2020年11月30日 (月)

回復が遅れる鉱工業生産指数(IIP)と物販は回復続く商業販売統計!!!

本日は月末日ということで、重要な政府統計がいくつか公表されています。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計です。いずれも10月の統計です。まず、鉱工業生産指数(IIP)は季節調整済みの系列で見て、前月から+3.8%の増産を示した一方で、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+6.4%増の12兆4300億円、季節調整済み指数でも前月から+0.4%増を記録しています。消費の代理変数となる小売販売は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染再拡大で減少が続くという結果が出ています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

10月の鉱工業生産、3.8%上昇 回復なお途上
経済産業省が30日発表した10月の鉱工業生産指数速報(2015年=100、季節調整済み)は前月比3.8%上昇し95.0だった。5カ月連続でプラスとなった。経産省は基調判断を「持ち直している」に据え置いた。12月には低下が見込まれ、新型コロナウイルス感染症の再拡大で経済活動が鈍る恐れもある。
新型コロナの影響が出始めた2月は99.5だった。減産が続き5月に78.7まで下がった指数の回復が続くものの、水準はなお低い。
業種別では15業種中12業種が上昇した。自動車工業は6.8%上昇した。自動車に限ってみれば新型コロナの感染拡大前の1月の水準を超えた。海外向けに普通乗用車などの輸出が増え、5カ月連続で回復した。
コンベアなどの汎用・業務用機械工業は17.9%上昇した。コンピューター関連の電気・情報通信機械工業も8.4%上昇した。一方、電子部品・デバイス工業は5.2%低下、航空機部品などの輸送機械工業が9.9%の低下となった。
メーカーの先行き予測をまとめた製造工業生産予測調査によると、11月は前月比2.7%の上昇、12月は2.4%の低下を見込む。経産省は「新型コロナの感染が再拡大しており、国内外経済の下振れリスクにも注意する必要がある」とする。低下が予想される12月については「上昇の連続が一服するということではないか」とみている。
10月の小売販売額 前年比6.4%増 消費増税の反動
経済産業省が30日に発表した10月の商業動態統計速報によると、小売業販売額は前年同月比6.4%増の12兆4300億円だった。前年実績を上回ったのは8カ月ぶり。1年前の10月は消費増税前に出た駆け込み消費の反動で落ち込んだため、伸び率が大きくなった。
季節調整済みの前月比でみると0.4%増で、2カ月ぶりにプラスに転じた。10月は新型コロナウイルスの感染拡大が一定程度落ち着いており、消費者心理が改善した。経産省は小売業販売の基調判断を前月から据え置き、「横ばい傾向にある」とした。
自動車小売業は前年同月比16.4%増で、13カ月ぶりにプラスに転じた。家電など機械器具小売業は27.4%増加した。エアコンや洗濯機などの販売が堅調だった。
業態別にみると、百貨店は2.5%減だった。減少は13カ月連続。コロナ感染拡大前の今年1月以来初めて下げ幅が1桁にとどまったものの、落ち込みが長引いている。外出機会の減少などで主力の衣料品の販売が戻らず、回復の重荷となっている。

ふたつの統計を取り上げていますのでやや長くなってしまいましたが、いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に認定しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、生産は+2.3%の増産との見込みで、レンジでも+1.5%~+4.0%でしたので、ほぼほぼ上限といえます。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック前の今年2020年1月の指数が99.8とほぼ100だったんですが、ボトムの5月には78.7と指数レベルで▲21.1、比率で▲22%ダウンし、その後、本日公表の10月統計で95.0ですので、指数レベルで+16.3、ボトムからの比率で77%を回復したことになります。もしも、11月統計が製造工業生産予測指数の補正値通りに+0.4%の増産と仮定しても、まだボトムからの戻りは80%に達しません。加えて、12月は▲2.4%の減産が見込まれていますから、回復の足取りは極めて緩やか、というか、足元のCOVID-19感染拡大を考慮すれば、「緩やか」以上に逆行して再び減産に入る可能性すら考えられます。ですから、10月統計だけを取り出して評価しても、私はそれほど意味あるとは思えません。加えて、我が国のリーディング・インダストリーであり、ここまでの生産の回復を支えてきたのは自動車工業です。すなわち、自動車産業の指数水準を見ると、1月の104.3に対して、ボトムの5月には45.4と半減以下に大きな減産を記録しましたが、10月統計では104.7とパンデミック前の水準を超えています。しかし、他方で、製造工業生産予測指数を見ると、自動車工業のカテゴリーはないんですが、輸送機械工業の分類では11月▲3.9%減、12月▲2.5%減と2か月連続の減産が見込まれています。COVID-19の感染拡大次第では、さらに下振れする可能性が十分あると覚悟すべきです。ペントアップのいわゆる挽回生産が続いて来ましたが、COVID-19パンデミック前の生産水準に戻る前に、国内の感染拡大や欧州のロックダウンによる輸出への影響などから、生産は回復が減速するどころか、回復を続けることすら危うくなった、と私は認識しています。

