2026年7月14日 (火)

政府開発援助が減り続ける予想の ODA projections for 2026 and the near-term

とても旧聞に属するトピックながら、6月19日に国際開発協力機構(OECD)から "ODA projections for 2026 and the near-term" と題する Policy Brief が公表されています。もちろん、pdf形式のリポートもアップロードされています。まず、OECDのサイトからKey messagesのポイントを6点引用すると次の世折です。

Key messages
  • Net official development assistance is projected to fall again by 6.9% in 2026.
  • Aid cuts are broad-based but uneven.
  • The poorest countries are hit hardest.
  • Health bears the deepest sectoral cuts, dropping below pre-pandemic levels.
  • Multilateral ODA has broken from a long-standing upward trend.
  • In light of these projected trends, development co-operation providers must:
    • Target scarce ODA grants to the poorest countries.
    • Plan exits from partner countries responsibly and co-ordinate them.
    • Make remaining resources, and wider policies, work harder for development

まず、2026年のネットで見て政府開発援助(ODA)は▲6.9%減少すると予測されていおり、3年連続の減少となります。ODA総額は2014年以来の低水準に落ち込む見通しとなっています。OECDのサイトから Figure 1. ODA projected to drop again in 2026 を引用すると次の通りです。

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このODAの減少は、OECDでは "Most reductions come from a small number of the largest providers. Some EU countries are more stable, but not enough to offset global declines." と指摘していて、名指しこそしていませんが、国際開発庁(USAID)を廃止した米国のODAの減少に起因することを示唆しています。こういったODAの削減で、もっとも大きな影響を受けるのは、Key messagesの3番目に上げられているように、"The poorest countries are hit hardest." ということになります。サブサハラ諸国が念頭に置かれていると私は受け止めています。

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続いて、OECDのサイトから Figure 6. Health, humanitarian aid, and governance face the steepest declines を引用すると上の通りです。グラフタイトルによれば、ODAの減少は国別には最貧国への影響が大きく、部門別には "Health, humanitarian aid, and governance" ということになります。

何度か言及しましたが、ノーベル経済学賞を受賞したクズネッツ教授は、世界に4種類の国があると発言しています。すなわち、"There are four kinds of nations: developed countries, underdeveloped countries, Japan, and Argentina." というわけです。先進国は発展途上国をODAほかにより支援する義務がある、と私は考えています。

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2026年7月13日 (月)

帝国データバンク「カレーライス物価指数」2026年6月

先週金曜日の7月10日、帝国データバンクから2026年6月の「カレーライス物価指数」が明らかにされています。まず、帝国データバンクのサイトからSUMMARYを引用すると次の通りです。

SUMMARY
カレーライスを家庭で調理する際に必要な原材料や水道光熱費などの価格(全国平均)を基に算出し、食卓に与える物価高の影響を可視化した「カレーライス物価(平均、2026年基準改定)」は、2026年5月平均で1食あたり361円となった。前年(2025年5月:349円)からは+12円・3.4%の上昇となった。前年からの値上げ幅が10円台での推移となるのは、「令和のコメ騒動」が本格化する前の2024年6月以来、約2年ぶりとなる。

つづいて、帝国データバンクのサイトから
「カレーライス物価」推移 のグラフを引用する次の通りです。

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繰返しになりますが、帝国データバンクによると、カレーライスを家庭で調理する際に必要な原材料や水道光熱費などの価格を算出すると、2026年5月平均で1食あたり361円となっています。前年2025年5月の349円からは+12円、3.4%の上昇です。前年からの値上げ幅が10円台まで縮小したのは、「令和のコメ騒動」が本格化する前の2024年6月以来、約2年ぶりと指摘しています。
帝国データバンクによる分析では、この価格動向については、2025年に発生したコメの急激な価格高騰が収束し、前年を大幅に下回る水準が続いていることが、カレーライス物価をはじめ食卓の大きなコスト低下要因と指摘しています。米穀安定供給確保支援機構が7月6日発表した6月調査分の「米取引関係者の判断に関する調査結果」の価格見通し判断DIでは、在庫の積み上がりによる余剰感が見られることから、帝国データバンクでは、先安観が一段と強まったと分析しています。同時に、カレーライスの主要具材となるタマネギや、輸入牛肉・鶏肉などは依然として高値安定が続くものの、大部分を占めるコメ価格の下落が著しく、カレーライス物価は急激に低下しており、今後も、暑さによる生育遅れなどから豚肉などの価格上昇が見込まれ、夏場にかけて肉・野菜類ともに大幅な値上がり局面に直面する可能性はあるものの、コメ安が各種具材のコスト増を打ち消す形で、これまでの上昇予想から一転してカレーライス価格は当面下落が続く、と帝国データバンクでは見ています。

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2026年7月12日 (日)

大学生はどれくらい生成AIを利用しているのか?

