2019年6月24日 (月)

リクルートジョブズによる5月のアルバイト・パート及び派遣スタッフの賃金動向やいかに?

今週金曜日6月28日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる5月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を簡単に見ておきたいと思います。

photo

ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、アルバイト・パートの平均時給の上昇率は引き続き+2%超の伸びで堅調に推移しており、三大都市圏の5月度平均時給は前年同月より+2.6%、+27円増加の1,051円を記録しています。職種別では「事務系」(前年同月比増減額+44円、増減率+4.2%)、「フード系」(同+29円、+2.9%)、 「販売・サービス系」 (同+29円、+2.8%) 、「製造・物流・清掃系」(同+24円、+2.4%)など全職種で前年同月比プラスとなっており、地域別でも、首都圏、東海、関西のすべてのエリアで前年同月比プラスを記録しています。一方で、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、昨年2018年11月統計から前年同月比プラスに転じて、今年2019年2月統計まで4か月の間は前年同月比プラスだったんですが、3~5月はマイナスを示しています。3月▲2.5%減、4月▲1.7%減、5月▲1.9%減です。5月統計の職種別では、「オフィスワーク系」(前年同月比増減額+30円、増減率+2.0%)、「医療介護・教育系」(同+20円、+1.4%)、「クリエイティブ系」(同+17円、+1.0%)、「IT・技術系」(同+15円、+0.7%)の4職種がプラスなんですが、「営業・販売・サービス系」(▲18円減、▲1.3%減)が前年同月比マイナスに寄与しています。ただ、派遣スタッフの業種別ではもっとも単価の低い医療介護・教育系(2019年5月統計で時給1,440円)の増加がシンプソン効果で平均単価を引き下げているようです。いずれにせよ、全体としてはパート・アルバイトや派遣スタッフも人手不足の影響がまだ強いと私は受け止めているものの、景気循環の後半に差しかかって、そろそろ非正規の雇用には注視が必要、と考えるエコノミストも決して少なくなさそうな気がします。

| | コメント (0)

2019年6月21日 (金)

やや上昇率が鈍化した消費者物価指数(CPI)の今後の動向やいかに?

本日、総務省統計局から5月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月とほぼ同じ+0.8%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の全国消費者物価0.8%上昇、プラスは29カ月連続
総務省が21日発表した5月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101.8と前年同月比0.8%上昇した。プラスは29カ月連続。前年に比べ電気代や都市ガス代などが高い水準にあるほか、焼き肉など外食、ポテトチップスなど菓子類の上昇が押し上げた。
QUICKがまとめた市場予想の中央値は0.7%上昇だった。全体の56.6%にあたる296品目が上昇し、下落は168品目、横ばいは59品目だった。総務省は「消費者物価は緩やかな上昇が続いている」との見方を据え置いた。
伸び率は4月(0.9%)に比べ縮小した。皇位継承に伴う10連休で前月に目立った外国パック旅行費の上昇が鈍化した。電気代や都市ガス代の上昇幅も縮小した。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は101.6と前年同月比0.5%上昇した。新製品の出回りが早くなったルームエアコンの上昇などが押し上げた。生鮮食品を含む総合は101.8と0.7%上昇した。
総務省は、イラン情勢などの影響による足元の原油価格の上昇について「ガソリン代や電気代などに遅れて影響してくるため、注視している」とした。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。

photo

ということで、冒頭では先月4月統計とほぼ同じと表現したんですが、実は、4月のコアCPI上昇率は+0.9%でしたので、やや上昇率は縮小しています。他方で、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは+0.7~+0.8%のレンジでしたので、これに比べるとほぼジャストミートしたといえます。前年同月比上昇率に対する寄与を見ると、エネルギーの寄与が4月の+0.35%から本日公表の5月統計では+0.29にやや縮小しており、特に、電気代が先月4月の前年同月比上昇率+5.8%、寄与度+0.20%から今月5月は上昇率+3.6%、寄与度+0.12%となっており、ほぼほぼ電気代の寄与度差で5月に上昇率が低下したことを説明できてしまいます。すなわち、やっぱり、エネルギーの影響が大きい、ということなんだろうと考えられます。エネルギー価格については、誠に情けなくも、私のは先行きの動向が読み切れません。特に、例のイラン沖のタンカー砲撃が石油価格に及ぼす影響なんぞは、まるっきり予想もできません。予想はできないながらも実績を見れば、昨年2018年10~11月ころに石油価格がピークをつけていることから、今年2019年10~11月の消費税率引き上げの時期にコアCPI上昇率は大きく落ちる可能性が高い、と考えるべきです。消費税率引き上げの影響を除けば、年度後半には+0.5%を下回って、ゼロ%台前半まで上昇率が縮小する可能性があります。わずかにマイナスに入る月もあるかもしれません。ただし、別の観点ですが、引用した記事にもある通り、2年半近い29か月連続で前年同月比でプラスを続けていますので、さすがに適応的な期待形成が成り立つとすれば、そろそろインフレ期待も上昇するんではないかと私は考えています。その昔の日銀理論からすれば、インフレ期待が動き始めると「岩石理論」によって、制御できなくなったり、ハイパーインフレに陥る可能性が指摘されたりしていたんですが、さすがに、現時点でそんなことを主張するのはブードゥー・エコノミクスであるのは多くの人が理解したことと思います。

