2020年7月14日 (火)

OECD Employment Outlook 2020 に見る新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の雇用への影響やいかに?

やや旧聞に属する話題ですが、7月7日に経済協力開発機構(OECD)から OECD Employment Outlook 2020 が公表されています。OECD Library のサイトではpdfの全文リポートも利用可能です。まず、リポートp.18のInfographicを引用すると以下のとおりです。

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6つのパネルから成っています。左上のパネルでは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に伴う最近の失業率の上昇、右上は雇用維持政策による効果、左の真ん中は2007-08年のリーマン・ブラザーズ破綻時と比較した今回のCOVID-19による喪失マンアワーの比較、右の真ん中はロックダウン時の在宅勤務の割合、左下が上位4分位と下位4分位で労働市場から退出した格差、右下が2つのシナリオに従った雇用の喪失となっています。6月11日付けのブログで「OECD経済見通し」を取り上げた際にも紹介しましたが、COVID-19がこのまま終息していく「単発シナリオ」single-hit-scenario と今年2020年中に第2波の感染拡大が襲来する「双発シナリオ」double-hit-scenario の両方を分析の対象としています。

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300ページを大きく超える英文のリポートですので、とても全部は目を通し切れていませんが、Infographicのほかに、ひとつだけグラフに注目しておきたいと思います。上の通りです。Infographicの真ん中左側のマンアワー喪失を主要国別に見ています。リポートp.37から Figure 1.9. The cumulated impact of the COVID-19 crisis on employment and hours of work is ten times greater than during the global financial crisis を引用しています。データのアベイラビリティに国ごとに少し差がありますが、3か月間の累積マンアワー喪失をCOVID-19パンデミックとリーマン・ブラザーズ破綻後の金融危機と比較して、約10倍のマンアワー喪失があったと結論しています。そもそも、累積マンアワー喪失が他国と比較して小さい日本でも、3か月後の比較ではCOVID-19が金融危機のショックを大きく上回っているように見えます。
また、Infographicの右上のグラフでは、雇用維持策の重要性が強調されていて、このInfographicの基となるグラフはリポートp.36 Figure 1.8. Participation in job retention schemes has been massive in some countries となります。しかし、なぜか、日本はグラフに現れません。ほかに、引用はしませんが、リポートp.60の Table 1.1. Countries have adjusted existing job retention schemes or adopted new ones やp.72の Table 1.3. Countries across the OECD have taken measures to improve support for workers and households not covered by unemployment benefits or job retention schemes では、OECD加盟各国における雇用維持策と家計への所得支持策をテーブルに取りまとめています。日本の政策としては、workers in non-standard jobs への雇用維持策や家計への New universal transfers が目立っています。特に、後者の給付金は我が国のほかは米韓しか実施していない政策です。

今回のリポートでは、特に、低賃金労働者や女性や若者などがCOVID-19deより大きなダメージを受けいる点が強調されています。近く取り上げたいと思っていますが、IMF Blog でも "Teleworking is Not Working for the Poor, the Young, and the Women" という記事が7月に入ってからアップされています。かつて、悪名高きワシントン・コンセンサスを推し進めた国際機関も、もはや、不平等から目を背けることが出来ないほどに格差は拡大しています。

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2020年7月13日 (月)

第一生命経済研リポート「女性雇用により厳しいコロナショック」やいかに?

先週金曜日の7月10日付けで第一生命経済研から「女性雇用により厳しいコロナショック」と題するリポートが明らかにされています。現下の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大防止のために、いろんな「自粛」や営業の規制などが実施されてきましたが、まあ、東京のホストクラブは数少ない例外としても、小売業とか飲食業とか宿泊業などに対する下押し圧力が強い印象で、女性雇用に対する下押しが強まっている可能性を指摘しています。私もその通りだと思いますし、ワクチン・特効薬開発が必要との結論も、従来から指摘しているように、まったく同感ですので、簡単にグラフを引用しつつ取り上げておきたいと思います。

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上のグラフはリポートから、業種で異なる就業者数の変化を引用していますが、まず、リポートでは今年2020年4~5月の雇用者について性別の前年同月差を見ると、男性が▲22.0万人、女性▲33.5万人と女性の雇用者減が男性の1.5倍を超えており、そのひとつの背景を女性の就業率が高いサービス業の需要喪失にあるとして、上のグラフを示しています。左から見て、建設では男性の就業者減の方が断然大きく、製造業でも男女差はそれほどない一方で、卸小売、宿泊飲食サービス、生活関連サービス娯楽、といったもともと女性就業比率の高い産業では、そもそも就業者の減少幅が大きい上に、男性と比べて女性の就業者の減少が大きい、との統計が示されています。