ものすごく旧聞に属するトピックながら、5月に東京工科大学から「新入生のコミュニケーションツール利用調査」の結果が明らかにされています。基本は、SNSなどの利用なのですが、生成AIについても回答が寄せられており、90%を超える大学新入生が普段から生成AIを利用していると回答しています。東京工科大学のサイトから 普段利用している生成AI のグラフを引用すると次の通りです。

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ChatGPTが80%を超え、GoogleのGeminiも40%近くとなっていて、X(旧Twitter)に搭載されているGrokなどが続いてます。工科大学の新入生ですから、私が教えているような経済学部生との比較は難しいながら、大学生の多くは生成AIを普段から利用していることは確かなようです。
私が大学で教えている授業の評価にはリポートの提出を求めることが多いのですが、私自身の方針としてAIの利用は自由にしています。私の直感ながら、おそらく、立命館大学の学生が書いたリポートよりも、生成AIに書かせたリポートの方が出来が良さそうな気がします。ですから、私の授業を取っている学生諸君には、AIの使用は自由としつつ、AIを使えばリポートの評価が高くなる可能性が高い一方で、後々、AIに頼ってしまうと思考能力や認知能力の伸びが限定され、AIを使えないケースで望ましくない結果をもたらす可能性が高い、したがって、受講生自身の自己責任でAIを使うかどうかを考えるべし、と言い渡してあります。まあ、リポート作成にはほぼほぼすべての学生がAIを使うんでしょうね。それはそうだと思います。

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2026年7月10日 (金)

高い上昇率が続く6月の企業物価指数(PPI)

本日、日銀から6月の企業物価 (PPI) が公表されています。統計のヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で+6.3%の上昇となり、先月4月統計の+5.3%から上昇率がさらに加速しています。2023年3月以来の高い伸びとなりました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

国内企業物価、6月は前年比7.1%上昇 非鉄や石油・石炭製品など寄与=日銀
日銀が10日に発表した6月の企業物価指数(CGPI)速報によると、国内企業物価指数は前年比7.1%上昇した。金属市況の上昇や中東情勢の不安定化の影響を受けて幅広い品目が上昇し、2023年3月(7.4%上昇)以来の高い伸びとなった。前月比は0.4%上昇と、伸び率は5月の1.1%から縮小した。
前年比で最も押し上げに寄与したのは「非鉄金属」で、前年比39.2%上昇した。銅やアルミニウムなどの市況上昇を反映した。
「石油・石炭製品」は同22.8%上昇、「化学製品」は同14.4%上昇。中東情勢の影響で、原油やナフサ、石油化学基礎製品が値上がりした。
全515品目中、前年比で上昇したのは418品目、下落は81品目だった。
日銀の担当者は、原料価格の上昇を価格転嫁する動きから、引き続き幅広い財が値上がりしていると指摘した。中東情勢関連では「化学製品」のほか、「プラスチック製品」、「その他工業製品」、「木材・木製品」、「パルプ・紙・同製品」など関連物品が上昇しているという。
輸入物価指数(円ベース)は前年比29.7%上昇と、5月(26.1%上昇)からプラス幅が拡大した。22年10月(42.3%上昇)以来の高い伸びとなった。為替円安の影響を受けているとみられている。

インフレ動向が注目される中で、長くなってしまいましたが、いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価指数(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、まん中のパネルは国内物価指数そのものを、下のパネルは契約通貨建てと円建ての原油価格指数を、それぞれプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。なお、ちょっと見づらいかもしれませんが、まん中と下のパネルの指数水準が急にスティープになったのは今年2026年3月からです。

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まず、企業物価のうちヘッドラインとなる国内物価上昇率は、引用した記事にはありませんが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+6.8%でした。実績の上昇率はかなり上振れしているのですが、前年同月比で見て、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスの予想レンジ上限は+7.2%でしたから、レンジ内ともいえます。ヘッドラインとなる国内物価だけでなく、輸出物価は+20.7%、輸入物価も+29.7%の2ケタ上昇を示しています。本日公表された企業物価指数の輸入物価のうちの円建ての原油価格は、それぞれ、4月37.5%、5月58.6%、6月79.9%の上昇率を示しています。立て続けに上昇率が加速しているわけです。私はエネルギー動向に詳しくないので、日本総研「原油市場展望」(2026年6月)を参考として見ておくと、WTI原油先物価格の先行き見通しについては、「イランを巡る紛争が夏頃までに終結することを前提とするメインシナリオでは、原油価格は7月まで100ドル前後で高止まりした後、緩やかに下落する見通し。」としつつも、当然、夏ごろに終わる可能性が決して大きいわけではないことから、「ただし、紛争が長引くサブシナリオでは、価格が年末まで100ドル前後で推移するほか、米国とイランが本格的に戦闘を再開する最悪シナリオでは、150ドルまで急騰する恐れ」と指摘しています。さらに、銅やアルミニウムなどの市況上昇を反映して、非鉄金属の価格も大きく上昇しています。引用した記事の最後のパラで言及されているように、円安に振れている為替については、輸入物価への影響は決して無視できず、おそらく、企業物価の国内物価に対してもそれ相応のパススルーを持っていることと考えるべきです。ただ、消費者物価へのパススルーはそれほど大きくない、というのがエコノミストの緩やかなコンセンサスではないかと私は受け止めています。
本日公表された6月統計の企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比上昇率と下落率を少し詳しく見ると、まず、注目の石油・石炭製品は5月+13.7%でしたが、6月統計では+22.8%の上昇となっています。これに伴って、化学製品も5月の+14.3%、6月も+14.4%と高止まりしています。電力・都市ガス・水道は政府の電気・ガス料金負担軽減支援事業が終了し、再開される7月までの端境期になることから4月+0.1%から5月は+3.4%に上昇しています。加えて、農林水産物が5月+9.9%、6月も+7.0%と高止まりを示しています。農林水産物の価格上昇に伴って、飲食料品の上昇率も5月+4.3%、6月+4.0%となっています。最後に、非鉄金属は5月+42.1%、6月+39.2%と、きわめて高い上昇率が続いています。

