2019年10月14日 (月)

ノーベル経済学賞は貧困削減と開発経済学の3氏に授与!!!

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今年のノーベル経済学賞 The Sveriges Riksbank Prize in Economic Sciences in Memory of Alfred Nobel 2019 が本日公表されています。世界的な貧困削減の貢献により、米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者と米国ハーバード大学の研究者計3氏に授賞されています。以下の通りです。お名前にリンクを張ってあります。

nameaffiliationmotivation
Abhijit Banerjee
Born: 21 February 1961, Mumbai, India
Massachusetts Institute of Technology (MIT), Cambridge, MA, USAfor their experimental approach to alleviating global poverty
Esther Duflo
Born: 1972, Paris, France
Massachusetts Institute of Technology (MIT), Cambridge, MA, USAfor their experimental approach to alleviating global poverty
Michael Kremer
Born: 1964
Harvard University, Cambridge, MA, USAfor their experimental approach to alleviating global poverty

もうおおむかしなんですが、バナジー教授とデュフロ教授の共著である『貧乏人の経済学』(みすず書房) を読んだ読書感想文がこのブログに2012年7月13日付けでアップしてあります。「ランダム化比較実験」と訳されている Randomized Controlled Trial (RCT) を途上国で実施し、より有効な貧困削減や経済開発の方策を探ったりしています。もう少し最近では、2017年5月6日付けの読書感想文でデュフロ教授の『貧困と闘う知』(みすず書房)を取り上げています。
開発経済学の研究者としては、ルイス卿やセン教授などがノーベル経済学賞を授賞されていますが、その昔の私の専門分野に近い研究者だけに、とても感激しました。私も役所を定年退職しましたが、もう一度何らかの形でエコノミストに復帰したいとの希望が芽生え始めています。

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2019年10月11日 (金)

IMF「世界経済見通し」分析編を読む!

IMF世銀総会を前に、IMFから「世界経済見通し」分析編がすでに公表されています。章別のタイトルは以下の通りです。

Chapter 2:
Closer Together or Further Apart? Subnational Regional Disparities and Adjustment in Advanced Economies
Chapter 3:
Reigniting Growth in Emerging Market and Low-Income Economies: What Role for Structural Reforms?

第2章では、先進国内における地域間格差について、第3章では、新興国と途上国の成長率の鈍化を、それぞれ着目した分析を行っています。なかなか本文を読み切れないので、IMF blog などから要約を取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは IMF blog のサイトから Slipping behind を引用しています。第2章では、米国の1人あたり実質GDPの平均は、スロバキアの平均値を約90%上回っているが、同時に、米国内で見るとニューヨーク州の1人あたりGDPはミシシッピ州よりも100%高い、と指摘しつつ、同じ国の中であっても地域間で景気動向に大きな差が見られ、特に、1980年代後半以降、特定地域での経済的集中と、それ以外の地域での相対的な停滞を反映して、地域間格差が拡大してきた点に着目しています。すなわち、遅れている地域は、国内の他地域と比べて健康状態が悪く、労働生産性が低く、農業や工業部門における雇用比率が高い、と指摘し、市場の歪みを軽減し、より柔軟で開かれた市場を目指して、しかも強固なセーフティーネットを提供する政策を国レベルで行うような対応を求めています。

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次に、上のグラフは IMF blogのサイト から Slowing pace を引用しています。第3章では、新興市場国と発展途上国は、過去20年にわたって高い経済成長を遂げてきたものの、多くの国々では生活水準が今も先進国に追いつく段階に達しておらず、このままの成長ペースでは、生活水準について、現在の所得ギャップを半分解消するのに、典型的な新興市場国は50年以上、典型的な発展途上国は90年を要することになる、と指摘しつつ、6つの重要分野、すなわち、国内金融、対外資金調達、貿易、労働市場、製品市場、ガバナンスで同時に大規模な改革を行うことにより、平均的な新興市場国・発展途上国の所得が先進国の生活水準に近づくスピードを2倍に加速でき、6年にわたってGDP成長率をを+7%以上に引き上げることができる、と指摘しています。

なお、見通し編は来週早々の10月14日の公表と聞き及んでいますので、また、日を改めて取り上げたいと思います。

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2019年10月10日 (木)

前月比で2か月連続で減少したコア機械受注と国内物価のマイナス幅が1%を超えた企業物価(PPI)!