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続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期であり、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで認定しています。ということで、小売業販売額の前年同月比で見て、新型コロナウィルス(COVID-19)パンデミック初期の食料品やマスクをはじめとする日用品の買い物をせっせとしていた今年2020年3月の前年同月比+1.6%増を最後に4月からマイナスが続いていたんですが、本日公表の10月統計で久し振りにプラスを記録しています。しかしながら、引用した記事のタイトルの通り、これは前年2019年10月に消費税率の引上げがあって、その直前の駆込み需要の反動として昨年10月統計が大きく落ち込んだため、伸び率が大きく見えていることが一因です。従って、前年同月比+6.4%増はそのままだと過大評価になるわけですが、他方で、季節調整済みの指数で見るとパンデミック初期の今年2020年1月102.6、2月103.1に対して、この水準を初めて超えたのは8月103.2であり、その後も9月103.1、そして本日公表の10月103.5と、かなり底堅い動きを示していることも事実です。もちろん、この商業販売統計は小売業だけであって、サービス業が調査対象外とされており、飲食や宿泊といった対人サービス業におけるCOVID-19のダメージが大きいわけですので、消費がパンデミック前の水準に戻ったと考えるべきではありませんが、COVID-19のダメージが大きいサービスはまだまだとしても、少なくとも物販については底堅い、と考えるべきです。

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2020年11月27日 (金)

リクルートジョブズによる10月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給やいかに?

来週火曜日12月1日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる10月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を取り上げておきたいと思います。

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アルバイト・パートの時給の方は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響などにより、ジワジワと停滞感を増していて、10月にはとうとう前年同月比で+1.3%まで上昇幅が縮小したのは上のグラフで見て取れると思います。他方、派遣スタッフの方は5月以降のデータが跳ねています。上のグラフの通り、10月にはとうとう前年同月比で+5.2%に達しました。現時点で判断するのはややムリで、何があったのかは私には判りかねます。
まず、アルバイト・パートの平均時給の前年同月比上昇率は繰り返しになりますが、とうとう+1%台の伸びまで縮小し、人手不足がメディアで盛んに報じられていた昨年暮れあたりの+3%を超える伸び率から比べるとかなり低下してきています。三大都市圏の10月度平均時給は前年同月より+1.3%、+14円増加の1,088円を記録しています。職種別では「営業系」(+49円、+3.8%)、「専門職系」(+23円、+2.0%)、「事務系」(+18円、+1.6%)、「製造・物流・清掃系」(+12円、+1.1%)の4職種で前年同月から増加し、「販売・サービス系」(▲4円、▲0.4%)と「フード系」(▲13円、▲1.3%)の2職種で減少となっています。例月になく、営業系が大きな伸びを見せたのは、テレフォンアポインターが+87円、+6.7%増を記録したからです。地域別でも、首都圏・東海・関西のすべてのエリアで前年同月比プラスを記録しています。
続いて、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、昨年2019年7月統計から先月2020年4月統計まで10か月連続でマイナスを続けた後、5月度以降給は前年同月から大きく増加し、9月も+3.5%、57円増加の1,690円に増加しています。職種別では、「医療介護・教育系」(+71円、+4.9%)、「営業・販売・サービス系」(+33円、+2.4%)、「IT・技術系」(+42円、+2.0%)、「クリエイティブ系」(+16円、+0.9%)の4職種が前年同月比プラスとなり、マイナスは「オフィスワーク系」(▲7円、▲0.5%)だけにとどまっています。なお、9月統計で前年同月比マイナスだった「営業・販売・サービス系」が10月統計ではそこそこのプラスに転じたのは、旅行関連の+97円、+6.7%増が寄与しているという気がします。GoToトラベルのあだ花だと私は受け止めています。また、地域別でも、首都圏・東海・関西のすべてのエリアでプラスを記録しています。1年近く前年同月比マイナスを続けてきた派遣スタッフの時給が5月からジャンプしたのですが、アルバイト・パートの時給上昇率はジワジワと停滞し始めていますし、2008~09年のリーマン・ショック後の雇用動向を見た経験からも、COVID-19の経済的な影響は5月ころに底を打ったように見えるものの、雇用については典型的には失業率などで景気動向に遅行するケースが少なくないことから、先行き、非正規雇用の労働市場は悪化が進む可能性がまだ残されていると覚悟すべきです。同時に、相反することながら、意外と底堅いという印象もあります。この底堅さが、一昨日の企業向けサービス価格指数(SPPI)の動きの背景をなしているのではないか、という気もします。

最後に、リクルートジョブズでは、先月9月統計からアルバイト・パートだけ北海道と福岡県のデータの公表を始めています。現時点では、首都圏・東海・関西にはまだ統合されていませんし、派遣スタッフはなくアルバイト・パ^トだけのようですので、そのうちに様子を見つつ私の方でも考えたいと思います。

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2020年11月26日 (木)

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックの経済的帰結やいかに?