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2026年7月 9日 (木)

国際通貨基金(IMF)「世界経済見通し改定」World Economic Outlook Update

日本時間の昨夜7月8日、国際通貨基金(IMF)が「世界経済見通し改定」World Economic Outlook Update を公表しています。すでに、IMFの「世界経済見通し」は4月半ばに公表されたばかりで3か月も経っていないのですが、改定を必要とした主因は "The modest slowdown reflects the effects of the war in the Middle East being partly offset by accelerated demand-driven momentum in the global technology cycle thanks to advances in artificial intelligence (AI) and its adoption." と説明しています。ですので、副題は Global Economy in Crosscurrents of War and Technology としています。"Crosscurrents" なんて、経済のリポートで私は初めて見ました。まず、IMFのサイトからヘッドラインとなるGDP成長率見通しのテーブルを引用すると次の通りです。

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みての通りで、世界の成長率見通しは今年2026年が4月の時点から▲0.1%ポイント下方修正され、+3.0%と見込まれています。逆に、来年2027年は+0.2%ポイントの上方修正で+3.4%としています。日本の成長率見通しも、おおむね世界経済と同様に修正され、今年2026年+0.6%と▲0.1%の下方修正、来年2027年+0.7%と+0.1%ポイントの上方修正となっています。繰返しになりますが、今年2026年の成長率見通しが下方修正されたのは、中東戦争が4月時点の想定からやや長引いたことが主因である一方で、AIをはじめとするテクノロジー面からの上振れも織り込んでいます

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まず、上のグラフはリポートから Figure 3. Commodity Price Assumptions Are Revised Up を引用しています。原油をはじめとする商品価格の想定が変化してきたことが理解できます。4月時点での上昇率から、今回さらにエネルギーをはじめとして商品価格が上振れすると考えているようです。"Energy prices are roughly 25 percent higher than prewar levels."

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続いて、上のグラフはリポートから Figure 2. Inflation Expectations Rise, but Mostly in the Short Term を引用しています。グラフの番号が逆順になりますが、原油などの商品価格の上昇が上振れしますので、先進国(AEs)と新興国・途上国(EMDEs)ともに2027-27年のヘッドラインインフレが上振れることになります。

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続いて、上のグラフはリポートから Figure 4. Growth Revisions Vary by Exposures to the War and Technology Cycle を引用しています。中東の武力紛争が想定よりもやや長引いて、商品価格やインフレが上振れるため、成長率が下振れる一方で、逆に、AIなどのテクノロジーも進歩が想定よりも大きく、産出への上振れ効果があると結論しています。したがって、地域別で戦争とテクノロジーへのエクスポージャーが当然に異なりますから、その影響も違いが生じます。戦争の影響をより強く受ける地域は下振れ、テクノロジーの恩恵をより強く受ける国は上振れ、ということです。上のグラフの左端の中東北アフリカ(MENA)は戦争の負の影響を強く受け、右端のAI機器輸出トップ4国、すなわち、韓国、マレーシア、台湾、タイは成長率が上振れます。日本は、たぶん、エネルギー輸入先進国のカテゴリーで、左から2番目に入るんだろうと思います。

それほど大きな改定幅ではありませんでした。IMF自身も "broadly unchanged" と指摘しています。なお、IMFでは堂々と "war in the Middle East" と表記していますが、政権への忖度の強い我が国メディアでは、いまでも「中東紛争」とか、「中東の混乱」というタイトルが目立っています。私はエコノミストながら、民主主義の危機を感じます。

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2026年7月 8日 (水)

基調判断が上方修正された6月の景気ウォッチャーと大きな黒字を記録した5月の経常収支

本日、内閣府から6月の景気ウォッチャーが、また、財務省から5月の経常収支が、それぞれ公表されています。統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+0.4ポイント上昇の44.0となった一方で、先行き判断DIは+5.0ポイント上昇の45.7を記録しています。経常収支は、季節調整していない原系列の統計で過去最大の+3兆9683億円の黒字を計上しています。まず、それぞれの統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから引用すると以下の通りです。