本日、内閣府から8月の機械受注が、また、日銀から9月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比▲2.4%減の8753億円を示しており、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲1.1%の下落と、6月統計で前年同月比上昇率がマイナスに転じてから、今日発表の9月統計まで4か月連続でマイナスが続いています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の機械受注、前月比2.4%減 基調判断は「持ち直し」据え置き
内閣府が10日発表した8月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比2.4%減の8753億円だった。減少は2カ月連続で、市場予想(1.8%減)も下回った。ただ、内閣府は基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。「3カ月移動平均で見た場合、足元のトレンドは変わってない」(内閣府)という。
8月の受注額は製造業が1.0%減の3802億円だった。減少は2カ月ぶり。造船業で内燃機関や船舶、その他製造業で火水力原動機などの受注が減った。内閣府は「前月が非常に高い伸びだったため、反動減がみられた」と分析している。非製造業は8.0%減の4773億円だった。減少は2カ月連続。建設業で船舶、建設機械、情報サービス業で電子計算機などの受注が減少した。前年同月比での「船舶、電力を除く民需」の受注額(原数値)は14.5%減だった。
一方、前月比での受注総額は11.8%増だった。電力業で大型案件が3件あり、船舶・電力を含む民需の受注額は15.0%増だった。同じく大型案件があった官公需の受注は36.8%増。鉄道などの大型案件が5件あった外需の受注額は21.3%増と大幅に増加した。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入され、設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
9月の企業物価指数、前年比1.1%低下 16年12月以来の下げ幅
日銀が10日発表した9月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は100.9で前年同月比で1.1%低下した。4カ月連続のマイナスで、2016年12月以来、2年9カ月ぶりの大きな下げ幅だった。前月比でみると横ばいだった。
原油相場の低迷で「石油・石炭製品」や「化学製品」などが低下した。米中貿易摩擦による中国経済の低迷懸念で輸出が落ち込み「スクラップ類」や「非鉄金属」なども低下した。
円ベースでの輸出物価は前年比で6.0%下落し、5カ月連続でマイナスとなった。前月比では0.1%上昇した。輸入物価は前年比9.3%下落し、5カ月連続の低下となった。前月比では0.4%下落した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。公表している744品目のうち前年比で上昇したのは355品目、下落したのは291品目だった。上昇と下落の品目差は64と8月の確報値(68品目)から4品目減った。
日銀は「米中貿易摩擦の動向や世界経済の先行きの影響には注意が必要」(調査統計局)としている。

長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、電力と船舶を除くコア機械受注の季節調整済みの系列の前月比は▲1.0%の減少を見込んでいましたし、上のグラフを見ても判る通り、6か月後方移動平均によるトレンドとしてはまだ上昇を続けていますので、統計作成官庁である内閣府が基調判断を「持ち直しの動き」に据え置いたのにも驚きはありません。また、引用した記事にもある通り、私は計算していませんが、3か月後方移動平均でも足元のトレンドは変わってないようですから、なおさらです。もともとが、毎月の変動が大きな統計ですし、2か月連続の前月比マイナスとはいえ、先々月の6月統計でコア機械受注+13.9%増から、7月▲6.6%減、8月▲2.4%減ですから、7月の大幅増の部分がまだお釣りがくるくらいに残っているのも事実ですから、ならして見れば増加基調に変わりないのは、私もその通りだと思います。ただ、上のグラフの下のパネルを見ても。製造業がこのところ弱い動きを続けているのは事実ですし、米中貿易摩擦に起因した世界経済の減速から、さらに受注を低下させる可能性も否定できません。非製造業も、人手不足に伴う合理化・省力化に伴う設備投資需要が期待されますが、景気が後退局面に入れば人手不足がどこまで続くかは不透明です。景気局面に対して敏感になるべく努力したいと思います。

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続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。一番上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、真ん中は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。繰り返しになりますが、企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価については、とうとう6月統計から前年同月比上昇率がマイナスに転じ、今日発表の9月統計まで4か月連続のマイナスを記録しています。ということで、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前月同月比は▲1.1%の下落を見込んでいましたので、ジャストミートしました。国内物価のうち前年同月比で見て、石油・石炭製品のマイナスが8月▲9.9%の下落から、本日公表の9月統計では▲11.9%に拡大しています。もっとも判りやすいのが、輸入物価の円建てでの石油・石炭・天然ガスであり、8月▲14.7%下落が、9月統計では▲18.9%に拡大しています。なお、契約通貨ベースでは▲15.6%ですので、円高の進行も物価下落を促進しているのがよく判ります。いずれにせよ、10月からの消費税率引き上げで多少なりとも物価上昇圧力は強まるにしても、金融政策よりも国際商品市況における石油価格のほうが我が国物価への影響が大きいというのは、まったく変化ないようです。なお、私が輸入物価のうちの品目別指数を調べた範囲で、昨年2018年中で原油価格の前年同月比上昇率がもっとも高かったのは2018年7月の+60.3%だったんですが、今年2019年の下落幅は、今のところ、2019年9月の▲19.9%がもっとも大きくなっています。価格水準を表す指数のピークは2018年11月の142.5でしたから、この先、もう少し企業物価の下落は続くのかもしれません。

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2019年10月 9日 (水)

クラリベイト・アナリティクスによる引用栄誉賞やいかに?