最後に、私が少し前から主張しているように、我が国経済の先行きリスクのうち最大の下振れ要因は為替であり、今日の段階で1ドル107円くらいまで円高が進んでいます。今週、相次いで開催された日米の中央銀行による米国の連邦公開市場委員会(FOMC)ないし我が国の金融政策決定会合は、ともに金融政策は現状維持、利下げなしで終了しましたが、米港の金融緩和観測により為替の円高が進んでいるようです。6月9日付けとやや古いニュースですが、欧州中央銀行(ECB)関係者の1人は、「『利下げの理由は5つある』とし、『為替相場』と5回繰り返した。」とロイターのサイトで報じられており、日銀も為替に関する比重が従来よりも高い金融政策運営を強いられる段階に近づきつつある、と私は考えています。

| | コメント (0)

2019年6月19日 (水)

4か月ぶりの赤字を計上した貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から5月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲7.8%減の5兆8351億円、輸入額も▲1.5%減の6兆8022億円、差引き貿易収支は▲9671億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の貿易収支、4カ月ぶり赤字 中国や韓国向け輸出落ち込む
財務省が19日発表した5月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は9671億円の赤字だった。赤字は4カ月ぶり。中国や韓国向けの半導体等製造装置の輸出が落ち込んだ。米中貿易摩擦の激化などで、低迷する中国経済の影響を受けたようだ。世界全体の輸出額も6カ月連続の減少となった。
全体の輸出額は前年同月比7.8%減の5兆8351億円だった。中国向けの輸出額が9.7%減の1兆1485億円と、3カ月連続で減少したことなどが響いた。全体の輸入額は1.5%減の6兆8022億円。アラブ首長国連邦(UAE)からの液化天然ガスの輸入などが減った。
対欧州連合(EU)の貿易収支は過去最大となる2515億円の赤字となった。英国向けの医薬品の輸出が減った一方、金額の大きいフランスからの航空機類の輸入増が影響した。
対米国の貿易収支は3950億円の黒字で、黒字額は14.8%増加した。自動車や半導体等製造装置の輸出が増え、3カ月連続の増加となった。
5月の為替レート(税関長公示レート)は1ドル=111円07銭。前年同月に比べ1.8%の円安・ドル高に振れた。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

photo

まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、5月の貿易収支は▲1兆290億円の赤字でしたので、丸めて▲1兆円の貿易赤字という意味でほぼジャストミートしたと私は受け止めています。このブログのタイトルもそうなんですが、引用した記事は季節調整していない原系列の統計で論評していますので、「4か月ぶりの貿易赤字」ということになっていますが、上のグラフのうちの下のパネルに見られる通り、トレンドを見る季節調整済みの系列による統計では昨年2018年7月から貿易赤字に転じており、今年2019年5月の直近で利用可能な統計まで、ほぼほぼ1年近い期間ずっと貿易赤字が続いているといっても大きな間違いではありません。もちろん、引用した記事にもある通り、最近時点のトピックとしは5月以降の米中間の貿易摩擦の激化ということになるんでしょうが、季節調整済みの系列でも、季節調整していない原系列でも、輸出入ともに昨年2018年年央過ぎくらいから減少局面に入っているように見え、これは世界経済が全体として景気減速に入っていることの現れと考えるべきです。我が国の景気の減速も明らかであり、1~3月期のGDP統計を振り返って、輸入の減少がGDP成長率に寄与するという形で、ややトリッキーなプラス成長を記録したことは記憶に新しいところではないでしょうか。

