2025年1月13日 (月)

成人の日に考える18歳の将来の選択肢

今日はいわずと知れた成人の日です。大学生にとって成人式はとても意義あるイベントです。ですので、祝日は無視して授業をすることの多い私の勤務校の立命館大学でもこの成人の日は授業はありません。ということで、成人の日にちなんで、先週1月6日、日本財団から18歳意識調査「第67回 -価値観・教育(地域間比較調査)-」報告書が明らかにされています。私の知りうる限り、この日本財団による18歳意識調査は1,000人のサンプルがほとんどだったのですが、今回の調査だけは各都道府県で男女50人ずつの合計4,700人とのやや大きなサンプルとなっています。そして、都道府県別のみならず、三大都市圏中心部、三大都市圏周辺部、地方圏中心部、地方圏周辺部のエリアに分けた調査結果が示されています。エリア分けは報告書 p.4 のテーブルの通りです。極めて大雑把にいって、首都圏と関西の京阪神と名古屋圏以外の多くは地方圏周辺部に分類されているように見えます。ただし、繰り返しになりますが、詳細なエリア分けは報告書 p.4 のテーブルをご覧下さい。私の住んでいるところは文句なしに地方圏周辺部です。
まず、大学教員として大学への進学予定が気にかかります。質問2で高校生に対して大学への進学予定を質問しています。見れば明らかなように、大学進学予定については男女の性別格差以上に地域間格差が大きい、との結果が示されています。三大都市圏中心部では男女を問わず85%ほどの高校生が大学進学を予定している一方で、地方圏中心部と地方圏周辺部では男女ともに60%台後半となっていて、20%ポイント近い差が見られます。そして、質問3で大学進学予定がない理由/しなかった理由について、いずれのエリアでも「学費が高い」と「できるだけ早く自分で稼いで生活したい」との回答がトップ3の理由に入っています。学費については文教政策で低減することが可能なだけに残念といわざるを得ません。
私が特に注目したのは、将来の選択肢に関するエリア別の格差が非常に大きい点です。下のグラフの特に上のパネルの質問11の最後の項目の「将来の選択肢が多い」ではエリアにより大きな格差が見られます。三大都市圏中心部では80%を超える一方で、私の住んでいるような地方圏周辺部ではその半分の40%も下回っています。質問12の価値観を問うた結果ではエリア別の差は決して大きくありませんが、価値観を離れてやや客観的ともいえる将来の選択肢については大きな格差があるわけです。

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18歳の時点で将来についての選択肢の幅が大きく異なり、自分の将来を見通せないのは国家として大きな損失につながりかねません。現在取り組まれているようなタイプの地方再生だけではなく、文教政策の観点からもさまざまな試みがなされることが必要です。

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2025年1月10日 (金)

堅調な雇用とソフトランディングの確率の高さを確認した12月の米国雇用統計

日本時間の今夜、米国労働省から昨年2024年12月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は、11月統計の+212千人増から12月統計では+256千人増と小幅な加速を見せ、失業率も前月から低下しての4.1%を記録しています。まず、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事をやや長めに小見出しを除いて11パラ引用すると以下の通りです。

Jobs report today: U.S. added booming 256,000 jobs in December, unemployment at 4.1%
U.S. employers added a booming 256,000 jobs in December, shrugging off high labor costs, slowing sales and uncertainty about President-elect Donald Trump's economic policies.
The unemployment rate fell from 4.2% to 4.1%, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg had estimated that about 165,000 jobs were added last month, based on their median forecast.
The robust performance bolsters the case for the Federal Reserve to stand pat and skip an interest rate cut at a meeting later this month.
Employers added 2.2 million jobs for all of 2024, or an average 186,000 a month. That's down from 3 million, or an average 251,000 a month, in 2023 but still a surprisingly strong showing. Most forecasters expected a sharper slowdown, believing inflation and high interest would take a bigger toll and a post-pandemic rebound in economic activity would fade more dramatically.
Average hourly pay rose 10 cents to $35.69, nudging down the yearly increase from 4% to 3.9%.
Wage growth generally has slowed as pandemic-related labor shortages have eased, helping bring down inflation. Since employers often pass their increased labor costs to consumers through higher prices, economists have said yearly wage growth needs to fall to 3.5% to achieve the Fed's 2% inflation goal.
But recent strong gains in productivity - or output per worker - could let companies give up to 4% raises without hiking prices, economists have said.
The solid jobs report likely keeps the Fed on course to pause its campaign of interest rate cuts at a meeting later this month.
After the Fed lowered rates by a total percentage point at its last three meetings of 2024 amid easing inflation, many economists expected the central bank to pause in January and slow the pace of decreases this year. That's because price increases have remained elevated recently while the economy and labor market have been healthy.
The Fed raises rates or keeps them high to increase borrowing costs and bring down inflation. It lowers rates to spur a weakening economy or return rates to normal as inflation slows.