街角景気6月は0.4ポイント上昇、2カ月連続プラス 景気の見方を上方修正
内閣府が8日に発表した6月の景気ウオッチャー調査で現状判断DIは44.0となり、前月から0.4ポイント上昇した。2カ月連続のプラス。ウオッチャーの景気の見方は「中東情勢によるマインド面の下押しを中心に影響が残るものの、持ち直しの兆しがみられる」に上方修正した。
指数を構成する3部門では、家計動向関連が前月から0.3ポイント低下し43.5。一方、企業動向関連は1.9ポイント上昇し45.6、雇用関連は2.4ポイント上昇し43.9となった。
2-3カ月先の景気の先行きに対する判断DIは、前月から5.0ポイント上昇の45.7。3カ月連続のプラス。内閣府は先行きについて「中東情勢による不透明感緩和への期待がみられる」とした。
調査期間は6月25日から30日で、米国とイランが戦闘終結に向けた覚書に署名した後に行われた。
経常黒字、5月は3兆9683億円の黒字 16カ月連続
財務省が8日発表した国際収支状況速報によると、5月の経常収支は3兆9683億円の黒字となった。黒字は16カ月連続。黒字額は前年同月比19.5%増えたが、ロイターがまとめた民間調査機関の予測中央値4兆1213億円は下回った。
内訳をみると、海外投資の収益や配当金などの第1次所得収支は4兆2756億円の黒字で、黒字額が2.3%増えた。貿易収支は5040億円改善し、69億円の黒字に転換した。北米向けの自動車やアジア向けの半導体など電子部品がけん引する形で輸出が14.7%増えて、輸入額を上回った。
一方、サービス収支は1411億円悪化し、103億円の赤字に転落。訪日外国人旅行者(インバウンド)の減少などを背景に旅行収支の黒字幅が縮小した。
貿易・サービス収支は3628億円改善したものの、34億円の赤字にとどまった。
エコノミストは経常黒字は増加基調を続け、今年も過去最大の黒字を更新するのでは、と予想する向きが多い。もっとも、そうして稼いだ経常黒字は日本国内の投資や輸出拡大にはつながらないとみている。
「経常黒字のほとんどは米国をはじめとした海外への再投資に使われる。企業としては、稼いだドルを日本ではなく米国などインセンティブのある国で雇用や設備投資に使うことが最も合理的だ」と、みずほ証券チーフエコノミストの小林俊介氏は述べる。

いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。ただ、景気ウォッチャーの記事は内閣府からの公表直後のファーストショットですので、その後、追加や修正が入っているかもしれません。続いて、景気ウォッチャーのグラフは上の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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景気ウォッチャーの現状判断DIは、最近では、米国とイスラエルのイラン攻撃に端を発する中東の武力紛争により大幅なマインド低下により、3月統計では前月から▲6.7ポイントと大きく低下して42.2となった後、4月統計でも▲1.4ポイント低下して40.8となった後、5月の休日が例年よりも多かったこともあって家計動向関連のうちの飲食関連が大きく上昇したことから、5月統計では+2.8ポイント上昇して43.6を記録し、本日公表の6月統計でもさらに+0.4ポイント上昇して、44.0を記録しています。加えて、本日公表の6月統計の先行き判断DIは前月から+5.0ポイントと大きく上昇しています。しかも、家計動向関連・企業動向関連・雇用関連の3カテゴリーがほぼそろって大きく上昇し、さらにさらにで、家計動向関連の中でもほぼすべての項目、また、企業動向関連でも製造業・非製造業とも大きな上昇を見せています。米国とイランの停戦合意が6月半ばでしたから、この中東における武力紛争の影響が和らいだ、ということなのだろうと私は考えています。というのも、引用した記事の最後のパラにもあるように、調査期間が6月25日から30日であり、6月17日の停戦合意文書署名の直後であったからです。でも、別に何かあるのかもしれません。なお、これも引用した記事にあるように、統計作成官庁である内閣府は基調判断を上方修正しています。すなわち、中東情勢によるただし書きを別にすれば、現状判断に関しては、5月統計の時点では、「このところ持ち直しの動きに弱さがみられる。」でしたが、6月統計では「持ち直しの兆しがみられる。」と改定しています。先行きについても、5月統計では「中東情勢による不透明感がみられる。」でしたが、本日公表の6月統計では「中東情勢による不透明感緩和への期待がみられる。」としています。まあ、何と申しましょうかで、日本の国内のマインドは中東の武力紛争次第、ということなのだろうというのはよく理解できます。景気判断理由の概要については、内閣府の調査結果の中から、こういったマインドをよく表しているものを選ぶと、近畿地方の企業動向関連で、「中東情勢も少し落ち着き、資材が予定どおり入荷するようになったため、製造も予定どおりに進みつつある(食料品製造業)。」といった見方がありました。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。引用した記事の通り、ロイターによる市場の事前コンセンサスは+4兆円余りの黒字ということでしたし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、同じように+4兆円超の黒字の見込みでしたので、実績の+4兆円を少し下回った黒字はやや下振れした印象です。季節調整済み系列の統計でも、+3兆円余りの黒字を計上しています。昨年来のトランプ関税によって貿易収支や貿易・サービス収支がかく乱されていたのが、元に戻りつつある、というのは通関統計でも確認されているところです。加えて、6月以降の今後の統計を見なければ正確なところは判りませんが、石油価格の動向については米国とイランの停戦合意で価格が落ち着くと見込まれますので、輸入が急増する事態はなさそうです。いずれにせよ、対外不均衡の問題が経常収支にせよ、貿易・サービス収支にせよ、たとえ赤字であっても何ら悲観する必要はありません。エネルギーや資源に乏しい日本では消費や生産のために必要な輸入をためらうことなく、経常収支や貿易収支が赤字であっても何の問題もない、逆に、経常黒字が大きくても、日本の国際競争力が高いわけでもなく、ましてや特段めでたいわけでもない、と私は考えています。