photo

その輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、これも引用した記事にある通り、季節調整していない原系列の統計で見て、我が国の輸出額は5月統計で前年同月比▲7.8%減を記録したところ、そのうち中国向けの輸出額が▲9.7%減となっています。もちろん、今年のゴールデンウィークが10連休であったことに起因して、4月に前倒しするなどの動きがあって5月の輸出に影響が出た可能性はあるものの、改めて中国向け輸出の大きさを実感した気がします。すなわち、中国向け輸出額は我が国の輸出額合計のほぼ20パーセントを占めますから、中国向け輸出額が2桁近い減少を示すと、それだけで▲2%ほどの寄与となります。また、上のグラフの一番下のパネルから、OECD先行指数に見る中国経済はそろそろ底を打って反転上昇する局面に入りつつあるように見えますが、HUAWEIに対する個別的な通商措置はすでに効き始めている可能性あるものの、米中間の貿易摩擦の影響が本格的に現れるのはこれからですから、この反転しそうに見えるOECD先行指数がどこまで実現されるかは疑問です。

最後に、私が従来から主張している通り、先行き最大のリスクは為替です。米国連邦準備制度理事会(FED)の連邦公開市場委員会(FOMC)が米国東部海岸時刻(EST)の今日6月19日まで開催されていますから、利下げなどの金融緩和に踏み切るのかどうかが注目されます。

| | コメント (0)

2019年6月18日 (火)

世界で最も価値あるブランドやいかに?

先週水曜日の6月12日に、コンサルティング・ファームのカンターから「BrandZ 2019: 世界で最も価値のあるブランドTop100」が明らかにされています。pdfの全文リポートもアップされています。

photo

トップテンの結果は上のテーブルの通りです。調査開始の2006年は、Microsoftがブランド価値ランキングでトップの座を獲得して以来、この調査では12年間一般してテクノロジーブランドがトップに立つとともに、トップ以外でもランクインするブランドの大半はテクノロジーブランドが占めて来たらしいんですが、今回、この調査のブランド価値で見て前年比+52%増の3,155億ドルという際立った成長を見せたAmazonがトップとなりました。+3%増という穏当な成長にとどまったApple(2位、3,095億ドル)、また、+2%増にとどまったGoogle(3位、3,090億ドル)を抜いています。地域別にアジア企業では、上のテーブルを見れば明らかな通り、7位にAlibabaが、8位にTencentがランクインしています。また、トップテンのテーブルには現れませんが、トップ100の中に我が国企業が2社ランクインしており、それはTOYOTAとNTTです。でも、TOYOTAは昨年2018年の36位から2019年には41位にランクダウンし、NTTも昨年の55位から今年の70位に少し順位を下げています。トップ100にランクインするアジアブランドは、昨年2018年の21ブランドから、今年2019年には24ブランドに増えていて、日本の2ブランド以外では、中国: 15ブランド、インド: 3ブランド、韓国: 1ブランド、香港: 1ブランド、オーストラリア: 1ブランド、インドネシア: 1ブランドがランクインしているそうです。

| | コメント (0)

2019年6月14日 (金)

東京商工リサーチ「想定為替レート」調査の結果やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、今週月曜日の6月10日に東京商工リサーチから「想定為替レート」調査の結果が明らかにされています。東証の1部と2部に上場しているメーカー128社の2020年3月決算における想定レートの調査結果です。単なる平均値や中央値だけでなく、ある程度、分布が明らかにされています。

photo

ということで、調査結果は東京商工リサーチのサイトから引用した上のグラフの通りとなっています。1年前の2019年3月期決算の期初の想定為替レートは、米国の長期金利上昇などに起因する2018年2月の世界同時株安の余波や米中間の貿易摩擦の深刻化などが懸念され、やや円高の1ドル=105円の企業が85社、66.4%で、もっとも多かったんですが、米国の連邦準備制度理事(FED)の利上げが相次いでドル高円安に振れ、一時115円近い水準まで達するなど、105円の想定水準よりも円安の時期が続いたため、2020年3月期は1ドル=105円から110円に変更するメーカーが目立っています。すなわち、期初の対ドル想定為替レートを110円に設定しているのが75社、58.5%と過半に上り、うち、51社が昨年の想定レート105円から今年の110円に変更しています。上のグラフのうちの上のパネルに見られるように、110円水準を中心に見れば、やや円高水準を想定する企業が多いんですが、全体として、昨年よりも円安水準を想定する企業が大いのは見ての通りです。実際に、3月調査の日銀短観では大企業・製造業の2019年度の想定為替レートは108.87円との結果を弾き出しており、上場メーカーの110円想定レートは日銀短観とも違和感ありません。
今週月曜日6月10日に、内閣府から1~3月期のGDP統計2次QEが公表された際、多くのエコノミストとともに、私も対外要因が我が国経済の先行きにおける最大のリスクと考えている点は同じとしても、私自身は米中貿易摩擦の余波で我が国から中国向けの輸出が影響を受けるのもさることながら、米国の連邦準備制度理事会(FED)が金融引き締めをストップし、金利引き下げに転ずることに伴う為替レートの増価、すなわち円高が最大の先行きリスクと考えていると明らかにしましたが、昨年2018年度から今年2019年度にかけて、上場メーカーの想定レートが円安に修正されているようですから、実際の対ドルレートが円高に振れれば、円安に設定変更された想定レートとの対比で、上下両方向でのダメージがかなり大きい可能性が否定できません。

| | コメント (0)