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上のグラフはリポートから、非正規雇用比率を引用していますが、次に、リポートでは女性の非正規比率の高さと非正規雇用がいわゆる「雇用の調整弁」として使われる場合が多いと指摘しています。すなわち、好況時には人で不足とともに女性や高齢者などの非正規雇用が増加しやすい一方で、現下のような激しい雇用へのショックを生じている場合は職を失いやすいのは事実かもしれません。労働経済学では、その昔には、女性パートや学生アルバイトについては、男性労働者をコアに見立てた上で、「縁辺労働者」と呼んでいた時代もあります。そして、その昔の日本の労働や家庭の実態とは、そのコアな男性正社員が無限定・無制限に会社のために働き、夫不在の家庭を専業主婦の妻が家事や育児などをやりくりする、というモデルを基に、労働政策や社会政策が立案・実行されて来たという歴史があります。例えば、モデル家庭として、正社員の夫と専業主婦の妻と2人の子供の4人家族を設定したりしていたのは事実です。他方、こういった歴史的な経緯をそろそろ脱却して、ワーク・ライフ・バランスはもとより、女性労働や高齢者の働きやすい環境を整備したり、年金や医療といった政策を、COVID-19によるショックでさらに深く追求すべき段階に来ていることも事実です。

加えて、リポートでは、EC市場の成長やサブスク市場の拡大が小売業などから女性雇用を減少させる、なども取り上げられていますが、もっとも重要な最後の結論で、「求められるワクチン・特効薬開発と女性雇用創出」を上げています。後段の「女性雇用創出」はもちろん重要ですが、やっぱり、ワクチン・特効薬の開発により従来型の人と人が触れ合うことが感染のリスク低く行えるようにすることがもっとも重要だと私も考えており、従来からこのブログでも主張している通りです。なぜかは知りませんが、私の勤務する大学の経営陣は「ウィズ・コロナ」という用語を多用しているように感じていて、私は「ウィズ・コロナ」とか、「コロナウィルスとの共存」なんてのは、少なくとも個人的にはご免こうむりたいと考えています。私の嫌いな「敗北主義」的な雰囲気も感じてしまいます。話は脱線しますが、阪神が今季開幕時に負け続けていた際、「打線を固定しろ」とか、「捕手はxxで固定しろ」とかいった論調がスポーツ紙に出ていましたが、あくまで、ジタバタと手を変え品を変えて対応する矢野監督を私は支持します。そんなのは勝っていくうちに自然と固定されるもので、「負けてもいいから固定しろ」というのは敗北主義そのものです。ダメな時はいろいろとやってみるべきだと私は考えています。話を本筋に戻すと、感染力が格段に違いますので、その昔のペスト禍と現在のコロナ禍を同一視することは適当ではありませんが、ペストを気にした日常生活が現時点でありえないわけですし、コロナウィルスに対応する「新しい生活様式」なんてものが必要でなくなるくらいに、ワクチンや特効薬の開発が進んでほしいと私は願っています。

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2020年7月10日 (金)

前年同月比マイナスとはいえ6月の企業物価指数(PPI)は下げ止まったのか?

本日、日銀から6月の企業物価 (PPI) が公表されています。企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲1.6%の下落を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月の企業物価指数、前月比0.6%上昇 原油や銅価格の回復で
日銀が10日発表した6月の企業物価指数(2015年平均=100)は99.6と、前年同月比で1.6%下落、前月比で0.6%上昇した。前月比で上昇に転じるのは5カ月ぶり。6月は新型コロナウイルスの感染拡大で停滞した経済活動の再開が広がった。原油や銅の価格が回復したことで、企業物価は5月と比べて上昇した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。新型コロナの影響で、企業物価指数は5月にかけて大きく下落していた。品目別に見ると原油や銅相場の影響を受けやすい石油・石炭製品や非鉄金属で5月から価格が回復した。
円ベースでの輸入物価は前年同月比15.6%下落した。前月比では0.9%上昇した。円ベースでの輸出物価は前年同月比で4.1%下落し、前月比では0.8%上昇した。
企業物価指数は消費税を含んだベースで算出している。消費増税の影響を除くベースでの企業物価指数は前年同月比で3.1%下落、前月比では0.6%上昇した。前年比の上昇率は17年1月以来の大きさだった。
前月比では回復に転じものの、前年から比べると低い水準であることには変わりなく「新型コロナが企業物価の重しとなっている状況には変わりがない」(日銀)という。日銀は今後も、国内外の実体経済の回復が企業物価に与える影響を注視する姿勢だ。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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まず、PPIのうち国内物価の前年同月比上昇率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、中央値で▲2.0%の下落、レンジ上限は▲1.6%減ということでしたので、まあ、こんなものかという気もします。国内物価の季節調整していない原系列の前月比+0.6%への寄与度を見ると、石油・石炭製品が+0.51%、非鉄金属が+0.08%と、とこの2類別で殆どを説明できてしまいますし、これに続くのがスクラップ類+0.06%ですから、中国が新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックの最悪期を脱した影響が大きいと考えるべきです。おそらく、日本国内の景気動向も4~5月ころが底だったと考えられますから、需給ギャップから見ても6月統計で下げ止まりを示すのは自然な流れと私は受け止めています。ですから、世界経済、というか、先進国経済を中心とする世界経済における需給ギャップも考慮すれば、国内物価だけでなく、輸出物価も輸入物価も、そして、需要段階別で見ても、素原材料も中間財も最終財も、すべてのカテゴリーで下げ止まっているのが上のグラフから見て取れます。しかし、他方で、いま上げたすべてのカテゴリーの企業物価上昇率がマイナスであるのも事実ですし、PPIターゲットではなくCPIターゲットとはいえ、+2%の日銀の物価目標からはほど遠い、という点も決して忘れるべきではありません。