いつもの通り、よく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは2020年2月を米国景気の山、2020年4月を谷、とそれぞれ認定しています。ともかく、2020年4月からの雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたのですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

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ということで、ここまで詳細に報道記事を引用すると、もう十分にお腹いっぱいという気もします。米国の雇用は非農業部門雇用者の増加が、10月統計で大きく減速した後、11月統計では大きくリバウンドして+212千人、12月統計ではさらに雇用増が大きくなって+256千人増を記録しています。引用した記事の3パラ目にあるように、Bloombergによる市場の事前コンセンサスでは+165千人強の雇用者増くらいだったようです。他方、失業率については、ほぼ安定的に推移しており、12月統計の4.1%は11月統計の4.2%からわずかに低下し、歴史的に低い水準を維持していると考えるべきです。どうやら、10月の雇用者数の減速はインフレ抑制のための連邦準備制度理事会(FED)による金融引き締めの影響というよりも、ハリケーンとストライキに起因し、11月統計ではきっちりとリバウンドし、さらに、12月統計では雇用の堅調さとソフトランディングの確率の高さを見せつけられた、というのが私の受止めです。
広く報じられているように、米国連邦準備制度理事会(FED)は12月17-18日のFOMCで▲25ベーシスの利下げを決めましたが、ここまで雇用が堅調であれば、利下げを急がないだろう、というのが市場における一般的な観測のようです。FEDの連邦公開市場委員会(FOMC)は1月28-29日、日銀の次の金融政策決定会合はFOMCの少し前の1月23-24日です。ひょっとしたら、日銀は再利上げに踏み切る可能性もあります。はてさて、日米の金融政策動向やいかに?

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3か月ぶりの下降を示した2024年11月の景気動向指数をどう見るか?

本日、内閣府から昨年2024年11月の景気動向指数が公表されています。統計のヘッドラインを見ると、CI先行指数は前月から▲2.1ポイント下降の107.0を示し、CI一致指数も▲1.5ポイント下降の115.3を記録しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから報道を引用すると以下の通りです。

景気動向一致指数1.5ポイント低下、生産悪化で3カ月ぶりマイナス
内閣府が10日に公表した11月の景気動向指数速報(2020年=100)によると、足元の各種経済指標を総合した一致指数は前月比1.5ポイント低下の115.3で、3カ月ぶりのマイナスとなった。鉱工業生産指数の悪化などが下押しした。
生産指数は、一部自動車メーカーでの安全規制に絡む生産停止などの影響で悪化した。半導体製造装置の出荷減により投資財出荷指数、そのほか耐久消費財出荷指数、アジア・米国・欧州連合向けの減少が目立った輸出数量指数も悪化し、全体を押し下げた。
一致指数から一定のルールで決める基調判断は、10月の「下げ止まりを示している」で据え置いた。7カ月連続で同じ表現となっている。
先行指数も前月比2.1ポイント低下の107.0と、3カ月ぶりに悪化した。中小企業売上見通しや鉱工業生産財在庫率指数の悪化が影響した。中小企業売上見通しは、電気機械・設備投資・乗用車関係企業が悪化した