今週月曜日からノーベル賞ウィークが始まり、すでに、医学生理学賞、物理学賞が公表されていますし、今夜は化学賞の公表、明日は2年分の文学賞の公表と目白押しです。その中で、経済学賞が来週月曜に公表される運びなんですが、クラリベイト・アナリティクスによる引用栄誉賞 Clarivate Analytics Citation Awards が9月24日付けで明らかにされています。ノーベル賞との連動性が高いといわれており、というか、自称していますが、経済学分野は以下の3分野の4人となっています。

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W. Brian ArthurExternal Professor, Santa Fe Institute, Santa Fe, New Mexico; Fellow, Center for Advanced Study in the Behavioral Sciences, Stanford; and Visiting Researcher, System Sciences Lab, PARC, Palo Alto, California, United States.For research exploring the consequences of increasing returns (or network effects) in economic systems. We recognize Arthur for describing how small events and positive feedback loops act over time to lock an economy into the domination of one player out of several possible. Arthur has also combined the new science of complexity research with economics to show how an economy functions when its players face ill-defined problems and an ever-changing system, and are unable to act with perfect rationality.
Søren JohansenProfessor Emeritus, Department of Economics, University of Copenhagen, Copenhagen, Denmark.For contributions to econometrics and cointegration analysis.
For developing the cointegrated VAR (vector autoregressive) method, which provides a flexible framework to study short- and long-term effects in economic time-series data. The method helps economists avoid confirmation bias in their analyses.
Katarina JuseliusProfessor Emerita, Department of Economics, University of Copenhagen, Copenhagen, Denmark.
Ariel RubinsteinProfessor, School of Economics, Tel Aviv University, Tel Aviv, Israel, and Professor, Department of Economics, New York University, New York, United States.For development of formal theoretical economic models and especially models of bounded rationality, including his model of bargaining, which has had profound influence in Economics.

中断のヨハンセン教授とそのお弟子さんのジューセリウス教授については、時系列変数の共和分に関する検定について、その昔に論文を読んでヨハンセン検定を使った記憶があります。でも、ほかのお二人については、聞いたことがあるような気がしますが、よく判りません。官庁エコノミストを定年退職してはや半年になり、経済とはまだお付き合いがあるものの、経済学との関係は日々に薄くなっていくのかもしれません。さて、来週月曜日の発表ではどうなるんでしょうか?

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2019年10月 8日 (火)

消費税率引き上げで撹乱される景気ウォッチャーと黒字が続く経常収支!