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2020年7月 9日 (木)

先月の大幅減からわずかに増加に転じた5月の機械受注をどう見るか?

本日、内閣府から5月の機械受注が公表されています。機械受注のうち、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比+1.7%増の7650億円と小幅ながら反転増加を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短に引用すると以下の通りです。

機械受注、5月1.7%増 製造業は15.5%減
内閣府が9日発表した5月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比1.7%増の7650億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は3.1%減だった。
うち製造業は15.5%減、非製造業は17.7%増だった。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は16.3%減だった。内閣府は基調判断を「足元は弱含んでいる」で据え置いた。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入されて設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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まず、コア機械受注に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、中央値で前月比▲3.2%の減少、レンジ上限は+2.1%増ということでしたので、上限に近いとはいえ、まあ、こんなものかという気もします。単月での振れの大きい統計ですし、それだけに、上のグラフでも6か月後方移動平均をボールドで示し、そのトレンドを示しグラフはまだ上向きになっていませんので、統計作成官庁である内閣府でも基調判断を「足元は弱含んでいる」で据え置いています。妥当なところかという気がします。加えて、これも季節調整済みの系列で見て、製造業が前月比▲15.5%減と先行指標である外需の落ち込みに連動する形で4か月連続での減少を記録しています。我が国のリーディング・インダストリーである自動車・同付属品が今年2020年2月から4か月連続の前月比マイナスを記録しているのはやや気がかりです。非製造業の+17.7%増は運輸業・郵便業、金融業・保険業、通信業などからの受注増であり、人手不足など、それなりの要因は十分に予想されるところです。ただ、何といっても、先行きは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大次第という面があるものの、決して、明るい展望が開けているわけでもなく、仮に機械受注統計が4月で底を打ったとしても、その後の設備投資の回復はかなり緩やか、というか、むしろ、設備投資は緩やかな減少を続ける可能性もあります。人手不足に起因する代替設備需要はあるものの、企業業績の悪化に加えて、不確実性も払拭されていないからです。

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2020年7月 8日 (水)

大きく改善して1月水準に戻りつつある景気ウォッチャー!!!

本日、内閣府から6月の景気ウォッチャーが、また、財務省から5月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+23.3ポイント上昇して38.8を示し、先行き判断DIも+7.5ポイント上昇して44.0を記録しています。また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+1兆1768億円の黒字を計上しています。まず、長くなりますが、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