いつもながら、コンパクトかつ包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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2024年12月統計のCI一致指数は3か月ぶり下降となりました。ただ、3か月後方移動平均の前月差もは3か月連続の上昇で+0.67ポイント上昇、7か月後方移動平均の前月差も0.00、すなわち横ばいとなっています。ただ、統計作成官庁である内閣府では基調判断は、今月も「下げ止まり」で据え置いています。5月に変更されてから半年余り同じ基調判断で据置きです。なお、細かい点ながら、上方や下方への局面変化は7か月後方移動平均という長めのラグを考慮した判断基準なのですが、改善からの足踏みや悪化からの下げ止まりは3か月後方移動平均で判断されます。いずれにせよ、私は従来から、米国経済がソフトランディングに成功するとすれば、そう簡単には日本経済が景気後退局面に入ることはないと考えていて、世間一般と比べるとやや楽観的な見方かもしれません。ただし、日本経済はすでに景気回復・拡大局面の後半に入っている点は忘れるべきではありませんし、多くのエコノミストが円高を展望して待ち望んでいる金融引締めの経済へ影響は、引き続き、考慮する必要があるのは当然です。
CI一致指数を構成する系列を前月差に対する寄与度に従って詳しく見ると、生産指数(鉱工業)が▲0.42ポイント、投資財出荷指数(除輸送機械)と輸出数量指数がともに▲0.36ポイント、耐久消費財出荷指数が▲0.35ポイント、鉱工業用生産財出荷指数が▲0.24ポイントなどとなっています。他方、プラスで目立つのは商業販売額(小売業)(前年同月比)+0.20ポイントくらいとなっています。

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2025年1月 9日 (木)

日銀「さくらリポート」に見る地域経済やいかに?

本日1月9日の日銀支店長会議において「地域経済報告」、いわゆる「さくらリポート」が公表されています。まず、日銀のサイトから各地域の景気の総括判断を引用すると以下の通りです。

各地域の景気の総括判断
一部に弱めの動きもみられるが、すべての地域で、景気は「緩やかに回復」、「持ち直し」、「緩やかに持ち直し」としている。

続いて、各地域の景気の総括判断と前回との比較のテーブルは以下の通りです。

 【2024年10月判断】前回との比較【2025年1月判断】
北海道一部に弱めの動きがみられるが、持ち直している一部に弱めの動きがみられるが、持ち直している
東北緩やかに持ち直している持ち直している
北陸一部に能登半島地震の影響がみられるものの、緩やかに回復しつつある。なお、奥能登豪雨の影響については、被災地に甚大な被害を及ぼしているが、今後、マインド面を含めてどの程度、経済を下押ししていくか注視していく必要がある一部に能登半島地震の影響がみられるものの、緩やかに回復している
関東甲信越一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している
東海緩やかに回復している緩やかに回復している
近畿一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかに持ち直している一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかに回復している
中国緩やかな回復基調にある緩やかな回復基調にある
四国緩やかに持ち直している緩やかに持ち直している
九州・沖縄一部に弱めの動きがみられるが、緩やかに回復している一部に弱めの動きがみられるが、緩やかに回復している

テーブルを見れば明らかなのですが、全9ブロックのうち東北と北陸の2ブロックで景気判断が引き上げられています。他方で、ほかの北海道、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄の7ブロックでは判断を据え置いています。景気判断を下方修正したブロックはありませんでした。これらの総括判断に加えて、pdfの全文リポートには、「企業等の主な声」として、① 個人消費 (インバウンド需要を含む)、② 生産・輸出・設備投資、③ 雇用・賃金設定、④ 価格設定、の4項目があるのですが、③ 雇用・賃金設定のトピックでは賃上げに関する意見や見方も含まれています。いくつかの例では、「原材料価格がひと頃より下落する一方、販売価格を維持することで原資を確保し、2025年度も2024年度に続き、積極的な賃上げを検討している(高松[金属製品])。」といった見方が示されている一方で、「2024年度は、世間の賃上げムードの高まりを受け、利益を圧縮してでもベアを実施したが、2025年度は、中国での日本車販売の不振から受注が減少する見通しであることから、ベアは見送る方針(福島[輸送用機械])。」といった真逆な見方まで、幅広く明らかにされています。まあ、当然かも知れません。こういった動きを受けて、ロイターの報道では、「25年度賃上げ率『具体的な検討進めている企業も』=日銀支店長会議」といったタイトルの記事があったりします。