大学の授業の準備をしています。実は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止の観点から、最終回の定期試験が許されておらずリポート提出になりますので、それに当てるべき回は授業をしなければなりません。ということで、最終回の授業は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックの経済的帰結を取り上げることにしました。来年2021年1月の授業ですので、まだ、アップデートする可能性は十分ありますが、もっとも重要なCOVID-19の経済的帰結のひとつは格差拡大だと私は考えていて、現時点で以下のような教材をピックアップして授業資料作成に励んでいます。

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最初の IMF Blog はすでに7月16日付けで取り上げているので省略することとし、Brookings Institution の Why are Blacks dying at higher rates from COVID-19? (Rashawn Ray) April 9, 2020 から COVID-19 Diagnoses for Blacks by State を引用すると上の通りです。ミシガン州では週全体のCOVID-19陽性率が15%ですが、黒人の間では35%に上っています。ほかにも、イリノイ州では16%と30%のように、黒人の陽性率が州平均より高くなっています。また、グラフはありませんが、ルイジアナ州では黒人は州人口の⅓程なんですが、COVID-19による死者の70%を占め、多くがニュー・オーリンズに集中していると指摘していたりもします。

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続いて、Brookings Institution の Race gaps in COVID-19 deaths are even bigger than they appear (Tiffany N. Ford, Sarah Reber, and Richard V. Reeves) June 16, 2020 から Figure 1. COVID-19 death rates by age and race を引用すると上の通りです。Figure 2 では中年層に的を絞ったグラフがあるんですが、いずれにせよ、アジア人は分類に含まれていないながら、白人・黒人・ヒスパニックの人種別に分類すると、10万人当たりのCOVID-19による死者数で黒人が群を抜いているのが見て取れます。

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最後に、Institute for Policy Studies の U.S. Billionaires Wealth Surges $931 Billion since Beginning of Pandemic (Chuck Collins) October 20, 2020 から Wealth of U.S. Billionaires Grows $931 Billion (32%) in 7 Months を引用すると上の通りです。アマゾンのジェフ・ベゾスCEOをはじめとして、話題のGAFAなんかの経営者がCOVID-19によるインターネット通販や在宅勤務の拡大、あるいは、在宅時間が長くなってSNSの利用が増加したことなどから、軒並み資産を大幅に増加させています。ただし、ひとつだけ注釈があって、ウォルマートの3人が入っているのは創業者の死亡による相続ではないか、ということのようです。でも、食品販売などのエッセンシャル・セクターを担うウォルマートも儲かっているのかもしれません。

ということで、オリジナルの情報はまったくないんですが、こういった海外情報を取りまとめるのもこのブログの特徴のひとつですし、大学の授業からのスピルオーバーでもあります。

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2020年11月25日 (水)

消費税率引上げの影響が剥落しマイナスとなった10月の企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか?

本日、日銀から10月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は▲0.6%の下落でした。変動の大きな国際運輸を除くと▲0.4%の下落でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

サービス価格、10月0.6%下落
日銀が25日発表した10月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は104.2と、前年同月比で0.6%下落した。前年同月比の下落は13年5月以来7年5カ月ぶりとなる。19年10月の消費税率引き上げから1年が経過し、影響が剥落した。消費税率引き上げの影響を除くベースでは、下落は8カ月連続だった。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1枚目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。財の企業物価指数(PPI)の国内物価よりも企業向けサービス物価指数(SPPI)の方が下がり方の勾配が小さいと見るのは私だけではないような気がします。いずれも、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に認定しています。