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2026年7月 7日 (火)

景気拡大を示す景気動向指数と底堅い家計調査と賃金上昇がインフレを上回る毎月勤労統計

本日、内閣府から景気動向指数が、また、総務省統計局から家計調査が、さらに、厚生労働省から毎月勤労統計が、それぞれ公表されています。いずれも5月の統計です。景気動向指数のヘッドラインとなるCI先行指数は前月から+0.7ポイント上昇の116.8、CI一致指数も3か月連続の上昇で+0.4ポイント上昇の118.5を記録しています。家計調査の方は、2人以上世帯の消費支出の前年同月比は、実質▲0.4%の減少、名目は+1.3%の増加となりました。毎月勤労統計のうち、賃金指数について季節調整していない原系列で見て、名目の現金給与総額は311,165円と前年同月比+3.2%増となり、消費者物価上昇率を上回ったため実質賃金は前年同月比で+1.4%増と、5か月連続のプラスを記録しています。まず、各統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから引用すると以下の通りです。

景気動向一致指数5月は0.4ポイント上昇、食品値上げなど寄与 判断据え置き
内閣府が7日公表した5月の景気動向指数(速報、2020年=100)によると、足元の景気を示す一致指数は前月比0.4ポイント上昇の118.5と3カ月連続のプラスだった。自動車出荷や食品値上げなどが押し上げた。基調判断は「改善を示している」で据え置いた。4月の基調判断は速報段階の「上方への局面変化」を改定値で「改善」に引き上げていた。
<ナフサ上昇、先行指数押し上げ>
一致指数を主に押し上げたのは、耐久消費財出荷指数や小売販売額、鉱工業用生産財出荷指数など。自動車の国内外出荷が伸びたほか、飲食料品の値上げやエアコン販売などが寄与した。自動車部品の出荷も伸びた。
先行指数は前月比0.7ポイント上昇の116.8と12カ月連続のプラスだった。押し上げに寄与したのは消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数など。ナフサなど化学製品の価格上昇や日経平均株価の最高値更新などが押し上げた。
5月実質消費支出は前年比0.4%減、6カ月連続マイナス=総務省
総務省が発表した5月の家計調査によると、2人以上の世帯の実質消費支出は前年比0.4%減となり、6カ月連続のマイナスとなった。電気・ガス代が減少したほか、自動車購入や通信費が伸び悩んだ。
ロイターの事前予測調査では同2.5%減が予想されていた。実質消費支出はそこまでの落ち込みはなく、総務省では消費は底堅い動きとみている。対前月の季節調整値は3.7%増となり、消費支出は101.7と100を超えている。
「足元としては消費支出は一定の増加の動きがみられる。ただ一部弱い動きもみられる」と総務省の担当者は述べた。
4月までは、消費支出のキーワードは、メリハリだった。5月は昨年よりも休日が2日多く、消費活動にはプラスだった。外食・調理食品など食料が4カ月ぶりに増加、エアコン等家庭用耐久財や家具・家事用品も7カ月連続で増加した。そのほか、被服・履物、教育がそれぞれ3カ月、2カ月ぶりに増加した。
また、為替市場で円安が進行する中で国内・国外のパック旅行は鈍化した。
5月実質賃金は前年比1.4%増、5カ月連続プラス=毎勤統計
厚生労働省が7日公表した5月の毎月勤労統計によると、名目賃金から物価変動の影響を除いた実質賃金は前年比1.4%増と、5カ月連続でプラスとなった。ただ、伸び率は前月の2.0%(改訂値)から鈍化した。ガソリンやプロパンガスなどの値上げで物価の伸びがやや加速したことが影響した。
名目賃金に当たる現金給与総額は1人当たり平均で31万1165円と、3.2%増えた。53カ月連続のプラス。前月の3.6%増から鈍化したが、34年2カ月ぶりに4カ月連続で3%以上の伸びを維持した。
このうち、基本給と残業代などを合わせた「決まって支給する給与」は3.0%増えた。基本給に当たる「所定内給与」も3.0%増だった。33年7カ月ぶりに5カ月連続で3%以上の伸びを記録した。
賞与などの特別に支払われた給与は5.2%増と前月の10.3%から伸びが鈍化した。
消費者物価(持ち家の帰属家賃を除く総合)の上昇率は前年比1.7%と前月の1.5%からやや加速したが、1%台にとどまった。
厚労相の担当者は給与の伸びは「力強いといえる」と指摘。消費者物価が落ち着いていることも実質所得にとってプラス要因とした。

いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。ただし、統計公表直後の記事を引用していますので、その後、追加記事や差替え記事が出ている可能性があります。続いて、景気動向指数のグラフは次の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、CI一致指数が前月から+0.4ポイントの上昇、先行指数も同じく+0.7ポイントの上昇と予想されていました。実績の一致指数+0.4ポイント、先行指数+0.7ポイントのそれぞれ上昇はコンセンサスにジャストミートしました。繰返しになりますが、5月統計のCI一致指数は、3か月連続の上昇となります。さらに、内閣府のプレスリリースによれば、CI一致指数は、3か月後方移動平均は前月から+0.67ポイントの上昇、3か月連続の上昇となり、加えて、7か月後方移動平均は前月から+0.40ポイント上昇し、これは5か月連続の上昇です。統計作成官庁である内閣府による基調判断は、先月4月統計の速報段階では「上方への局面変化」に据え置かれていましたが、4月統計の確報段階で「改善を示している」に上方修正されていて、本日公表の5月統計の速報段階でも「改善」で据え置かれています。先行きに関しては、私はいろいろと紆余曲折を経つつも、米国経済がソフトランディングに成功するとすれば、そう簡単には日本経済が景気後退局面に入ることはない、と考えています。ただし、そもそも、米国経済でも日本経済でもまだまだインフレが高止まりしており、特に、日本ではすでに景気回復・拡大局面の後半に入っている点は忘れるべきではありません。ただ、米国とイスラエルによるイラン攻撃から始まった中東の武力紛争は、一応の停戦合意を見ましたので、日米ともソフトランディングの確率が高まったと考えるべきです。石油価格は指標となるWTI先物がバレル当たり70ドル前後で推移しています。東証の日経平均株価は高値圏で推移していますが、長期金利が2.8%超となっている中で、多くのエコノミストが円高を展望して待ち望んでいる金融引締めは景気を下押しすることが明らかです。日米同時リセッションの可能性がまったく否定されるわけではありません。
一応、本日公表の統計のうち、CI一致指数の前月差+0.4ポイント上昇への寄与度を見ておくと、引用した記事にもあるように、 耐久消費財出荷指数が+0.43ポイントがもっとも大きな寄与を示したほか、、商業販売額(小売業)(前年同月比)が+0.34ポイント、 鉱工業用生産財出荷指数が+0.19ポイントのそれぞれプラスの寄与度となっています。CI先行指数については、消費者態度指数や新設住宅着工床面積、日経商品指数(42種総合)まどのプラス寄与が大きくなっています。

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続いて、家計調査のグラフは上の通りです。上のパネルは、名目及び実質の消費支出の前年同月比の推移であり、下は季節調整済みの名目指数及び実質指数です。いずれも影をつけた期間は景気後退期です。引用した記事の2パラ目にある通り、ロイターによる市場の事前コンセンサスは前年同月比で▲2.5%減でしたし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、同じく、実質消費支出の前年同月比が▲2.4%減と予想されていました。実績の▲0.4%はかなり上振れしており、消費は底堅い印象です。家計調査はもともとが振れの大きな統計ですが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスのレンジ上限が▲0.9%減でしたので、ややサプライズであったと私は受け止めています。ただし、上振れながらマイナスということは変わりありません。引用した記事の4パラ目にあるように、今年2026年の5月は昨年よりも休日が2日多かったのも上振れのひとつの要因です。品目別に見て、外食、調理食品などの食料については前年同月比で実質+2.4%増、寄与度も+0.71%となっており、少なくとも外食については休日が多かったことが寄与していると考えるべきです。エアコンをはじめとする家庭用耐久財や家事用消耗品などの家具・家事用品も実質で+23.0%増加し、+0.96%の寄与度となっています。ただ、私立大学の授業料等をはじめとする教育が実質+21.7%増、寄与度+0.80%に上っています。授業料が値上げされた結果であり、支出が増加して消費が増えたという好ましい結果であるよりは、家計への負担が高まったわけであり、望ましい支出増かどうかは疑わしいところです。最後に、勤労者世帯の実収入は4月+2.3%増に続いて、5月も+0.7%とプラスが続いています。