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2025年1月 8日 (水)

2か月ぶりの低下となった2024年12月の消費者態度指数

本日、内閣府から昨年2024年12月の消費者態度指数が公表されています。12月統計では、前月から+0.2ポイント上昇して36.4を記録しています。まず、ロイターのサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです

消費者態度指数、12月は0.2ポイント低下 2カ月ぶりマイナス
内閣府が8日に発表した12月消費動向調査によると、消費者態度指数(2人以上の世帯・季節調整値)は、前月から0.2ポイント低下の36.2と、2カ月ぶりのマイナスとなった。
同指数を構成する4つの指標のうち、耐久消費財の買い時判断が0.5ポイント、暮らし向きが0.2ポイント悪化したことが響いた。収入の増え方は前月比横ばい、雇用環境は0.2ポイント改善した。
<冬物野菜高騰、物価見通しに影響か>
暮らし向き指標の悪化について内閣府では「物価上昇が影響した可能性がある」(幹部)とみている。
内閣府は消費者態度指数の基調判断を7カ月連続で「改善に足踏みがみられる」に据え置いた。
1年後の物価が上昇するとの回答比率は前月比0.5ポイント上昇して93.7%だった。
1年後物価が5%以上上昇するとの回答比率が前月の47.5%から48.4%に拡大し、1年2カ月ぶりの水準となった。内閣府は「冬物野菜の価格高騰を反映した可能性がある」と説明した。

いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者態度指数のグラフは下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。影を付けた部分は景気後退期となっています。

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消費者態度指数を構成する4項目の指標について前月差で詳しく見ると、「雇用環境」が+0.2ポイント上昇し41.2、「収入の増え方」は前月から横ばいで40.2となった一方で、ほかの項目は軒並み低下を示し、「耐久消費財の買い時判断」が▲0.5ポイント低下し29.4、「暮らし向き」も▲0.2ポイント低下し34.1となりました。統計作成官庁である内閣府では、基調判断を「改善に足踏みがみられる」で据え置いています。7か月連続の据え置きです。私は従来から主張しているように、あるいは、引用した記事にもあるように、いくぶんなりとも、消費者マインドは物価上昇=インフレに連動している部分があります。1970年代前半の狂乱物価の時期は異常な例としても、デフレ前であれば、インフレになれば価格が引き上げられる前に購入するという消費者行動だったのですが、デフレを経て、物価上昇により消費者が買い控えをする行動が目につきます。こういった消費者行動の経済分析が必要だという気がしています。というか、私も研究をしているわけですので、少し考えたいと思います。
また、インフレに伴って注目を集めている1年後の物価見通しは、5%以上上昇するとの回答が11月統計の47.5%から本日公表の12月統計では48.4%に上昇する一方で、2%以上5%未満物価が上がるとの回答は34.1%から33.7%に低下し、物価上昇を見込む割合は93.7%と前月11月統計から+0.5%ポイント上昇し高い水準が続いています。

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2025年1月 7日 (火)

ユーラシア・グループによる2025年のトップリスクやいかに?

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日本時間の昨日1月6日、イアン・ブレマー率いるユーラシア・グループから今年2025年のトップリスク10項目が明らかにされています。今どきのことですから、詳細な内容のpdfの全文リポートもアップされています。日本語版もあります。
もうすぐ、1月20日には米国でトランプ大統領が就任し、欧州でも世界経済フォーラムが主催するダボス会議が開催され、その少し前には「グローバルリスク報告書」 Global Risks Report 2025 が明らかにされることとなろうかと思います。上のリポート表紙画像に10項目が明らかに読み取れるでしょうし、リスク管理や安全保障など専門外のエコノミストとして、10項目を羅列するだけですので、悪しからず。

  1. The G-Zero wins
  2. Rule of Don
  3. US-China breakdown
  4. Trumponomics
  5. Russia still rogue
  6. Iran on the ropes
  7. Beggar thy world
  8. AI unbound
  9. Ungoverned spaces
  10. Mexican standof

私にはそれほどのリスク理解力はありませんが、4番目のトランポノミクスの関税が日本経済のみならず世界経済に及ぼす影響が気がかりではあります。はい、特段の根拠はありませんが、今年はヤバそうな気がしています。私だけでしょうか?