本日、内閣府から9月の景気ウォッチャーが、また、財務省から8月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+3.9ポイント上昇の46.7を、先行き判断DIは▲2.8ポイント低下の36.9を、それぞれ記録し、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+2兆1577億円の黒字を計上しています。まず、とても長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の街角景気、先行き指数が5年半ぶり低水準
内閣府が8日発表した9月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、2~3カ月後の景気の良しあしを判断する先行き判断指数は36.9と前月から2.8ポイント低下した。3カ月連続で悪化し、前回の消費増税の前月にあたる2014年3月(33.5)以来、5年6カ月ぶりの低水準だった。10月の消費増税を前にした駆け込みによる需要の反動減や増税による買い控えへの懸念が高まった。
指数を構成する家計動向、企業動向、雇用関連のいずれもが低下した。小売業を中心に「増税後の売り上げが期待できない」(南関東の一般小売店)と、消費増税前の駆け込み需要の反動減を懸念する声が出ていた。増税前に高額商品が売れたことから消費者の買い控えを見込む声も出ていた。
一方で、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は46.7と同3.9ポイント上昇と、2カ月連続で改善した。家計動向や企業動向の改善が寄与した。消費増税前の駆け込みが特に家電量販店や百貨店などで見られたとの声があった。冷蔵庫や洗濯機、テレビのほか、化粧品や宝飾品などの比較的高額な商品の売れ行きが伸びたという。
今回の調査では消費税や増税に関するコメント数(現状判断)が548件と前回調査(229件)から大きく増えた。駆け込み需要に対するコメント数も前回(117件)から大きく増え、353件にのぼった。
内閣府はウオッチャーの見方について「このところ回復に弱い動きがみられる」に据え置いた。そのうえで「消費増税の駆け込み需要が一部にみられる」とのコメントを加えた。先行きについては「消費税率引き上げや海外情勢などに対する懸念がみられる」とした。
8月の経常黒字、黒字幅が18.3%拡大 貿易収支の黒字転換で
財務省が8日発表した8月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は2兆1577億円の黒字だった。黒字は62カ月連続。黒字幅は前年同月に比べ18.3%拡大した。貿易収支が黒字転換したことが寄与した。
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は509億円の黒字(前年同月は2556億円の赤字)だった。中国向け半導体等製造装置の輸出減などで輸出額が6兆808億円と前年同月比8.6%減少した一方、輸入額は原粗油などの輸入減で6兆299億円と12.7%減と大幅に減少した。輸入額の減少が輸出額の減少を上回り、貿易収支は黒字に転換した。
海外企業から受け取る配当金や投資収益を示す第1次所得収支は2兆2681億円の黒字だった。黒字幅は0.7%縮小した。配当金の受け取り減などで、証券投資収益の黒字幅が縮小したことが響いた。直接投資収益は9242億円の黒字と、8月として過去最高だった。
輸送や旅行といった取引の収支を示すサービス収支は233億円の黒字(同218億円の黒字)と、黒字幅がわずかに拡大した。訪日外国人客の消費単価が増えたことなどで旅行収支が1518億円の黒字と、8月として過去最高となったことが寄与した。第2次所得収支は1846億円の赤字(同2267億円の赤字)と赤字幅が縮小した

かなり長くなりました。これらの記事さえしっかり読めば、それはそれでOKそうに思えます。いずれにせよ、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、景気ウォッチャーのグラフは以下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。

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景気ウォッチャーについては、現状判断DIと先行き判断DIが方向性で大きく分かれました。最初にヘッドラインを引用したように、現状判断DIは大きく上昇し、先行き判断DIは低下しています。そして、この傾向を象徴するのが家計部門の小売関連と企業部門です。明らかに、家計部門の小売関連の動きは消費税率引き上げに対応したものであり、9月の時点では駆け込み需要が発生し売り上げ増が実現され現状判断DIが上昇した一方で、先行きについては駆け込み需要の反動減の予想から先行き判断DIが低下しているとしか考えられません。企業部門についても、先行き判断DIの大きな低下の大きな部分は非製造業で発生しています。製造業でも9月の現状判断DIがプラスで先行き判断DIがマイナスとなっているんですが、先行きマイナスが大きいのは非製造業となっています。少なくとも、こういった消費税率引き上げに伴う攪乱的な要因は従来から十分に予想されていたところであり、驚きはありません。消費者マインドを示す指標のうち、消費者態度指数は需要サイドの消費者のマインドを計測している一方で、景気ウォッチャーは供給サイドの事業者のマインドですから、消費者に比較してリスク中立、かつ、将来についてもそれなりに織り込んだ期待形成がなされているんではないかという気がしますが、それでも、現状は駆け込み需要でプラス、先行きは駆け込み需要の反動でマイナス、という結果になるようです。このあたりはもう少し均して見る必要がありそうです。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。いずれにせよ、仕上がりの8月の経常収支は最近ではやや大きな黒字なっており、海外からの第1次所得収支の黒字が大きな部分を占めている点については変わりありません。この8月経常収支の背景について見ると、国際商品市況における石油価格の低下に、我が国への輸入原油額が連動しており、貿易収支が黒字化しているためと考えるべきです。でも、この先、世界経済のいっそうの停滞が予想されるとともに、韓国向け輸出の動向も日韓関係の行方に左右される部分もあって不透明であり、貿易収支が黒字を続けるかどうかは判然としません。

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2019年10月 7日 (月)

またまた基調判断が「悪化」に引き下げられた8月の景気動向指数やいかに?