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毎月勤労統計を見ると、まず、賃金については、5か月連続で前年同月比で実質賃金がプラス、5月統計では+1.4%増というのは、そもそも、現金給与総額が前年同月比で+3.2%増となった上に、帰属家賃を除く消費者物価上昇率が+1.7%にとどまったことに起因します。4月統計の確報では、現金給与総額が+3.6%増、実質賃金が+1.5%増でした。さらに、よりくわしく、賞与と3か月を超える通勤手当といった変動の大きな部分を除いた「きまって支給する給与」と「所定内給与」を見ると、名目の現金給与指数で見て、「きまって支給する給与」が4月+3.4%増から、5月も+3.0%増であり、4か月連続で+3%以上の伸びを示しています。「所定内給与」も4月の3.3%増から5月も+3.0%増と、こちらは5か月連続で+3%以上の伸びとなっています。加えて、賞与と3か月を超える通勤手当の合計である「特別に支払われた給与」も5月は+5.2%増と増加しています。最近時点での消費者物価指数(CPI)の前年同月比で見たインフレ率が+2%を下回っていますので、賃金上昇がようやくインフレを上回る状態になった、あるいは、逆から見て、政策的に賃金上昇率を下回るインフレに抑制されているということが出来ます。要するに、業績見合いのボーナスなど「特別に支払われた給与」もさることながら、経済学でいう恒常所得に近い概念の「きまって支給する給与」や「所定内給与」がようやくプラスになった、ということが出来ますので、この恒常所得の伸びは消費の増加につながることが期待されます。

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2026年7月 6日 (月)

40年ぶりの円安の日本経済への影響やいかに?

ドル円レートが約40年ぶりに162円台の円安水準となったことは、広く報じられている通りです。この為替レートに関して、先週金曜日の7月3日、大和総研から「約40年ぶりの円安ドル高、日本経済への影響は?」と題するリポートが明らかにされています。まず、長くなりますが、リポートから[要約]を2点引用すると次の通りです。

[要約]
  • ドル円レートは2026年6月末に一時162円台と約40年ぶりの安値を付けた。当社のマクロモデルで推計すると、通常の経済状態における円安ドル高は日本経済にネットでプラスの影響をもたらすが、円安の恩恵が広く行き渡るわけではない。多くの企業や家計にとっては、輸入物価の上昇による負担増の影響の方が目立つだろう。加えて、足元では企業の価格転嫁の進展や、中東情勢の悪化等による輸出の下押し、日中関係の悪化による中国人訪日客数の減少などが円安のプラス効果を相殺したとみられる。こうした影響を考慮すると、10%の円安ドル高による直近1年間の実質GDPへの影響は▲0.14%程度だったと試算される。
  • ドル円レートの動きは日米の実質金利差で説明されることが多いが、2025年秋以降は両者の関係が薄れ、実質金利差が縮小傾向にある中で円安ドル高が進んでいる。米国の実質金利とドル円レートとの関係は直近でも安定しており、日本の金利上昇による円高圧力は限定的だったようだ。日銀の金融政策が正常化の途上にあり、利上げを継続しているものの金利水準が物価上昇率などに比して低く、経済実態を踏まえた金利水準(中立金利)を下回っていることなどが背景にあるとみられる。こうした見方が実態を捉えているのであれば、高水準のインフレ率によって米金利の先高観が強いうちは円安ドル高が進みやすい。一方、日銀が利上げを続けても、当面は円高基調に反転しにくい可能性がある。

続いて、リポートから 直近1年間の円安ドル高(10%(約15円/ドル)を想定)による日本経済への影響 を引用すると次の通りです。

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上のグラフの左のパネルから明らかなように、円安の恩恵は偏りが大きいと考えるべきです。すなわち、大雑把にいって、円安のメリットが企業セクターに偏る一方で、デメリットが家計部門に重い点は忘れるべきではありません。最近では、円安などのコストアップ要因を価格に転嫁しやすい経済が実現している一方で、最終的な価格転嫁の無視できない部分を負担するのは家計である点は忘れるべきではありません。もっと判りやすくいえば、企業はコストアップを価格転嫁しやすくなった一方で、家計は価格転嫁された価格を受け入れざるを得ない状況に追い込まれているのが事実です。私自身は、いわゆる為替のパススルーは大きくないとする Sasaki, Yuri et al. (2022) "Exchange Rate Pass-Through to Japanese Prices: Import Prices, Producer Prices, and the Core CPI" をエコノミストとして十分理解しているつもりですが、他方で、内閣府によるマンスリー・トピック「円安による国内食料品物価への影響」では、我が国では食料自給率の低さに加え、食料品製造業における輸入原料への依存度が高いことから、食品小売価格が輸入価格の変動の影響を受けやすく、10%の円安によって食料品CPIが1.5%程度押し上げられるとの試算結果を示し、「2023年末前後の食料インフレの大部分が円安に起因するものだった」と結論していることも事実です。

為替や賃金については、その昔からの言いまわしにある通り、「市場で決まる」と考えるべきかもしれませんが、少なくとも、ドル円レートで160円を超える現在の円安は、物価を通じたルートから、日本経済、特に、家計部門には好ましくないと考えられます。

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2026年7月 5日 (日)

最低賃金が需給1500円に引き上げられると職業地図はどうなるか?