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引用した記事にもある通り、本日公表の10月統計から、昨年2020年10月の消費税率の引上げによる物価押上げの影響は剥落しましたので、消費税を含む先月9月統計の+1.3%の上昇から、10月統計では▲0.6%の下落に大きくスイングしました。ただし、先月の9月統計でも消費税の影響を除くベースでは前年同月比で▲0.5%の下落でしたので、ヘッドラインの上昇率で見るほど大きな下落ではないと私は受け止めています。ただ気がかりなのは、消費税の除く「実力ベース」の前年同月比で見て、今年2020年5月の▲1.4%の下落を底に、先月9月統計の▲0.5%まで徐々に下落幅が縮小してきたにもかかわらず、10月統計では▲0.6%に下落幅が再拡大しています。この大きな要因は、消費者物価指数(CPI)と同じで、GoToトラベルによる宿泊費の下落だと私は受け止めています。すなわち、SPPIの宿泊サービスの前年同月比を見ると、8月▲34.8%、9月▲30.1%、に続いて、10月には▲34.5%を記録しています。消費税の影響を細かい品目で取り除くのは難しいので、8~9月の下落率は消費税の影響を含んだベースになって、10月とはベースが異なるんですが、引用した日経新聞の記事にはないものの、ロイターの記事から記者会見を想像する限り、日銀当局はGoToトラベルによって宿泊需要は回復した一方で、ビジネスホテルを中心に関東における値下がりの影響が大きく出た、と説明しているようです。もっとも、SPPIのヘッドライン上昇率がマイナスの下落に転じたとはいえ、上の2枚のグラフにも見られる通り、上のパネルの上昇率で見て、PPIのうちの国内物価よりはまだまだ下落幅が小さいわけですし、下のパネルの指数レベルで見ても、モノの国内物価指数が足元で下落している一方で、サービスのSPPIは足元で上昇しています。従って、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のショックによって、おそらく、人手不足の価格押上げ圧力は、従来ほどではないとしても、まだいくぶんなりとも残っており、そのぶん、モノのPPIよりもサービスのSPPIの方が底堅いという印象を持つのは私だけではないような気がします。

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2020年11月24日 (火)

国際機関と中央銀行への女性進出はどこまで進んだか?

昨日、国際通貨基金(IMF)から Gender Diversity in the Executive Board : Progress Report of the Executive Board to the Board of Governors と題するリポートが公表されています。トップの専務理事にゲオルギエバ女史をいただくIMFのことですから、女性の進出ないし性別の多様化には熱心なことと私は想像しています。

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まず、上のグラフは、リポートから Gender Diversity of International Financial Institution Member Country Boards を引用しています。過去1年で、世銀と欧州開銀では女性役員のシェアが8%ポイントの増加を見せた一方で、国際決済均衡では6%ポイント、欧州中央銀行では4%ポイントだった、と指摘しています。The number of women directors increased by eight percent for the World Bank, by eight percent for the European Bank for Reconstruction and Development, by six percent for the Bank for International Settlements, and by four percent for the European Central Bank.

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続いて、上のグラフは、リポートから Gender Diversity in G7 Central Banks, ECB and BRICS を引用しています。中央銀行では、欧州中央銀行がわずかな改善を見せたほかは、ほぼ変わりない、と報告しています。Across central banks, most have remained stable with the European Central Bank recording a slight improvement in the number of women.

アジア開発銀行(ADB)や日銀で女性の進出が進んでいないように見受けるのは私だけでしょうか?

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2020年11月23日 (月)

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止と経済活動の両立は出来るのか、目指すべきなのか?

結論を先取りすれば、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止と経済活動の両立を目指すという方針は根本的に間違っていると私は考えています。GoToキャンペーンの失敗は、ここに起因するのではないかとすら思えます。
とても旧聞のトピックながら、先月2020年10月にベルリンで開催された世界医学サミット(World Health Summit)におけるグテーレス国連事務総長のビデオ・メッセージから一部を抜き出して引用すると以下の通りです。

There is no choice between saving people's lives and saving jobs. Protecting people from the virus is the best way to keep schools open and businesses running. It will prevent the virus from spreading even more widely and returning in wave after wave.

まずは、国民の健康、というか、グテーレス国連事務総長の言葉を借りればウィルスからの保護(Protecting people from the virus)を実現することが政府の第1の役割です。そのために、職を失ったり、経済活動が停滞したりするのであれば、そこに的を絞って経済的な援助の手を差し伸べるべきです。確かに、宿泊とか飲食とかの人的接触の多いサービス業界がCOVID-19の影響が特に大きかったことは事実ですが、供給をシャットダウンせざるを得なかったセクターに補助金付きで一般国民を送り込んで感染拡大を促進するような政策は、失敗する確率がとても高いと考えるべきです。感染拡大防止と経済的な活動とを両立させようとする政策は失敗する、と覚悟すべきです。

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上のグラフは、入院治療等を要する者・重症者・新規陽性者数等の推移です。一昨日の11月21日に開催された新型コロナウイルス感染症対策本部(第47回)の配布資料から引用しています。テレビで聞いた医師会長の表現が耳に残っていますが、朝日新聞のサイトから引用すると、「GoToトラベル自体から感染者が急増したというエビデンスはなかなかはっきりしないが、きっかけになったことは間違いない」のは誰もが認めるところです。「静かなマスク会食」なんて言ってずに、トラベルだけではなく、GoToキャンペーンで人的接触を奨励するような政策は今すぐ中止すべきであると私は考えます。

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2020年11月20日 (金)

大きな下落となった10月統計の消費者物価(CPI)上昇率をどう見るか?