本日、内閣府から8月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月から▲2.0ポイント低下してで91.7を、CI一致指数も▲0.4ポイント上昇して99.3を、それぞれ記録し、基調判断は4か月ぶりに「悪化」に引き下げられました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の景気指数、4カ月ぶり「悪化」 増税前に停滞
内閣府が7日発表した8月の景気動向指数(CI、2015年=100)は、景気の現状を示す一致指数が前月より0.4ポイント低下して99.3となった。海外経済の減速で生産が鈍り、指数を押し下げた。指数の推移から機械的に決まる景気の基調判断は4カ月ぶりに「悪化」となった。10月の消費増税を前にした国内景気の停滞感が改めて浮き彫りになった。
一致指数は生産や消費などにかかわる9項目の統計から算出する。この指数の動きを基準に照らし、「改善」「足踏み」などの基調判断を機械的に示す。「悪化」は大きく5段階のうち最も下の区分で、景気後退の可能性が高いことを示す。
景気指数による判断は米中貿易戦争の影響で生産が年明け以降に急減したことから、3~4月に2カ月連続で「悪化」だった。5月以降は好調な新車販売などが寄与して「下げ止まり」となっていた。ただ貿易戦争の長期化で世界経済の減速が鮮明になり、国内景気も製造業を中心に下押し圧力がかかり続けている。
この間、政府は公式の景気認識を示す月例経済報告で「緩やかな回復」との表現を一貫して使っている。一致指数の動きのほか、企業の景況感など多くの指標を総合的に考慮して判断しているためだ。ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)として重視する雇用情勢も足元でなお堅調だ。
一方で政府は消費増税を挟んでの景気の腰折れは避けたい考え。経済財政諮問会議の民間議員からは、景気下振れリスクが顕在化する「兆し」の時点で経済対策を打つよう求める声も上がっている。増税前からの停滞を引きずる日本経済をどう下支えするか、経済財政運営は難しさを増している。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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繰り返しになりますが、8月のCI一致指数は前月から▲0.3ポイント下降し、3か月後方移動平均でも▲1.03ポイントの下降と、3か月連続の下降となりました。内閣府が示している「『CIによる景気の基調判断』の基準」に従えば、「3か月以上連続して、3か月後方移動平均が下降」かつ「当月の前月差の符号がマイナス」に該当し、景気動向指数の基調判断が「悪化」に引き下げられました。商業販売額(小売業)(前年同月比)と投資財出荷指数(除輸送機械)はプラスに寄与したものの、鉱工業用生産財出荷指数、商業販売額(卸売業)(前年同月比)、生産指数(鉱工業)、有効求人倍率(除学卒)などがマイナスに寄与しています。引用した記事にもある通り、景気動向指数の基調判断は、今年2019年に入って、米中貿易戦争の影響による世界経済の減速などを受けて生産が減産に転じたことから、3~4月に2か月連続で「悪化」だった後、5月以降は「下げ止まり」に戻っていましたが、10月からの消費税率引き上げを前に駆け込み需要も小さかったことから、8月にはまたまた「悪化」に下方修正されています。まあ、先月統計の公表の段階で、私も8月統計が前月差マイナスなら景気動向指数の基調判断が「悪化」にふたたび引き下げられるのは判り切っていましたし、8月の鉱工業生産指数(IIP)が減産でしたから、連動性の高い景気動向指数CI一致指数が前月差マイナスとなる可能性がとても高いのも見えていましたので、それほど大きなサプライズではありませんが、内閣改造後の臨時国会が始まった冒頭での統計公表ですから、メディア的には囃す可能性が高いと思います。これまた、先月の統計公表時のブログに書きましたが、機械的な景気道央指数に関する基調判断とはいえ、消費税率が引き上げられた直後の景気「悪化」に関するニュースですし、メディアもそれなりに取り上げますし、消費者マインドに対する影響は無視できない可能性があると、私は考えています。

ややボ~ッと生きているうちに、10月に入って、ノーベル賞ウィークを迎えました。来週は経済学賞も発表される予定です。9月25日付けで、いつもの Clarivate Analytics から Citation Awards が明らかにされており、経済学分野でも3名の名前が上がっています。また、日を改めて取り上げたいと思います。

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2019年10月 4日 (金)

9月の米国雇用統計は減速を示し金融政策は利下げを模索中!

日本時間の今夜、米国労働省から9月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+136千人増とやや伸びが鈍り物足りない結果に終わったものの、失業率は先月からさらに▲0.2%ポイント低下して3.5%という半世紀ぶりの低い水準を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を最初の8パラを引用すると以下の通りです。