6月の街角景気、過去最大の上げ幅 経済活動再開で
新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込んだ景況感が急速に改善している。内閣府が8日発表した6月の景気ウオッチャー調査によると、街角景気の現状判断指数(DI、季節調整済み)は38.8と、前月比23.3ポイント上昇した。上げ幅は比較可能な2002年以降で最大だった。
改善は2カ月連続で、感染拡大前の今年1月の水準(41.9)に近づいた。6月25~30日に景気に敏感な業種・職種の経営者や現場の担当者ら約2千人に景況感を聞いた。
政府は5月25日に緊急事態宣言を全国で解除した後、段階的に経済活動のレベルを引き上げた。客足に回復の兆しがみられことから、小売りや飲食関連の景気実感が急速に改善した。
5月の経常収支、1兆1768億円の黒字 71カ月連続黒字
財務省が8日発表した5月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆1768億円の黒字だった。黒字は71カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1兆894億円の黒字だった。
貿易収支は5568億円の赤字、第1次所得収支は2兆434億円の黒字だった。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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引用した記事にもあるように、景気ウォッチャー現状判断DIの季節調整済みの系列で見て、6月統計は38.8と新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が大きく拡大する前の今年2020年1月の水準である41.9にかなり近づきつつあります。ただし、現状で、東京都の感染者数が連日100人を超えていることに見られるように、それほどマインドの回復が順調に進むとは思えず、特に、今は政府も東京都などの地方公共団体も強気ですが、COVID-19の第2波や第3波次第ではマインドは再び急速に悪化する懸念は残ります。もちろん、これだけ急激な変化幅を見せたわけですので、統計作成官庁である内閣府では基調判断を5月の「悪化に歯止めがかかりつつある」から、6月統計に対しては「持ち直しの動きがみられる」に上方修正しています。すべてのコンポーネントが底を示していた4月統計から2か月連続の改善なわけですが、もっとも懸念されるのは雇用関連DIの戻りが遅い点です。すなわち、現状判断DIの季節調整済み系列について、4月から6月統計への2か月の差を見ると、現状判断DI全体では2か月で+30.9ポイントの上昇を示していますが、COVID-19による経済的な影響が最も大きかった飲食関連の+42.7ポイントをはじめとして、家計動向関連が+35.8ポイント改善している一方で、企業動向関連ではそもそもダメージが家計動向関連ほど大きくなかったことから+20.5ポイントの改善にとどまっていますし、特に、雇用関連では+21.1ポイントとなっています。企業動向関連と同じで、雇用に関しては短期にはどうしようもない人口動態から人手不足が進む中で、もともとCOVID-19のダメージが小さかったとはいえ、家計の消費の原資に直結する雇用の改善の動向はやや気がかりなところです。

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次に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、COVID-19の影響は経常収支でも最悪期を脱した可能性があります。内外の景気動向の差に基づく貿易赤字が主因となって経常収支が落ち込んでいますが、季節調整済みの系列で見る限り、まだ貿易収支は赤字で経常収支も低い水準にあるものの、最悪期を脱して回復に向かっている可能性が高いと考えるべきです。

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2020年7月 7日 (火)

悪化を続ける景気動向指数もそろそろ底を打つか?

本日、内閣府から5月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月から▲1.6ポイント上昇して79.3を示した一方で、CI一致指数も前月から▲5.5ポイント下降して74.6を、それぞれ記録しています。統計作成官庁である内閣府による基調判断は、10か月連続で「悪化」で据え置かれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の景気動向指数、一致指数は10年10カ月ぶり低水準
内閣府が7日発表した5月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比5.5ポイント低下の74.6と4カ月連続で低下した。新型コロナウイルス感染症の影響による外出自粛や企業活動の停滞などを背景に、指数の水準は09年7月(74.2)以来10年10カ月ぶりの低さだった。
一致指数を構成する9系列中、速報段階で算出対象となる7系列のすべてが指数を押し下げた。新型コロナによる雇用環境の悪化を受けた有効求人倍率(除学卒)の影響が最も大きく、生産調整などが響いた鉱工業用生産財出荷指数が続いた。
一致指数の動きから機械的に求める景気動向指数の基調判断は、10カ月連続で「悪化」となった。基調判断が10カ月連続で「悪化」となるのは、08年6月からの11カ月連続以来の長さだ。
数カ月後の景気を示す先行指数は前月比1.6ポイント上昇の79.3と、3カ月ぶりに上昇に転じた。経済活動再開を受けた景況感持ち直しへの期待感から消費者態度指数が改善したほか、東証株価指数の上昇などが寄与した。もっとも、内外需の低迷や新型コロナの「第2波」などへの懸念はくすぶり、水準は依然として低い。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は前月比3.8ポイント低下の94.0と5カ月連続の低下だった。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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ということで、景気の落ち込みは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響によるものであることは明らかです。すなわち、景気動向指数のうちのCI一致指数を前月との差で見ると、2月こそ▲0.6ポイントで済んだものの、3月には▲4.9ポイントの下降、4月は過去最大の▲8.7ポイントの下降、そして、直近の5月には▲5.5ポイントの下降となりました。まず、一致指数を詳しく見ると、引用した記事にもある通り、有効求人倍率(除学卒)のマイナス寄与がもっともお菊、次いで、 鉱工業用生産財出荷指数、さらに、生産指数(鉱工業)の順となります。速報段階で利用可能な7系列はすべてマイナスを記録しています。他方で、CI先行指数は5月は上昇に転じています。消費者態度指数のほか、新規求人数(除学卒)やマネーストック(M2)(前年同月比)のプラス寄与が大きくなっています。先月末に公表された鉱工業生産指数(IIP)を取り上げた際にも、6月の製造工業生産予測指数がプラスを示していることから、ひょっとしたら、5月がCOVID-19による景気後退の底かもしれない、と示唆しましたが、同じことは景気動向指数のCI先行指数からも見て取れます。ただし、5月単月でわずかな上昇ですから、まだ、3か月後方移動平均すらプラスにはなっていません。何度も繰り返しになりますが、この4~6月期が景気の底になる確率はかなりある一方で、その先の景気回復は極めて緩やかなものとなる確率はそれ以上に高いのかもしれません。