本日、総務省統計局から10月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は▲0.7%の下落を示した一方で、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は▲0.2%の下落でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価、10月0.7%下落 GoToで9年半ぶり下げ幅
総務省が20日発表した10月の消費者物価指数(CPI、2015=100)は、変動が大きい生鮮食品を除く総合指数が101.3と、前年同月比0.7%下がった。下落は3カ月連続で、9年7カ月ぶりの下げ幅となった。政府の観光需要喚起策「Go To トラベル」事業の割引で宿泊料が37.1%下がった。
消費者物価指数は消費者の支払額をもとに計算する。10月から東京発着の旅行も「Go To」事業で割り引いたため9月より下落幅が拡大した。11年3月の0.7%以来の大幅なマイナスだ。「Go To」の影響を除いた試算では、生鮮食品を除く総合指数は0.2%の下落だった。
19年10月の消費増税から1年たち、物価上昇率を高める効果も薄れた。同時に始めた幼児教育・保育の無償化の影響を加味しても9月には増税の影響で0.2ポイント程度押し上げていた。
宿泊料以外では電気代が4.7%、ガソリンが9.2%下がるなどエネルギー関連も大きく下落した。9月に2.4%だった家庭用耐久財の上昇率は0.8%に縮んだ。
この2年間は前年比の物価上昇率がずっと1%未満で、4月以降はエネルギー価格の下落や新型コロナウイルス禍を受けた需要減によりマイナスの月が多かった。総務省の担当者は「新型コロナのワクチンへの期待が高まり、足元では原油価格が上昇している。今後はエネルギー関連の価格が戻る可能性がある」と話した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。もっとも、最近になって発見したのですが、統計局から小数点3ケタの指数が公表されているようですので、今後は、これを用いる可能性があります。

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コアCPIの前年同月比上昇率は日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲0.7%でしたので、ジャストミートしています。ただし、この10年振りの大きな下落は、昨年2019年10月からの消費税率引上げの効果の剥落もさることながら、引用した記事にもあるように、GoToトラベル事業の割引で宿泊料が▲37.1%下がった影響がCPI総合への寄与度▲0.45と大きく、GoToを除くコアCPIの下落は▲0.2%にとどまっています。それでも、「実力」CPIでマイナスです。加えて、エネルギー価格も、足元では上昇しているものの、10月統計では寄与度が▲0.44%となっており、ガソリンや電気代が下げ幅を大きくしています。そして、ここ最近半年、あるいは、10月からの動きでとても特徴的と私が考える点を2つだけ上げておきたいと思います。第1に、サービス価格が8月から急にマイナス幅が大きくなったのは、明らかにGoTo事業の影響と考えるべきですが、実は、消費者物価指数(CPI)では4月から、企業向けサービス価格指数(SPPI)では3月から4月にかけて、下げ幅を拡大しています。これは、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)により対人接触の多いセクターで供給ショックがあった、と、従来のケインズ型の需要ショックではない点を強調するNBERのワーキングペーパー、すなわち、Guerrieri, Veronica, Guido Lorenzoni, Ludwig Straub, and Iván Werning (2020) "Macroeconomic Implications of COVID-19: Can Negative Supply Shocks Cause Demand Shortages?" NBER Working Paper No.26918, April 2020 と整合的な物価の動きだといえます。第2に、昨年2019年10月からの消費財率引上げの物価への影響が剥落したため、同時に、軽減税率の効果も剥落しています。ですから、勤労世帯の第Ⅰ分位家計と第Ⅴ分位家計のそれぞれの消費バスケットに対する物価上昇率の差が、長らく低所得の方の物価上昇率が低い状況だったんですが、10月統計から逆転して、第Ⅰ分位家計の消費バスケットに対応する物価上昇率の方が高くなってしまいました。ちなみに、私の計算では、10月統計で各家計平均の帰属家賃を除く総合CPI上昇率が▲0.4%、第Ⅰ分位家計の消費バスケットに対応するCPI上昇率が▲0.2%、そして、第Ⅴ分位が▲0.6%となります。わずかな差とはいえ、所得の少ない家計の消費バスケットの方が、所得の多い家計より物価上昇率が高くなっていて、物価上昇を除く実質消費では逆進的な影響が出始めたということになります。

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2020年11月19日 (木)

今冬の年末ボーナスはコロナ禍の影響で大幅ダウンか?