Employers added just 136,000 jobs in September while unemployment hits a new 50-year low
Hiring slowed in September as employers added 136,000 jobs, fueling recession concerns and possibly raising the odds of another Federal Reserve rate cut this month.
The unemployment rate fell from 3.7% to 3.5%, a new 50-year low, the Labor Department said Friday.
Economists expected 145,000 job gains, according to a Bloomberg survey.
Partly offsetting the weak showing: Job gains for July and August were revised up by a total 45,000. July's additions were upgraded from 159,000 to 166,000 and August's from 130,000 168,000.
Average wages, however, fell.
The jobs numbers were released amid mounting concerns that the economy may be heading toward a recession. A manufacturing index this week showed a contraction in activity for a second straight month in September and at the briskest pace in 10 years. Producers cited the toll taken by President Trump's trade war with China and a sluggish global economy.
Of even greater concern is that the much larger service sector is also faltering. An index of activity among services firms revealed expansion last month but at the slowest pace in three years. The service sector makes up 80% of the economy and had been bolstered by steady consumer spending. But U.S. tariffs on Chinese imports are nudging up store prices and dampening retailers' confidence.
Meanwhile, some temporary factors were poised to boost the September jobs numbers. Goldman Sachs expected government hiring for the 2020 census to add 15,000 temporary jobs to the total. And with workers in short supply, the research firm expected businesses to bring on holiday staffers earlier.

やや長く引用してしまいましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門と失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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ということで、引用した記事にもある通り、ブルームバーグの調査によれば、市場の事前コンセサスは+145千人増でしたので、やや物足りない結果と受け止められています。前月の雇用増+168千人増から9月の雇用統計は減速し、トランプ米国大統領の重視する製造業は就業者数が減少に転じました。米中間の貿易摩擦が米国雇用を下押しし始めており、米連邦準備理事会(FED)が10月末に3会合連続の利下げを決断する可能性が大きいと私は予想しています。9月の就業者数の伸びが市場の事前コンセンサスを下回っただけでなく、直近3か月の増加幅は月平均157千人にとどまり、2018年通年の+223千人から大きく減速しました。2019年に入ってからの1~9月で見ても、雇用増は平均で+161千人にとどまっており、雇用拡大にはブレーキがかかりつつあると私は受け止めています。目先の焦点は、これらの雇用の伸びの鈍化を受けてのFEDの金融政策運営です。FEDは10月29日~30日に米国連邦公開市場委員会(FOMC)を開く予定となっており、7月のFOMCから2会合連続で利下げを決断しているところですが、次のパラで取り上げる物価上昇の減速も相まって、今月10月末のFOMCでも利下げが決定されるものと私は予想しています。それだけの景気下支えが必要な気がします。

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ただ、景気動向とともに物価の番人としてデュアル・マンデートを背負ったFEDでは物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の動向も注視せねばならず、その前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。米国雇用がやや減速を示し、賃金上昇率も労働市場の動向に合わせるように鈍化し、9月は前年同月比で+2.9%の上昇と、昨年2018年8月に+3%の上昇率に達して以来、久し振りに+3%を割り込みました。でも、日本や欧州と違って米国では物価も賃金上昇も+2%の物価目標を上回る経済状態が続いている一方で、雇用に現れた景気動向から利下げが模索されるのも、左派エコノミストを自称する私から見れば、当然と受け止めています。

なお、遅ればせながら、本日気づいたんですが、国際通貨基金(IMF)のサイトに、秋のIMF世銀総会に合わせて「世界経済見通し」World Economic Outlook についてのアナウンスがあり、Analytical Chapters である第2章と第3章が10月9日の米国東部時間の午前に公表される予定とのことです。また、公表後の適当な時期に取り上げたいと思います。

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2019年10月 3日 (木)

ダイヤモンド・オンラインによる「アレルギー性鼻炎薬」処方患者数ランキングやいかに?

私は40代後半で花粉症を発症してから、15年くらいの病歴しかないんですが、花粉症の薬はほとんど市販薬は用いずに処方薬に頼っています。1度だけ医師のおススメに従って薬を切り替えたことがありますが、極めて多種多様な処方薬があるということは知っているものの、実体験としては2種類の処方薬しか飲んだことがありません。ということで、昨日10月2日付けでダイヤモンド・オンラインにて「アレルギー性鼻炎薬」処方患者数ランキングが明らかにされています。ダイヤモンド・オンラインのサイトからテーブルを引用すると以下の通りです。

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私が処方されているのは、上のテーブルのトップ10の2番めにランクインしているザイザルです。何と、1タブレット当たりの単価は最高値となっています。知りませんでした。ただし、トップのアレグラや3番めのアレロックは1日に2タブレット服用する必要があり、服用量も考慮した1日当たりの新発薬ベースの単価ではザイザルの方が安くなっています。もっとも、アレグラやアレロック、あるいは、4番めのアレジオンと違って、ザイザルには後発薬がまだ出ていないので、お安い後発薬と比べると高くなっているのも事実です。私は医師にお任せで薬を処方してもらっているんですが、少なくとも今の段階では価格や効き目や用法用量などに不満はありません。単なる偏見かもしれませんが、一般に、市販薬は処方薬よりも効き目が弱い上に高価であるとのカギカッコ付きの「常識」があるように私は受け止めているところ、効き目はともかく、「処方薬でも市販薬でも、自己負担は大差ない」との試算結果がダイヤモンド・オンライン上で明らかにされています。

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2019年10月 2日 (水)

消費者態度指数はどこまで落ちるか、いつまで落ちるか?

