を見せています。経常収支は、季節調整していない原系列で+1兆9108億円と+2兆円近いの黒字を計上しています。いつものグラフだけ、上の通り示しておきます。上のパネルの景気ウォッチャーのグラフでは、現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に同定しています。下の経常収支のグラフでは、青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。いずれも季節調整済みの系列をプロットしています。

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2021年9月 7日 (火)

5か月連続で「拡大」続く景気動向指数の先行きをどう見るか?

本日、内閣府から7月の景気動向指数公表されています。CI先行指数が前月から▲0..5ポイント下降して104.1を示し、CI一致指数も前月から▲0.1ポイント下降して94.5を記録しています。まず、統計のヘッドラインを手短に報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

7月の景気一致指数、2カ月ぶり低下 半導体や部品不足響く
内閣府が7日発表した7月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比0.1ポイント低下の94.5となった。低下は2カ月ぶり。QUICKがまとめた市場予想の中央値と同じだった。世界的な半導体不足やアジアの新型コロナウイルス感染拡大に伴う部品不足で自動車生産が低調に推移し、指数を押し下げた。
一致指数を構成する10指標で公表済みの8指標のうち、5つがマイナス、3つがプラスに寄与した。自動車工業や電気・情報通信機械工業などが低下し「生産指数(鉱工業)」が2カ月ぶりに低下した。アジアや米国向けの輸出が減少し「輸出数量指数」も2カ月ぶりに低下した。一方、夏物衣料の好調で「商業販売額(小売業)」は上昇した。
一致指数の動きから機械的に求める基調判断は、景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」で据え置いた。「改善」の判断は5カ月連続。
数カ月後の景気を示す先行指数は前月比0.5ポイント低下の104.1と、2カ月ぶりに低下した。無機・有機化学工業や電気・情報通信機械工業の出荷の伸びが低調で在庫率が上がり「鉱工業用生産財在庫率指数」が低下した。
景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は前月比0.2ポイント低下の93.8で、2カ月ぶりに低下した。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に同定しています。

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ということで、引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では、3月に基調判断を上方改定して、今月も5か月連続で「改善」に据え置きとなっています。基準がどうなっているかというと、「3か月後方移動平均が3か月連続して上昇していて、当月の前月差の符号がプラス」ですから、後者の当月の前月差はマイナスに転化し、3か月後方移動平均も7月統計ではマイナスとなっているので、やや不思議な気もします。3か月後方移動平均がマイナスになっているのですから、「足踏み」ではないか、と私は考えます。ただし、あくまで「原則」であって、「足踏み」には加えて、「マイナス幅(1か月、2か月または3か月の累積)が1標準偏差分以上」という基準もありますので、マイナス幅がこの標準偏差まで達していないのであろうと考えています。
7月統計について、CI一致指数を詳しく見ると、マイナスの寄与が大きい順に、生産指数(鉱工業)、 輸出数量指数、商業販売額(卸売業)(前年同月比)などのマイナス寄与が大きくなっています。逆に、プラス寄与を見ると、 有効求人倍率(除学卒)、商業販売額(小売業)(前年同月比)、耐久消費財出荷指数が押し上げ要因となっています。すなわち、雇用については人口動態に従って人手不足が続いているようですが、それ以外は、輸出や輸出に牽引される生産が、相変わらず、景気のリード役となっている姿が浮かび上がります。そして、その生産については、半導体の供給制約とアジアにおける新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴う部品不足が自動車工業の先行きに影を落としています。我が国の基幹産業であるだけに今後の動向が注目されます。

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2021年9月 6日 (月)

明後日公表予定の4-6月紀GDP統計速報2次QEはわずかに上方修正か?