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2025年1月 6日 (月)

年末年始休みに読んだ学術論文

先週土曜日1月4日の読書感想文のブログでは小説ばかり3冊ほど取り上げましたが、もちろん、この年末年始休みには、私も大学教授ですので、いくつか学術論文も読んでいます。4本ほど取り上げたいと思います。まず、私が読んだ順で各論文の引用情報は以下の通りです。

次に、英文ながら、一気にAbstractを引用して並べると以下の通りです。

Skill Depreciation during Unemployment: Evidence from Panel Data
We examine the depreciation of skills among unemployed German workers using a panel of skill measures linked to administrative data. Both the reemployment hazard and reemployment earnings steadily decline with unemployment duration. Indicators of depression and loneliness also rise substantially. However, we find no decline in a wide range of cognitive and non-cognitive skills while workers remain unemployed. We find the same pattern in a panel of American workers. The results imply that skill depreciation in general human capital is unlikely to be a major explanation for observed duration dependence in reemployment outcomes.
Babies and the Macroeconomy
Fertility levels have greatly decreased in virtually every nation in the world, but the timing of the decline has differed even among developed countries. In Europe, Asia, and North America, total fertility rates of some nations dipped below the magic replacement figure of 2.1 as early as the 1970s. But in other nations, fertility rates remained substantial until the 1990s but plummeted subsequently. This paper addresses why some countries in Europe and Asia with moderate fertility levels in 1980s, have become the "lowest-low" nations today (total fertility rates of less than 1.3), whereas those that decreased earlier have not. Also addressed is why the crossover point for the two groups of nations was around the 1980s and 1990s. An important factor that distinguishes the two groups is their economic growth in the 1960s and 1970s. Countries with "lowest low" fertility rates today experienced rapid growth in GNP per capita after a long period of stagnation or decline. They were catapulted into modernity, but the beliefs, values, and traditions of their citizens changed more slowly. Thus, swift economic change may lead to both generational and gendered conflicts that result in a rapid decrease in the total fertility rate.
Worker Earnings, Service Quality, and Firm Profitability: Evidence from Nursing Homes and Minimum Wage Reforms
This paper examines whether higher earnings for frontline workers affects the quality of employees' output. I leverage increases in the statutory minimum wage, combined with worker, consumer, and firm outcomes in the nursing home sector. I find that higher minimum wages increase income and retention among low-wage employees and improve consumer outcomes, measured by fewer inspection violations; lower rates of adverse, preventable health conditions; and lower resident mortality. Firms maintain profitability by attracting consumers with a greater ability to pay and increasing prices for these individuals.
Exemption and work environment
The Labor Standards Act of Japan requires employers to compensate employees based on hours worked, but exemptions apply to specific occupations with agreements between employers and employees. We assess the impact of being exempted on hours worked, earnings, and the physical and mental health conditions of employees. We find that, on average, exempt workers work longer hours and earn more than nonexempt workers, without hurting their health status. We also find, however, that being exempted exacerbates health status when it is applied to employees who do not have discretion in how and when they work.