2019年6月13日 (木)

2四半期連続でマイナスとなった法人企業景気予測調査の景況感判断指数BSIの先行きやいかに?

本日、財務省から4~6月期の法人企業景気予測調査が公表されています。ヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は1~3月期▲1.7の後、足元の4~6月期も▲3.7と、2四半期連続でマイナスを付けた後、先行き7~9月期には+6.7とプラスに転じ、10~12月期も+0.4とプラスを続ける、と見込まれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業景況感、2期連続のマイナス 4~6月
財務省と内閣府が13日発表した法人企業景気予測調査によると、4~6月期の大企業全産業の景況判断指数(BSI)はマイナス3.7だった。マイナスは2四半期連続。前回調査の1~3月期はマイナス1.7だった。
先行き7~9月期の見通しはプラス6.7となった。4~6月期は大企業のうち製造業がマイナス10.4で、非製造業はマイナス0.4だった。中小企業の全産業はマイナス15.0だった。
2019年度の設備投資見通しは前年度比9.0%増だった。前回調査では6.2%減だった。
景況判断指数は「上昇」と答えた企業と「下降」と答えた企業の割合の差から算出する。

いつもながら、簡潔かつ包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIのグラフは以下の通りです。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo

法人企業景気予測調査のヘッドラインとなる大企業全産業の景況判断指数(BSI)は4~6月期に▲3.7を示しましたが、大企業の産業別内訳では、引用した記事にもある通り、製造業が▲10.4の大きなマイナスに対して、非製造業はほぼ横ばいの▲0.4となっています。大企業製造業のうち、特にマイナス寄与の大きかった産業を詳しく見ると、自動車・同附属品製造と生産用機械器具製造がともに▲20超の大きなマイナスを記録しています。この両産業に限りませんが、米中間の貿易摩擦の深刻化による先行き不透明感が企業マインドに影を落としていると私は考えています。他方、大企業非製造業でマイナス寄与が大きいのは建設業の▲16.7であり、人手不足による人件費の上昇が負担となっている可能性が示唆されているようにも感じます。また、先行きの景況感について大企業全産業について見ると、7~9月期には+6.7に跳ね上がった後、10~12月期には+0.4と見込まれています。10月の消費増税以降の景況感が、私の目から見て、やや楽観的な気がしなくもありません。もちろん、2014年4月の8%への引き上げ時と違って、今回は引き上げ幅がやや小さい上に、多彩な政府の対応策が用意されていますので、2014年4月の時ほどの大きな落ち込みが見られない可能性があるのも事実です。景況判断以外のほかの調査項目を簡単に見ておくと、雇用については人手不足が続いており、特に、非製造業で不足感が強くなっています。設備については大企業よりも中堅企業や中小企業で不足感が強く、本年度2019年度の設備投資計画は全規模全産業の前年度比で+9.0%増と見込まれています。製造業が+9.2%増、非製造業も+8.8%増と大きな違いは見られません。製造業では化学工業の寄与が、非製造業では運輸業・郵便業の寄与が大きくなっています。

企業マインドについては、6月調査の日銀短観が7月1日に公表の予定となっています。米中間の貿易摩擦に伴う先行き不透明感は、どこまで織り込まれた結果が出るんでしょうか。

| | コメント (0)

2019年6月12日 (水)

3か月連続の増加を示す機械受注と上昇率の縮小した企業物価(PPI)!