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最後に、本日、厚生労働省から5月の毎月勤労統計が公表されています。従来からのサンプル・バイアスとともに、調査上の不手際もあって、統計としては大いに信頼性を損ね、このブログでも長らくパスしていたんですが、そろそろ、先月あたりから取り上げてみようかと考えてグラフを書いています。統計のヘッドラインとなる名目の現金給与総額は季節調整していない原数値の前年同月比で▲2.1%減少の26万9341円となっています。実質賃金も同じく前年同月比▲2.1%の減少です。COVID-19の影響で残業が大幅に減少したため、所定外給与が名目で▲25.8%の減少を示しています。景気動向指数のトピックに隠れて、こっそりと持ち出しておきたいと思います。

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2020年7月 6日 (月)

ピュー・リサーチ・センターによる米国大統領選挙の支持階層分析やいかに?

6月30日付けで、米国の世論調査機関であるピュー・リサーチ・センターから Public's Mood Turns Grim; Trump Trails Biden on Most Personal Traits, Major Issues と題する調査結果が明らかにされており、Trump Trails Biden というタイトルから明らかな通り、米国大統領選挙の支持階層分析が示されています。

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上のグラフは、ピュー・リサーチのサイトから As in 2016, wide divides by gender, race and ethnicity, age and education in 2020 voter preferences と題するグラフを引用しています。米国大統領選挙の候補と考えられる民主党の売電上院議員と共和党のトランプ現米国大統領を比較して、その支持層を性別・人種別・年齢別・学歴別、などで分類しています。全体として、10%ポイント前後の支持率の差があるのは多くの世論調査結果で共通しているように私は受け止めています。その上で、性別には大きな特徴はないものの、人種別には黒人やヒスパニックでバイデン候補がリードしています。年齢では若いほど、また、学歴が高いほどバイデン候補の支持が大きい、との結果が示されています。これは4年前のBREXITの英国国民投票とかなり類似していると私は考えています。典型的には、PoliticoのGuàrdiaリポートが明らかにしています。4年前の2016年のBREXITの国民投票でも、年齢が低いほど、また、学歴が高いほど、Remainの投票割合が高い、との結果となっています。おそらく、4年前の米国大統領選挙でもご同様だったんではないかと私は想像していますが、それでもトランプ米国大統領が選挙で勝ったわけですから、示唆に富む分析結果ともいえます。

さて、今年の米国大統領選挙を制するのは誰なんでしょうか?

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2020年7月 3日 (金)

米国雇用統計のリバウンドをどう評価するか?

日本時間の昨夜、米国労働省から6月の米国雇用統計が公表されています。新型コロナウィルス(COVID-19)の影響から、非農業雇用者数は4月の大幅減の後、5~6月統計ではリバウンドして6月には+4,800千人増を記録しています。同じく、失業率も一気に悪化した4月からのリバウンドが見られ、11.1%に改善しています。でも、まだ、10%を超える水準です。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから統計を報じる記事を最初の6パラだけ引用すると以下の通りです。

4.8M jobs added and unemployment falls to 11.1% as more states reopen after COVID-19 shutdowns
The U.S. economy added a record 4.8 million jobs in June as states continued to allow businesses shuttered by the coronavirus to reopen and more Americans went back to work, even as massive layoffs have persisted.
The unemployment rate fell to 11.1% from 13.3% in May, the Labor Department said Thursday.
Economists surveyed by Bloomberg had estimated that 3.1 million jobs were added in June.
But while the rebound in employment has soundly topped estimates, a surge of new infections in many states threatens to curtail gains in coming months.
The number of Americans on temporary layoff fell by 4.8 million to 10.6 million as many laid-off workers were called back amid state reopenings. About 60% of unemployed workers were on temporary layoff, down from 73% in May. At the same time, 2.9 million people had permanently lost jobs in June, up from 2.3 million the prior month, in a sign more employers are cutting ties with workers.
The Labor Department separately reported Thursday that 1.4 million Americans filed initial jobless claims last week, down from 1.5 million the prior week, a sign that a historically high number of workers continue to be laid off. Claims have reached a staggering 48 million the past three months.