本日、内閣府から9月の消費者態度指数も公表されています。2人以上世帯の季節調整済みの系列で見て、8月はまたまた▲1.5ポイント低下して35.6となり、何と、12か月連続で前月を下回りました。統計作成官庁である内閣府では、9月の消費者マインドの基調判断は、「弱まっている」に据え置いています。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

9月の消費者態度指数、1.5ポイント低下の35.6 12カ月連続で前月下回る
内閣府が2日発表した9月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯(2人以上の世帯)の消費者態度指数(季節調整値)は前月比1.5ポイント低下の35.6だった。前月を下回るのは12カ月連続で、調査方法を変更した2013年以降では最低水準を更新した。統計としては11年6月(35.2)以来、8年3カ月ぶりの低水準となった。
指数を構成する4指標の「暮らし向き」、「収入の増え方」、「雇用環境」、「耐久消費財の買い時判断」はいずれも低下した。なかでも耐久消費財の買い時判断は3.6ポイント低下と大きく下げ、指数は28.1と過去最低を更新した。内閣府は消費者心理の判断を「弱まっている」に8カ月連続で据え置いた。
1年後の物価見通し(2人以上の世帯)について「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月比0.6ポイント上昇の87.6%だった。「低下する」「変わらない」とみる割合はいずれも低下している。
態度指数は消費者の「暮らし向き」など4項目について、今後半年間の見通しを5段階評価で聞き、指数化したもの。全員が「良くなる」と回答すれば100に、「悪くなる」と回答すればゼロになる。
調査基準日は9月15日。調査は全国8400世帯が対象で、有効回答数は6754世帯、回答率は80.4%だった。

いつものように、とてもコンパクトながら包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、消費者態度指数のグラフは以下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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季節調整済み指数の前月差で見て、消費者態度指数を構成するコンポーネント4項目すべてがマイナスを示し、「耐久消費財の買い時判断」▲3.6ポイント減が特に大きな落ち込みを見せており、これについては消費税率引き上げ直前でしたので仕方ない面もあります。続いて、マイナス幅の大きい順に、「暮らし向き」が▲0.9ポイント減、「収入の増え方」が▲0.8ポイント減、「雇用環境」も▲0.7ポイント減、となっています。繰り返しになりますが、「耐久消費財の買い時判断」は、指数の水準としても4つのコンポーネントのうちで最も低くなっており、30を割り込んでいます。消費税率引き上げ直前とはいえ、デフレ・マインドがまだ払拭されていないことの表れであろうと私は受け止めています。消費者態度指数を構成するコンポーネントすべてがよくないとはいっても、雇用と収入は相対的には大きな悪化を見せていない一方で、耐久消費財への支出意欲が大きく減退しているのは、将来不安から支出が細っているわけで、家計の懐を温める政策が必要かもしれません。それにしても、消費者マインドの悪化はどこまで続くんでしょうか?

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2019年10月 1日 (火)

3四半期連続で企業マインドが悪化した日銀短観をどう見るか?