本日、内閣府から4月の機械受注が、また、日銀から3月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比+5.2%増の9137億円を示しており、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+0.7%と前月の+1.3%から上昇率が縮小したものの、引き続き、プラスの上昇率を継続しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の機械受注、前月比5.2%増 市場予想0.8%減
内閣府が12日発表した4月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比5.2%増の9137億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は0.8%の減少だった。
うち製造業は16.3%増、非製造業は1.2%増だった。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は2.5%増だった。内閣府は基調判断を「足踏みがみられる」から「持ち直しの動きがみられる」へと変更した。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入されて設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
5月の企業物価指数、前年比0.7%上昇 前月比は0.1%下落
日銀が12日発表した5月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は101.8と前年同月比で0.7%上昇、前月比で0.1%下落した。市場予想の中心は前年比で0.7%上昇だった。
円ベースでの輸出物価は前年比で2.7%下落、前月比で1.4%下落した。輸入物価は前年比1.4%下落、前月比で0.3%下落した。

長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo

まず、機械受注のうち変動の激しい電力と船舶を除く民需で定義されるコア機械受注について、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは▲1%ほどの減少だったんですが、実績値では逆に+5.2%の増加を示しています。今年2019年に入ってから、1月に▲5.4%の減少となった後、2月+1.8%増、3月+3.8%増、4月+5.2%増と、3か月連続での増加となり、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「足踏み」から「持ち直しの動き」へ上方修正しています。先月の3月統計公表時に4~6月期見通しが明らかにされており、コア機械受注は+15.7%増の2兆9,236億円とされていて、4月統計はこれに整合的な動きとも考えられるんですが、いかんせん、5月から激化し始めた米中間の貿易摩擦による関税率引き上げが、まだこれには盛り込まれていませんから、かなり割り引いて考える必要がありそうな気がします。特に、4月統計系では製造業が前月比+16.3%増、電力と船舶を除く非製造業が+1.2%増の結果でしたが、製造業の大きな伸びは大型案件に起因するようですし、4月単月の結果ながら、先行指標の外需が大きく減少しているのも気がかりです。先行きについては、製造業というよりも、むしろ、人手不足への対応による非製造業が底支えし、横ばいないし緩やかな増加を示す、との従来からの見方を変更する必要はないものと私は考えています。

photo

続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。一番上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、真ん中は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価については、つい半年あまり前までの2018年7~10月の期間は4か月連続で前年同月比上昇率が+3%に達っしていたんですが、5月統計では+1%を割り込みました。国際商品市況における石油価格は、昨年2018年10~12月期にピークをつけた後、しばらく低下を続けましたが、最近になって上昇に転じ、米中間の貿易摩擦で中国経済への影響が懸念されてまた下落する、という慌ただしい動きとなっており、我が国物価へのインパクトもさまざまです。5月の国内物価指数では、どこまで米中間の貿易摩擦の影響が織り込まれているか私には不明なんですが、銅地金などの非鉄金属が4月の前年同月比▲2.8%から5月には▲6.2%まで下落幅を拡大し、石油・石炭製品も4月の+4.1%から5月には+1.1%に上昇幅を縮小させており、はん用機器、生産用機器、業務用機器なども軒並み上昇幅が縮小したり、マイナスに転じたりしています。一部に中国経済の停滞が織り込まれているのかもしれません。繰り返しになりますが、あくまで私の想像であり、官庁エコノミストを定年退職した身としては、それほどの情報を持っているわけではありません。というか、官庁エコノミストのころから、それほどの情報は持っていなかったんですが、ますます情報が入って来なくなったのも事実です。

| | コメント (0)

2019年6月11日 (火)

セイコー「時間白書2019」による現代人の時間単価やいかに?

昨日6月10日は時の記念日でした。知っている人は知っていると思いますが、『日本書紀』において天智天皇10年に我が国初の時計が鐘を打った日のグレゴリオ暦の日付だそうで、今年も6月6日付けで、セイコー「時間白書2019」が明らかにされています。詳細なリポートから、私の興味の範囲で、いくつかグラフとともにトピックを取り上げておきたいと思います。

photo

まず、私が興味を持ったのは時間価値であり、上のグラフはセイコーのサイトから引用していますが、オンタイムとオフタイムそれぞれ1時間の時間価値の自己評価をプロットしています。オンタイムもオフタイムも最近ジワジワと上昇を示しています。オンタイムについては、大雑把に、1時間4,000円として時給に相当すると考えれば、1日8時間と月20日働けば月給で64万円、ボーナスなどを無視すれば年収768万円に上りますから、先週火曜日の6月4日に取り上げた東京商工リサーチの調査による上場企業平均年間給与の606万円を25%ほど上回ります。平均的なこのアンケートの対象が高額所得者なのか、それとも、やや高めに回答するバイアスがあるのか、よく判りません。オフタイムの時間価値については比較する対象がありませんが、確かに、これくらい貴重な気もします。1時間当たり平均9,632円と昨年調査結果の7,226円よりも2,406円、前年比+33.3%増と大きく伸びています。ワークライフ・バランスの見直し機運もオフタイムの時間価値増加に寄与している気がします。

photo

次に、曜日別に大切にしている時間帯のヒートマップをセイコーのサイトから引用すると上の通りです。月曜日の出勤前と週末金曜日から土日にかけての夕方から夜、というのはとてもよく判る気がします。

ここに取り上げた項目のほかに、時間に追われている感覚は改善せず。せわしさ感は横ばいが続いているとか、セイコーのサイトにはいろいろと興味深い調査結果が取りまとめられています。

| | コメント (0)

2019年6月10日 (月)

1-3月期GDP統計2次QEは1次QEからわずかに上方改定される!