やや長くなりましたが、まずまずよく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期だったんですが、米国経済が長らく景気回復・拡大を続けているために、このグラフの範囲外になってしまっているものの、現在の足元で米国経済が景気後退に入っていることは明らかです。ともかく、4月の雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。

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米国に限らず、経済指標が4月や5月に大きく悪化したのは、いうまでもなく、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大防止のためのロックダウンなどの措置によるものであり、その後の感染拡大と経済回復のトレードオフに直面して、いろんな方向性が示されているところですが、米国は我が国や欧州と比較して、明らかにCOVID-19の感染拡大防止よりも経済回復に力点をおいているように見受けられます。しかし、その米国においてすら、雇用の回復が緩やかであるわけですので、我が国などにおける経済政策の方向性も、十分、米国政策動向を考えて策定されるべきです。特に、従来から、米国は我が国などに比較して、雇用では賃金という価格ではなく数量ベースの調整、すなわち、雇用者の増減で労働市場の調整が行われる経済構造になっていましたので、雇用者や失業率の大きな変化が生じているわけですが、6月の雇用増+4,800千人増をもって、「単月で過去最大」とトランプ米国大統領が発言したと、日経新聞のサイトで報じられていますが、4月に20,000万人超の減少があったわけですので、まだまだ雇用回復の道のりは長いと覚悟すべきです。事実、米国議会予算局(CBO)では、7月2日に10年間の長期経済見通し An Update to the Economic Outlook: 2020 to 2030 を公表しましたが、失業率は今年2020年に10.5%、来年2021年7.6%、そして、2025-30年になっても米国失業率は4.4%に高止まりし、COVID-19パンデミック前の2019年の水準である3.5%には戻らない、と予測しています。CNNの報道などでも注目しています。

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最後に、上のグラフは時間当たり賃金の動向をプロットしています。雇用統計と同じように、4月統計で大きくジャンプし、その後、5~6月統計と落ち着きを取り戻し始めていますが、少なくとも米国連邦準備制度理事会(FED)の金融政策に対する指標としての役割を取り戻すまでは、もう少し時間がかかりそうです。

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2020年7月 2日 (木)

総務省統計局「緊急事態宣言下における国内移動者数の状況」に見る東京都からの脱出やいかに?

一昨日の6月30日付けで総務省統計局から「統計Today No.157」として、「緊急事態宣言下における国内移動者数の状況」と題するリポートが公表されています。『住民基本台帳人口移動報告』からのリポートで、実は、6月10日にも同じ『住民基本台帳人口移動報告』を基にした3月と4月の国内移動のリポートが「統計Today No.156」として公表されていますが、後者の「統計Today No.156」は通常の年度替わりの移動や引越しシーズンの特徴を取りまとめただけなのに比べ、前者の「統計Today No.157」ではタイトル通りに緊急事態宣言との関連に焦点が当てられています。実は、私はこの「統計Today」というシリーズは書いたことがないのですが、別シリーズの「統計リサーチノート」というのは、統計局に出向していた際にいくつか書いた記憶があります。それはともかく、グラフを引用しつつ簡単に見ておきたいと思います。なお、この『住民基本台帳人口移動報告』では、あくまで引越しに伴う移住のことを「移動」と定義していますので、電車に乗って買い物に行ったり、通勤とか、宿泊を伴うとしても旅行なども、この統計で定義する「移動」ではありません。この点は注意が必要です。また、統計局より1日早く、6月29日付けでみずほ総研から同じ趣旨の「コロナで東京の転入超過数が急減」と題するリポートも明らかにされています。こちらもご参照かもしれません。

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上のグラフはリポートから引用していて、最近7年間の月別の東京都の転入超過数をプロットしてあります。リポートのタイトルこそ、「国内移動」と気張ってはいますが、実は、このリポートは緊急事態宣言下での東京への人口流入に焦点を当てています。そして、上のグラフから明らかな通り、外国人を含む移動者数の集計を開始した2013年7月以降初めて、わずかに1000人余りではありますが、緊急事態宣言中の2020年5月に東京都は転出超過を記録しています。どこまで新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大防止のための緊急事態宣言が影響したのかは、少なくとも現時点では不明ながら、何らかの関係を強く示唆されていると感じるのは私だけではないと思います。ここ数年で月単位で見ても、東京に移り住む人の数が一貫して東京の外に出る人数を上回っていたにもかかわらず、緊急事態宣言が出された後の今年2020年5月にはこれが逆転し、ネットで見て東京から外に移り住む人の数の方が多くなったわけです。どうでもいいことながら、我が家のカミさんと私は3月に東京から移り住んでいます。