まず、最初の論文 "Skill Depreciation during Unemployment: Evidence from Panel Data" では、失業に伴う不利益をパネルデータ分析により明らかにしようと試みています。私の従来からの見方と違っているのは、失業期間中も認知的及び非認知的スキルの低下は見られない、という結論です。ただし、再雇用されないリスクと再雇用後の所得、さらに、うつ病と孤独指標は失業期間の長期化とともに悪化を示しています。私は雇用者が失業するとスキルの低下を招くので失業を避けるべきだと主張してきましたが、本論文ではドイツの例ながら私の見方を一部否定する結論が出ています。
2番目の論文 "Babies and the Macroeconomy" は、一昨年のノーベル経済学賞を受賞したゴルディン教授による出生率低下に関する分析です。急速な経済成長を経験した国のグループで出生率が低くなっている事実につき分析し、急激な成長や経済の変化が世代間や性別に応じた対立を引き起こし、出生率の急速な低下を招いた可能性を指摘しています。3番目の論文 "Worker Earnings, Service Quality, and Firm Profitability: Evidence from Nursing Homes and Minimum Wage Reforms" は、最前線で働くエッセンシャルワーカーなどの労働者の収入が法定最低賃金の上昇により引き上げられると、低賃金労働者の収入と定着率が向上し、健康状態の悪化を予防するなど、消費者としての成果を改善するとの分析結果を示しています。
最後の論文 "Exemption and work environment" は、日本人の研究者による日本の裁量労働制、すなわち、労働基準法の適用除外に関して、それが労働時間、収入、心身の健康に及ぼす影響を分析しています。(1) 目標や締切といった基本的業務内容の決定方法、(2) 業務内容や量の決定方法、(3) 進捗報告の頻度、(4) 業務実施方法や時間配分の決定方法、(5) 作業開始および終了時間の決定方法、の5つの基準として、自己決定の割合、すなわち、裁量が高い労働者に裁量労働制が適用されていると、適用されていない労働者に比べて週当たり労働時間が2時間長くなる一方で、年間ベースで収入が+7.8%高くなる、との結果を得ています。健康状態の悪化や仕事に対する満足度の低下も見られていません。ただし、5つの基準で見て、低い裁量しか持たない労働者には長時間労働が健康に悪影響を与え、加えて、仕事に対する満足度も低下することが明らかにされています。まあ、労働基準法の定期用除外になって裁量労働制が適用されると、労働時間が増加するのは確実だと私も思います。最後の論文から、その労働時間の分布のグラフ Figure 1 Distributions of weekly hours worked by discretionary work-hour system status を引用すると以下の通りです。ピンクの部分が労働基準法の適用除外=裁量労働制の適用された労働者の労働時間であり、緑色の部分はそうでない労働者の労働時間です。

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2024年12月30日 (月)

東洋経済オンライン「有名企業への就職に強い大学」ランキングTOP200やいかに?

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東洋経済オンライン「有名企業への就職に強い大学」ランキングTOP200から 有名企業400社への実就職率が高い大学 を引用しています。1-50位までです。「有名企業400社」とは、注にあるように日経平株価指数の採用銘柄や会社規模、知名度、大学生の人気企業ランキングなどを参考に選定されているようです。関西系の企業では、私の想像ながら、株式未公開企業であってもサントリー何かが入っているんではないか、と思います。私も勤務校もランキング50位以内には入っているようです。でも、工科系の大学が多いようで、私のよく知らない大学もいくつかあります。

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2024年12月28日 (土)

週刊『ダイヤモンド』のベスト経済書にレビューが掲載される

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昨年に続いて、今年も週刊『ダイヤモンド』2024・2025 12/28・1/4の新年合併特大号の「ベスト経済書」のレビューで私のコメントを取り上げていただいております。2位にランクインした『人的資本の論理』の2番目のコメントです。
来年は『東洋経済』のベスト経済書にも取り上げていただけるようがんばりたいと思います。

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2024年12月27日 (金)