本日、内閣府から1~3月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.6%、年率では+2.2%と、1次QEからわずかに上方改定されています。2四半期連続のプラス成長で、1~3月期は前期よりも成長が加速しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1-3月期のGDP改定値、年率2.2%増に上方修正 速報は2.1%増
内閣府が10日発表した1~3月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.6%増、年率換算では2.2%増だった。速報値(前期比0.5%増、年率2.1%増)から上方修正となった。法人企業統計など最新の統計を反映した。
QUICKがまとめた民間予測の中央値は前期比0.5%増、年率2.2%増となっており、速報値から小幅に上振れすると見込まれていた。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.8%増(速報値は0.8%増)、年率は3.4%増(同3.3%増)だった。
実質GDPを需要項目別にみると、個人消費は前期比0.1%減(同0.1%減)、住宅投資は0.6%増(同1.1%増)、設備投資は0.3%増(同0.3%減)、公共投資は1.2%増(同1.5%増)。民間在庫の寄与度はプラス0.1%(同プラス0.1%)だった。
実質GDPの増減への寄与度をみると、内需がプラス0.1%(同プラス0.1%)、輸出から輸入を差し引いた外需はプラス0.4%(同プラス0.4%)だった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは、前年同期に比べてプラス0.1%(同プラス0.2%)だった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2018/1-32018/4-62018/7-92018/10-122019/1-3
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)▲0.1+0.6▲0.6+0.5+0.5+0.6
民間消費▲0.1+0.6▲0.3+0.3▲0.1▲0.1
民間住宅▲2.3▲2.0+0.8+1.4+1.1+0.6
民間設備+1.0+2.6▲2.6+2.7▲0.3+0.3
民間在庫 *(▲0.2)(▲0.0)(+0.2)(+0.1)(+0.1)(+0.1)
公的需要▲0.1▲0.1▲0.2+0.3+0.2+0.2
内需寄与度 *(▲0.2)(+0.6)(▲0.5)(+0.8)(+0.1)(+0.1)
外需寄与度 *(+0.0)(▲0.1)(▲0.2)(▲0.3)(+0.4)(+0.4)
輸出+1.0+0.7▲2.0+1.2▲2.4▲2.4
輸入+0.7+1.0▲1.0+3.0▲4.7▲4.7
国内総所得 (GDI)▲0.4+0.4▲0.9+0.4+0.9+1.0
国民総所得 (GNI)▲0.5+0.7▲1.1+0.5+0.7+0.8
名目GDP▲0.2+0.3▲0.6+0.5+0.8+0.8
雇用者報酬+1.0+1.5▲0.5+0.3+0.1+0.1
GDPデフレータ+0.5▲0.1▲0.4▲0.3+0.2+0.1
内需デフレータ+0.9+0.5+0.6+0.5+0.3+0.3

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された1~3月期の最新データでは、前期比成長率がプラスを示し、灰色の在庫と黒の外需(純輸出)がプラスの寄与を示しているのが見て取れます。