先週から今週にかけて、例年のシンクタンク4社から2020年年末ボーナスの予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると以下のテーブルの通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、公務員のボーナスは制度的な要因で決まりますので、景気に敏感な民間ボーナスに関するものが中心です。可能な範囲で、消費との関係を中心に取り上げています。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、あるいは、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブでリポートが読めるかもしれません。なお、「公務員」区分について、みずほ総研の公務員ボーナスだけは地方と国家の両方の公務員の、しかも、全職員ベースなのに対して、日本総研と三菱リサーチ&コンサルティングでは国家公務員の組合員ベースの予想、と聞き及んでおり、ベースが違っている可能性があります。私の方で詳細な確認は取っていませんが、注意が必要です。

機関名民間企業
(伸び率)
国家公務員
(伸び率)
ヘッドライン
日本総研37.9万円
(▲2.6%)
66.1万円
(▲3.9%)
リーマン後と比べると、一部の業種・企業に新型コロナの悪影響が集中している点が特徴的。中小企業では、既に今夏の賞与において、飲食、生活関連サービスなどを中心に支給労働者数が急減。もっとも、賞与支給がなかった企業は、一人当たり平均支給額算出に際し除外されるため、もともと支給水準の低い企業の支給見送りに伴い、中小企業の一人当たり支給額はかえってプラスに。一方大企業では、新型コロナ前に夏季賞与の水準が妥結していた企業も多く、業況悪化の反映は年末賞与から本格化する見込み。
みずほ総研36.0万円
(▲7.5%)
72.3万円
(▲3.8%)
民間企業・公務員を合わせた冬季ボーナスの支給総額は、前年比▲9.3%とリーマンショック後以来の大幅マイナスが見込まれる。夏冬合わせて雇用者報酬のおよそ2割を占めるとされるボーナス減少の影響は大きく、今後の消費回復への重石となろう。
また、今冬のボーナスは、特に特定業種におけるボーナスの大幅減少が懸念される。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、宿泊・飲食サービス業(247.8千円)、生活関連サービス・娯楽業(263.6千円)の賃金水準(月額)は全体平均(307.7千円)対比でもともと低い水準にある。これら特定業種に属する労働者の一部は所得水準が低い中、ボーナスが急減し、深刻な所得減少に直面する可能性が高い。既に国民全員に対して、1人当たり10万円の特別定額給付金が支給されたが、政府には、こうした所得の急減に見舞われた労働者に対象を絞って、給付金を再度支給するなど、支援を一層強化していくことが求められよう。
第一生命経済研(▲8.0%)n.a.冬のボーナスは一段の悪化が必至である。多くの企業では春闘時にボーナス支給額を決めることから、20年の春闘では新型コロナウイルス前の業績をもとに交渉がされていた。そのため、夏のボーナスは、新型コロナウイルスによる悪影響を反映しきれていない。一方、今冬のボーナスでは、急激に落ち込んだ20年度前半の業績を元に支給する企業が夏対比で増えることから、大幅悪化が避けられない。加えて、厳しい経済状況を受けて、ボーナスの支給を見送る企業も増加することが予想される。ボーナスの支給がない労働者も含めた平均では前年比▲11.5%と、二桁の減少になるだろう。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング34.8万円
(▲10.7%)
65.8万円
(▲4.3%)
企業業績の悪化に伴う人件費削減の動きから雇用者数の増加は頭打ちとなったことに加え、ボーナスの支給を見送る事業所も増えるとみられ、ボーナスが支給される事業所で働く労働者の数は4,257万人(前年比-2.4%)と、リーマンショックの影響が大きかった2009年以来11年ぶりに減少することが見込まれる。また支給労働者割合も82.5%(前年差-2.4%ポイント)と、1990年以降での最低水準にまで低下するだろう。これにより、ボーナスの支給総額は14.8兆円(前年比-12.8%)と大幅に減少する見通しである。支給総額の大幅な減少は、コロナ禍からの回復の過程において、個人消費の足を引っ張り、日本経済の回復を阻害することが懸念される。