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まず、地域的な要因を探ったのが上のグラフであり、リポートから引用していて、道府県別の東京都への転入者数の前年同月差、すなわち、2019年5月と2020年5月の差をプロットしてあります。明らかに東京近郊の首都圏から東京に移り住む人の数が減っていることが理解できます。首都圏のほかでは、大阪府、愛知県、福岡県といった人口の大きな府県が続いています。でも、大雑把にいって、埼玉県、千葉県、神奈川県からの転入が減っていることが大きな要因です。

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次に、年齢的な要因を探ったのが上のグラフであり、リポートから引用していて、5歳階級の年齢別の東京都への転入者数の前年同月差、すなわち、2019年5月と2020年5月の差をプロットしてあります。20歳代前半をピークにして、大雑把に、年齢とともに徐々に転入超過者数のマイナス幅が小さくなっており、明らかに若年層を中心にした東京転入減だということが理解できます。すなわち、これらのグラフを並べると、首都圏3県から20代を中心に、おそらく、進学や就職などの機会で東京に移り住むのをヤメにして、地元から通学・通勤する方を選択した人が昨年より多くなった、という結果なのであろうと想像されます。そして、時期的に2020年5月が緊急事態宣言下であったということは、要因のひとつがCOVID-19であろうという点も示唆されている気がします。ただし、東京一極集中はともかく、首都圏への集中が緩和された、ということにはならないんではないか、と私は受け止めています。

最近、東京でのCOVID-19感染者数がジワジワと増加の兆しを見せていて、1日あたりで今日は100人超との速報を見ました。クラスターの発生した周辺を重点的に検査しているから、との発表もあるようですが、この東京からの純転出という統計は、現在、東京都知事選挙の終盤戦で、小池都政への批判もひょっとしたら含まれているのかもしれません。たぶん、違うとは思いますが。

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2020年7月 1日 (水)

急激に悪化した企業マインドを反映する6月調査の日銀短観をどう見るか?

本日、日銀から6月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは3月調査から▲26ポイント低下して▲34を示した一方で、本年度2020年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比▲0.8%の減少と3月調査の結果から下方修正されてます。日銀短観の設備投資計画は統計のクセとして、6月調査は3月調査よりもハネ上がるのが通例なんですが、極めて異例の結果となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業製造業の景況感、11年ぶり低水準 日銀6月短観
日銀が1日発表した全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はマイナス34になった。リーマン危機後の2009年6月以来11年ぶりの低水準だ。3月の調査から26ポイントの落ち込みで、悪化幅は過去2番目の大きさ。新型コロナウイルスの感染拡大で世界的に経済活動が停滞している影響がくっきり表れた。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いた値。大企業製造業のマイナスは2四半期連続。QUICKが事前に集計した民間予測の中心値(マイナス31)を下回った。悪化は6四半期連続になる。かねて米中貿易摩擦で業況が悪化していたところに新型コロナの世界的な流行が追い打ちをかけた。
非製造業はマイナス17で25ポイント悪化した。過去最大の悪化幅だ。中小企業の景況感も悪化した。製造業はマイナス45で30ポイント下がった。
大企業の景況感は小売業だけが改善し、他の業種は軒並み悪化した。DIが最も低かったのはコロナ禍が直撃する宿泊・飲食サービスでマイナス91だった。入国制限や外出自粛で観光客が「蒸発した」(日銀)。レジャー施設などを含む対個人サービスは64ポイント下がり、マイナス70となった。感染防止のため長期間の営業自粛を余儀なくされたためだ。
製造業で最もDIが悪かったのは基幹産業である自動車だ。マイナス72で55ポイント下がった。09年6月(マイナス79)以来の低い水準だ。自動車販売の急減で生産調整を余儀なくされている。
小売業はプラス2で9ポイント上昇した。食品スーパーやホームセンターで「巣ごもり需要が好調だった」(日銀)という。
先行きは大企業(全産業)がマイナス21と5ポイントの改善を見込む。ただ、新型コロナの感染者はブラジルやインドなど新興国で増加に歯止めがかからず、経済活動を再開した米国でも再び増えている。先行きの不透明感は強い。

やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月、あるいは、四半期ベースでは2018年10~12月期を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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まず、先週6月26日付けのこのブログでも日銀短観予想を取り上げ、大雑把に、ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIが▲30前後という結果をお示ししていましたし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、同じく大企業製造業の業況判断DIが▲31と報じられていますので、実績が▲34ですから、やや下振れした印象はあるものの、現在までの新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響を考慮すれば、ほぼ「こんなもん」と受け止められているような気がします。私が見た範囲で特徴的だったのは、もちろん、細かい産業別規模別に見ればバラツキは大きいものの、規模別で大企業・中堅企業・中小企業の分類、また、産業も大きく製造業と非製造業であれば、2×3の6カテゴリーで見て、3月調査から6月調査への変化幅は▲25から▲30の範囲にあります。より細かく見ると、非製造業のうちでも小売業は3月調査から6月調査への変化幅で見て、大企業こそ記事にもあるように+2と企業マインドが改善している一方で、同じ小売業でも中堅企業は▲16と3月調査から悪化していますし、中小企業では▲18と悪化幅が大きくなっています。そして、小売業に限らず、先行きについては大企業と中堅・中小企業とで明暗が別れています。すなわち、大企業では製造業・非製造業ともに先行き業況判断DIは改善すると見込んでいるのに対して、中堅・中小企業では足元から先行きにかけてもさらに悪化すると考えています。上のグラフに見られる通りです。ただし、改善の方向を示すとはいえ、大企業でもまだDIの水準は大きなマイナスのままです。ということで、変化方向ではなく6月調査の業況判断DIの水準に着目すると、特に低水準となっているのは製造業では自動車、非製造業では宿泊・飲食サービスとなっています。ですから、COVID-19の感染拡大防止のための世界的なロックダウンや外出自粛の影響が大きいのはいうまでもありません。繰り返しになりますが、先行きもヘッドラインとなる大企業製造業こそ3か月先には▲27と改善する見込みを示しているものの、まだまだDIの水準としては低いと考えるべきですし、製造業でも非製造業でも、中堅企業と中小企業は先行きさらなる悪化が見通されています。何度も繰り返しましたが、日本を含む先進国経済については4~6月期で底を打つ可能性が高いものの、その後の回復はかなり緩やかになるものとの予想が強まっています。

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続いて、設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。経済学的な生産関数のインプットとなる資本と労働の代理変数である設備と雇用人員については、方向としてはいずれも過剰感が高まる方向なんですが、DIの水準として、設備についてはすでにプラスに転じて過剰感が発生している一方で、雇用人員については大きく不足感が緩和されたとはいえ、まだ過剰感が発生するには至っておらず、絶対的な人数としては不足感が残っている、ということになります。ただし、何度もこのブログで指摘しているように、賃金が上昇するという段階までの雇用人員の不足は生じていない、という点には注意が必要です。ただ、我が国人口がすでに減少過程にあるということが企業マインドによく反映されていることは事実です。安倍内閣はかつて賃上げを経済界や経営者団体に要請したこともあったんですが、それでも賃金が上がらなかったのですから、マインドだけに不足感があり、経済実態としてどこまで不足しているのかが、私には謎です。グローバル化が進む中で生産関数が同じ産業では賃金が途上国や新興国の水準に影響を受けるというのが国際貿易論の結論ですが、そうなのかもしれませんし、違うかもしれません。他方で、ITC化などのスキル偏重型の技術進歩のため格差が拡大している、というのが主流派経済学の主張です。これもそうなのかもしれませんし、違うかもしれません。

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日銀短観の最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。最初に書いた通り、日銀短観の設備投資計画のクセとして、3月調査時点ではまだ決まっている部分が少ないためか、3月には小さく出た後、6月調査で大きく上方修正される、というのがあったんですが、今年度2020年度だけは違っています。3月調査の設備投資計画から6月調査では全規模全産業で下方修正されています。これは、リーマン・ブラザーズ破綻直後の2009年度に3月調査で▲14.3%減から6月調査の▲17.1%減に下方修正されて以来の異例のパターンです。加えて、2019年度の設備投資計画も最後の6月調査による実績では前年度比マイナスとなりました。ただ、上のグラフは全規模全産業をプロットしてありますが、大企業全産業では+3.2%増と底堅い設備投資計画が示されています。ただし、グラフは示していませんが、設備投資の決定要因としては将来に向けた期待成長率などとともに、足元での利益水準と資金アベイラビリティがあります。6月調査の日銀短観でも全規模全産業の経常利益の2020年度計画は前年比で▲20%近いマイナスですし、資金繰り判断DIは中小企業でとうとうマイナスに悪化しています。この資金繰りについては、日本政策金融公庫が実施している「中小企業景況調査」でも5月からマイナスに転じており、日銀としても何らかの中小企業向け資金繰り支援策を考慮する必要があるんではないか、と私は考えています。

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最後の最後に、日銀短観を離れて、本日、内閣府から6月の消費者態度指数も公表されています。6月の消費者態度指数は5月から+4.4ポイント上昇して28.4となり、2か月連続で前月を上回りました。統計作成官庁である内閣府では、基調判断を「依然として厳しいものの、このところ持ち直しの動きがみられる。」と上方修正しています。グラフだけ上の通りお示ししておきます。

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