photo

ということで、1~3月期GDP統計2次QEは先月の1次QEから大きな変化はありませんでした。法人企業統計などの1次統計の追加と反映を受けて、住宅投資が下方改定された一方で、設備投資が上方改定され、ほかにも細かな修正はありますが、季節調整済みの系列で見て、全体として実質GDI成長率が1次QEの前期比+0.5%、前期比年率+2.1%からわずかに、前期比+0.6%、前期比年率+2.2%と上方修正されています。内需寄与度はほぼゼロで、外需の寄与によりプラス成長を実現していますが、輸出の伸びではなく輸入の減少がGDPの増加に貢献しているわけで、その輸入の減少の背景には内需の伸び悩みがあるわけですから、内容としては望ましい姿と判断するエコノミストは少なそうな気がします。ただし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、前期比年率+2.2%の成長率予想でしたが、先週木曜日6月6日にシンクタンクによる2次QE予想を取りまとめた時点では、「1次QEから上方改定を見込んでいるのが3機関、修正なしが1機関、下方修正が4機関」で、下方修正を予想するシンクタンクも決して少なくなかったことから、1次QE公表時にも正直に書いてしまいましたが、景気後退期年はいくぶんなりともさらに和らいだと考えてよさそうです。
1次QEから大きな違いはないといいつつも、先行きまで含まて、簡単に本日公表されたGDP統計の中身をレビューしておきたいと思います。まず、GDPトータルについて考えると、昨年2018年7~9月期に天候や災害などの影響によりマイナス成長を記録し、直後の2018年10~12月期はリバウンド要因があったにもかかわらず、やや力強さに欠けるプラス成長となり、今年2019年1~3月期は輸入の減少というややトリッキーな要因によりプラス成長の結果となりました。足元の4~6月期はマイナス成長を見込むエコノミストがかなりいます。私が大雑把に見た範囲で、日本総研と 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの2機関以外の大和総研、みずほ総研、ニッセイ基礎研、第一生命経済研は軒並み4~6月期はマイナス成長と見込んでいます。しかし、7~9月期は10月からの消費税率引き上げを前にした駆け込み需要があることから、たとえ4~6月期がマイナス成長であったとしても、2四半期連続のマイナス成長というテクニカルな景気後退シグナルが出る可能性は少ないと私は考えています。10月の消費増税引き上げ後の景気動向については、私には謎なんですが、政府が多彩に準備を進めているプレミアム商品券、ポイント還元などの効果など、残念ながら、私にはまだ十分判っていません。特に、ポイント還元については、政府の中小企業向けの政策措置だけでなく、事業者の独自判断によるポイントを活用した実質値引きなどもあるようですし、そもそも、何がどうなるのか、官庁エコノミストを3月いっぱいで定年退職して、それほど熱心な情報収集もしていませんので、私には総合的な実態把握もいまだにできていません。軽減税率も含めて過去に例のない政策もあって、私にはより判りにくくなっている気がします。ただ、今回の消費増税対策については、各種資料を見る限り、景気対策としては防災・減災、国土強靱化などの公共投資が過半を占めているようで、相変わらずの土建国家ぶりが示されており、不公平感の解消がどこまで図られるかにも私は注目しています。というわけで、消費増税が国内要因の中では最大のリスクなんですが、もちろん、日本経済の先行きに関して最大のリスクは海外要因であり、米中の貿易摩擦の余波による輸出不振という需要面よりも、米国の連邦準備制度理事会(FED)が金融緩和に転じて金利引き下げとなれば為替が円高に振れる可能性があり、この価格面のインパクトの方が、マインドへの影響もありますから、より大きなリスクになりそうな気がしています。日銀はどのように円高に対応するんでしょうか。量的緩和の拡大以外に何か手はあるんでしょうか。
お話をGDPトータルから需要項目別に移すと、在庫の動きがやや判りにくい気がします。判りにくいことだらけで、繰り返しになりますが、昨年2018年7~9月期の自然災害要因により売れ残りの後ろ向きの在庫が積み上がった後、2018年10~12月期から今年2019年1~3月期にかけて、3四半期連続で在庫は増え続けています。今日公表された1~3月期の2次QEでは、1次QEから小幅に下方修正されたものの、相変わらず在庫は増加しており、それはそれでGDP成長率にはプラス寄与しているわけですし、ひょっとしたら、今年2019年10月の消費増税前の駆け込み需要を当て込んだ前向きの在庫積み増しかもしれませんが、現時点では、在庫調整が進んでいない可能性も含めて、判断する材料はまだ十分ではありません。

photo

最後に、本日、内閣府から5月の景気ウォッチャーが、また、財務省から4月の経常収支が、それぞれ公表されています。景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲1.2ポイント低下の44.1を記録した一方で、先行き判断DIも▲2.8ポイント低下の45.6となり、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+1兆7074億円の黒字を計上しています。いつものグラフは上の通りです。上のパネルは景気ウォッチャーで、現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。下は経常収支で、青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。これも、色分けは凡例の通りとなっています。

広く報じられているように、金融庁が6月3日に公表した金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」において、65歳からの高齢期において「20年で約1,300 万円、30年で約2,000万円」の貯蓄の取り崩しが必要と指摘しています(p.16)。こんなふうに政府にいわれれば、老後不安から消費者のマインドはさらに冷え込んでせっせと貯蓄に励みそうな気がしますし、シルバー民主主義が今よりもっと幅を利かせる懸念もありますし、大丈夫なんだろうかと思わないでもありません。

| | コメント (0)

2019年6月 8日 (土)

雇用増に急ブレーキのかかった米国雇用統計から米国金融政策を占う!