もはや、コメントする気力もありませんが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で年末ボーナスは総崩れです。しかも、民間企業が賃上げしないために、国家公務員のボーナスも▲0.05か月分引下げとの人事院勧告が10月7日に出ています。1人当り支給額もマイナスなら、支給人数も減少することが予想されており、その積である支給総額はダブルパンチで大きなマイナスと見込まれています。日本総研を別とすれば、支給総額はほぼ▲10%のふたケタ減が予想されています。恒常所得仮説ではボーナスは消費には影響しないとの結論が導かれますが、もちろん、実際には、消費にもそれなりの影響が出るものと考えるべきです。しかも、いくつかのシンクタンクのリポートで明記されているように、COVID-19の経済的な影響は業種によってかなり大きなばらつきがあり、もともと給与水準が低い業種の雇用者、あるいは、非正規雇用者がさらにボーナスの支給減、あるいは、ひどい場合には、支給停止すらあり得ます。GoToキャンペーンが悪いとはいいませんが、何らかの政策的な救済が必要です。
最後に、下のグラフは日本総研のリポートから 年末賞与の支給総額(前年比) を引用しています。

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2020年11月18日 (水)

緊急事態宣言前の3月の輸出入水準を取り戻した10月統計の貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から10月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列で見て、輸出額は前年同月比▲0.2%減の6兆5661億円、輸入額も▲13.3%減の5兆6932億円、差引き貿易収支は▲777億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

10月の輸出額、前年同月比0.2%減 減少率は縮小傾向
財務省が18日発表した10月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額は前年同月比0.2%減の6兆5661億円だった。パナマ向け船舶や台湾向けの鉄鋼が落ち込み、23カ月連続で減少した。これは1985年9月~87年7月に23カ月連続で減少して以来の長さ。減少率は5月(28.3%)以降徐々に縮小し、前年並みの水準に近づいている。財務省の担当者は「輸出動向は回復傾向にある」と話した。
輸入額は13.3%減の5兆6932億円となった。原油や液化天然ガス(LNG)などのエネルギー資源のほか、米国からの航空機が減少した。減少は18カ月連続で、これは2015年1月~16年12月に24カ月連続で減少して以来の長さ。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は8729億円の黒字だった。4カ月連続の黒字だった。
対中国の輸出額は10.2%増の1兆4578億円だった。半導体などの製造装置や自動車が伸びた。輸入額は3.7%減の1兆5355億円で、衣類などで減少が目立った。貿易収支は777億円の赤字だった。赤字は8カ月連続。
対米国の輸出額は2.5%増の1兆2993億円だった。自動車のほかギアボックスなどの自動車関連部品が増えた。輸入額は15.6%減の6008億円で、航空機や石炭などが減った。貿易収支は6986億円の黒字で、2カ月連続で黒字となった。
対欧州連合(EU)の貿易収支は396億円の赤字だった。赤字は16カ月連続。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスで貿易収支は+2500億円の黒字でしたので、やや市場予想よりも下振れたとはいえ、ほとんどサプライズはなかったと私は受け止めています。引用した記事にもある通り、我が国の貿易も新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響を受けましたが、かなりの程度に回復を見せています。すなわち、輸出入の金額ベース・数量ベースとも季節調整していない貿易指数の原系列で見て、今年2020年5月が前年同月比で最大のマイナスを記録していましたが、輸出額については本日公表の10月統計でほぼほぼゼロの▲0.2%まで回復してきています。もっとも、実は、今年2020年2月の輸入数量が中国の春節とCOVID-19のダブルパンチで最大の下げ幅を記録しているんですが、これを別にしたお話です。もちろん、COVID-19の影響は時とともに減衰していくわけではなく、日本でもすでに第3波の感染拡大局面に入っている可能性が指摘されていますし、欧州では英仏が全国レベルではないものの再度のロックダウンに入っています。米国でも政権交代とともに、何らかのロックダウンやそれに近い措置が取られる可能性もあります。ですから、貿易の先行きはCOVID-19次第でかなり不透明です。基本的に、COVID-19については供給サイドではサービス業などの対人接触の多い部門の供給制約あるものの、貿易財ではない可能性が高いわけですので、貿易に及ぼすCOVID-19の影響は通常のケインズ経済学的な需要ショックを想定すべきと私は考えています。

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そのような観点から、続いて、輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数(CLI)の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。なお、2枚めと3枚めのグラフについては、わけが判らなくなるような気がして、意図的に下限を突き抜けるスケールのままにとどめています。輸出額について、季節調整していない原系列の貿易指数で見て、繰り返しになりますが、前年同月比でほぼゼロまで回復を見せていて、先行き不透明ながら、輸出額・輸出数量とも10月統計で今年2020年3月の緊急事態宣言前の水準を取り戻しました。ただ、欧州や米国、さらに我が国におけるロックダウンを含めたCOVID-19の第3波の動向に大きく左右される可能性は残ります。