必要な統計がほぼ出そろって、今週水曜日の9月8日に4~6月期GDP統計速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。若年層などへのワクチン接種がなかなか進まない中で、東京オリンピック・パラリンピックを強行開催し、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックがまたまた拡大して、足元から先行きの経済がとても気にかかるところですが、取りあえず、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の4~6月期から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が出たり解除されたり、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の動向は、ワクチン接種の行く方とともに、極めて不透明となっており、そういった影響も気にかかるところです。伝統的に、2次QEは法人企業統計のオマケで予想されることも少なくなく、ほとんどのシンクタンクで先行きについては取り上げていません。先行きについて明確に数字を上げて言及があるのは、みずほリサーチ&テクノロジーズと第一生命経済研の2機関だけでした。特に、前者のみずほリサーチ&テクノロジーズについては、リポートに詳細な解説があるので、ご興味ある向きは参照できるかと思います。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE+0.3%
(+1.3%)
n.a.
日本総研+0.3%
(+1.4%)
4~6月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資が上方修正される見込み。その結果、成長率は前期比年率+1.4%(前期比+0.3%)と、1次QE(前期比年率+1.3%、前期比+0.3%)から小幅に上方修正される見込み。
大和総研+0.4%
(+1.8%)
2021年4-6月期GDP2次速報(9月8日公表予定)では、実質GDP成長率が前期比年率+1.8%と、1次速報(同+1.3%)から上方修正されると予想する。
みずほリサーチ&テクノロジーズ+0.4%
(+1.7%)
7~9月期は、輸出や設備投資の増加基調が続く一方、デルタ型変異株の感染拡大を受けて個人消費が低迷。半導体の供給不足や東南アジアからの部品供給減も下押しし、0%近傍の弱い伸びを予想
ニッセイ基礎研+0.4%
(+1.6%)
9/8公表予定の21年4-6月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.4%(前期比年率1.6%)となり、1次速報の前期比0.3%(前期比年率1.3%)から上方修正されると予想する。
第一生命経済研+0.4%
(+1.5%)
7-9月期も停滞感の強い状態が継続するとみられる。感染者数の急増と緊急事態宣言の影響を受け、8-9月の個人消費は下振れる可能性が高い。輸出や設備投資の増加が下支えになるものの、消費の落ち込みが響くことで、7-9月期のGDP成長率はゼロ近傍にとどまると現時点で予想している。
伊藤忠総研+0.3%
(+1.0%)
今後は、経済が正常化するにつれて雇用が拡大、労働時間が長期化し、労働需給はタイト化、賃金上昇圧力も高まって、人件費の上昇ペースは加速していくとみられる。こうした動きは、個人消費回復の追い風となろう。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.5%
(+2.0%)
2021年4~6月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比+0.5%と1次速報値の同+0.3%から上方に修正される見込みである(年率換算では+1.3%から+2.0%に上方修正)。
三菱総研+0.6%
(+2.3%)
2021年4-6月期の実質GDP成長率は、季調済前期比+0.6%(年率+2.3%)と、1次速報値(同+0.3%(年率+1.3%))から上方修正を予測する。

伊藤忠総研だけを例外として、他のシンクタンクは押並べて1次QEから上方修正されると予想しています。基本的には、法人企業統計に従って設備投資が上方改定されるためです。ただ、景気認識として大きな修正は必要ないという点でも、ほぼほぼ一致しているように見受けました。また、4~6月期は一定のプラス成長を記録するとしても、明確な数字を上げていたみずほリサーチ&テクノロジーズと第一生命経済研の2機関は、7~9月期の成長率はゼロ近傍に低下すると見込んでいます。輸出や設備投資が経済を下支えするとしても、COVID-19パンデミックによる緊急事態宣言などにより消費が落ち込むという見方です。これについても、現時点で、エコノミストの間で一定のコンセンサスがあるような気がします。
最後に、下のグラフは、みずほリサーチ&テクノロジーズのリポートから引用しています。

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2021年9月 3日 (金)

米国雇用統計の雇用者増は物足りない数字に終わったか?

日本時間の今夜、米国労働省から8月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は今年2021年に入って着実にプラスを記録していたのですが、本日公表の8月統計では+235千人増にとどまっています。ただし、失業率は前月の5.4%から8月には5.2%にわずかに低下しています。まず、長くなりますが、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を最初の5パラだけ引用すると以下の通りです。

Economy added 235,000 jobs in August amid COVID cases surge, worker shortage. Unemployment fell to 5.2%
Hiring slowed sharply in August as employers added a disappointing 235,000 jobs, with COVID-19 surges dampening both consumer demand and Americans' willingness to return to work.
Restaurants and bars, which had been driving record employment gains, shed jobs.
The unemployment rate, which is calculated from a different survey, fell from 5.4% to 5.2%, the Labor Department said Friday.
Economists had estimated that 750,000 jobs were added last month, according to a Bloomberg survey.
So far, the U.S. has recovered 17 million, or 76%, of the 22.4 million jobs lost in the spring of last year, leaving the nation 5.3 million jobs below its pre-pandemic level.

長くなりましたが、まずまずよく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは今年2020年2月を米国景気の山と認定しています。ともかく、2020年4月の雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

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引用した記事の4パラ目にもあるように、Bloombergによる市場の事前コンセンサスでは+750千人の雇用増が予想されていましたので、+235千人増は記事の最初のパラにあるようにdisappointingな数字と受け止められています。他方で、失業率は今年2021年年初には6%前後だったんですが、最近では5%近くまで低下を示しています。ということで、やはり、8月統計については新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック拡大の影響で雇用改善にブレーキがかかった、というのが大方のエコノミストの見方ではないでしょうか。特に、7月統計の雇用者数が上方修正されて前月差で+100万人超の増加を見ていただけに、落差を大きく感じるのも事実です。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が進んでいたところに、バイデン政権の大幅な財政拡大があって、雇用改善が進んでいたわけなんですが、やはり、財政政策だけではデルタ株によるCOVID-19のパンデミックには十分ではなかった可能性があります。この先、いくつか考慮すべき事項があり、第1に、労働市場の動向です。9月4日に失業手当の週300ドルの特別加算が終了します。学校が開始されていることから、労働市場に再参入する働きに拍車がかかる可能性が十分あります。第2に、金融政策の動向です。すなわち、先月下旬のいわゆるジャクソン・ホール会議で米国連邦準備制度理事会(FED)のパウエル議長が年内のテーパリング開始を強く示唆したのですが、9月21-22に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)で、この米国雇用統計を踏まえてどのような議論がなされるのか、インフレンもにらみつつ、とても気にかかるところです。

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