本日、日銀から9月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは6月調査から▲2ポイント低下して+5を示した一方で、本年度2019年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比+2.4%の増加と6月調査の結果に比べて、わずかながら上方修正されてます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月日銀短観、大企業・製造業DIはプラス5 3期連続で悪化 非製造業は2期ぶりの悪化
日銀が1日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業・製造業でプラス5だった。前回6月調査のプラス7から2ポイント悪化した。悪化は3四半期連続となる。
9月の大企業・製造業DIは2013年6月調査(プラス4)以来6年3カ月ぶりの低い水準となった。米中貿易摩擦などを背景にした世界経済の減速傾向が続き、輸出や生産に勢いはみられない。中国の景気減速懸念などを映した、はん用機械や生産用機械の悪化が目立った。原油安などを背景に石油・石炭製品が大幅に悪化した。一方、受注の底入れや消費増税前の駆け込み需要などで電気機械は改善した。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。9月の大企業・製造業DIは、QUICKがまとめた市場予想の中央値であるプラス2を上回った。回答期間は8月27日~9月30日で、回収基準日は9月10日だった。
3カ月先の業況判断DIは大企業・製造業がプラス2と悪化する見通し。市場予想の中央値(プラス1)は上回った。世界景気の減速や円高進行への警戒感から、先行きに慎重な姿勢が強かった。
19年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業・製造業で1ドル=108円68銭と、6月調査(109円35銭)に比べると円高・ドル安だった。
大企業・非製造業の現状の業況判断DIはプラス21と前回を2ポイント下回った。業況感の悪化は2四半期ぶり。夏場の天候不順や10連休の反動減などが逆風だった。3カ月先のDIは6ポイント悪化のプラス15だった。宿泊・飲食サービスなどで消費増税後の需要減を懸念する雰囲気が出ている。
大企業・全産業の雇用人員判断DIはマイナス21となり、前回(マイナス21)から横ばいだった。DIは人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いたもので、マイナスは人員不足を感じる企業の割合の方が高いことを表す。
19年度の設備投資計画は大企業・全産業が前年度比6.6%増と、市場予想の中央値(6.9%増)を下回った。世界経済の先行き不透明感などから、設備投資の先送りを検討する企業が一部にあったようだ。

やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

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確かに、引用した記事が報じる通り、3四半期連続での業況感の悪化なんですが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲5ポイント低下して+2が予想されていましたから、それなりに底堅いと私は受け止めています。大企業非製造業も同様です。業況判断が悪化した要因は、米中貿易摩擦に起因して中国経済の減速をはじめとする世界経済の低迷です。これに加えて、非製造業では消費税率引き上げ前の駆け込み需要があった一方で、ゴールデンウィークの10連休効果の剥落も景況感の押し下げ要因と考えるべきです。ただ、気がかりなのは先行きであり、一部は短観の統計としてのクセもありますが、私には先行きの悪化幅がかなり大きいと見えなくもありません。この不透明感が設備投資の積み増しも思いとどまらせている可能性があり、しかも、海外要因ですから政府の政策対応や個別の企業努力にも限界があり、いっそうの先行き景況感悪化の懸念につながっている気がします。

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続いて、設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。設備については、後で取り上げる設備投資計画とも併せて見て、設備の過剰感はほぼほぼ払拭されたと考えるべきですし、雇用人員についても人手不足感が広がっています。ただ、足元で設備と雇用の生産要素については、不足感が和らぐとまでいわないまでも、不足感の拡大は止まりつつあるようですが、大企業製造業の生産・営業用設備判断DIは6月調査の▲1から9月調査では+1の過剰感に転化し、また、中堅・中小企業製造業でも同様に設備不足感がプラスの過剰感に転ずるところまでいかないにしても、やや和らいでいるのも事実です。ただ、±1~2ポイントの変化はどこまで現実的かは議論あると私は考えています。雇用人員判断DIも本日公表の9月調査では6月調査から製造業では+2~3ポイントほど不足感が和らいでいますが、非製造業で押しなべて不足感が拡大していますし、製造業でも不足感が▲10を軽く超えており、まだまだ人手不足は深刻であると考えるべきです。ただ、何度も繰り返していますが、雇用は生産の派生需要であり、景気が後退局面に入ると劇的に労働への需要が減少する可能性は忘れるべきではありません。当たり前ですが、人口減少社会とはいえ、永遠に人手不足が続くわけではありません。

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日銀短観の最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。今年度2019年度の全規模全産業の設備投資計画は3月調査で▲2.8%減という水準で始まった後、6月調査では+2.3%増に上方修正された後、9月調査でもわずかながら+2.4%に上方修正されています。通常の都市の胆管であれば、3月調査は前年度比マイナスから始まるとしても、6月調査で上方修正され、さらに、9月調査でも上方修正される、という統計としてのクセがあるんですが、設備不足感がやや和らぐ中、さらに、世界経済の不透明感も払拭されず、やや設備投資の伸びが力強さに欠ける気もします。もちろん、基本は、人手不足も視野に入れつつ実行される設備投資なんですが、いずれにせよ、2019年度の設備投資計画は前年度比で増加する見込みながら、それほど力強く上向くという実感はないかもしれません。

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最後に、本日は、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が公表されています。いずれも8月の統計です。失業率は前月と同じ2.2%とバブル経済崩壊直後からほぼ四半世紀ぶりの低い水準にあり、有効求人倍率も前月と同じ1.59倍と、タイトな雇用環境がうかがえます。いつものグラフだけ、上の通りです。

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