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今週月曜日の11月16日に、内閣府から公表された7~9月期のGDP統計1次QEでは、7~9月期には緊急事態宣言のあった「4~6月期に落ち込んだ▲43兆円のうちの半分強に当たる24兆円しか取り戻せていません」と書きましたが、逆に、貿易の方がここまで早期に回復した理由は世界貿易の落ち込みが小さかったからといえます。上のグラフはオランダの CPB Netherlands Bureau for Economic Policy AnalysisWorld Trade Monitor から世界の貿易数量のデータを取ってプロットしています。最新データは8月までしかありませんが、今年2020年前半におけるCOVID-19による貿易数量の落ち込みは2008年後半からのリーマン・ショック時と比べてもかなり小さいと見て取れます。その理由は今後の分析をもう少し待つ必要がありますが、中国におけるCOVID-19の早期終息と米国経済が本格的なロックダウンを実施しなかったこと、の2点が要因ではないか、と私は考えています。ただ、後者についてはホントにそれでいいのかどうかという議論はあり得ます。

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最後に、貿易に関連して、2020年11月15日に、極めて広域を対象とする自由貿易協定である地域的な包括的経済連携(RCEP)協定がインドを除く15か国で署名されています。協定の詳細については、外務省のサイト経済産業省のサイトに譲るとして、上のグラフは、日本国際問題研究所(JIIA)のサイトからRCEPによる経済効果(実質GDPの変化)のグラフを引用しています。米国パーデュー大学で開発・運営されているGlobal Trade Analysis Projectの汎用的なCGEモデルであるGTAPモデルと2014年を基準年とするデータベース10を使用しているそうです。見れば判ると思いますが、RCEPない場合をベースラインとし、インドを含むRCEP16およびインドを含まないRCEP15とのそれぞれの乖離を見ています。複数年に渡る効果とはいえ、我が国の場合20兆円を超えるGDP拡大効果があると見込まれています。

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2020年11月17日 (火)

米国バイデン政権は日本経済にどのような影響をもたらすか?

やや旧聞に属する話題ながら、先週木曜日11月12日に大和総研から「バイデン政権誕生が日本経済に与える影響」と題するリポートが明らかにされています。まず、リポート1ページめの要約を4点引用すると以下の通りです。

[要約]
  • 世界中で注目された 11月3日の米国大統領選挙では、民主党候補のバイデン氏の勝利が確定的となった。バイデン氏の掲げる政策は「大きな政府」を志向する伝統的な民主党の考えに沿ったものである。バイデン氏は法人および富裕層に対する増税を提案しているが、増税による税収増以上に大幅な財政支出を掲げ、総じて見れば景気刺激的な政策を目指している。
  • 議会でのねじれ継続が見込まれる中、民主・共和両党の意見が対立する政策の実現は難しい。共和党が強硬に反対するオバマケアの拡充などが実現する可能性は低く、財政政策の規模はバイデン氏の公約から大幅に縮小する公算が大きい。ねじれ議会シナリオでは、米国の GDP の押し上げ効果は2022年から2025年の平均で+0.5%程度と見込む。
  • 当社マクロモデルを用いた試算では、ねじれ議会下でのバイデン氏の政策が日本の実質GDPに与える影響は、2022年が+0.33%、2023年が+0.54%、2024年が+0.61%と見込まれる。
  • ただし、バイデン氏は"Buy American"による国内製造業の振興を政策として掲げ、公共投資などに伴う米国政府の調達においては、従来以上に米国内からの調達を重視する可能性がある。このため、輸出の増加を起点とした日本経済への影響も限定的となる可能性がある点には留意が必要である。

私のブログのような貧弱なメディアであれば、これだけで十分という気すらします。一応、1点だけ、リポートp.6から 図表4 米国の選挙結果が日本のGDPに与える影響試算 を引用すると以下の通りです。

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上のグラフの中で、「トリプルブルー」とは「バイデン氏の掲げる公約が全て実現」するというシナリオで、もうひとつの「バイデン+ねじれ議会」とは「ねじれ議会下において一部の政策(ヘルスケア、税制改革)が実現されない」と想定したシナリオとなっています。ただ、リポートでは財政政策以外にも言及があり、環境規制や金融規制が厳格化された場合には米国経済だけでなく、日本経済にもネガティブな影響が及ぶ可能性があり、また、引用した[要約]の4点目にあるように、米国政府の調達次第では、日本からの輸出を通じた影響が限定的となる可能性も指摘されています。また、詳細なテーブルの引用はしませんが、日本経済への影響については、輸出とそれに誘発される設備投資の影響が大きくなるとの試算結果で、逆から見て、家計の消費や住宅投資への影響は小さいことが示唆されています。

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