3か月ぶりの減産となった鉱工業生産指数(IIP)と販売増が続く商業販売統計と前月から横ばいの雇用統計

本日は月末、というか、年末最後の閣議日ということで、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも11月の統計です。IIP生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲2.3%の減産でした。また、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+2.8%増の14兆2170億円を示し、季節調整済み指数は前月から+1.8%の上昇を記録しています。雇用統計では、失業率は前月から横ばいの2.5%、有効求人倍率も同じく横ばいの1.25倍を記録しています。まず、ロイターのサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産11月は2.3%低下、半導体製造装置など減産で3カ月ぶりマイナス
経済産業省が27日公表した11月の鉱工業生産指数速報は前月比2.3%低下の101.7となり3カ月ぶりのマイナスとなった。半導体製造装置や自動車の減産などが響いた。
ロイター集計の民間予想中央値は3.4%低下だった。
基調判断は「一進一退」で据え置いた。
企業の生産計画を基にした予測指数は、12月が前月比2.1%上昇、2025年1月が1.3%上昇だった。
11月実績の内訳は、前月比で半導体製造装置が中国・台湾向け輸出減で14.7%減、液晶などフラットパネル・ディスプレー製造装置が中国向け輸出減で67.1%減など、生産用機械が9.1%の減産となり、指数を大きく押し下げた。
このほか自動車が4.3%減。普通乗用車の輸出減や小型乗用車の一部車種生産停止が響いた。金属製品は前月に橋梁(きょうりょう)の大型案件があった反動で5.7%の減産だった。
生産予測は12月は半導体製造装置など生産用機械が、1月は自動車など輸送機械、半導体など電子部品・デバイスが上昇をけん引する見通し。もっとも経産省では「米中経済動向や米利上げの影響などをリスク要因として注視」(幹部)する構えだ。
小売業販売11月は2.8%増、冬物衣料好調・食品値上げで33カ月連続増
経済産業省が27日公表した11月の商業動態統計速報によると小売業販売額は前年比2.8%増加し、33カ月連続増となった。ロイター集計の民間予想中央値1.7%増を上回った。気温低下による冬物販売好調や食品値上げなどが指数を押し上げた。
<鍋、肺炎用調剤など好調>
業種別では織物・衣服が前年比10.7%増、その他小売業が5.7%増、飲食料品1.4%増などだった。食品は「節約志向で販売点数は回復しておらず、数量よりも値上げ要因とみられる」(経産省幹部)という。自動車は一部メーカーの生産停止などが響き1.9%減だった。
業態別では百貨店が2.7%増、冬物衣料や外国人旅行者向けが好調だった。スーパーは食品値上げに加え、鍋や入浴剤など冬関連商品が伸び3.6%増だった。コンビニエンスストアは、たばこやおにぎりが堅調で1.9%増。家電大型専門店はスマートフォンなどがけん引し3.3%増だった。ドラッグストアもコメや菓子類の販売好調や、マイコプラズマ肺炎・インフルエンザ流行による調剤販売が好調で6.3%増となった。
完全失業率11月は2.5%、有効求人1.25倍 ともに横ばい
政府が27日発表した11月の雇用関連指標は完全失業率が季節調整値で2.5%と、前月から横ばいだった。有効求人倍率も前月比同水準の1.25倍だった。
ロイターの事前予測調査で完全失業率は2.5%、有効求人倍率は1.25倍と見込まれていた。
総務省によると、11月の就業者数は季節調整値で6808万人と、前月に比べて10万人増加。完全失業者数(同)は172万人で、1万人増加した。
厚生労働省によると、11月の有効求人数(季節調整値)は前月に比べて0.7%増。原材料や人件費などのコスト上昇を背景に、足元は求人を手控える動きがみられるものの、9月分の増加が大きく全体ではプラスとなった。求人、求職数ともに3カ月間有効で、データは9-11月の状況が反映される。
有効求職者数(同)は0.6%増。物価高などの社会情勢や最低賃金の引き上げを踏まえ、より良い転職の時期を検討している人が多いという。離転職を踏みとどまって求職活動を続ける動きが出ていた。
有効求人倍率は、仕事を探している求職者1人当たり企業から何件の求人があるかを示す。厚労省の担当者は雇用情勢について「悪くはない」と述べた。