先週7月1日、ニッセイ基礎研究所から「最低賃金1500円で変わる職業地図」と題するリポートが明らかにされています。最低賃金政策については、さまざまな見方があり得るとは思いますが、私自身は格差是正や貧困対策として有効な面があると考えています。このリポートでは、分析対象145職業のうち63職業(43.4%)が1,500円未満となり、生産工程従事者やサービス職業従事者に低賃金職業が集中していた、と指摘しています。まず、リポートから 1時間当たり所定内給与が低い職業ランキング を引用すと次の通りです。

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見れば明らかですが、一番右の欄に女性割合が付記されています。3番目の「ダム・トンネル掘削従事者、採掘従事者」などの一部の例外を除いて、女性比率の高い職業が並んでいます。総務省統計局の労働力調査によれば、2025年の雇用者数6185万人のうち、男性3306万人、女性2879万人となっていますので、女性比率は46.5%となります。リポートでは、ワースト5位のうち4つの職業で女性割合が8割以上であり、他にも「保育士」、「介護職員」、「看護助手」、「販売店員」、「飲食物調理従事者」など、女性割合が高い職業が数多く含まれている、と指摘しています。要するに、女性が現在でも低賃金職業に多く従事しているわけです。
したがって、リポートでは、最低賃金引上げは女性の所得を底上げする効果が期待される一方で、仮に最低賃金が1,500円へ引き上げられたとしても、女性が低賃金職業に偏っているという就業構造そのものが変わるわけではなく、男女間賃金格差の縮小を図るためには、最低賃金の引上げと併せて、女性がより高い付加価値を生み出す職業や専門職へ就業しやすい環境を整備していくことも重要、と指摘しています。はい、まったくその通りです。

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2026年7月 3日 (金)

インテージによる「2026年上半期、売れたものランキング」

先週木曜日の6月5日、ネット調査大手のインテージから「2026年上半期、売れたものランキング」が明らかにされています。私は、統計局に出向していた折には消費統計の担当課長をしていましたので、こういった調査結果は気にかかるところです。まず、インテージのサイトから[ポイント]を4点引用すると次の通りです。

[ポイント]
  • 1位・麦芽飲料は前年品薄の反動が大。2位・玩具メーカー菓子はVTuber関連の商品も貢献
  • 3位・ほほべに、5位・しわ取り剤、7位・住居用クリーナーは新たなヒット商品がけん引
  • ホルムズ危機もあり、8位・家庭用手袋、11位・食品包装用品など上位。3月以降の売り上げ急増
  • 販売苦戦ランキングは医薬品が15位までに6つ。昨年売れたもの1位の米は販売苦戦10位

続いて、インテージのサイトから 2026年上半期の金額前年比・上位ランキング のテーブルを引用すると次の通りです。

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見ての通りなのですが、上半期の1位は麦芽飲料の前年比+155%となっています。コーヒ党である私はよく存じ上げませんでしたが、人気が高かった前年の品薄の反動や、実質的な値上げなどが要因だそうです。2位の玩具メーカー菓子も+142%であり、コロナ禍以降の漫画・アニメのIPコンテンツの強さに加え、VTuber関連の商品も強さを見せており、大きくかつ幅広く増加しています。3位のほほべには+131%で、目元付近まで効果が及ぶ新機軸の商品がけん引しているようですが、私はそれほど情報を持っていません。手軽で新機能を備えた商品がけん引したカテゴリーが上位に入っており、典型的には、5位のしわ取り剤はアイロン不要、7位の住居用クリーナーは洗剤スポンジ一体型などとなっています。トップランキングではありませんが、このあたりの新機能商品には私も注目しています。

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続いて、逆に、インテージのサイトから 2026年上半期の金額前年比・下位ランキング のテーブルを引用すると次の通りです。ワースト1位の検査薬は前年の80%となり、新型コロナ用の抗原検査キットの需要減が主因のようです。2位の鎮咳去痰剤も83%、4位のマスクは86%、5位の体温計の87%、9位の総合感冒薬の90%なども新型コロナ時の需要の反動があるのではないか、とインテージでは指摘しています。また、よく似たカテゴリながら、3位の強心剤の86%、11位のビタミンB1剤の91%は外国人旅行客に人気だったようです。でも、需要が一巡した可能性があるようです。もっとも注目の高かったのは10位の米の90%といえます。実は、昨年の売れたものランキングでは1位だったのですが、逆に、今年上半期には大きくランクを劣りています。それでも、コロナ禍前の2019年に比べると1.7倍と2倍近いの販売金額になっています。

私なりに近場の地場スーパーを見て回ると、麦芽飲料なんて、ほとんど置いていません。まあ、東京のお話なんでしょうね。

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