日本時間の昨日、米国労働省から5月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+75千人増と雇用の増加に急ブレーキがかかった一方で、失業率は低い水準で先月と同じ3.6%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を最初の7パラだけ引用すると以下の通りです。

Economy added just 75,000 jobs in May, strengthening case for Fed interest rate cut
Hiring was weak in May as employers added 75,000 jobs, bolstering the Federal Reserve's case for cutting interest rates as soon as this month, a possibility that has juiced markets in recent days.
The unemployment rate was unchanged at a 50-year low of 3.6%, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg expected 178,000 job gains.
Adding to the concerns: Payroll gains for March and April combined were revised down by a total 75,000. March's additions were revised from 189,000 153,000, and April's, from 263,200 24,000.
The May employment report was highly anticipated because of recent speculation that the Fed could cut its benchmark rate for the first time in a decade as soon as this month, especially if the economy softens. The jobs report typically provides the best real-time gauge of the labor market and economy.
Fed policymakers have indicated they're prepared to trim rates if necessary, noting concerns that the recent escalation of U.S. trade battles with both China and Mexico could further impede already slowing growth. A stock market that was tumbling amid the trade jitters has rallied since Fed officials have raised the possibility of rate cuts, which tend to increase consumer and business borrowing and prod investors to move money from bonds to higher-yielding stocks.
After the jobs report was released, markets predicted the chance of a Fed rate cut at its June 18-19 meeting rose to 31%, according to CME Group. The odds of a cut at the Fed's late July meeting rose to 58%. The Dow Jones industrial average rose more than 200 points on growing anticipation of a rate cut. On Friday morning, the yield on the 10-year Treasury bond dipped 0.06 basis points, or 2.8%, to 2.06%, nearing the lowest level since 2017.

やや長く引用してしまいましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門と失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

photo

ということで、引用した記事の3パラめにあるように、ブルームバーグの集計による市場の事前コンセンサスでは+178千人増とのことでしたので、何と半分にも届かず、雇用の増加には急ブレーキがかかった格好です。寒波の影響で、わずかに+56千人増にとどまった今年2019年2月以来の低い伸びでした。中国との貿易摩擦との関係で、米国経済の先行きに不安が広がりかねない統計です。しかし、他方で、失業率は50年来の低水準の3.6%で推移しており、歴史的な低水準にあることも確かです。失業率が低いわけですから、当然に、失業者も少ないわけで、遊休労働スラックも底をつきかけており、その意味で、雇用増が伸びないのも決して不思議ではないとの受け止めもあります。特に、ADPの民間部門雇用増に至っては、わずかに+27千人増でしたから、決して、米国労働省の統計だけが突飛なわけではありません。まあ、この米国雇用統計の評価は難しいところなんですが、このような雇用情勢を受けて、米国債券市場では長期金利が急低下を示しています。すなわち、米2年物国債の利回りは一時1.77%と前日より▲0.1%ほど下げて、約1年半振りの水準まで低下していますし、これも、引用した記事の最後のパラにあるように、10年もの国債金利も下げています。雇用者数の伸びが事前予想を大きく下回り、景気の先行き懸念から安全資産とされる米国債に資金が向かったためと考えられます。米国連邦公開市場委員会(FOMC)の Meeting calendars に従えば、米国連邦準備制度理事会(FED)は今月6月18~19日に FOMC を開催する予定となっています。FED のパウエル議長は、今月6月4日に開催された Conference on Monetary Policy Strategy, Tools, and Communications Practices の Opening Remarks において、"as always, we will act as appropriate to sustain the expansion" と、通常通りに景気拡大を持続させるために適切な行動を取ると言明しており、金融緩和に転じる可能性を強く示唆しています。

photo

ただ、景気動向とともに物価の番人としてデュアル・マンデートを背負ったFEDでは物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の動向も注視せねばならず、その前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。米国雇用は底堅くて、労働市場はまだ逼迫を示しており、賃金もジワジワと上昇率を高める段階にあります。すなわち、5月は前年同月比で+3.1%の上昇と、昨年2018年8月に+3%の上昇率に達して、半年以上に渡って3%台の上昇率が続いています。日本や欧州と違って米国では物価も賃金上昇も+2%の物価目標を上回る経済状態が続いているわけですので、利上げを停止したり、あるいは、前のパラで論じたように金融緩和に転じたりして、それで物価の方は大丈夫なんでしょうか?

| | コメント (0)

より以前の記事一覧