3つの統計から取りましたので、とてつもなく長くなりましたが、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2020年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にはある通り、ロイターによる市場の事前コンセンサスでは、鉱工業生産指数(IIP)は▲3.4%の減産、また、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、同じく▲3.5%の減産が予想されていましたので、実績の前月比▲2.3%の減産はやや上振れた印象です。前月からマイナスの減産とはいえ、市場の事前コンセンサスからやや上振れていますので、統計作成官庁である経済産業省では生産の基調判断については、「一進一退」で据え置いています。先行きの生産については、製造工業生産予測指数を見ると、引用した記事にもある通り、足下の12月は補正なしで+2.1%の増産ですが、上方バイアスを除去した補正後では、#x25B2;0.3%の減産と試算されています。先行き生産は2か月連続の減産を見込んでいるわけです。ただし、来年2025年1月は+1.3%の増産との予想となっています。経済産業省の解説サイトによれば、11月統計における生産は、生産用機械工業が前月比で▲9.1%の減産で▲0.86%の寄与度を示したほか、自動車工業が▲4.3%の減産で▲0.58%の寄与度、金属製品工業が前月比▲5.7%の減産で▲0.25%の寄与度、などとなっています。他方で、生産低上昇に寄与したのは、汎用・業務用機械工業が+6.4%の増産で+0.44%の寄与度、輸送機械工業(除、自動車工業)が+15.2%の増産で+0.38%の寄与、石油・石炭製品工業が+2.1%の増産で+0.03%の寄与度、などとなっています。

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続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整済みの2020年=100となる指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。見れば明らかな通り、小売業販売のヘッドラインは季節調整していない原系列の前年同月比で見るのがエコノミストの間での慣例なのですが、伸び率はまだプラスを維持しているものの、プラス幅が落ちてきているのが見て取れます。その上、季節調整済みの系列では9-10月統計で2か月連続して前月比マイナスを記録し、今月11月統計では+1.8%の伸びとなっています。引用した記事にある通り、ロイターでは前年同月比で+2.8%の伸びを市場の事前コンセンサスとしていましたので、上振れした印象を持つエコノミストも多かろうと思います。ただ、統計作成官庁である経済産業省では基調判断について、季節調整済み指数の後方3か月移動平均により、経済産業省のリポートでかなり機械的に判断していて、本日公表の11月統計までの3か月後方移動平均の前月比が▲0.3%の減少となりましたので、先々月9月の段階で「上方傾向」から「一進一退」と明確に1ノッチ下方修正した後、今月も「一進一退」で据え置かれています。鉱工業生産と同じ表現となっています。加えて、参考まで、消費者物価指数(CPI)との関係では、11月統計ではヘッドライン上昇率が+2.9%、生鮮食品を除くコア上昇率も+2.7%、生鮮食品及びエネルギーを除くコアコアCPI上昇率も+2.4%となっていますので、小売業販売額の11月統計の前年同月比+2.8%の増加は、インフレ率との関係はビミョーであり、実質消費はプラスか、マイナスか、きわどいところといえます。さらに考慮しておくべき点は、国内需要ではなく海外からのインバウンドにより、部分的なりとも小売業販売額の伸びが支えられている可能性です。したがって、小売業販売額の伸びが国内消費の実態よりも過大に評価されている可能性は考慮されるべきです。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。よく知られたように、失業率は景気に対して遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数ないし新規求人倍率は先行指標と見なされています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。記事にもある通り、ロイターでは失業率に関する事前コンセンサスは前月と同じ2.5%、有効求人倍率も前月から横ばいの1.25倍が見込まれていました。人口減少局面下の人手不足を背景に、失業率・有効求人倍率ともに前月から横ばいながら、どちらの指標も雇用の底堅さを示す水準が続いています。ただし、グラフからも明らかなように、雇用は堅調ながら、そろそろ改善局面を終えた可能性がある、と私は評価しています。ただ、それでも、季節調整していない前年同月差の増減で見て、11月統計では就業者が+34万人増、雇用者も+67万人増と大きな増加を示しています。なお、失業者数も▲5万人減少しています。もちろん、そろそろ景気回復局面は後半期に入っている可能性が高いと考えるべきですし、その意味で、いっそうの雇用改善は難しいのかもしれません。ただ、あくまで雇用統計は最近の失業率と有効求人倍率のように横ばいや改善と悪化のまだら模様である一方で、人口減少下での人手不足は続くでしょうし、米国がソフトランディングの可能性を高めている限り、それほど急速な雇用や景気の悪化が迫っているようにも見えません。

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